嫌な夢を見ていた気がする。思い出したくもないような夢を。どんな夢だったのか、思い出せないのはむしろ良い事なのかもしれない。
目が覚めた場所は見覚えの無い場所だった。周り一面を白いカーテンが覆っており、清潔感のある白いベッドに僕は横たわっていた。おそらく医務室なのだろう。
鼻を刺激する薬品のような臭いがその予想を強くする。しかし、それとは違うもう一つの臭いを感じ取った僕はすぐさまカーテンから飛び出した。
血の臭いだ。それもかなり強く匂う。近くで戦闘が起こっているのかもしれない。
カーテンをひっくり返した先には酷い光景が広がっていた。橙色の髪色をした青年が一人血だまりの中に倒れていた。出血がかなり多い。恐らくもう生きてはいないだろう。
「誰がこんなことをしたんだ……」
とりあえず脈だけでも計ろうと青年に近づく。そのとき死体の違和感に気付いた。
「体に傷がない……」
この青年が刃物で切り刻まれて殺されたのだろうと、僕は考えていた。彼が身に着けている学生服が原型を留めきれていない程に切り刻まれていた為だ。しかし、青年の体に外傷は見当たらない。むしろ綺麗といえる状態だ。大きく矛盾している。
「どういうことだ……」
もう少し調べてみようと近づいた瞬間。
「殺す気かーーー!!!」
「うおわ!?」
起き上がった!?間違いなく死んでいたはず!
「って既にツッコミがツッコミじゃねー……。って、ん?」
起き上がった青年がこちらに気付いた。と同時に後ろに飛び退く。
「誰だあんた!まさかあんたも俺を殺す気か!」
大きな声で叫んだ青年は警戒心を剥き出しにしている。このままでは話も出来ない。状況が掴めないけど、今は彼を落ち着かせないと……!
「悪いな、また殺されるのかと思っちまってさ。あんたは悪い人じゃなさそうだな」
十数分掛かって、幾分かの落ち着きを取り戻した青年は苦笑いしながら言った。相当怯えていたみたいだけど、何かあったのだろうか。それに……。
「また殺される?どういうことだいそれ」
「実は俺もよくわかってない。なんでもここでは死ぬことができない。死んだらまた生き返るってことらしい。実際俺は二回殺されてる。」
そういって彼は顔を青くする。殺された時の事を思い出しているのかもしれない。しかし、気になることがあるな。今、彼は”死んだ”ではなく”殺された”と言った。生き返るだけでなく人殺しが普通に行われているような状況に僕らはいるというのか。ただこれだけでは情報が少なすぎる。とにかく情報を集めないと。
「そういえば名前を聞いてなかったね」
僕は彼に問いかける。彼はそれを聞くと少し悩んだように唸ると
「お…おと…おとな…し。音無。俺は音無だ」
「僕は……」
答えようとして気付いた。何も思い出せない。自分の名前と、そしてもう一つ。僕の持つ大きな力のことを除いて何もかも。だが今は自己紹介を優先しないと。
「僕はライだ。よろしく音無」
初めましてファクジャクと申します。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
かなりマイナーなキャラですが、楽しんでいただければ幸いです。
次回をお楽しみに。