ブルーオーシャンを求めて 作:新米店長
「娘を雇って欲しいと言われたのだ。なんとかならないか」
カフェをするのに綺麗どころの女の子が欲しい。女の子の安全も考えて住み込みがいいというと、師匠の友人の娘を3人捩じ込まれた。師匠顔広すぎだろう。でもなぁ。困るよ、自立した女性の世界にいたんだから、何かアドバイス貰えないか、なんて。
「あのっ よろしくお願いしますわ!」
「女の子なのにすごいって聞いてる、あたしもそうなりたい!」
「ダンジョンに連れて行ってください!」
うむうむ。
まあええか。
私は女の子達を店舗二階部分の部屋に連れて行く。
「それじゃあ、皆にはこちらの服を着てもらいます」
「ドレス!?」
「裾みじかっ!! お尻が出ちゃうよ!?」
「かかと高すぎですっ」
「その前に、まず身だしなみだね。大丈夫、準備はしてる! 出勤したら、まずお風呂入って、ムダ毛処理して、スキンケアして、化粧して、着飾って、ネイルして、これで1セットね! 張り切って若い肌見せてこ!」
お風呂に入ってもらい、ドライヤーで髪を乾かし、髪を梳かして散髪をする。
コスプレを勉強する過程で、化粧や髪を切るのも多少は勉強した。何より、今の時代、動画でなんでも学べる。ムダ毛処理もしっかりしてもらう。
スキンケア、化粧もして、大きな鏡に全身を映す。
「凄い……可愛いですわ……」
「これが……あたし……」
「別人だから恥ずかしくない……別人だから恥ずかしくない……」
興が乗ってきた。
「料理の出し方を教えるわ。うちはメニューは一つだけ。魔法使いの娘さんなんだから、当然お湯は出せるよね? 」
「ええ、出来ますわ」
「な、なんとか、できる。できるはず」
「やるわ!」
「まず、注文を受けたら銀貨一枚をもらってベルトポーチに入れます。代金はこっち、チップはこっちね。チップは好きにしていいよ」
私は可愛い紙コップを用意した。スープの袋を破き、中の粉を入れる。
「お湯を八分目のところまで出して」
一番自信のありそうなお嬢様風の子にお願いする。
うん、お湯が入ったな。よし。
「出来なかったらお湯を普通に沸かして入れてもいいけど、出来るだけ魔法を使ってね」
そうして、プラスチックのマドラーでかき混ぜる。お尻ふりふり。
「美味しくなーれ♡ 美味しくなーれ♡」
そして、お菓子の袋を開けて、可愛い紙皿に入れる。
「美味しくなーれ♡ ビーム!」
あざとさを意識して、お菓子に魔法を掛ける動作。
「はい、召し上がれ♡」
「以上の動作をしてもらいます! 一回銀貨1枚! 食べ終わったコップとお皿はここのゴミ箱に捨ててね。それで、壁に貼っているランキング集計表の自分の名前の所にこう、線を入れます」
「銀貨1枚!?」
「いえ! 作り方はアホほど簡単ですけど、美味しそうですわ……!?」
「料理の出し方は毎月変えます。今回は普通の初心者向け」
「普通!? あんなぶりっ子が普通!?」
「えっちなお店なんですか!?」
「あっ アクセサリー配るので、お客様には触らせないように。うちはそういう店ではないので。イエス可愛い! ノータッチ! いいね?」
私はアクセサリーを配る。
「魔法使いの娘なんだから、そのうち自分で出来るようになってね。働く時間は11時から17時まで。17時からは夕飯当番が食事を作って、19時に皆でご飯。月曜日が買い物と開店準備、火曜日がお店、水曜日がお休み、木曜日は商品制作、金曜日は商品開発、土曜日はスキルアップ研修、日曜日が休み、一月に1週間がダンジョン週間で月曜準備、火曜から金曜までダンジョンに入って土日が休み」
「お店の時間短すぎませんか?」
「この店では私がルールよ! それにあなた達は元々スキルアップが目的でしょ。あっ 対外的には営業日以外は一生懸命商品作ってる感じで」
その言葉に、女の子達はぐっと黙った。
「その代わり、一日で1週間分稼げばいいよ。まあ、これでやってみましょう。お給料は月毎ね。食事は一日3食賄いだし、化粧品と制服とか用意するし、休日はあるし、自分磨きの時間別に取るし、こんな条件のいいところ他にないよ」
「それはそうですわ」
「スキルアップ研修って何するんですか?」
「お湯を魔法でスムーズに入れる練習とか、商品を作る為の勉強とかしてもらう。あと、月一で自分磨きの一環で劇場に行きます。そうそう、休日だけど、寝て過ごすか自分のスキルアップに使うかはあなた達の自由だよ」
「わかりました」
「確かに、普通だったら仕事終わってから自分で習得しろ案件ですね」
お店をやっている日がわかりやすいよう、店舗には開店カレンダーを用意しておく。
「じゃあ、このお店の商品について知ってもらうね。基本、商品の会計は私がするけど、自分の店で何売ってるかぐらいは知っておかないとね。そのあとあざとい動作の練習だよ。楽しんで男の人を手玉に取る感じで! お金を払えば、もちろん女の人も! このお店は、萌と楽しいを売りにするんだから!」
「はいですわ!」
「はい!」
「はいです!」
私はまず、カフェを指差した。
「ここはひと月ごとに内装やコンセプトや商品を変えるの。毎月お客様に来ていただく。それが目標」
「なるほど毎月……」
そしてコスプレ用品コーナー。
「これは可愛いを応援する服で、全部ありもので売ってます。人前で着れなくていいの。自分さえ良ければいいの」
「人前で着れなくてもいいの……? じゃあいつ着るの?」
「一人で着て鏡を見ればそれでよし」
「鏡がないのでは?」
「鏡売るか……。わかった。鏡と、ついでに布も売っちゃおうかな」
「このブラジャーっていうんですか? すっごくえっちです!」
「ふふふ……ここを見よ!」
私は本棚スペースへ移動する。
「ここは子供の読み物、この布をめくった先が大人の読み物を置いてあるわ。論文はこっち」
「論文が子供の読み物……?」
そして、3人は布をペラりと捲って中に入り、撤退してきた。
「破廉恥ですわ!!!」
「えっち!」
「でもいくらですか?」
「小説と漫画は一律で金貨一枚。論文は金貨1枚から金貨30枚。本当はもっと安くしたいけど、あまり安くすると価格破壊になって産業育たないからね。基本、うちでは物珍しいものは売るけど高く売るよ。うちの店は、競争相手のない場所での殿様商売しかしない」
「競争相手のない場所での殿様商売……?」
「誰も売ってないけど皆が欲しがるものを、高値で売るって事」
「万引きとか大丈夫でしょうか」
「全ての商品に魔法が掛かってて、私が解除しないと持ち出せない。スープとクッキー以外はね」
「なるほど、理解しました」
「それと覚えておいて。一応絵を描く画材や白紙の本やペンは置いているけど、うちは師匠ルートで納品されたものを除いて買取はしない」
「それはどうして?」
「競争者が出るなんてたまったもんじゃないからよ!!! この店では基本、私の作ったものか私がいいと思ったモノだけを売る!」
「素敵ですわ! 私もそうありたいですわ!!」
そんなわけで、3人の引越し作業や準備を終えて、商品の補充をして。
火曜日に、開店することになったのだった!