ブルーオーシャンを求めて 作:新米店長
連続投稿2/3
翌日。
看板を設置する。
本と、服と、ペンの看板だ。
お店の名前は「夢の巣」にした。
そしてドアにはオープンとクローズを示す札。
師匠に言われて、郵便受けも用意した。
ショッピングバックはオリジナルデザインの紙袋。大中小と用意した。
劇場が近い上にハリボテのドアという目立つ店なので、好奇心旺盛な人が恐る恐る入ってくる頻度が高い。
まず店に入って驚き、目の前の漫画に驚き、服に驚き、そっと懐に入れて出られない事に驚く。万引き対策はしてるっての。
「お支払いはこちらでーす。会計してない商品を持ったまま外へは出られませんよ」
すると商品を戻し、すごすごと出ていく。
まあね。金額高いしね。ナーロッパにモラルはそんなに期待してないしね。
本以外は金額を高く設定している。本も割と高めだ。
安く質の良いものを売り捌くのは簡単だ。
でも質の良いものならまだしも、価格破壊をしてしまえばこの世界の技術者が追いつく努力すらできなくなってしまう。それは侵略と変わらない。なので金額は高額だ。
私は敵対する為に商売をしているのではないのだから。
転売ヤー対策にもなるしね。私は趣味を同じくする仲間内で楽しみたいのであって、転売ヤーと仲良くしたいのではない。転売ヤーは感想をくれないのだから。
基幹産業を破壊してはならない。
誰も競争相手のいない場所・分野で、殿様商売を楽しむ。
まさしくブルーオーシャン。それが私の商売だ。
買う人がいないと困るから本は安く売りたいけど、識字率の問題もあり、そもそも一般人は本を読まない。立ち読みコーナーもあるし、本も高い金額で売った方がいいのだ。
その代わり、近所の複数の教会に筆記用具と師匠と一緒に考えた教科書と食材を大量に寄付した。本屋さんをやるので、識字率の普及を応援したいと告げて。
どの教会の司祭様もとても喜んでくれた。
一年に一回、売り上げの一部を寄付していきたいと思う。
聖書ってほど大仰なものでもないけど、教会の本も一年に一回作る事を約束した。
原稿は各教会で順番に用意してもらう感じで。
お店の商品は、現金か魔石のどちらかで支払いが出来る。魔石は向こうで魔法を使うのにとても有用なので、魔石でも買えるようにしているのだ。
魔石はこちらではありふれていて、魔法使いなら自分で作る事もできる。
まさしくwin-winの取引だろう。
税金については、相談の結果面倒臭いと思われたらしく、どんぶり勘定で多めに商業ギルドに一括納付で良いらしい。後は適当にどうにかしてくれると。助かる。
翌日には、お客がちらほらと商品を見に来た。
女性陣はコスプレ服を囲んでいるし、男性陣は満遍なくいろんなものを見ている。
ぼんやり見ていると、なんと商品の絵の具とスケッチブックを勝手に使い出した。
「ちょっと!」
画材はショーケースの中に入れるしかないな。流石ナーロッパクオリティ。
お金を徴収して、画材はとりあえず全部撤収。
全く油断も隙もないな。
「オーダーメイドしたいのだけれど」
「それは高級店に行ってください。うちは現品かぎりです。その代わり、うちの服をお買い上げしてよそのお店に持ち込んでこんな服を作ってってお願いしても、うちは文句言わないです」
「こんな破廉恥な服、外を出歩けないわ」
「基本、ご自分だけで楽しむ為の服です」
「サイズが心配ね……」
「すみません。返品は受け付けてません。試着も受け付けてません。他のお店への見本用と思って買ってください」
「夫にこんな服を売るから、昨晩はとっても大変だったのよ。全く。これを貰うわ」
「毎度ありー」
「あら、絵本もあるのね」
「文字の勉強になるかもですよ」
「そうね、買うわ」
「毎度ありー」
「ほんとしては高いけど、絵がいっぱいなのを思えば安いわね。買ってみようかしら」
「毎度ありー」
そこに、論文サンドでエロ本を買いに来た紳士達が並ぶ。
「あのカーテンの向こうは何を売ってるのかしら? 魔法の本なの?」
「大人しか見てはいけない本です」
「私は大人よ」
カーテンの向こうに行った女の人は顔を真っ赤にして戻ってきた。
「はしたないわ!」
「大人しか見てはいけないでしょう?」
なお、全ての本にこの話は作り話ですと注意書きが書いてある。
特にエロ本とかはね。現実と虚構の区別がつかない人がいるからね。
しっかり男性妊娠は現実ではありませんと書いておいた。
「素晴らしい絵の具があると聞いて!」
「筆記用具ください!」
「わしの本も売らせてやろう!」
「買取はやってないでーす」
そんなこんなで、転売ヤーも跋扈して1週間でお店から商品が消えた。
そして、女性陣からレディースデーの要求がされた。
男性のいる中、えっちな服や本は買えないらしい。確かに。
レディースデーとメンズデーを作ろう。
仕入れの旅に出ますと一ヶ月後の開店日を書いて、クローズドの札を下げる。
次の日は商人ギルドで買い物をする予定だ。品が保証されているのはやはり商人ギルドだ。他は自己責任の目利きが必要だ。ひとまずポーションを買いたい。
午後には書き上がった新作を印刷所に出して、売れた本の印刷もする。
翌日は地球のお店を巡って、ショッピングを存分に楽しみつつ商品を買う。
そしてナーロッパにもどり、二週間ほどダンジョンの探索をして、コンビニで印刷物を受け取る。コスプレ服制作を一週間、漫画制作を一週間。その後、店を整えて開店をする。完璧な計画だ。
商人ギルドで若がえりポーションを前に悩んでいると、師匠が現れた。
「桜。頼みがあるんだが、この魔法を試して見てはくれないか」
「これは……?」
「魔法陣探知魔法。桜のような人間を探知できる魔法だ。見つけたら協力を得たい。謝礼は用意しよう」
「んー。わかりました。ちょっと心配だけど空間魔法最強だからなんとかなるでしょう。あっ でも精神操作防御アミュレットください」
「わかった。今回の報酬とするが良い」
「りょー」
そして、買い物を終えて印刷の発注を終えた私は、念のため変装をして東京タワーから探知魔法を使った。魔力がグングン吸われて焦って魔石をいくつも使う。東京タワーの上空に派手な魔法陣が出現して大騒ぎになった。あと東京タワーのある一帯で光の柱がいくつも立った。多分魔法陣の持ち主。
大変なことが起こったのによくよく考えたら遥か遠くで光る人を特定なんて無理だ。
申し訳なく思いつつも、私は光の柱を発生させた人間がネットで特定されるのを待った。買い物やコスプレ作成や小説、漫画作成ももちろん並行して進める。
『魔法陣が上空に出た時に体から光の柱が立って力がみなぎって魔法が使えた!』
そんな動画がいくつも流れてたし、すぐ特定されるだろ、と思ってしばらく待ってたら全ての光の柱関連動画が削除されて映画の撮影だった事にされ、火消しされていた。はぁーん……さては組織か国かなんかのバックアップがあるな?
こわーい!
さ、本をコンビニで受け取ってダンジョンに行こ。