超かぐや姫!かぐや達は現実世界でも遊びたい! 作:リズ029
「おはよう」
「あ、起きた? おっはよ!」
開いてはいるが、寝ぼけているのか、かすかにボヤける目に黒髪の女性と、金髪の少女が映った。
「ヤチヨ。新しい身体はどう?」
「重いっしょ? かぐやも最初そうだったんだよねえ」
ヤチヨと呼ばれた桃色のインナーカラーが入った銀髪のサラサラストレートの見た目美少女、中身は八千歳の元月人は、自分を見下ろす愛しい酒寄彩葉ともう一人の自分であるかぐやの言葉に答える代わりに寝かされている寝台の上で身体を起こそうとする。
「おっも。おかしいにゃあ。かぐやで経験済みのはずなのに」
「やっぱりYC型の適合率はKG型ほど良くないなあ。それでもだいぶKG型に近付いたから、生活するには問題ないはず。あとは慣れ、かな〜」
「大丈夫だよ彩葉! ヤチヨはかぐやなんだから!」
「そうそう。ヤッチョはかぐやだから、大丈夫大丈夫」
寝台を挟んで向こう側に立つ彩葉に満面の笑顔を向けるかぐやと、座ってニコッと微笑むヤチヨ。
二人の笑顔を並べて見ると、改めて彩葉は二人は同一人物なのだと感心し、自身が制作した義体、アバターボディの仕上がりに満足していた。
「ああ、推しが、私の女神が今現実で目の前にいる」
「ツクヨミではいつも会ってるのに」
「なんならかぐやはいつも一緒にいるんだけど?」
感激で口元を抑え、泣きそうになっている彩葉の姿にヤチヨとかぐやが苦笑していると、不意に彩葉のスマホから着信音が鳴る。
その音に気を取り直し、彩葉はスマホをタップする。
相手は高校時代から今も大親友の一人、芦花だった。
「はいは〜い……うん。今起きたよ……謝らないのぉ。仕事で沖縄なんでしょ? ……週末帰ってくる? ……分かった。じゃあ真実も誘って久しぶりにカフェ行こうカフェ。あのパンケーキの美味しいお店」
「パンケーキいいなぁ、ヤチヨも食べたいなあ〜」
「かぐやも行く!」
彩葉の言葉につい声が上がる二人。
そんな二人を横目に、彩葉は笑ってしまいそうになるのを堪えながら電話口の芦花の声を聞く。
「あはは、聞こえた? うん、皆で行こう。じゃあ、仕事頑張ってね芦花」
芦花からの通話が切れるのを待って、彩葉はスマホの画面をスリープモードにすると「さて、そろそろ帰る準備しちゃわないと」と、データ採集用のタブレットをデスクに置いてヤチヨの側に近寄った。
「立てる?」
「もちのろん!」
彩葉の言葉でKG型の義体ほど扱い慣れていない義体を動かして、ヤチヨはついに大地に、正確には酒寄研究所の床に立つ。
その横に並び立つかぐやが首を傾げて「あれ?」と、呟いた。
「なんだいなんだい?」
かぐやの様子に、ヤチヨは同じように首を傾げる。
「なんかヤチヨの方が身長高くない? いや、元々ヤチヨの方が背は高いんだけど160以上あるような気がするんだけど」
そんなかぐやの疑問に答えたのは彩葉だった。
「あ〜。いや、よく気付くな。実はちょっと盛りました」
「なんで⁉︎ かぐやはちゃんと157センチなのに!」
「いや。ほら、こうなんというか。イメージ? 私の中のヤチヨはさ、私より身長の高い美人のお姉さんだったからね。でもプロフィールから逸脱するのは論外だし、妥協してちょっと盛りました」
「じゃあかぐやも身長伸ばしてよ!」
「それは断る。断固ノーと言わせてもらう」
「なんでぇ⁉︎」
彩葉の言葉に頬を膨らませ、ヤチヨの横から離れてかぐやは彩葉に抱きつく。
それを眺めていたヤチヨが、先に彩葉の言葉の意味に気が付いて、気恥ずかしくなると同時にその思考がリンクしているかぐや姫にも届き、膨らんでいた頬はしぼみ、代わりに紅くなっていった。
「今の身長が、一番抱き心地がいいんだから。絶対変えない」
彩葉の優しい笑顔と声色で、かぐやとヤチヨが揃って照れて何も言えなくなる。
そんな時、ふとヤチヨは彩葉がこちらに向かってVサインを手で作ってこちらに向けているのに気が付いた。
それは彩葉とかぐや、二人だけの合図。
仲良しのやつ。
ヤチヨが一歩近付いて、重さを感じる腕を上げ、同じようにVサインを作って彩葉のVサインにくっ付ける。
そしてそれを交際させると、二人は手で狐の形を作り、口の部分をくっ付けて離し、彩葉がヤチヨの手を握った。
「さあ帰ろう"かぐや"」
「うん。帰ろう彩葉」
「ああずるい! かぐやにも仲良しのやつやって!」
「はいはい。ほら」
「うぇっひひ〜。彩葉ぁ、大好き」
「もう。ほら帰るよ!」
このあと彩葉はヤチヨの為に選んできた服を着せ、かぐやと手を繋ぎ、ヤチヨと腕を組んで研究室を出たのだった。
ひとまずプロローグ的なやつでした。
この三人と芦花が好きなので、色々書いていきたいと思っています。
良ければ感想など頂けると気力に繋がりますのでよろしくお願いします!