魔法科高校の剣聖   作:1番道路

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剣也と雫が交わした魔法研究の約束。

そこへ達也とほのかも加わり、四人は魔法理論について意見を交わすことになる。

戦闘とは異なる場面で、それぞれの才能が発揮されていく。


第七話 入学編Ⅶ 魔法師たちの研究会

四月八日。

 

第一高校。

 

放課後の校内は、新入部員勧誘週間の喧騒が少しずつ収まり始めていた。

 

そんな中、校内の共有学習スペースに四人の生徒が集まっていた。

 

九條剣也。

 

北山雫。

 

光井ほのか。

 

そして司波達也。

 

「それじゃ、始めようか」

 

剣也が言った。

 

雫は頷く。

 

「うん」

 

ほのかは少し緊張した様子だった。

 

「何だか、本格的な研究会みたいだね」

 

「そんな大げさなものじゃないよ」

 

剣也は笑った。

 

「気になったことを話し合うだけだし」

 

達也が端末を操作する。

 

「まず、何から始める?」

 

「振動系魔法について考えてたんだ」

 

雫が答えた。

 

画面には、以前から彼女が検討していた演算モデルが表示されている。

 

複数対象への振動系魔法の同時作用。

 

その際に生じる演算負荷を、どのように軽減するか。

 

剣也は画面を見ながら説明した。

 

「基本的な考え方は、共通する処理をまとめることだな」

 

達也が頷く。

 

「なるほど。対象ごとに独立した処理を行うより、共通部分を利用する方が効率的というわけか」

 

「そう。ただし、対象ごとの条件が違いすぎると逆効果になる」

 

雫が補足した。

 

「だから、共通処理と個別処理を分けてみた」

 

「見せてもらっていいか?」

 

達也が尋ねる。

 

「うん」

 

雫は端末を差し出した。

 

達也はしばらく画面を眺めていた。

 

そして。

 

「……面白いな」

 

「どう?」

 

「基本構造は合理的だと思う。ただ、ここは処理の順番を変えた方がいいかもしれない」

 

達也が指摘した部分を、雫が確認する。

 

「……なるほど」

 

剣也も画面を覗き込んだ。

 

「ああ、確かに。司波の言うとおりだな」

 

「そうか?」

 

「うん。俺は別の部分を見てたから、そこは気づかなかった」

 

達也は僅かに目を細めた。

 

「お前でも見落とすことがあるんだな」

 

「そりゃあるだろ」

 

剣也は笑った。

 

「万能って言われても、何でも最初から知ってるわけじゃないし」

 

雫が頷いた。

 

「だから、話し合う意味がある」

 

「そういうこと」

 

◇◇◇

 

しばらくして。

 

話題は、CADの役割へ移っていた。

 

「剣也って、本当にCADなしで現代魔法を使えるんだよね?」

 

ほのかが尋ねた。

 

「ああ」

 

「どういう感覚なの?」

 

「どういう感覚か……」

 

剣也は少し考えた。

 

「難しいな」

 

「剣也でも説明しにくいんだ」

 

「できることと、説明できることは別だからな」

 

達也が口を開いた。

 

「CADを使わずに起動式を構築する場合、演算処理はどうなる?」

 

「俺の場合は、必要な情報を直接組み立てる感じだな」

 

「……直接?」

 

「ああ。もちろん、普通の魔法師が使う魔法式と原理的に無関係ってわけじゃない」

 

剣也は端末へ簡単な図を描いた。

 

「CADは起動式を供給して、魔法式の構築を補助するだろ」

 

「そうだな」

 

「俺はその補助がなくても、必要な構造を組み立てられる」

 

達也は考え込んだ。

 

「つまり、起動式の供給過程を外部装置に依存しないわけか」

 

「そんなところ」

 

「……興味深い」

 

達也の目が真剣になる。

 

雫も同じだった。

 

ほのかは二人を見比べる。

 

「……何だか、すごい話になってきたね」

 

剣也は笑った。

 

「ほのかも分からないところがあったら聞いてくれよ」

 

「うん!」

 

◇◇◇

 

研究会は、予想以上に盛り上がった。

 

振動系魔法。

 

CADの起動式。

 

魔法式の構築。

 

複数魔法の同時制御。

 

それぞれが得意とする分野について、意見を交わしていく。

 

特に剣也と達也の議論は、時折かなり高度な内容へ発展した。

 

「その場合、干渉力の配分はどうする?」

 

達也が尋ねる。

 

「対象ごとに変える。全部を同じ出力にする必要はないだろ」

 

「なるほど。だが、それでは演算負荷が増える」

 

「そこは共通処理を利用する」

 

「……そういうことか」

 

雫が静かに聞いていた。

 

そして、あるところで口を開いた。

 

「でも、それだと精度が落ちる可能性がある」

 

剣也が振り返る。

 

「どこ?」

 

雫は画面を指した。

 

「ここ」

 

剣也は数秒考えた。

 

「……ああ」

 

達也も頷いた。

 

「確かに」

 

雫は小さく微笑んだ。

 

「よかった」

 

「いや、助かったよ」

 

剣也は素直に言った。

 

「俺と司波、効率ばっかり考えてたな」

 

「そうだな」

 

達也も認めた。

 

ほのかが笑う。

 

「雫、すごい!」

 

「別に」

 

雫は首を振った。

 

「二人が話してたから気づいただけ」

 

「それが大事なんだよ」

 

剣也が言った。

 

「一人で考えてたら、気づかないこともあるからな」

 

雫は剣也を見た。

 

「……うん」

 

◇◇◇

 

夕方。

 

研究会は一区切りを迎えた。

 

「今日はここまでにするか」

 

剣也が言った。

 

達也は端末を閉じる。

 

「ああ。十分な収穫があった」

 

「司波がそう言うならよかった」

 

「お前の話も参考になった」

 

「俺もだよ」

 

二人は軽く笑った。

 

ほのかが伸びをする。

 

「はあ……頭使った!」

 

雫は端末を見つめていた。

 

「……楽しかった」

 

剣也が振り返る。

 

「雫?」

 

「また、やりたい」

 

「もちろん」

 

剣也は即答した。

 

「俺も楽しかったし」

 

雫は小さく頷いた。

 

「じゃあ、また」

 

「約束な」

 

「うん」

 

◇◇◇

 

帰り道。

 

剣也と雫は、少しだけ二人で歩いていた。

 

ほのかは別の用事で先に帰り、達也も風紀委員会の報告へ向かったためだ。

 

「剣也」

 

「ん?」

 

「今日、ありがとう」

 

「何が?」

 

「研究会」

 

「ああ」

 

剣也は笑った。

 

「俺も楽しかったよ」

 

雫は少し考えた。

 

「剣也って、すごい魔法師なのに」

 

「うん?」

 

「人の話をちゃんと聞くよね」

 

剣也は首を傾げた。

 

「普通じゃないか?」

 

「そうでもないと思う」

 

「そうかな」

 

「うん」

 

雫は静かに答えた。

 

「自分の考えが正しいって決めつける人もいるから」

 

「まあ、いるだろうな」

 

剣也は頷いた。

 

「でも、俺が知らないことなんて山ほどあるし」

 

「……うん」

 

「それに、雫の考え方は面白いよ」

 

雫が顔を上げた。

 

「私の?」

 

「ああ。細かいところまでよく見てるし、簡単に結論を出さないだろ」

 

「そうかな」

 

「そうだよ」

 

剣也は笑った。

 

「だから、一緒に研究してて楽しい」

 

雫はしばらく黙っていた。

 

そして。

 

「……私も」

 

小さく答えた。

 

「剣也と話すの、楽しい」

 

その言葉に、剣也は自然と笑みを浮かべた。

 

「そっか。よかった」

 

二人は再び歩き始めた。

 

春の夕暮れ。

 

まだ出会って一週間も経っていない二人。

 

それでも、互いにとって話しやすい相手になり始めていた。

 

その関係がどのように変化していくのか。

 

今はまだ、誰にも分からなかった。




第七話では、剣也・雫・達也・ほのかによる魔法研究を描きました。

剣也は万能型の天才ですが、他人の意見を尊重し、研究を通じて学ぶ姿勢も持っています。

雫との関係も、共通の興味を通じて少しずつ深まっていきます。
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