ゴジラVS『WW2』~枢軸国と連合国が手を取り合う日~   作:甲斐田 悠人

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チャーチルの思惑

 ウィンストン・チャーチルは内閣戦時執務室でドイツ空軍の攻撃が止まったことを不可思議に思っていた。

 無論、チャーチルも謎の怪物によって、ドイツが襲われたという報告は耳にしている。

 だが、たかだか動物一匹であの精強たるドイツ軍の攻撃が止むわけがないと思っていたのだ。

 なにかがおかしい。違和感を覚えるチャーチル。

 そんな時に外務大臣のアンソニー・イーデンが靴を鳴らしながらやってくる。

 汗をかき、動揺が抑えきれていない。

「随分と焦っているじゃないかイーデン」

「チャーチル。今しがた中立国のスイス経由でドイツから停戦の打診がきた」

「……なんだと?」

「噂の怪物とやらによって、もはやドイツはイギリスと継続して戦えるだけの戦力はないとのことだ」

「そんな馬鹿な!? たかだか動物だろう。ドイツ軍が動物の手によってやられたというのか!?」

 信じられなかった。

 あの欧州で勢力を伸ばしていた厄介なナチ共が動物の手によって、イギリスと戦えるだけの力すらなくなっただと!?

「ヒトラーは現実を受け入れられなくて自殺したそうだ」

「私も今そうなりそうだよ」

 あの演説をしていた高慢なヒトラーが自殺するなんて、やはり本当なのか。

「ドイツだけじゃない。停戦の打診はイタリアもだ。イタリアも怪物の手によって火の海になり、ムッソリーニが政治責任を取らされて、イタリア国王に政治の場から引きずりおろされた。今のイタリアの指導者は元陸軍元帥のピエトロ・バドリオだ」

「ファシストの豚どもは死んだというわけか」

 イーデンがゆっくりと首を縦にして頷く。

 それから指を立て、チャーチルに向かって諭す。

「これは並大抵の事態ではないぞ、チャーチル」

「ああ、わかっている。だが、これはイギリスに神が与えたもうた奇跡だ」

「奇跡か……。アレにそう呼ぶのは気が引けるな」

 目をそらすイーデン。

 チャーチルはすぐに気がつく。

「見たのか、怪物を」

「もうすぐ、君の元に映像がやってくる。ドイツの映画監督が撮った映像だ。諜報部が高値で買い取った」

 内閣戦時執務室に、映写機とスクリーンを抱えた諜報員たちがやってきた。

「噂をすればだ」

「今、ドイツとイタリアを襲った怪物を映像で出しますね」

 そう言うやいなや諜報員たちは映像を映し出す準備を始める。

「指示したのは君かね。イーデン」

「ああ。実際に見てもらった方が早いと思ってな。最初に言っておくがチャーチル。ドイツとイタリアを襲ったのは神の奇跡なんかじゃない。あれは”悪魔”だ」

 イーデンがそう言い終えると映像の準備が整ったのか、カメラが再生する。

 そこに飛び込んできたのはチャーチルの予想をはるかに超える代物であった。

「おお、神よ」

 チャーチルの口から思わず、そんな言葉が漏れ出た。

 翼を持たない黒い竜が大地を踏みしめて道路を破壊し、巨大な尾がドイツの家々を薙ぎ払っていく。

 吐き出した青い炎がドイツを、ベルリンを火の海へと変えていく。

 まるで地獄の姿をこの目で見せつけられているかのようだった。

 こんな生き物が実在するなんて。

 まさにイーデンが言ったように”悪魔”の姿だ。

 悪魔を倒さんとすべく、ドイツのメッサーシュミットが機銃掃射を仕掛けている。

 敵ながらいいぞ、やってしまえと思うチャーチル。

 あの悪魔相手にはさすがにドイツの肩を持ってしまう。

 だが、無情にも悪魔は火を吐き、焼き落してしまう。

 ドイツ空軍がなすすべもなく、敗れたところでドイツが誇るⅣ号戦車たちがやってくる。

 フランスを降伏させたあの厄介な戦車たち。

 奴らなら悪魔を倒すこともできるのではないか。

 一抹の期待をしながら、観ていたが結果は悪魔がその巨大な尾で軽く払うだけで戦車たちはひっくり返って動かなくなった。

 なんたる結末。

 誰もあの悪魔を止めることができないというのか。

 映像はそこで切れてしまった。

 だが、チャーチルにもたっぷりと悪魔の恐ろしさがわかった。

「あれがイギリスに来た場合、どうすればいい」

「諦めるしかないだろうな」

 イーデンは首を横に振る。

 メッサーシュミットがやられたのだ。イギリスの持つスピットファイアじゃ歯が立たない。

 ドイツのメッサーシュミットは20mm機関砲と7.92mm機関銃の組み合わせで、一発の威力が高いのに対し、スピットファイアは7.7mm機関銃を8門など、多数の銃で弾幕を張るスタイルだ。

 あの悪魔相手により通じるのはメッサーシュミット。

 だが、そのメッサーシュミットが通じないとなればスピットファイアでは倒せない。

「もしかしたら、人類はかつて相まみえたことのない悪魔と戦わなければならないのかもしれないな」

「ドイツやイタリアと共闘しなければならないかもしれん」

 チャーチルはあの悪魔をどうやって倒そうかと頭を悩ませると同時にひそかに微笑んだ。

 これはチャンスだ。

 条件をつけて、あの巨大となったドイツ第三帝国を解体するチャンスだと。

 ファシストの親玉どもがいなくなった今、ドイツをあるべき姿に戻せるかもしれない。

 チャーチルは権謀術数を頭の中でめぐらせた。

 彼はこの混乱を利用する気だった。




次も来週の日曜日になります。
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