「あんなところに幻の美形がああぁぁ!」
テスト結果を話し合っていたNPC達は黙り込み、教室内に俺の声だけがむなしく響き渡る。静まり返る教室。窓の外のライは聞こえていなかったようで、そのまま歩き去ろうとしていた。
俺は窓際の席で窓の外を指差しているから教室内の様子は見えないが、どうせNPCは一切見向きもしていないんだろうな。俺もあの椅子のジェットエンジンで飛ぶのか。どんだけ痛いんだろうなぁ。天井に頭を食い込ませるビジョンが一瞬で駆け巡る。はぁ、せめて一言ボヤいてからでも良いよな。
「やっぱダ「「「「きゃあああああ!!!!」」」」ぐえええぇぇ!?」
それはまさしく爆音と表現して良いものだった。教室内のゆりと天使を除いた女子全員が出した黄色い悲鳴だ。そして、凄まじい勢いで全員が窓に乗り上げ、食い入るようにライの姿を探し始める。
窓際にいた俺は彼女らの下敷きになってしまった。こいつら容赦ねえ!
同じく窓際にいたはずのゆりは事前に退避していたらしく、被害にあっていない。あいつこうなる事が読めてたのか?
「いた!本当にいたわ!」
「あぁ!今日も美しい…」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
「なんという僥倖!宿命!数奇!」
ライはそのルックスから女子からの人気が高いらしい。
しかし、記憶探しを趣味としているライは一定の場所に留まっている事が少なく、目撃情報が少ない事からNPCの間で『幻の美形』とまで呼ばれている。
そんな噂を日向から聞いていた為、利用させてもらったが、正直ここまでとは。聞いたところによると、既にライのファンクラブも立ち上がっており、死んだ世界戦線、生徒会に次ぐ第三勢力になりうる程の加入者がいるとまで噂されている。いや、本当に何者なんだあいつは。
何にせよ、咄嗟の作戦ではあったがNPCの視線を集める事が出来たか。俺はNPC女子達の足元からほふく前進で脱出しながらそう考えていたが、そこで思い出す。
女子の視線は集めたが、男子は?
今回の目的はNPC全員の視線を集める事だ。つまり、男子も含めて視線を晒さなくてはいけないのだ。ちなみに試験官である女性教師は生徒に混じってライの実物を見た感想を現在進行形で語らっている。それでいいのか先生。
俺は立ち上がり、教室を見渡し、男子の様子を確認する。しかし、そもそも教室内にNPCの姿が見えない。あれ、女子はわかるが男子はどこに?女子の大群がいる窓側に振り返ってみると…
「妬ましい…羨ましい…」
「弾けろイケメンがよぉ…」
「パルパルパルパルパルパルパルパル」
「あいつこそがカオスの権化か…」
「止められるものなら止めてみよ、我が絶望に敵う者がいるならば」
同じ様に窓に群がり、女子とは正反対の感情をライに向ける男子NPC達の姿がそこにはあった。おい、日向混ざるな帰ってこい。
天使も席から立ち上がる事は無かったが、窓の方へと視線を向けており、その隙に答案のすり替えは成功した。ライに感謝だな。
次のテスト前にゆりがすごい速度で教室を出ていき、しばらくしてめちゃくちゃ良い笑顔で戻ってきた。
「次の策を打ってきたわ。あんたらはそのままテストを受けてなさい。あっ、竹山くんはすり替えよろしくね」
ゆりが何を考えているのかはわからないが、確かにテストのすり替えはうまくいった。
テスト終了直前に突如外に現れたチャイナドレスを着た銀髪の絶世の美少女がNPC全員を釘付けにしたのだ。
先程の男女の反応が真逆になり、男子は魅了され、女子は怨念のこもった目でその子を見ていた。
どことなく顔がライに似ていた気がするし、走り去っていく時に涙を流していた気もするが、気のせいだろう。
ゆり「ライく〜ん?ちょっと手伝ってぇ〜?」
ライ「…なんだその女性用の服は?」
ゆり「着て」
ライ「…えっ?」