「え、君も記憶がないのか!」
「“も”ってことは、まさかライも記憶がないのか?」
音無から色々と話を聞こうと考えていたけど、大きく当てが外れたな。まさか彼も記憶喪失だったとは。参ったな、手掛かりが全くないぞ。
「とりあえず手分けして情報を探そう。一時間後にまたここで」
「わかった。白いロングの女の子とデカい斧を持った奴には注意しろよ。俺を殺した奴らだ」
その会話を最後に僕らはこの部屋を出る。殺人犯、正確には未遂なのかもしれないが、がうろついている可能性がある。警戒を怠らない方が良さそうだな。僕は少し感覚を鋭敏にしながら探索を開始した。
大体三十分ほどだろうか。探索の結果、ここがかなり巨大な校舎であることがわかった。教室や食堂、放送室などの施設があることからこれは間違いないと思う。規模の大きさからして生徒もかなり多いはずだ。なのに、さっきから人に会わないのは何故だ。ここまで探索を続けているのにまだ誰一人として遭遇していない。このままでは埒が空かないな。僕は後ろに振り替える。先ほどから感じる視線。その発生源を見つめる。
僕は屋上に向かうことにした。探索している間、常に感じていた視線。その主は恐らくここにいるはずだ。最初は無視し続けようかと思っていたが。ただでさえ手掛かりが少ないこの状況。こちらから動くしかなさそうだ。例の殺人犯かもしれない。気を引き締め直す。
「そこにいるんだろ。出てきてくれないか」
気配の方向に声を掛ける。予想は当たっていたようだ。物陰から人が出てくる。
「女の子じゃないか……」
長い金髪をなびかせる小柄な女の子。耳に何か小さな機械を付けている。学校の制服を着ているということはここの生徒だろうか。どうやら彼女が僕を監視していたようだ。
「どうしてこんな事をしている。僕に何か用事でも?」
「観察対象がこちらにコンタクトしてきました。どうしますか」
彼女は僕を無視してこちらに目を向けながら機械から伸びたマイクに喋る。誰と話しているんだ?
「わかりました、すみませんがこちらに着いてきてもらえますか。リーダーがあなたと話したいそうです」
「待ってくれ。あまりにも話が急すぎる。少し話を聞かせてもらえないか」
彼女は無言を貫く。こちらの話を聞くつもりはないということか。しょうがない、かくなる上はこの力で。
「質問にこ……」
僕が力を使おうとしたその瞬間だった。
「うわあああああ!!」
聞き覚えのある声が階下から響き渡った。