マブラヴ Alternative Plus   作:MK60ff

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吹雪、カッコいいよね。


サクラソウ①

巨躯が廃墟群を駆け抜けていく。

 国連ブルーに染め上げられた日本製戦術機、TST-TYPE97 吹雪。

 第三世代に分類される高等練習機。

 日本特有の空力による機体制御を目的にした機体レイアウト。第一世代の機体に比べ主機の出力も機動性も格段に向上したその特性を存分に活かし青羽は機体を前進させる。

 鋭敏な重心バランスを制御し青い鋼の巨人が羽毛のように軽々と宙を舞う。

 

「よし。今日も行けるよね吹雪……」

 

 自身の相棒たる機体のペットネームを親しみを込めて呼ぶ。言葉が返ってくることなどないが青羽にとっては十分だった。

 そんな事をしている間に自機の後に2機の吹雪が近づいてくる。同じ国連ブルーに染め上げられた機体。

 同じ訓練部隊、207A分隊の柏木晴子、高原萌香が操縦する吹雪が追従してきた。

 通信が開かれ網膜に直接投影された情報に通信画面が開かれよく知る青い髪色の少女、柏木晴子が青羽に呼びかけた。

 

「青羽、息抜きはそろそろ終わり。茜達もだいぶ近づいてるはずだから気を抜いてドジ踏んだりしないでよ小隊長さん?」

 

「分かってる。安心しなよ……今日も負ける気はないから、そっちこそ肩の力抜きすぎて痛い目見ないようにしなよ」

 

 互いに軽口を叩き合う。

 数年の訓練による互いの信頼がその場に似つかわしくない空気を生む。青羽の返しに晴子は笑いながらいつも真面目に取り組んでるんだけどなーと返す。

 お返しにと青羽の余裕に期待してると軽談を続けた。

 

「さっすが私達のエース様は余裕だね、茜に勝ち越してるから今回も楽勝てわけだ」

 

 そこに萌香が割って入る。

 そろそろ真面目にやってくれと、これ以上は教官に目をつけられるかもしれないと。

 気を引き締めてくれと2人を注意を促した。

 2人は変わらず軽く返答を返す。

 

「2人ともそろそろ無駄口終わり。来るよ!」

 

「ごめんごめん、いつも通り真面目にやるよ。負けたくないのは私も同じだしね」

 

 晴子の負けたくないという言葉に反応して青羽の握る操縦桿に力がこもる。

 あの日の光景がまたフラッシュバックした。あの日から強くなると誓ってひたすらに努力を重ねてきた。

 意地がある、決意も覚悟も。

 最後の模擬戦。任官前の最後の儀式。

 今日までの集大成と決意を示すためにも負けられない。

 

「…よし、じゃあ予定通りにやろうか…晴子、予定ポイントで待機して。誘導役は僕がメイン。萌香はこっちのサポートお願い!」

 

 計画通りにそれぞれが機体を加速させポジションに着く。跳躍ユニットに青白い光が灯り空気を裂き白尾を描きながら空に舞い上がる。

 かつて憧れた戦術機の管制ユニット。今はただの通過点だが少しずつ新たな目標に近づいている実感に青羽の口角が上がった。

 

「「了解!」」

 

 意気揚々と2人も機体を前へと進める。

 レーダーに敵機として表示される反応。

 同じ訓練部隊、涼宮茜、築地多恵、麻倉檜が駆る青い吹雪が徐々にカメラの視覚に映り出す。

 

「それじゃあ行くよ、各機作戦開始!」

 

 二つに分かれた3機小隊の吹雪同士の模擬戦が本格的に始まる。間も無く任官を迎える207A分隊にとって今日は戦術機を使った最後の模擬戦。

 互いに負けたくないと意地を張った全力のぶつかり合いの幕が今始まろうとしていた。

 視界に迫る敵機。

 その場にいる6人全員が気分が高揚する感覚を覚えた。

 

「一機先行してくる…きっとこの機体が青羽機だ。多恵、檜!作戦通りやるよ。青羽は私と多恵で挟撃する。檜は警戒を続けて」

 

「「了解!/り、了解!」」

 

 レーダーに映る敵機のシグナル。3機のうち一機が編隊から離れこちらに向かい先行してくる。

 茜は207A分隊の分隊長として全員分の癖を把握している。敵チームのメンバーの中で先行で突撃を仕掛けるのは青羽の可能性が高い。

 ちょうどいいと頬が緩んだ。

 模擬戦で青羽に負けたまま終われない。何より任官前の最後、任官した時同じ部隊に配属されるとは限らない。これが最後の機会かもしれないと思うと余計に負けられないと心を奮い立たせる。

 

「……青羽、あんたに負けたまま終わるつもりないから。突撃前衛志望はあんただけじゃないんだから」

 

 突撃前衛、ストームバンガード。

 部隊の最前衛の切り込み役。白兵戦能力が重視される死亡リスクが最も高いポジション。それゆえに担当する衛士に高い技量を求める先槍。

 一部の衛士にとっては花形であり名誉と言えるそれを青羽も茜も狙っている。

 互いに選ばれるように努力を重ね切磋琢磨してきた。どちらが優秀な衛士になれるか、どちらが戦術機を上手く扱えるか。互いに決着をつける事が出来るのは今日が最後かもしれない。

 当然二人とも勝利を譲るつもりはなかった。

 

「ッきた、茜ちゃん!」

 

「ッ平面機動挟撃!」

 

 平面機動挟撃、フラットシザースの掛け声と共に茜と多恵。二人の吹雪が青羽の機体を挟むように弧を描きながら突進する。

 茜が92式多目的追加装甲を構えながら87式突撃砲で36mmの口径から赤いペイント弾をばら撒く。同じく反対方向から多恵が両腕で構えた突撃砲で弾幕を張る。

 左右からのクロスファイア、赤い弾丸が青羽を襲う。

 青羽は焦ることなく冷静に回避して見せた。

 

「速い!やっぱり簡単には行かないか」

 

 降り注ぐ赤いペイントをものともせず青羽は機体を走らせる。赤く塗られた模擬弾は青羽の吹雪を汚すことはなくボロボロになった舗装路に着弾していく。

 わかってはいた。

 今まで一緒に訓練してきて青羽の技量の高さはよくわかっている。この程度でやれているなら苦労はない。

 悪態をつきながらも2機のエレメントによる包囲を崩さず攻めに徹する。

 変わらずこちらの攻撃は当たらない。

 青羽の反撃による突撃砲による乱射。元から当てる気は無かったのか青いペイント弾は茜達に当たらず空を切る。

 目に見えた牽制。

 痺れを切らして74式近接長刀に切り替えて斬撃を加える。青羽も片腕の突撃砲を投げ捨て抜刀して受け止めた。

 

「茜ちゃん、もう一機きた!」

 

 敵機は青羽だけではない。当然他の二人が黙って見ているはずもなく青羽の支援に回るべくこちらに近づいてくる。

 

「こっちで抑えるから二人は青羽を!」

 

 檜が支援に来た吹雪を足止めし先に青羽を優先して叩くように叫ぶ。

 青羽に対する攻撃を緩めることはなく了解を返す。

 

「了解ッ任せた!」

 

 跳躍ユニットによる加速を加えた長刀による縦斬り。

 青羽の吹雪も長刀を横に構え受け止める。

 衝撃波が発生し風圧が周囲の塵を吹き飛ばす。ギリギリと鈍い音を鳴らしながら火花が散っていく。

 多恵が後ろに回り込むのを捉えた青羽が茜の機体を弾き飛ばしその場から飛び去る。

 

「一撃が重い…茜か、まだポイントまでもう少し」

 

 マップ情報を確認し晴子の待機場所までの距離を再確認する。あと少しの距離、下手に時間をかければ気取られる。急がなければと冷や汗が出る。

 

「青羽、こっちは足止めするからそのまま2機を誘い込んで!」

 

「!任された」

 

 萌香が檜を止めている間に二人を誘い込む。

 慎重に晴子の狙撃位置が割れないように2機のヘイトを集め確実にポイントまでの距離を縮める。

 機体の着地音が響き振動が体に伝わってきた。

 2機の弾幕をギリギリで機体を逸らし最小限の動作による回避に努める。

 斬撃を弾きいなす。

 網膜に投影されるセンサーから入る外部映像に迫り来るUNブルーの吹雪。

 敵機の接近を知らせるアラートがうるさいほど響く。

 常に動き続けることを意識し距離を離しすぎないようにして戦闘を続ける。

 

「あと少しッ左から!」

 

 少し意識を逸らした隙に左側に回り込んだ茜が長刀による切り上げを仕掛けてくる。油断したと強引に跳躍ユニットによる噴射で回避を急いだ。

 

「もらったよ!」

 

「ッ簡単には終わらないよ」

 

 頭部のメインセンサーの手前、ほんの数センチを長刀が掠めた。青羽も茜も仕切り直すように距離を離す。

 2機の吹雪が距離を空けて土煙を上げながら着地する。

 

「ッよく動くよ青羽、そうでなきゃ…」

 

「今のは流石に危なかったかな…」

 

 少しでも遅れていれば撃墜判定をもらっていたかもしれないと思うと肝が冷える。

 呼吸を落ち着かせてポイントを再確認。

 

「…けどここまで来れば」

 

 すでに目標ポイントまで到達していた。

 通信を開き晴子へ呼びかける。

 茜達もここでけりをつけようと再び青羽に挟撃を仕掛けようと動いていた。そして茜は気づいていた晴子の狙撃位置に誘われて入れことを。

 いまの位置どりは狙撃を警戒して周囲のビル群が盾になるように陣取った。味方誤射覚悟でもない限り撃ってこない。

 

「多恵、ここで決めるよ。後ろから回り込んで合図したら近接戦で一気に行くよ」

 

「う、うん…じゃ無かった、了解!」

 

「晴子、予定通りカウントに合わせて狙撃して。狙撃目標外さないでよ」

 

 待ってましたと言わんばかりの言葉を返す晴子。

 離れた距離から87式突撃支援砲を構え獲物を射抜くのを心待ちにする狩人のように待ち構える。

 目標に照準を合わせて合図を待つ。

 

「任せてよ、やっと出番なんだから青羽の分もいいとこもらっちゃうからね」

 

「ふふ、期待してる」

 

 変わりない頼りになる仲間の言動に緊張がほぐれる。

 茜と青羽二人のカウントが始まった。

 

「3」

 

 青羽がいつでも飛び出せるように構える。

 

「2」

 

 晴子がトリガーに指をかけ合図を待つ。

 

「1」

 

 茜と多恵が青羽を挟撃すべく武器を構える。

 

「「いま!!」」

 

 茜と多恵が同時に切り掛かる。

 一呼吸置いて青羽は機体を跳躍ユニットで真上に跳ねさせた。

 粉塵を巻き上げ青い巨人が空に舞う。

 先ほどまで青羽がいた地点に着地する茜達の機体。

 遠方から空気を切り裂いて青いペイント弾が二発茜達に迫る。一発の青いペイントが多恵の吹雪の胴体を染めた。

 一泊遅れて飛来した弾丸を茜はギリギリで回避する。

 直後に多恵の機体の撃墜判定が告げられた。

 

「築地機コクピット付近に被弾。致命的損傷!大破!」

 

「…ごめん、茜ちゃん」

 

 多恵は撃墜判定を受け機能を止めた吹雪のコックピット内で項垂れ親友への謝罪を口にした。せめて勝利を願って。結局自分が足を引っ張っていたなと反省。

 もっと上手くやれていればと訓練が終了した後の教官からの言葉を想像すると気分が落ち込んだ。

 

 

「多恵!ッ味方誤射覚悟で青羽に目標を定めて……もっと警戒しておけば…」

 

「よし!一気に決めるよ。晴子もう一発ーー」

 

 そこに再び撃墜判定を告げる教官からのアナウンスが訓練場に響く。予想外のそれに動きを止める青羽。

 その声が告げた名前はチームメンバーの高原だった。

 

「高原機、右腕及び右脚部破損。致命的損傷、大破!」

 

「!しまったッ檜か?まずい狙撃位置が。スナイパーが敵に位置を晒してちゃ…晴子、移動して一度態勢を」

 

 状況から見て萌香が足止めしていた一機、檜が萌香を落としたのだろう。晴子が狙撃を行い位置が露呈してしまっている。この状況ならまず真っ先に狙われる。

 すぐさま移動しろと声をかける時にはもう移動する準備に入り機体を跳躍させようとしていた。

 

「もうやってー」

 

「ごめん茜遅れた!こっちは任せて、青羽を!」

 

 それを阻むように檜機が晴子の吹雪に長刀を抜き放ち切り掛かっていた。

 互いに一機ロストで状況は五分五分。振り出しに戻った状況。檜の呼びかけに答え茜は再び青羽に意識を向ける。

 

「わかってる!」

 

「一対一…決着つけるにはちょうどいいかな」

 

 茜の機体を正面に捉え弾薬の残り少ない突撃砲は捨て長刀を二刀流で構える。

 機体の腰を下げ跳躍ユニットの出力を徐々に上げていく。茜も答えるように長刀を一刀、両腕で保持し構えている。

 緊張からくる静寂が二人を包んだ。

 2機の吹雪が睨み合う。

 

「青羽、私はアンタに勝って突撃前衛になるんだから」

 

「…負けたくないんだ、こっちだって」

 

 互いに啖呵を切る。

 譲れないものを胸に呼吸を整え目の前の相手を見据えた。

 

「……行くよ!」

 

「…!」

 

 そして2機同時に跳躍ユニットによる噴射で加速し打ち出された弾丸のように飛び出した吹雪が長刀を打ち合わせる。

 鋭い刃が空気を切り裂き交錯する。

 不協和音を響かせながら吹雪が2機押し合う。

 出力に差がないため膠着状態のまま動かない。

 

「今度はこっちが攻める番!」

 

 そう宣言した青羽が刃をかち上げ胴体に向けて蹴りを放った。咄嗟に茜は吹雪の腕を滑り込ませ防御に回る。

 ダメージにはならず再び距離を開けた2機の戦術機。

 今度は睨み合う間も無く青羽が攻めに徹する。

 二刀による手数を生かした素早い連撃。迫る二振りの刃をいなしながら反撃の隙を窺う茜は先ほどまでとは真逆の状況に歯噛みした。

 徐々に押され始め装甲に刃の先端が掠め塗装が剥がれていく。

 

「ッ私だって」

 

 これで終われないと青羽の放った斬撃を大振りの一太刀で薙ぎ払った。

 これ以上やらせないと生まれたチャンスを逃さないために茜が青羽の懐に攻め入る。左腕のナイフシースから65式近接戦闘短刀を展開し切り掛かる。

 

「近接戦がアンタだけの十八番だと思わないでよ!」

 

 激しい斬撃の応酬。

 スーパーカーボン製の刃が鋭い悲鳴を上げる。冷たい鉄が擦れ合う、背筋を撫でる不協和音がなん度も打ち鳴らされる。

 戦術機の鋼の脚部がアスファルトを抉り削っていく。

 空を切った互いの刃が周囲の看板と建築物を次々に破壊する。

 

「さすが…」

 

「このまま押し切る!」

 

 茜は攻めを崩さず機体の出力を全快にし刃を押し付ける。青羽の機体の装甲も徐々に削れ斬撃痕が目立つようになっていた。

 

「まだこっちだって!」

 

 一瞬、茜の勢いを利用し押し込まれた刃を切り払った。

 短刀が弧を描き遠くの地面へと突き刺さる。

 そのままとどめを刺そうと刃を突き出した時、今度は青羽の突き出した左腕が保持する長刀を茜が切り払う。そのままの勢いで長刀がすぐ近くのビルに突き刺さった。

 

「…やるね優等生」

 

「麻倉機、動力部に被弾。同じく柏木機、両脚部被弾。両機とも致命的損傷。大破!」

 

 互いのチームからまた1名ずつ脱落し青羽と茜だけが残った。そして二人もまた激しい近接戦闘による高軌道のGで体力は限界だった。

 互いに決着のタイミングが近い事を察する。

 最後の睨み合い。緊張は最大にまで高まっていた。

 

「……次で」

 

「終わらせる!」

 

 意地とプライドを賭けた戦い。

 いよいよ幕引きが迫っていた。6機の戦術機が弾をばら撒き跳躍ユニットに火を灯しその巨体で地面を揺らす喧騒が支配していた訓練場には今や静かに最後の一撃を構える2機の戦術機だけが動いていた。

 管制ユニット内のシステム音が鼓膜を揺らす。

 規則的なそのリズムが今はかえって心を落ち着かせる。

 互いに視界に映るのは一機のみ、今まで訓練で意識し合っていた良き友。

 偶然とはいえ一対一で迎えた最後のこの状況は互いに願ってもないものだった。

 

「「ッ!」」

 

 全力の突撃による斬撃。

 跳躍ユニットに青白い光が激しく灯爆音が空気を揺らす。塵と土煙が舞い上がり一瞬のうちに2機の吹雪の距離が縮まる。

 雷が落ちたような爆音。

 二刀の武器が重なり合い火花が飛散する。

 長刀が空を舞い太陽を背に高速回転しながら遠方へ弾かれていく。

 

「……」

 

 刃が捉えた。

 茜の吹雪の胴体。その装甲表面で刃が止まっていた。

 長刀の接触による直撃判定。

 勝敗のアナウンスが告げられた。

 

「涼宮機、機関部に被弾。致命的損傷、大破!」

 

「……あーあ、負けちゃったか……」

 

 茜はコックピットで静かにその事実を噛み締めていた。

 

 

 横浜基地のブリーフィングルーム。

 そこでオルタネイティブ4直属の特殊部隊、A01伊隅ヴァルキリーズが編入される新人達の任官前最後の模擬戦を見物していた。

 噂に聞く腕のいい新人。

 BETA大戦の影響で人口が減ったこの世界で珍しくなってしまった若い男。入隊すればこの隊での黒一点。

 様々な意味でヴァルキリーズにとっては注目を集める存在だった。

 

「噂の新人、結構いい動きするじゃない!鍛えがいがありそうね。早くうちの部隊に来ればいいのに」

 

「速瀬中尉、戦闘に性的快楽を覚えることを咎めるつもりはありませんが年下、しかも訓練生にそのような劣情を向けるのはどうかと」

 

 部隊の切り込み隊長でNo2、速瀬水月。

 品定めするように207Aの動きを注視していた彼女が模擬戦が終了し青羽に対する感想を述べて宗像中尉にいじられる。

 いつもの光景。

 ヴァルキリーズにとっては馴染みのあるものだった。

 

「む〜な〜か〜た〜、アンタ今なんて言った!」

 

 そこから始まる二人のキャットファイト。

 大抵の場合、速瀬が宗像にいいようにあしらわれのらりくらりと躱わされる。

 軍隊らしくないヴァルキリーズらしい緩い空気、むしろこのやり取りがある方が安心感を覚えるメンバーが多かった。

 

「ふ、まあ速瀬の年下趣味はこの際置いておくとして実際いい動きだ。まだ実戦経験のない硬さはあるがそこはこれから埋めていけばいいだろう。シュミレータースコアの記録更新者は伊達ではないようだな」

 

 部隊長、伊隅みちる大尉。

 雑談に乗りつつ簡単に青羽の評価をまとめる。事前に聞いていたシュミレータースコアの記録更新で期待はしていた。飛び抜けた戦闘軌道や技術はないが全ての技量が高いレベルでまとまり機体の性能をうまく引き出している。

 他のメンバーも同年代に比べて高水準の技量を有していた。内心では速瀬と同じく鍛えがいのある新人達の編入を心待ちにしているのを顔には出さない。

 

「ちょ、伊隅大尉!私は違いますからね!」

 

「まあまあ、水月。落ち着いて」

 

 涼宮遙、部隊のCP将校であり茜の姉。

 速瀬の親友であり同期。

 二人に揶揄われている親友を宥めつつモニターに再び目を戻す。

 負けた妹に口には出さず心の中でお疲れ様と労う。本音を言えば当然妹が勝利を収める事を期待したが全力を出してのぶつかり合いなら仕方ないと、むしろ妹が部隊の仲間と上手くいっているようで安心していた。

 

「…遙、茜残念だったね…あと少しだったんだけど」

 

「うん、けどお互いに全力を尽くした結果なら仕方ないよ。それに結果はどうあれ今回の模擬戦はあの子も得るものが多かったはずだから新しい教訓に活かせるなら例え負けても無駄にはならないよ」

 

 涼宮の返答に伊隅大尉がその通りだと同調する。

 

「涼宮の言うとおりだ、いかな結果にせよ今後に活かせなければ意味はない。そう言う意味でも新人達には期待している。何せ私達と同じ神宮司教官の教え子なんだからな」

 

 伊隅大尉の青羽達の見る目は優しさがこもった雛鳥達を見るような暖かいものだった。

 雛鳥が戦場の空を知り成鳥となるまであと数日。

 彼らを待ち受ける空は未だ暗雲に包まれた不鮮明な未来。

 BETAの脅威は未だ人類を脅かし、人類の滅亡までカウントダウンが始まるほどに人の未来に猶予はなかった。





チーム戦むずい。
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