その目に映る未来は、ひとつではない 作:並行世界とかという概念最高
期末テストを目前に控えた放課後。
夕空の下、校舎裏のトレーニングエリアからは、激しい風切り音と肉体が地面を叩く重い音が響いていた。
「甘い。動作の起こりで足元がブレている。もう一本だ」
相澤消太の低い声が飛ぶ。
「……っ、す……っ!」
肩で息を荒げ、地面に膝をついていた心操人使が、荒い息を吐きながら立ち上がった。
その首元には、相澤と同じキャプチャウェポン(操縛布)が巻き付けられている。手首や腕は擦り傷だらけで、制服のシャツは汗でぐっしょりと濡れ広まっていた。
「心操、お疲れ様。これ、よかったら飲んで」
敷地の影から現れた透野が、自家製のスポーツドリンクが入ったボトルと、ラップに包まれた小さな塊を差し出した。
心操は荒い呼吸を整えながらボトルを受け取り、一気に喉へ流し込んだ。
「……ふぅッ! 生き返る……。このラップのやつ、何だ?」
「おからのパウンドケーキだよ。安く手に入るし、タンパク質と塩分を多めに入れて作ってみたんだ。疲労回復に良いと思って」
「……お前、本当に主婦みたいなことすんな……美味いけど」
パウンドケーキを口に放り込み、心操は疲れた体を壁にもたれかけさせた。
「……あいつら(A組)に『無個性』だって打ち明けたんだろ? 昨日、廊下で緑谷と飯田が魂抜けたみたいな顔で集まってたぞ」
「ああ、緑谷くんに聞かれたから本当のことを言っただけだよ。何でそんなに驚かれたのか、よく分からないけど」
「ハッ、当たり前だろ」
心操は短く鼻で笑った。
「ヒーロー科の連中からすりゃ、個性の力もなしにお前みたいな化け物に手も足も出なかったんだ。自分の存在理由を揺さぶられたようなもんだよ」
心操は手首の操縛布を固く握り締め、どこか晴れやかな目で透野を見据えた。
「だがな……俺にとっちゃ朗報だ。個性なしのお前があそこまでやれたんだ。俺が操縛布と体術を極めれば、ヒーロー科の連中に届かないはずがねえ」
「うん。心操なら絶対に行けるよ」
透野が柔らかく微笑むと、心操は恥ずかしそうに顔を背け、「明日からの筆記テスト、赤点取ったら補習で特訓が止まるから絶対満点取れよ」と悪態をついた。
「大丈夫だよ。僕の生活がかかっているからね」
*
翌日から始まった期末テスト。
透野にとって、筆記テストは単なる「学校の評価」ではない。
特待生としての学費免除、そして一人暮らしを維持するための生活補助金を死守するための「絶対防衛線」だった。
透野の頭脳には、教員たちの「出題の癖」が完璧にデータベース化されていた。
【英語:プレゼント・マイク】
マイクの英語テストは、教科書の丸暗記だけでは歯が立たない。彼が好むアメリカン・スラングやロックの歌詞、ヒーローの決め台詞から頻繁に出題される。
テスト用紙の最後には、マイク名物の【Extra Question(10点分特別問題)】が用意されていた。
『以下の洋楽の歌詞における、文脈上のダブル・インテンダー(掛詞)と主人公の隠された感情を英語で解説せよ』
透野は迷うことなくペンを走らせる。マイクがラジオ番組で語っていた音楽のルーツと、スラングの時代背景を完璧に網羅した、隙のない英文を書き上げた。
【古典:ミッドナイト】
ミッドナイトのテストは、文法以上に「登場人物の情念や心理の機微」に配点が高く置かれる。
特別問題は『源氏物語』の和歌に込められた、言葉の裏の嫉妬と情愛の考察。
透野は作者の境遇と当時の貴族社会の人間関係を冷徹なまでに分析し、完璧な解釈を提出した。
【数学:セメントス】
無駄な記述を嫌い、美しく洗練された論理構築を求めるセメントスのテスト。
大学教養レベルの立体構造論に関する特別問題に対し、透野は最小限の計算ステップで最も美しい解答を導き出した。
他の生徒たちが頭を抱え、時間を気にしながら答案を埋めていく中、透野は全ての特別問題まで解き明かし、残り時間を完璧な見直しに費やしていた。
*
数日後、職員室。
採点を終えた教員たちが、一枚の答案用紙を囲んでざわついていた。
「イエェェェア!? マジかよバディ!!」
プレゼント・マイクが頭を抱えて叫んだ。
「俺の出した10点分のExtra Question、スラングの裏のニュアンスまで完璧に拾ってやがる! ネイティブでもここまで綺麗な解説は書けねぇぞ! 100点満点中、110点あげたいくらいだぜ!!」
「フフフ……私の古典の特別問題もよ」
ミッドナイトが胸に手を当て、うっとりと溜め息を吐いた。
「15歳にして、この和歌に隠された深い執着と情念の解釈……! 完璧すぎてゾクゾクしちゃうわ! 満点以上の答案よ!」
セメントスもまた、深く頷きながら赤ペンを置いた。
「数学もです。無駄な計算過程が一切ない。まるで洗練された建築物のような素晴らしい論理構築だ。……これで無個性だというのだから、彼の頭脳の解像度は恐ろしいですね」
相澤消太は、同僚たちの興奮冷めやらぬ様子を呆れ顔で見つめ、手元の総合順位表に目を通した。
「……本人は『奨学金のため』と言ってましたよ。必死さが違います」
*
中央廊下に張り出された1学年全体の期末テスト総合順位表。
生徒たちが群がり、歓声と悲鳴が上がっていた。
「うわあああ! 赤点回避した!!」
「おい見ろよ! 総合1位……また普通科の奴だぞ!!」
張り出された紙の最頂点。
ヒーロー科の八百万百(492点)や爆豪勝己(488点)、緑谷出久(470点)といった並み居る天才・秀才たちを抑え、圧倒的なスコアが刻まれていた。
【総合1位:透野視希(普通科1年) 500点 / 500点(全教科・特別問題含め完全満点)】
「ま、満点……! 各教科の特別加点問題まで全部完答して満点かよ……!」
「体育祭でベスト4入って、プロの先生たちの超難問まで完封って……あの普通科、マジで何なんだよ……」
遠巻きに掲示板を見ていたA組の生徒たちも絶句していた。
緑谷はノートを抱えたまま、掲示板の「500点」という数字を呆然と仰ぎ見た。
「全教科満点……。個性がないのに、先生たちの出題傾向まで完璧に分析して答えてる……。透野くんは、一体どれだけの努力と合理性を重ねて生きてきたんだろう……」
当の透野は、人だかりの後ろを静かに通り過ぎ、職員室へと向かっていた。
無事に全教科満点を達成したことで、来期までの学費免除と生活補助の継続申請書を提出するためだ。
(よし、これで今期も何とか生活費を確保できた……)
透野にとっては、それこそが何よりも重要な「勝利」だった。
*
そして、テスト最終日。
校舎の奥、演習場の方角から――ドォォォォン!!!という地響きのような爆音と、凄まじい衝撃波が響き渡った。
「な、なんだ!? 地震か!?」
普通科の教室が揺れ、生徒たちが窓に駆け寄る。
遠くの演習場から、黒い煙と爆煙が空へと立ち上っていた。
ヒーロー科1年A組の実技試験――「プロヒーローである教員陣 vs 生徒」による過酷な演習テストが始まったのだ。オールマイトの規格外のパワー、相澤の個性抹消、プレゼント・マイクの爆音。絶叫と爆破音が遥か遠くの校舎まで届いてくる。
透野は窓の外の爆煙を静かに見上げ、お弁当の箸を止めた。
「……ヒーロー科は、大変だなあ」
他人事のようにポツリと呟き、再び静かにたくあんを口に運ぶ。
自分の身の丈に合った「静かな普通科の日常」を選んだことの正しさを、透野は改めて噛みしめていた。どれほど派手で華やかだろうと、あの命懸けの喧騒の中に飛び込むつもりは毛頭ない。
放課後。
書類の手続きを終えて昇降口へ向かうと、そこには実技試験を終え、ボロボロになったA組の生徒たちが力なく歩いていた。
緑谷はボロボロの体操服で肩を落とし、爆豪は不機嫌そのものの顔で地面を睨みつけている。
「……あ、透野くん」
緑谷が痛む体を抑えながら、力なく手を振った。
「緑谷くん、お疲れ様。……なんだか大変だったみたいだね」
「うん……オールマイトと戦って、本当に死ぬかと思ったよ……。あ、テスト総合1位おめでとう! マイク先生やミッドナイト先生の特別問題まで完璧だったって、みんな噂にしてたよ!」
ボロボロになりながらも、素直に自分を称えてくる緑谷。
透野は少しだけ申し訳なさそうに微笑み、首を振った。
「ありがとう。でも、僕は自分の生活がかかっているから頑張っているだけだよ。……みんなは、これから夏休みに林間合宿があるんでしょう?」
「うん! 強化合宿だよ。赤点組は補習つきになっちゃったけど……みんなで乗り越えて、もっと強くならなきゃ」
痛みに耐えながらも、その瞳にはヒーローとしての熱い志が宿っていた。
「そっか。……気をつけて行ってこいね。怪我をしないように」
「うん! ありがとう、透野くん!」
夕暮れの校門。
ヒーローとしての激動の夏――林間合宿へと向かっていくA組の生徒たち。
透野は彼らの背中を静かに見送り、自分は自分の穏やかな城――安アパートでの自活の日常へと足を向けた。期末テストを目前に控えた放課後。
夕空の下、校舎裏のトレーニングエリアからは、激しい風切り音と肉体が地面を叩く重い音が響いていた。
「甘い。動作の起こりで足元がブレている。もう一本だ」
相澤消太の低い声が飛ぶ。
「……っ、す……っ!」
肩で息を荒げ、地面に膝をついていた心操人使が、荒い息を吐きながら立ち上がった。
その首元には、相澤と同じキャプチャウェポン(操縛布)が巻き付けられている。手首や腕は擦り傷だらけで、制服のシャツは汗でぐっしょりと濡れ広まっていた。
「心操、お疲れ様。これ、よかったら飲んで」
敷地の影から現れた透野が、自家製のスポーツドリンクが入ったボトルと、ラップに包まれた小さな塊を差し出した。
心操は荒い呼吸を整えながらボトルを受け取り、一気に喉へ流し込んだ。
「……ふぅッ! 生き返る……。このラップのやつ、何だ?」
「おからのパウンドケーキだよ。安く手に入るし、タンパク質と塩分を多めに入れて作ってみたんだ。疲労回復に良いと思って」
「……お前、本当に主婦みたいなことすんな……美味いけど」
パウンドケーキを口に放り込み、心操は疲れた体を壁にもたれかけさせた。
「……あいつら(A組)に『無個性』だって打ち明けたんだろ? 昨日、廊下で緑谷と飯田が魂抜けたみたいな顔で集まってたぞ」
「ああ、緑谷くんに聞かれたから本当のことを言っただけだよ。何でそんなに驚かれたのか、よく分からないけど」
「ハッ、当たり前だろ」
心操は短く鼻で笑った。
「ヒーロー科の連中からすりゃ、個性の力もなしにお前みたいな化け物に手も足も出なかったんだ。自分の存在理由を揺さぶられたようなもんだよ」
心操は手首の操縛布を固く握り締め、どこか晴れやかな目で透野を見据えた。
「だがな……俺にとっちゃ朗報だ。個性なしのお前があそこまでやれたんだ。俺が操縛布と体術を極めれば、ヒーロー科の連中に届かないはずがねえ」
「うん。心操なら絶対に行けるよ」
透野が柔らかく微笑むと、心操は恥ずかしそうに顔を背け、「明日からの筆記テスト、赤点取ったら補習で特訓が止まるから絶対満点取れよ」と悪態をついた。
「大丈夫だよ。僕の生活がかかっているからね」
*
翌日から始まった期末テスト。
透野にとって、筆記テストは単なる「学校の評価」ではない。
特待生としての学費免除、そして一人暮らしを維持するための生活補助金を死守するための「絶対防衛線」だった。
透野の頭脳には、教員たちの「出題の癖」が完璧にデータベース化されていた。
【英語:プレゼント・マイク】
マイクの英語テストは、教科書の丸暗記だけでは歯が立たない。彼が好むアメリカン・スラングやロックの歌詞、ヒーローの決め台詞から頻繁に出題される。
テスト用紙の最後には、マイク名物の【Extra Question(10点分特別問題)】が用意されていた。
『以下の洋楽の歌詞における、文脈上のダブル・インテンダー(掛詞)と主人公の隠された感情を英語で解説せよ』
透野は迷うことなくペンを走らせる。マイクがラジオ番組で語っていた音楽のルーツと、スラングの時代背景を完璧に網羅した、隙のない英文を書き上げた。
【古典:ミッドナイト】
ミッドナイトのテストは、文法以上に「登場人物の情念や心理の機微」に配点が高く置かれる。
特別問題は『源氏物語』の和歌に込められた、言葉の裏の嫉妬と情愛の考察。
透野は作者の境遇と当時の貴族社会の人間関係を冷徹なまでに分析し、完璧な解釈を提出した。
【数学:セメントス】
無駄な記述を嫌い、美しく洗練された論理構築を求めるセメントスのテスト。
大学教養レベルの立体構造論に関する特別問題に対し、透野は最小限の計算ステップで最も美しい解答を導き出した。
他の生徒たちが頭を抱え、時間を気にしながら答案を埋めていく中、透野は全ての特別問題まで解き明かし、残り時間を完璧な見直しに費やしていた。
*
数日後、職員室。
採点を終えた教員たちが、一枚の答案用紙を囲んでざわついていた。
「イエェェェア!? マジかよバディ!!」
プレゼント・マイクが頭を抱えて叫んだ。
「俺の出した10点分のExtra Question、スラングの裏のニュアンスまで完璧に拾ってやがる! ネイティブでもここまで綺麗な解説は書けねぇぞ! 100点満点中、110点あげたいくらいだぜ!!」
「フフフ……私の古典の特別問題もよ」
ミッドナイトが胸に手を当て、うっとりと溜め息を吐いた。
「15歳にして、この和歌に隠された深い執着と情念の解釈……! 完璧すぎてゾクゾクしちゃうわ! 満点以上の答案よ!」
エクトプラズムもまた、トレンチコートの襟元から覗くトゲトゲしい仮面の奥の目を細め、静かに赤ペンを置いた。
「数学も見事だ。私が試すつもりで出した特別問題……計算の力押しではなく、式の対称性を突いて一瞬で解を導き出している。無駄な数式が一切ない、実に美しい証明だ。……これで無個性だというのだから、彼の頭脳の解像度は素晴らしいな」
相澤消太は、同僚たちの興奮冷めやらぬ様子を呆れ顔で見つめ、手元の総合順位表に目を通した。
「……本人は『奨学金のため』と言ってましたよ。必死さが違います」
*
中央廊下に張り出された1学年全体の期末テスト総合順位表。
生徒たちが群がり、歓声と悲鳴が上がっていた。
「うわあああ! 赤点回避した!!」
「おい見ろよ! 総合1位……また普通科の奴だぞ!!」
張り出された紙の最頂点。
ヒーロー科の八百万百(492点)や爆豪勝己(488点)、緑谷出久(470点)といった並み居る天才・秀才たちを抑え、圧倒的なスコアが刻まれていた。
【総合1位:透野視希(普通科1年) 500点 / 500点(全教科・特別問題含め完全満点)】
「ま、満点……! 各教科の特別加点問題まで全部完答して満点かよ……!」
「体育祭でベスト4入って、プロの先生たちの超難問まで完封って……あの普通科、マジで何なんだよ……」
遠巻きに掲示板を見ていたA組の生徒たちも絶句していた。
緑谷はノートを抱えたまま、掲示板の「500点」という数字を呆然と仰ぎ見た。
「全教科満点……。個性がないのに、先生たちの出題傾向まで完璧に分析して答えてる……。透野くんは、一体どれだけの努力と合理性を重ねて生きてきたんだろう……」
当の透野は、人だかりの後ろを静かに通り過ぎ、職員室へと向かっていた。
無事に全教科満点を達成したことで、来期までの学費免除と生活補助の継続申請書を提出するためだ。
(よし、これで今期も何とか生活費を確保できた……)
透野にとっては、それこそが何よりも重要な「勝利」だった。
*
そして、テスト最終日。
校舎の奥、演習場の方角から――ドォォォォン!!!という地響きのような爆音と、凄まじい衝撃波が響き渡った。
「な、なんだ!? 地震か!?」
普通科の教室が揺れ、生徒たちが窓に駆け寄る。
遠くの演習場から、黒い煙と爆煙が空へと立ち上っていた。
ヒーロー科1年A組の実技試験――「プロヒーローである教員陣 vs 生徒」による過酷な演習テストが始まったのだ。オールマイトの規格外のパワー、相澤の個性抹消、プレゼント・マイクの爆音。絶叫と爆破音が遥か遠くの校舎まで届いてくる。
透野は窓の外の爆煙を静かに見上げ、お弁当の箸を止めた。
「……ヒーロー科は、大変だなあ」
他人事のようにポツリと呟き、再び静かにたくあんを口に運ぶ。
自分の身の丈に合った「静かな普通科の日常」を選んだことの正しさを、透野は改めて噛みしめていた。どれほど派手で華やかだろうと、あの命懸けの喧騒の中に飛び込むつもりは毛頭ない。
放課後。
書類の手続きを終えて昇降口へ向かうと、そこには実技試験を終え、ボロボロになったA組の生徒たちが力なく歩いていた。
緑谷はボロボロの体操服で肩を落とし、爆豪は不機嫌そのものの顔で地面を睨みつけている。
「……あ、透野くん」
緑谷が痛む体を抑えながら、力なく手を振った。
「緑谷くん、お疲れ様。……なんだか大変だったみたいだね」
「うん……オールマイトと戦って、本当に死ぬかと思ったよ……。あ、テスト総合1位おめでとう! マイク先生やミッドナイト先生の特別問題まで完璧だったって、みんな噂にしてたよ!」
ボロボロになりながらも、素直に自分を称えてくる緑谷。
透野は少しだけ申し訳なさそうに微笑み、首を振った。
「ありがとう。でも、僕は自分の生活がかかっているから頑張っているだけだよ。……みんなは、これから夏休みに林間合宿があるんでしょう?」
「うん! 強化合宿だよ。赤点組は補習つきになっちゃったけど……みんなで乗り越えて、もっと強くならなきゃ」
痛みに耐えながらも、その瞳にはヒーローとしての熱い志が宿っていた。
「そっか。……気をつけて行ってこいね。怪我をしないように」
「うん! ありがとう、透野くん!」
夕暮れの校門。
ヒーローとしての激動の夏――林間合宿へと向かっていくA組の生徒たち。
透野は彼らの背中を静かに見送り、自分は自分の穏やかな城――安アパートでの自活の日常へと足を向けた。