超かぐや姫!かぐや達は現実世界でも遊びたい! 作:リズ029
かぐや復活ライブ以来の彩葉、かぐや、ヤチヨの三名による雑談歌枠配信という名のミニライブが大盛況で終わりを迎えた後の話。
配信を終えた三人は交代で……彩葉のシャワー中にかぐやが乱入するという事が起こりつつ、シャワーを浴びたあと芦花が待っていたリビングでくつろぎ始めた。
彩葉は学生時代を思わせるパジャマ姿。
かぐやはジェラピケのようなモコモコの半袖短パンのパジャマ。
ヤチヨはお気に入りの黒Tシャツに桃色の短パンを寝巻きにしている。
「はあ〜。やっぱり配信はたんのしぃなあ〜」
「最近ラブソング多くない?」
「え〜? だってそりゃあねえ〜」
彩葉が座るソファの前。
ガラスのローテーブルを挟んだ向こう側で、床に敷いた丸いカーペットの上に座っている桃色のクッションを抱えたかぐやが、顔を赤らめながら彩葉の目を真っ直ぐ見る。
その視線に気恥ずかしくなって、彩葉は視線を逸らし、冷蔵庫から持ち出していたビールの缶を開けた。
「あんまり飲みすぎちゃダメだよ〜?」
「一杯なら薬みたいなもんだから大丈夫大丈夫」
彩葉の隣に腰を下ろしたヤチヨが彩葉の腕に自分の腕を絡めながら言った。
そんなヤチヨの綺麗な顔に頬を染めて、彩葉は視線をそらすが、その先には芦花も困ったように眉をひそめて苦笑していた。
「ぐっ。これが四面楚歌ってやつか」
「四面楚歌だと一人足りなくってよ?」
「今度は真実も呼んで後ろにいてもらおう」
バツが悪そうに、しかしながらもビールを口に運んだ彩葉に、ヤチヨ、かぐやが続けて言った。
そして話題は芦花の「ヤチヨちゃん。こっちからの初配信はどうだった?」という発言から、配信の感想会になっていく。
そんな中、ローテーブルに置いていた彩葉のスマホから着信音が響き、バイブレーションが鳴動した。
「彩葉! 朝日から電話!」
位置が近かったかぐやがスマホを取り、画面を確認して立ち上がると、彩葉に渡して芦花の横に座って、話の途中に冷蔵庫から持ってきたいちごオレに手を伸ばした。
「お兄ちゃんからなんて珍しいな」
かぐやから受け取ったスマホの画面を再確認して、彩葉はスマホをスワイプすると耳にあてた。
「おーっす」
『おーっす彩葉ぁ。配信見たでえ。推しを遂に具現化したか。ぶっ飛んでんなあ』
「お兄ちゃんには話したやん。私にとっては二人とも大事なかぐやなんやからどっちの身体でも幸せになってもらいたいんやって」
『別に文句言うてるんやないて。楽しそうで良かったっておもてな。いや、まあ電話したんはそれが言いたかっただけってわけじゃないんやけど』
「なんよ? ハッキリせえへんやん」
久しぶりに電話してきた兄。
未だツクヨミでトップライバーとして頂点に君臨しているブラックオニキスのリーダー、帝アキラこと酒寄朝日。
普段電話してくる時の話題といえば「最近調子どないや?」からのお互いの近況報告だが、今日はなんというか、彩葉から聞いた感じでしかないが、話題を出しにくそうな雰囲気を感じていた。
『なあ彩葉、最近母さんに連絡したか?』
「……いや、してないけど」
『はあ。いや、まあ別にええねんけどな。前に彩葉かぐやちゃん連れて実家帰ったやろ? 復活ライブの前やったか』
「まあ」
『なんか知らんけど、母さん俺のとこに電話してきてなあ。『彩葉は次いつかぐやちゃんと帰ってくるんや?』ってな。知らんちゅうねん。まあ、母さんだいぶかぐやちゃんの事気に入ってるみたいやから、いっぺん連絡したってくれへんか?』
「ええっ⁉︎ お母さんとかぐや、初見で喧嘩したんやで? なんで?」
兄から突然母の話をされて、当時の状況を思い出しながら、彩葉は疑問符を頭の中で散らかしていた。
その彩葉の言葉を聞いて、かぐやは気まずそうに視線を首ごと横に逸らして芦花から苦笑される。
『母さんの性格は身に染みてるやろ? かぐやちゃんの殴り合い上等スタイル大好きなんやから、そら気にいられもするやろ。ところでかぐやちゃんいんの?』
「かぐやならいるけど」
『かぐやちゃ〜ん。お兄ちゃんやで〜』
「おーっす朝日」
『ほんま。いつかぐやちゃんは俺のことお兄ちゃんって呼んでくれるんかなあ』
通話をテレビ電話モードにしてかぐやに向ける彩葉。
向けられたかぐやは、手を軽く上げて挨拶をすると朝日の質問に答えるはずが彩葉の方に視線を向けて「朝日をお兄ちゃんって呼ぶのは、かぐやが彩葉と結婚して酒寄になってからかなぁ」と、ちょっと恥ずかしそうに言って顔を赤くした。
『ほな母さんにはもうしばらく頑張ってもらわんとな。じゃあ妹の顔と義妹の可愛い顔も見れたし、おいとまするわ』
「あら? 帝様はヤチヨの顔は見なくていいのかにゃ?」
『かぐやちゃんでお腹一杯やのに、ヤチヨちゃんの幸せそうな顔見たら砂糖で口一杯になってまうわ。ほなな、皆おやすみ』
「へーい。おやすみ〜」
通話が終わり、彩葉はスマホの画面をスリープさせる。
そして色々考えて母親に電話するために再びスマホをタップするが、結局指が電話帳の母親を選ぶ事はなく。
「よし! 寝よう!」
と、スマホの画面を消して立ち上がり、残っていたビールを一気に飲み干したのだった。