術式:ドラゴンクエスト 作:9リメイク希望
2018年 2月 █日
今日から冒険の書(という名の日記)に記録を残すことにする。毎日書くことは難しいだろうが可能な限り頑張りたい。
まずは現在の状況を整理しよう。
俺の名前は
しかし今は違う。昨日、階段から落ちて頭を打ったショックで前世の記憶を思い出した。いわゆる転生者と呼ばれる存在である。
もちろん前世の記憶はバッチリ覚えている。普通の家庭で生まれ、普通の学校に通い、普通の会社に勤め、普通のトラックに轢かれて死んだ普通の日本人Aだ。
死後、俺は神様を名乗る存在に出会った。そこで『お前を転生させてやる。特典としてドラゴンクエストの呪文と特技を使えるようになる才能を授けよう』と言われて今に至る。
肝心の今世は現代日本だ。ナーロッパな異世界じゃなくて本当に良かった。ゲームやスマホが存在しない生活なんてありえないからな。
とはいえ前世と違って普通の現代日本ではない。裏路地や廃墟などの陰気な場所には化け物が生息している。
それは普通の人間には見ることが出来ず、ドラクエのモンスターと違って非常にキモい見た目をしている。まあドラクエにもカルマッゾとかマルチアイとかがいるわけだが。
おそらく俺以外にも特殊能力が使える秘密結社がいるのだろう。なぜなら化け物は人間を襲ったりするからだ。何らかの対抗策が無かったら今頃人類は滅びている。
当面の目標は化け物を討伐しているであろう秘密結社に所属することだ。強力な化け物に遭遇した時に自分の身くらいは守れるようにならないとマズい。
一応、剣道部に所属しているので武の心得はあるし身体も鍛えてある。しかし化け物との戦い方は学んでいない。ならば実戦経験のある人間から戦い方を基礎から教わるべきだろう。
というわけで明日から廃墟などの陰気な場所を巡って化け物たちと戦うつもりだ
現状、秘密結社に接触する手段すら分からない。それなら向こうから見つけてもらうのが手っ取り早い。
あちこちで化け物を倒していれば、そのうち秘密結社の人間が調査に来るはずだ。そこで事情を説明すれば仲間に入れてもらえるかもしれない。
もちろん危ない目に遭ったり、秘密結社が碌でもない連中の可能性もある。だとしても方針を変えるつもりはない。
我ながら随分と行き当たりばったりな計画だとは思う。しかし何もせずに待っているよりかはマシだろう。
◇ ◇ ◇
時刻は草も眠る丑三つ時。
現在地は近所にある廃墟だ。噂によると医療事故が起きまくって閉鎖された病院らしい。いかにも曰く付きといった雰囲気があり心霊スポットとしても有名なのだとか。
そのせいか化け物どもがウジャウジャと湧いている。
どうして秘密結社の連中は、ここを放置しているのだろうか。さっさと建物ごと解体するなりすればいいものを。
……そもそも本当に秘密結社は存在しているのだろうか?
いや、今さらそんなことを考えても仕方がない。ここまで来たのだから目の前の化け物を片付けるとしよう。
「いくぞッ!」
そう言うと掌の上に赤々と燃える火球が出現した。俺は腕を前方へ突き出す。すると火球は勢いよく飛び出し遠くで蠢いていた化け物に直撃した。
「ぐびょっ!?」
奇妙な悲鳴を上げた化け物は瞬く間に炎に包まれる。やがて黒い煙のようなものを立ち上らせながら跡形もなく消えた。
「これはメラゾーマではない。メラだ」
前世の記憶を取り戻してから1か月が経った。俺は地道にレベルを上げてメラやホイミなどの簡単な呪文を習得することに成功した。
神様から授かったのはドラクエの呪文や特技を使えるようになる才能だ。最初から全ての呪文を自由に使えるわけではない。習得するには、それ相応の経験を積む必要がある。
つまりゲームでいうところのレベル上げが必要なのだ。
「おい、オマエ。今、呪霊を祓ったよな」
「うおっ!?」
突然、背後から声をかけられた。慌てて振り返ると、そこには1人の女性が立っていた。
黒い制服姿に黒髪ポニーテール。顔にはメガネをかけている美人さんだ。年齢は俺と同じか少し上くらいだろうか。
俺は警戒しながら女性の立ち振る舞いを観察する。
武の心得があるからこそ分かる。常人とは明らかに重心の置き方が違う。間違いない。彼女は相当な手練れだ。十中八九、秘密結社の構成員だな。
「そっちこそ何者だ?」
「……私は呪術高専のモンだ」
じゅじゅつこうせん?
今、彼女は確かにそう言った。聞き間違いじゃないはずだ
いや、待て。落ち着け。冷静になれ、俺。
呪術高専って呪術廻戦に登場する組織だよな。
つまり俺は呪術廻戦の世界に転生したというわけか。
「俺の名前は勇崎竜斗。近くの中学に通ってる学生だ」
そう言って懐にしまってあった学生証を取り出して彼女に見せた。いざという時に身分を証明できるように学生証は肌身離さず持っている。
「で、どうしてここにいるんだ?」
「最近になって異能に目覚めたから化け物を狩っているんだ」
流石に『神様からドラクエの呪文と特技を使える才能を貰いました』なんて説明するわけにもいかない。そもそも信じてくれないだろうし。
「……後天的に術師になったのか」
ファンパレの竜胆サキは頭部を強打されたせいで呪霊を認識できるようになった。俺も階段から落ちて頭を強打して呪霊が見えるようになった。
脳と呪力の関係はブラックボックスなので珍しくない事例なのだろう。まあ転生者という存在は唯一無二だと思うが。
「おーい、誰と話してんだ真希?」
そんな声が響くと彼女の背後からパンダが現れた。
「……着ぐるみ?」
うん。我ながら実に月並みな反応だと思う。しかし何の反応も示さない方が不自然だろう。
突如として喋るパンダが現れたのだ。これを見て平然としていられる人間がいたら、そいつは相当な大物か頭のネジが何本か外れている気狂いに違いない。
「あー、説明が難しいが私の仲間だ」
「よく分からんが、俺の名前はパンダだ」
真希にパンダか。思いっきり原作キャラだな。
「とりあえず私らと一緒に来てもらうぞ」
「……俺に何をする気だ?」
「ただの事情聴取だ。言っておくが拒否権はねぇぞ」
「普通の事情聴取は任意だろ」
「文句あんのか?」
「いいえ」
怖い。
「ま、その前に私らは呪霊を倒す必要があるがな」
禪院真希は薙刀を構えて廃病院の奥へ視線を向けた。
「オマエは入口に停めてある車で待ってろ。そこに補助監督っつうスーツを着た人間がいるから事情を話せ」
「はい」
「妙な真似はするなよ。後は勝手に中へ入ってくるな」
そう言い残すと禪院真希はパンダを連れて廃病院の奥へと歩き出した。
正直、呪術師が実際に戦うところを見てみたい気持ちはある。だが「来るな」と釘を刺された以上は大人しく従っておこう。ここで逆らったら印象が悪くなりそうだしな。
「……とりあえず第一関門は突破だな」
化け物を討伐する秘密結社こと、呪術高専。その関係者に接触するという当初の目的は無事に達成できた。後は事情聴取を受けて上手いこと呪術師の仲間入りを果たすだけだ。
そして呪術師として経験を積んで強くなってやる。
ここまで読んでくれてありがとうございます。