幻の美形が死後の世界に迷い込んだら   作:ファクジャク

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地下

「はぁ…はぁ…助かりましたライさん」

「気にしなくて良いよ」

 

地面に手をつき、呼吸を整えながら高松がお礼を言う。実際、この世界において、死ぬというのは大した事では無いのだ。きっと、あの鉄球に押し潰されていたとしてもしばらくすれば元に戻っていたのだろうし。

 

「しかし、この状態では戻る事は出来ませんね」

「進むしかないか…」

 

息も落ち着いてきたのだろう高松は立ち上がり、後ろを振り返る。僕達が飛び込んだ穴はぴったりはまった鉄球によって塞がっており、びくともしない。他のメンバーと合流するのは難しいだろう。その穴とは反対側には照明に照らされた通路が続いており、こちらに進むしかないだろう。僕達はゆっくりとそちらへ歩き始めた。

 

 

 

時折雑談しながら僕達は同じ様に続く通路を進む。その途中で気になる事があったのを思い出した。

 

「そういえば高松?」

「なんでしょうか?」

「やけに体格が良くないか?」

「なっ、なぜそれを!」

 

わかりやすくというか、若干わざとらしく反応する高松。指摘された事が嬉しそうにも見えるのは気のせいだろうか。歩き方とか立ち方の重心移動が普段からしっかりしているし、たまに力んで制服の一部が窮屈そうに盛り上がっている事があって、気になっていた。

 

「ふっ、バレてしまっては仕方ありませんね。実は私…」

 

高松が眼鏡をおさえ、レンズを光らせていたかと思えばおもむろに自分の制服の左肩あたりを右手で掴む。そして、

 

「着痩せするタイプなんです!」

 

ガバァ!と勢い良く上着を脱ぎ捨て、半裸になった高松。その肉体はまるで朝日を浴びたチョモランマの様に輝いていた。予想以上の完成度と迫力に僕は思わずたじろぐ。確かに凄いが…

 

「何故脱いだ?どうやって脱いだ?」

「すいません、あまり披露できる機会が無く、つい…。ちなみに、今のは伝説の大泥棒や極道が使ったという早脱ぎ術です。習得するまでに3ヶ月掛かりました」

「そ、そうか…」

 

冷静に説明されてしまった。僕の反応をよそに高松は通路の端に落ちていた上着を拾い、そのまま歩き始める。いや、着ろよ。

 

 

「なんだここは?」

 

通路を抜け、辿り着いたのは広い円形の部屋。反対端には同じ様に通路があり、上は天井が見えず、どこまでも暗闇が広がっている。それ以外に目立っておかしな部分はない。

 

「特に何もない様ですし、先に進みましょうか」

「ちょっと待ってくれ。何か聞こえないか?」

「え、私には何も聞こえませんが」

 

高松を引き止め、音の出所を探る。これは声か?悲鳴のような声はどんどんと大きくなっていく。高松にも聞こえたのか、周りを見渡している。

 

「ーーうわああぁぁ」

「上だ!」

 

勢い良く顔を上げる。いくつかのガレキに紛れ、暗闇の中こちらに向かって勢い良く向かってくる…いや、落ちてくる人影が一つ。この声は大山か!すぐそこまで迫っておりこのままでは地面に勢いよく激突するだろう。

 

「ライさん!?」

 

僕は勢い良く落ちる大山の真下へと駆ける。そして、腕を広げ、彼を受け止めた。背中から落ちていた大山の背中と脚にライの腕を支えて受けとめた形。本人は気付いていないが俗にお姫様抱っこと呼ばれる形である。

 

ちなみにこの時、高松は降り注ぐガレキの中から特にライ達に届きそうな大きなガレキに飛びかかり、拳で粉砕していた。その肉体を遺憾無く発揮していたのだった。

 

 

大山は床が抜けるトラップにかかり、重力に従い、奈落の底へと落ちていた。

驚愕のあまり、悲鳴は止まらずにいたが、いずれ来る地面への激突とそれに伴う死。死ぬ事はないとしてもその痛みは間違い無く彼に襲い掛かる。それへの恐怖から悲鳴は止まり、代わりに痛くなるほど歯を食いしばり、目をつぶり、その時を待った。

違和感に気づいたのはいつだったか。待てども待てども覚悟していた衝撃は来ない。それに先程から身体を襲っていた空気の抵抗も無くなっているような。何があったのか、気になり一度目を開けてみる。

 

「大丈夫か?大山」

 

そこには顔をこちらに寄せて覗き込んでいる最近戦線に加入したライの顔がすぐそこにあった。

 

「う、うわああぁぁぁ」

「うわ、暴れるな!うぉっ!」

「痛ぁ!」

 

予想だにしない光景に思わず大山は暴れてしまい、ライは耐えきれず大山を落としてしまう。地面に腰から激突した大山は腰をさすりながらも、少し落ち着いてきたようだ。若干顔が赤いのは気のせいだろう。

 

「すまない、大丈夫か?」

「へ、平気。ありがとうライくん」

 

手を差し伸べれば、大山は恥ずかしい姿を見せてしまったと、頰を掻きながら手を取った。

 

「取り敢えず先に進みながら、何が教えてもらえるか?」

「ええ、私もそれで良いと思いますよ」

「高松君も生きてたんだね。…なんで上着てないの?」

「それも一緒に話すよ」

 

大山も加わり、僕達はギルドを目指す為、部屋を後にするのだった。

 

 

しばらくしてゆりにひっぱたかれ、同じように落ちてきた日向は誰にも受け止められず、地面に激突していた。




大山のヒロイン予定は今のところありません!たぶん。
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