「名探偵…」
「キュアリゲイン…!?」
キャプタンから貰ったマジックキュアウォッチ?を使い、プリキュアへと変身した僕だったが、その姿はキュアスティールと少し違っていた。衣装の色は黒から赤に変わってるし、髪色も銀から金に変わっているし、何より名前も『キュアリゲイン』に変わっていた。しかも名乗りも『大怪盗』ではなく『名探偵』だ。キャプタン!これは一体…
「知らん…何それ…怖…」
マジで引いている様子のキャプタンに思わず僕達はズッコケてしまった。
「お前なぁ!何で知らないんだよ!?」
「知らねぇもんは知らねぇよ!ってかお前は知らねぇのかよ!?俺より100年くらい生きてんだろ!?」
「僕にだって知らないものくらいあるんだよ!」
「もう!ジェット先輩もキャプタンもこんな時に喧嘩しないでよ!」
妖精二匹が喧嘩しているのを横目に、僕はウソノワールを見ていた。あいつは礼の書を開いていた。何かわからないことがあるとすぐに書を確認する様はまるで、僕とあんなちゃんがいた時代のネット中毒者みたいだ。
「未來自由の書に記されない…どの道、異物である事には変わりない」
ウソノワールは再び書をニジーに預け、戦闘態勢に入っていた。
「プリキュア共よ、今度こそ貴様たちを葬り去る」
「やれるもんならやってみな…さっきまでと同じだと思ったら大間違いだよ」
正直、キュアリゲインになった僕がどこまで変わったかはわからない…だけど、不思議と何とかなりそうな気がする。
「二人は休んでて。あいつは僕が倒す!」
「そんな!一人じゃ危ないよ!」
「大丈夫、やるだけやってみるよ…タァーーッ!!」
僕は拳をウソノワールに向かって突き出し、ウソノワールは片手でそれを受け止めようとしていた。
舐められてるな…だけど好都合!
「ぐぅっ!?」
へへっ!スティールの時よりパワーが上がってる!
「おのれっ!」
「ミスティックリフレクション!!」
ウソノワールの攻撃に対し、僕はミスティックリフレクションで出来たシールドを突き出した。ダメージは防げたが、その余波で軽く吹き飛ばされてしまった。ウソノワールはそのまま追撃しようとしてきたが、ミスティックリフレクションを踏み台にして高く飛び上がった。
「リゲインキック!!」
そのまま新技をウソノワールに向けて放ったが、奴が片手で受け止めようとした。
「マズい!これ以上はフィールドが持たない!」
「マジチョベリバーー!」
確かに、辺りを覆うフィールドにヒビが入っていた。一度引くか?
…いや、ここでケリをつける!
「嘘よ覆え!」
「なにっ!?」
「お前は抵抗せず、僕の攻撃を素直に受ける!」
僕がウソノワールに向けてそう言うと、奴の様子が変わった。僕にその能力を使ったのが運のツキだ!
ウソノワールが抵抗をやめたと同時に、リゲインキックが奴に直撃した。
「まさか、ウソノワール様の力までコピーするなんて…!」
「何なのあいつ!反則過ぎじゃん!」
「…噓よ覆え。お前は自ら正体を見せる」
「ぐ、うぅ…!」
僕がそう言うと、ウソノワールは仮面で隠していた自身の正体を僕達に見せた。
「あ、あれって…」
「あれが、ウソノワールの正体…?」
「へぇ、やっぱそれが君の正体だったんだ」
ウソノワールの正体…それは身に纏っていた鎧の大きさからは信じられないくらい小さな妖精だ。大きさはキャプタンやポチタンと同じくらいだ。
「なぜ、私の正体がわかった…!?」
「キャプタン…君が言う模倣の妖精が言ってたんだ。ファントムは全員妖精だってね。そんで君だけ仮面で顔を隠してたから、もしかしたらって思ってな」
「キュア…リゲイン…!」
ウソノワールは苦虫を嚙むような顔で僕を睨んでいる。一応鎧は蹴り飛ばしてるので、おそらくこいつが使えるのは嘘で覆う力くらいだろう。とはいえどうすっかな…
「そこまで」
ウソノワールの処遇を考えていると、目の前にアルカナ・シャドウが割り込んできた。
「何のつもりだ!?キュアアルカナ・シャドウ!」
「…未來自由の書を見て」
「なに…!こ、これは…!?」
ウソノワールはアルカナ・シャドウから渡された書を読むと驚きを見せ、どういう訳か笑みを浮かべ始めた。
「ウソノワール様?」
「『今はこのまま去れ』…未來自由の書にはそう記されている」
「なんだって?」
「…『1999年七の月。真の地で真実を抱く物、大王となる。そして、世界が嘘の陰で覆われる』…私は大王となり、世界を嘘で覆う…プリキュア共よ、次に会う時が、お前達と世界の終わりとなるだろう…精々残された時間を楽しむがいい…!」
するとウソノワールの目の前に光が現れ、他の面々と一緒に消えていった。だけど、アルカナ・シャドウだけは僕を見ていた。
「あなたは、これからどうするの?」
「…わかんないっスね。いくら名探偵になったからって、急にライバルが仲間になるなんて納得できないでしょ?」
「そうかしら?少なくとも一人、あなたと一緒にいたいって子はいるみたいだけど?」
「ハハッ、ぐうの音も出ないっス」
「…だけど一つだけ言わせて。私にはやるべきことがある…あなたも私の邪魔をするなら、容赦しない」
そう言ってアルカナ・シャドウも光の中に消えていった。
あれから僕はキュアット探偵事務所にお邪魔していたが、案の定気まずい雰囲気で満ち溢れていた。
それとウソノワールが纏っていた鎧は回収してジェット君が調べているようだけど、構造はまだわかっていないようだ。
ちなみにキャプタンはポチタンと一緒に遊んであげていた。そのポチタンなんだけど、マコトジュエルの力でお喋りできるようになったらしい。
「…ねぇ!」
気まずい雰囲気の中、最初に口を開いたのはあんなちゃんだった。
「はづきちゃんさえ良かったら、一緒に名探偵プリキュアをやらないかな?」
「ちょ、あんな!?」
あんなちゃんならそう言ってくれると思っていた。ただ、やっぱりみくるちゃんは僕が仲間になる事にあまり乗り気ではないようだ。
「僕もあんなの意見に賛成だな」
ジェット君はあんなちゃん同様僕の仲間入りには賛成のようだ。ジェット君は反対すると思っていたので、正直意外だなと思った。
「確かにお前はこれまで、大怪盗プリキュアとして名探偵プリキュアと敵対してきた。けど、お前がこれまで盗んできたのはマコトジュエルだけで、宿っていた物自体は盗まなかっただろ?だからお前が悪い奴じゃないって事はわかる」
「ジェット君…」
「そうだよ!それに今のはづきちゃんは大怪盗プリキュアじゃない。私達と同じ名探偵プリキュアなんだよ!」
「あんなちゃん…」
ホント、君には敵わないな…
「…みくるちゃん」
「な、何ですか?」
「みくるちゃんが僕の事を嫌っている事も、キュアスティールに対抗心を燃やしていたのは知ってるよ…それでも僕は、君やあんなちゃんと一緒に頑張っていきたいんだ。名探偵プリキュアとして」
僕は続けて声を出す。
「すぐに信用しろだなんて言うつもりはないよ。少しずつ、みくるちゃんに信頼してもらえるように頑張っていくよ」
「みくる…!」
「っ…もう!わかりましたよ!」
あんなちゃんを見たみくるちゃんは不本意そうだけど、僕の仲間入りを認めてくれそうだった。
「でも、一つだけ教えてください!でないと仲間にはしてあげませんから!」
「…わかった。何を教えてほしいの?」
「…どうして先輩は、私達と敵対して、マコトジュエルを盗んでたんですか?」
「…え?」
まさかそれを訊かれるとは…言わないと絶対認めてくれないだろうな~。
「…たかったから」
「聞こえません!ハッキリ言ってください!」
「だから!君達のライバルポジになりたかったんだよ!!」
「「「…え?」」」
あんなちゃん、みくるちゃん、ジェット君は目を点にしながら声を漏らしていた。
「だってさ、推理モノの探偵にはライバル怪盗が不可欠じゃん!元々推理モノのライバル怪盗は好きだったし、そんなライバルポジになりたかったんだよ!」
「「…プッ、アハハハ!!」」
するとあんなちゃんとみくるちゃんは大笑いしてしまった。だから言いたくなかったんだよ!
「やっぱりはづきちゃんって、はなまる可愛いね!」
「ププッ…先輩って、意外と子供っぽい一面があったんですね!」
「お、お前達…あんまり笑ってやるなって…ププッ」
「そ、そういうジェット先輩だって…アハハ!」
「フン!どうせ僕は子供ですよ!」
「ハハッ、ごめんねはづきちゃん…」
「ひ、久しぶりに大笑いしちゃった…わかりました。先輩を認めます!名探偵プリキュアとして!」
「ほ、ホント!?」
「ですけど、仲間として認めただけで、まだ先輩を信頼した訳じゃありませんから!」
「わかってるよ…これから名探偵としてのイロハを学ばせていただきます!あんな先輩とみくる先輩!」
「あんな先輩…!」
「みくる先輩…!」
やっぱこの二人チョロいわ~。
「ジェット君も、これからよろしくな」
「何で僕だけ呼び方が変わらないんだよ!?これでも僕は大人なんだからな!」
「冗談だって…これからよろしくお願いします、ジェット先輩!」
「…ああ!ようこそ、キュアット探偵事務所へ!はづき!」
こうして僕はこの日、『大怪盗プリキュアのキュアスティール』から『名探偵プリキュアのキュアリゲイン』にジョブチェンジしたのであった。
さて、やるべき事はあと一つだ。
「来てくれてありがとう、あんなちゃん」
「うん…どうしたの?」
この日の夜、あんなちゃんを屋敷に招いていた。
ちなみに僕はこれまで同様この屋敷で生活するつもりだ。キュアット探偵事務所と結構近いし。
「君に伝えたいことがあってさ…遊園地で、僕が言いかけた事があったでしょ?」
「うん…」
「『あんなちゃんと一緒に遊べて、楽しかった』…そう言いたかったんだ」
「え…?」
「確かに、君の事が怖かったのは事実だ。だけど、君が優しい子で、人を傷つけたりする嘘を吐かない良い子だって事も知ってるよ」
「はづきちゃん…」
「何より元の時代に帰れなくて、寂しい思いを抱えてるのに、それでもひたむきに頑張ってる君に、僕は惹かれていったんだ…」
「えっ…!?」
あんなちゃんが驚いている内に、僕は手品を使って右手から赤いバラを出し、それをあんなちゃんに差し出した。
「僕はあんなちゃんの事が大好きです。僕と付き合ってください」
僕は自分の想いをあんなちゃんに伝えた。
当のあんなちゃんは涙を流しながら僕を見ているだけだったが、しばらくして僕が持っているバラに触れてきた。
「…私、はなまる重い女だよ?」
「知ってる」
「はづきちゃんが他の子と話してるだけで嫉妬しちゃうよ?」
「それは他の子と話してた僕が悪いんだから、気にしなくていいよ」
「我慢できなくて、はづきちゃんを襲っちゃうかもしれないよ?」
「大好きな君に襲われるなら、本望だよ」
しばらく問答を続けていると、あんなちゃんはバラを手に取った。
「こんな私で良ければ、よろしくお願いします」
あんなちゃんは涙を流していたが、その顔はとびっきりの笑顔だった。
僕とあんなちゃんは互いに見つめ合い、しばらくして互いにキスをした。もちろんディープキスだ。
「…ぷはぁ」
「…最初にしたキスより、はなまる心地よかったよ」
「うん…」
こうして、僕とあんなちゃんは晴れて恋人同士になった。だけど、僕達は互いに女の子だ。きっとこれから、様々な壁にぶち当たるだろう。もちろん元の時代に戻っても…
だけど、必ず乗り越えてみせる。だって僕には、とっても可愛い恋人がいるんだから。
「じゃあはづきちゃん。今から一緒に寝よっか!」
「い、いきなり!?」
「うん!…コンヤハネカセナイカラネ♡」
…うん、きっと明日は寝不足になるだろうな。
ここでひとまずの区切りとなりますが、本編自体はまだまだ続きます!