超かぐや姫!かぐや達は現実世界でも遊びたい!   作:リズ029

5 / 5
寝る前の話

 兄である朝日からの電話のあと、彩葉達は就寝するためにそれぞれの寝室に向かって……行かなかった。

 芦花は自室へちゃんと向かったが、彩葉の部屋にかぐやとヤチヨが乱入したのだ。

 

「かぐや達の寝室は二階なんだけど? これじゃあ寝室分けてる意味ないじゃん」

 

 床に敷いた布団の上、かぐやとヤチヨに挟まれて寝転んでいる彩葉が「流石に狭くない?」と呟いた。

 

 しかし、かぐやとヤチヨは彩葉に抱き着いて「この狭さがいいんじゃん」「彩葉成分をたくさん補充したいからねえ」と、お構いなし。

 彩葉も口では不平を言うが、嫌というわけではない。

 なんだかんだでこの状況を喜んでいる。

 

「でも芦花には悪いことしちゃったなあ。明日は譲ってあげよ」

「四人では流石に寝れないしなあ。リビング片付ければいけるけど」

 

 そんな話をしながら、眠るまでのわずかな時間を楽しんでいると、ヤチヨがうつらうつらとし始めた。

 どうやら適合率の差が、そのままかぐやとヤチヨの様々な個性として表に出ているらしい。

 

「ごめんねぇ彩葉、ヤチヨはおねむなのです。続きは、かぐやで……」

 

 その言葉を最後にヤチヨは彩葉の腕に抱きついたまま目を閉じて心地の良さそうな寝息をたて始めた。

 

「ヤチヨ寝ちゃった。う〜眠気が、引っ張られてるぅ。もっと彩葉とお話したいのにぃ」

「無理しないの。早く寝ちゃいなさい」

「え〜? じゃあ何か歌ってよ彩葉ぁ」

「かぐやは本当に歌がすきよねえ。なんでこんなに歌が好きになっちゃったのかな?」

「だって、歌は、彩葉がかぐやに最初にくれたものだからねえ」

「何それ。なんの話?」

「彩葉。かぐやを拾ってくれた日の事覚えてる? まだ赤ちゃんで、泣き止まないかぐやに、彩葉、子守唄歌ってくれたっしょ?」

 

 その言葉に、彩葉はかぐやの方を向き、驚いたように目を見開いた。

 忘れるはずがない。忘れられるわけがない。

 10年前のあの日。

 バイト帰りで疲労困憊の自分の前に現れた、元光る七色のゲーミング電柱から出てきたかぐや。

 抱き締めれば肉が食い込んでしまいそうなほど柔らかいと感じた赤ん坊。

 そんな赤ん坊が泣き出して、どうにか泣き止ませようと考えて、縋る気持ちで見上げたヤチヨのアクリルスタンドを飾った神棚。

 それを見て、咄嗟に口から出てきたのは今夜の配信で最初に歌った『Remember』の一節だった。

 

「かぐや。あの時のこと覚えて——」

「忘れるわけないじゃん」

「そういえば体が大きくなった時、夜中にミルクって起こされた気がする。そっか、ずっと覚えてたんだ」

「あの時の彩葉の歌が優しくて綺麗でさ。歌って凄いなって、かぐやも歌えるようになりたいなって思ったんだよねえ」

 

 もう眠気も限界に近いのだろう。

 ヤチヨのようにうつらうつらとしながら、かぐやは彩葉に抱きついた。

 

「また、彩葉の子守唄聴きたいなあ」

「今日は一段と甘えん坊だなあ。子守唄って言ったて、アレはヤチヨの……まあいいよ。歌ってあげるから早く寝なさい。明日からまた仕事なんだから」

 

 そう言って、彩葉はあの時と同じように『Remember』の一節を歌い始めた。

 静かに、優しく、愛おしそうに。

 

「大切な、メロディは流れてるよ〜。あ〜な〜た〜のハートに〜」

 

 10年前と同じく途中から歌ったわけだが、気が付けば、かぐやは彩葉に抱き着いたまま心底安心したように目を閉じて眠っていた。10年前と同じように。

 

 そんなかぐやを、彩葉は片手で抱き寄せ目を瞑る。

 その裏で、彩葉は学生時代にかぐやと過ごした約二ヶ月を思い出していた。

 

「かぐや、私のかぐや。もう離さないからね」

 

 両手にかぐやの温もりを感じながら、彩葉も眠気に任せて意識を手放す。

 その寝顔はとても穏やかで、三人が三人とも幸せそうだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

酒寄彩葉は音楽が好きだ。(作者:冴月)(原作:超かぐや姫!)

彩葉が音楽から離れきれなかった世界線の話。


総合評価:481/評価:9/連載:11話/更新日時:2026年10月24日(土) 12:38 小説情報

余命数年の私の元に現れたかぐや姫(作者:グランドマスター・リア)(原作:超かぐや姫!)

中学二年の夏、余命四年と告げられた▼余命宣告を受けてから、変わりゆく周囲の環境や精神的な苦痛に耐えられず上京を決意▼そこに、とっても可愛いかぐや姫が現れる話▼+++▼ようするに本編の彩葉が『もしも余命数年だったら?』というコンセプトのIFです▼PIXIVの方でも掲載してます▼https://www.pixiv.net/novel/series/1597157…


総合評価:1723/評価:9.06/連載:29話/更新日時:2026年10月17日(土) 07:00 小説情報

彩葉のバイト先の店長は前作主人公感漂う藤丸立香です(旧題:パン屋のぐだ子とバイトの彩葉)(作者:生徒会副長)(原作:超かぐや姫!)

(旧題)【超かぐや姫×FGO】パン屋のぐだ子とバイトの彩葉▼9月20日に改題しました。▼パン屋兼喫茶店『藤丸ベーカリー』は、店長の藤丸立香と、副店長のマシュ・キリエライトが営むお店である。そんな藤丸ベーカリーには、酒寄彩葉という優秀なアルバイト店員がいる。ところが、彩葉は『優等生』という役を羽織り続けるのに限界が近づいていて……?▼もし頑張る主人公・酒寄彩葉…


総合評価:913/評価:6.96/連載:36話/更新日時:2026年10月25日(日) 06:00 小説情報

八千夜(作者:超かぐや姫!に脳を焼かれた人)(原作:超かぐや姫!)

八千もの暗い夜を越えて▼最愛なるあなたへ、ハッピーエンドを


総合評価:1823/評価:9.1/完結:7話/更新日時:2026年07月12日(日) 20:00 小説情報

超かぐや姫!輪廻なんて壊しちゃえ(作者:鶏ぴっぴ)(原作:超かぐや姫!)

8000年前。▼まだ「英雄」という言葉すら存在しなかった時代。▼一人の少年が、月から来た少女――かぐやと出会った。▼共に過ごし、笑い、時には喧嘩をして。▼彼には死と老化の概念がなかった。▼やがて少年は、かぐやにとってかけがえのない存在になっていく。▼しかし、二人の日々は永遠には続かなかった。▼ある日を境に少年は消えたーー▼名を残すこともなく。▼誰にも知られる…


総合評価:340/評価:9/連載:9話/更新日時:2026年10月26日(月) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>