ようこそ死後の世界へ 作:和崎
そういえば、この作品が日間ランキングに入っていた時期があったので、驚きました。
図書室で本を読んでいると、作戦が決まったと伝えられる。だが、今回は水と食料を持ってくるように言われていた。水は水道から出るもので良いとして、食料は……この間、教えてもらったナスを持っていくか。
折角だから、少し多めに持っていこう。どのくらい必要なのかは分からないからな。そんなことをしていたため、集合時間には少し遅れる形となったが、他にも遅れて来た人はいたので、オレだけが目立つことはなかった。
「今回は龍園君からの提案でね。私達で降下作戦を行うわ」
「降下作戦……」
「あれを俺達がやるのか」
その場にいた人達がざわつく。降下作戦というと、高いところからパラシュートで降りていくようなことを想像してしまうが、そんなことはないはずだ。
「作戦内容は平田君達が普段やっている地下探索を私達がやるということよ。ただし、ただの地下探索じゃないわ。その真の目的は一之瀬対策よ」
「地下に潜ることが何で一之瀬対策になるんだ?」
「私達で以前、議論した時に彼女に生き埋めが有効だって話はしたわよね? だから、生き埋めにするためだけに地下を利用しようってことよ」
「だがよ、地下は利用価値があるって話じゃなかったか? そんなところを崩落させて良いのかよ」
「構わないわ。今回、利用するのは探索が終わって何の利用価値もないと判明したところだから」
つまり、地下は複数あるということだ。そうだとしたら、未だに平田達が探索している理由にも納得できる。
「それで、どこの地下に行くんだ?」
「洞窟の地下よ」
「あ、あの洞窟は利用する人もいるんだよ!? それに地下があるなんて聞いたことがない」
「安心して。佐倉さんが考えている洞窟とは別のところだから」
洞窟はあそこ以外にもあったのか。本当にこの森は広いんだな。一体、誰が何の目的で洞窟から地下に向けて掘ったのだろうか。
「それと、地下にはトラップがあるから注意してちょうだい。行くことは伝えているから発動しないとは思うけど」
行くことは伝えているということはあの地下に誰かがいるのだろう。そして、その誰かこそが洞窟から地下に向けて掘った人物のはずだ。謎解きみたいでワクワクしながら、オレは堀北について行った。
◇
見知らぬ洞窟から地下に入ったオレ達は目の前に誰かいるということを感じ取る。堀北が警戒するように伝えると、その人物は慌てて前に出て来た。
「あぁ、ごめんね。堀北さんがこの道、分かるのか心配で先回りしてたんだ」
「平田君、貴方だったのね。心配なのは分かるけど、先回りされちゃったら敵かと疑っちゃうじゃない」
「それも、ごめんね。お詫び……ニッ!?」
目の前にいた人物である平田は突如、横から出て来たハンマーによって叩きつけられる。壁に思いっきり、叩きつけられた衝撃で平田の息の根は絶えていた。
「総員、警戒態勢!」
堀北のその言葉にオレ達は武器を構え、周囲を警戒する。連絡した上でトラップが発動していたということは何か予定外のことがあったということだ。
「おい堀北、連絡は入れてたんだろ!?」
「入れたわよ! そして、トラップを仕掛けないでおくとも言ってたわ! だから、トラップが発動しているのは既に敵……生徒会の誰かに侵入されているのよ!」
「とりあえず、ここで止まっていてもまた何か別のトラップの巻き添えになるだけだ。急ごうぜ」
須藤の言葉通り、ここで止まっていても仕方ない。堀北は地図を見ながら、進むことを開始した。
そして少し進んだ頃、須藤が何かに気付いたようで、大声で何かが来ることを言う。その須藤の言葉は正しく、巨大な鉄球が転がり込んできた。
「走れ!」
その言葉に引き戻されて、オレ達は潰されないように走り出す。凄いスピードで避難場所に到着した須藤はそこに入るように促す。
オレはギリギリで避難場所に入ると、誰かが轢かれたのか、悲鳴が聞こえてきた。この声は山内の声だ。
「進みましょう」
山内はいずれ元に戻る。あいつの心配をするよりもまずはここを抜けよう。そう考えることにして、洞窟を潜っていく。
しばらく進むと、宝箱のようなものを見つけた。おそらく、何かしらの罠なのだろうが、これに引っかかる奴は流石にいないだろう。
「ラッキー、宝箱じゃん! 地下ダンジョンみたいなところには必ずこういうものがあるもんだよな」
訂正、池が引っかかった。堀北は池に無視して先に急ぐように告げるが、開けたら追いつくと言って聞かないので、俺達は先に進んだ。
進んでいる途中で爆発音と悲鳴が聞こえたが、おそらく気のせいだろう。そうして、しばらく進むと、天井が下がってきた。
万事休すかと思われたその時、一人の男が天井を押さえる。この中で一番行動力のあるであろう龍園だ。
「誰も動かねぇから、俺がかっこいいところをもらっていくぜ。今のうちに行きな」
「じゃあ、お先に」
「ありがとう、龍園君」
オレ達は龍園に目も向けず、脱出。龍園を除いたメンバー全員が抜け終わったところで天井が完全に落ち、龍園は潰される。
「くっ、龍園君まで犠牲に……」
「したんだよ、お前らが」
そう堀北にツッコんでいる須藤も冷静であることから、人を囮にして逃げることはよくあることだと分かる。
これで残ったメンバーはオレに堀北、櫛田に須藤、佐倉の五人となった。後、どのくらい罠があるのか分からない以上、無用な犠牲は避けなければ。
◇
そう意気込んでいるだけで犠牲を減らせるはずもなく、落とし穴などの古典的な罠に引っかかってしまったことで、メンバーはオレと堀北の二人のみになっていた。
「リーダー失格ね。こんなに多くの犠牲者を出してしまうなんて」
「堀北、気負いすぎだ。ここらで一旦、休もう」
「そうさせてもらおうかしら。ちょうど、食料も持ってきていたことだしね」
オレ達はそれぞれ持ってきた食料を口に入れる。念のために多く持ってきたが、そんなに腹には入らない。動きやすいように少しだけ食べることにしよう。
「そういえば、私の過去は話してなかったわね」
「今、するような話じゃないだろ」
「新しく入ってきた人には聞かせるようにしているの。私よりも最悪な過去なんて、そうそうないから」
そうして、堀北は自らの過去を話し始めた。このタイミングで話すのは誰かに話を聞いてもらって、スッキリしたいというのもあるのだろう。何故なら、堀北よりも後に入ってきたのはオレ以外にはいないのだから。
「私はね、とある実験施設で育ったの。そこで色々なことをやらされたわ。だから、家族の顔は分からないの。ただ、何かの実験中に誰かの目の前で死んだことだけは覚えているわ」
実験の内容とやらは話す気はなさそうだが、碌でもない実験なんだろうということは分かる。でなければ、この世界には来ないはずだからな。
「ごめんなさい、実験の内容までは話したくなくて。ただ、一つだけ言えることがあるとすれば、私の心残りは外で自由気ままな生活を送りたかったってことね」
「本当にそうなのか?」
「え?」
「短い話だったが、オレにも分かるぞ。お前は最期に目の前にいた誰かに何かを言いたかったんじゃないか? じゃなきゃ、自分の最期のことを心残りのように覚えているはずがない」
「私の最期が心残り?」
堀北は自由気ままな生活はとっくのとうにしている。やりたいことなど、数十年間でやり尽くしたはずだ。だが、堀北は過去を振り切れていない。ということは何か別のことが心残りだということになる。そう伝えると、堀北は目を見開く。
「私が自分の過去を振り切れていないことがよく分かったわね……いえ、貴方にバレるのなら、他の人も気づいていたのかもしれないわね」
「そうか? あいつらがお前に気を使うとは思えないんだが」
「つまり、馬鹿って言いたいの?」
「いや、そこまでは言ってないだろ」
「冗談よ。一部を除いてDクラスが馬鹿なことは分かりきっていることだもの。行きましょう、誰が来ているのか確かめないと」
堀北とオレは再び、移動を開始した。他の罠は設置されておらず、スムーズに移動することができた。
そして、最奥までたどり着いた時、ある男がソファーで寝転がっていた。自由人の高円寺である。
「ようこそ、私のプライベートルームへ。君達二人だけでも無事にたどり着いたことを褒めておこうじゃないか」
「それより、生徒会の誰かが来ているのね?」
「話が早くて、助かる。庶務ガールさ。監視カメラで確認していたから、間違いない。もうすぐ、そこまで来るはずさ」
庶務ということは一之瀬か。一之瀬の対策はまだできていないが、一之瀬と戦うことなんてできるのだろうか。
「安心したまえ、綾小路ボーイ。今回の作戦は全て聞き及んでいる。だから、事前に準備をしておいたのさ。私の命令通りに動いてくれれば、あのガールを生き埋めにできる」
「堀北に命令?」
「彼女の下につくのはテスト時だけ。それ以外は自由の身さ。というわけで、命令通りに動いてもらおうか」
「構わないわ」
堀北が構わないというのなら、オレがこれ以上言うこともない。オレ達は高円寺の作戦に耳を傾ける。一之瀬と戦う役はオレと堀北が、生き埋めのための準備は高円寺がするらしい。
戦うと言っても指定の位置まで引き付けてほしいとのことだ。落とし穴でも用意しているのだろうか。オレ達は準備を済ませ、一之瀬が来るのを待つことにした。
今回は堀北が生徒会長の顔を知らない理由を説明するための回でした。次回は一之瀬との戦いになると思います。