ゴジラVS『WW2』~枢軸国と連合国が手を取り合う日~ 作:甲斐田 悠人
1941年5月25日アクロマにて――。
エルヴィン・ロンメル中将はトブルク包囲戦の最中だった。
つい先日もイギリス軍がトブルク解囲を目指した反撃作戦(ブレヴィティ作戦)を仕掛けてきたが、ロンメルはこれを退けた。
トブルクを陥落させるまであと少しというところまできていた。
だが、そんなロンメルの元に電報で本国への帰還命令が届くことになる。
青ざめた顔をした副官が電報を持ってくる。
ロンメルは怪訝な顔をしながら尋ねた。
「本国からの帰還命令だと? もう少しでトブルクは陥落するんだぞ!」
「ですが、臨時政府は一刻も早くロンメル中将に帰還していただきたいと」
ロンメルは臨時政府と聞いて首を傾げた。
聞き慣れない言葉だったからだ。
「臨時政府? どういうことだ? なぜ、臨時政府とやらができたんだ」
「落ち着いて聞いてください。本国ドイツは壊滅しました」
「そんな馬鹿な。いったい誰の手によって!? イギリス軍にそんな戦力はないはずだ!」
「それが謎の怪物によってです。謎の怪物の手によって、ハンブルクやベルリン、その他ドイツの街が火の海に変えられ、ドイツは凄惨な有様です」
「怪物の手によって、滅んだ? ドイツの精鋭たちがか?」
「メッサーシュミットやⅣ号戦車がなすすべもなくやられたそうです」
「ありえん。そんな怪物がこの世に存在するなど」
「ですが、電報は本国からのものです」
「イギリス軍の罠じゃないか? こうやって、俺をトブルクから離れさせるのが目的なんじゃないか?」
一番現実的な可能性をロンメルは唱えた。
イギリス軍がエニグマを解析して、偽りの電報を送ってきた。
その方が謎の怪物の存在を信じるよりかはよっぽど現実的だ。
「ですが、エニグマをイギリス軍が解析できるでしょうか? エニグマのパターンは天文学的な数になります。とてもじゃないですが、イギリス軍に我がドイツの化学の結晶たるエニグマを攻略できると思えません。ましてや、こんな怪物の手によってドイツが滅んだなんて幼稚な通信をするでしょうか」
「……それもそうだな」
ならば、本当にドイツは怪物の手によってあらゆる街が破壊されたのか。
考え込むロンメル。
一番肝心なことをロンメルは忘れていた。
その事を思い出して、副官に尋ねる。
「総統は? この大変な事態に総統はなにをしている?」
「総統閣下は……現実を受け入れられず、自決なされたそうです」
「そんな……」
「今はゲーリング元帥が臨時政府の指揮をとっておられます」
「では、本当だというのか。謎の怪物の手によってドイツが焼かれたというのは」
「確かなものかと。電報では翼をもたない黒い竜が海から現れて、火を噴き、ドイツ軍を壊滅させたそうです」
ロンメルは顎に手をやり、くるくると回転するようにその場を歩き回った。
やがて、考えがまとまったのか、歩みを止めた。
「信じがたい。でも、信じるしかないのだろうな」
「行ってきてください。この場はなんとしても死守します」
「頼んだ。俺は本国に戻るとしよう」
ロンメルは身支度をして本国に戻ることにした。
本国に戻る途中、様々な噂を聞いた。
ドイツを焼き払った怪物は今はイタリアにいるという。
イタリア軍をこてんぱんにやっつけて、イタリアの街を火の海に変えているのだという。
ロンメルはどうしてもその怪物が見たいと思った。
本国に帰還する前に北アフリカからJu52輸送機で帰る途中、操縦士にイタリアに寄るように頼んだ。
怪物がいるのが事実だとしたら、どのようにすればその怪物を倒せるのか? を知りたいと思ったからだ。
アフリカからイタリアを経由する途中の道中は信じられないほど平和だった。
海は穏やかで、なにもかわり映えしない。
このまま行けば、もうじきイタリアのナポリの街が見えてくる。
怪物はやはりいない。
やはり、あれはイギリス軍の仕業だったのだ。
操縦士に北アフリカに帰るよう命じようとしたその時だった。
天を裂くような地獄からの叫び声のようなものが聞こえたのは。
窓から声の発生源を覗くと、そこには報告通りの羽のない巨大な黒い竜がナポリの街を焼いていた。
放射熱線によって、ナポリの街は火の海と化していた。
「あれは一体なんだ……?」
「わかりません。とにかく離れます」
「いや、もっと限界まで近づけ。あの怪物をよく見たい」
「正気ですか?」
「無論、正気だ」
操縦士は怪物の元まで輸送機を近づける。
ロンメルは考え込んでいた。
かつて、ヨーロッパを襲ったフン族のアッティラ大王は神の鞭と例えられた。
では、ヨーロッパを襲うあの怪物はいったいなにに例えられるのだろうか。
地獄の化身とでも言える存在を相手にロンメルは静かに……どうやったら、あの怪物を倒せるかを考え込んでいた。
ロンメルは獣である限り、殺せるはずだと考えていた。
生き物である限り、死のない生物などこの世にはないのだから。
そう、心の中で闘志を燃やしていた。
早めにできたので投稿します。
次回は来週の日曜日になる予定です。