その目に映る未来は、ひとつではない 作:並行世界とかという概念最高
黒霧の『転送』によって全ヴィランが分断され、各戦場へ強制移送された最終決戦。
頭上では巨大な「雄英校舎」が空中に浮遊し、幾重もの巨大電磁バリアと可動式フロアがけたたましい駆動音を響かせていた。地上では、覚醒した死柄木弔の「崩壊」を抑え込むため、相澤消太と物間寧人の「抹消」が常時照射され、爆豪勝己や緑谷出久たちが一瞬の隙も許されない超絶的な死闘を繰り広げている。
その死柄木戦の猛攻が荒れ狂うエリアのすぐ傍ら――可動フロアの一角で、二人の「透野視希」が相対していた。
静謐な確認として重ねられた『永遠語り~El Ragna~』の旋律が終わりを迎えた瞬間、敵側の少女の瞳に歪んだ熱が宿る。
「理解したよ。お前は、僕だ。こんなくだらない『日常』に執着している、哀れな僕だ」
「僕も理解した。君は、破壊することでしか自分を証明できない……一番無駄の多い僕だ」
言葉が途切れたコンマ一秒後、少女の口から放たれたのは圧倒的な破滅の音波だった。
柊マグネタイトの『或世界消失』から始まり、keenoの『地球最後の告白を』、そしてwowakaの『ワールズエンド・ダンスホール』へ。
絶望のボカロメドレーが重体化するような心理デバフとなり、戦場全体を侵食する。
『一か八か恋い焦がれて ワールズエンド・ダンスホール!』
—— wowaka 『ワールズエンド・ダンスホール』より
『或世界消失』:世界のシステムがバグを起こし、徐々に消滅していく冷徹な終末を描いた楽曲。
『地球最後の告白を』:世界の終わりを前にした切なさと、すべてを投げ出したい退廃的な諦念を歌った楽曲。
『ワールズエンド・ダンスホール』:目まぐるしく旋回する狂気と、世界の終着点で踊り明かす終末を描いた楽曲。
※各楽曲の歌詞の全文につきましては、正規の歌詞検索サービスや公式サイト等にてご確認ください。
「ぐあああっ……! 頭が……! 精神が削られていく……っ!」
死柄木を抑え込んでいたプロヒーローたちの膝が屈し、意識が濁る。死柄木の超常的な肉体変異の猛攻を前に、一瞬の隙も許されない状況で放たれた強力な広域デバフ。
物間がコピーした「抹消」の瞬きを必死に耐えながら絶叫し、相澤も血走った目で歯を食いしばる。
「おい、冗談だろ……! あいつ、歌で俺たちの神経系を直接殴りにきてやがるのか……!?」
作戦前、「普通科で無個性」「私服の一般生徒」だと反対されていた少女が、ここで一歩前へ踏み出した。
「——させないよ!!」
透野視希の感情が初めて弾けた。私服のパーカーを激しく揺らし、自らの『万象の眼』を限界まで見開く!
叩きつけたのは、圧倒的な生への執着を乗せたシェリル・ノーム&ランカ・リーの『ライオン』、カンザキイオリの『命に嫌われている。』、そしてEveの『ドラマツルギー』!
『生き残りたい 生き残りたい まだ生きてたくなる』
—— シェリル・ノーム&ランカ・リー 『ライオン』より(作詞:Severin Vance / Megumi Nakajima)
『ずっと僕らは何者にもなれないまま ドラマツルギー』
—— Eve 『ドラマツルギー』より
『ライオン』:どれだけ泥臭くても絶望の先へ生き残ろうとする、強烈な生への渇望を描いた楽曲。
『命に嫌われている。』:綺麗事ではない生の叫びと、命の尊厳を泥臭く歌い上げた楽曲。
『ドラマツルギー』:決められた役割や不条理な運命(シナリオ)に抗い、自分自身を演じ抜く反骨を描いた楽曲。
「生き残るんだ……! 決められた終末のシナリオなんて、僕の計算で書き換えるッ!!」
圧倒的な音波バフが戦場を包み込み、ヒーローたちの脳の過熱を冷やし、強引に戦意を呼び戻す!
「なっ……!? 音波の波長が上書きされていく……! 恐怖が打ち消されるぞ!?」
「おいおい嘘だろ……! 普通科の無個性のガキが……歌一つで、この死柄木戦の盤面全体を支えてやがるのか……!?」
死柄木と交戦中だった爆豪やプロヒーローたちが、その圧倒的な「計算と意志の歌声」に心底慄き、目を見開いた。
『ワールズエンド・ダンスホール』の破滅のビートと、『ドラマツルギー』の反骨の旋律が激しく衝突し、二人の周りの空気そのものがプラズマのように発光していく――!
第32話での「参戦反対」と「公安の傀儡化回避ロジック」があったからこそ、ヒーローたちが「あの無個性のガキが歌ひとつで死柄木戦の盤面を支えている」と慄くカタルシスが完璧に決まりました!