超かぐや姫!かぐや達は現実世界でも遊びたい! 作:リズ029
週明け。
それは社会人にとって地獄の始まり。
とは言え、酒寄彩葉にとってはそうでもなく。
その日の朝はスマホから鳴るアラームより早くに目を覚ましたかぐやの「彩葉朝だよ! おはよう!!!」という、ご近所にも聞こえるのではないかという大声から始まった。
「うおぉ、耳が……かぐやは朝から元気ねぇ」
「かぐやだからね!」
寝ぼけ眼を擦り、体を起こそうとするが、その腕に抱きついたまま眠っているヤチヨを見て、彩葉は首を傾げた目を細めたままかぐやに「どういうこと?」と、言いたげに視線を送る。
「かぐやとしては彩葉を起こしたいけど、ヤチヨとしてはまだ一緒に寝てたいってことだよ〜」
「本来なら自問自答してどちらかを選ぶところを両方できるの凄いな。私も二つ体欲しい〜」
「彩葉なら作れるじゃん?」
「一回会議で提案したら所員みんなに止められちゃったんだよね」
寝転んだまま眉をひそめて遺憾の意を示す彩葉。
そんな彩葉の耳に、自室の扉をノックする音が聞こえてきた。
「みんな、朝ごはん出来たよ?」
一番最初に目を覚まし、四人分の朝食を作り終えた芦花だった。
「ヤチヨちゃーん。パンケーキ冷めるよ?」
「「パンケーキ!」」
ヤチヨが跳ね起きてかぐやと声を重ねた。
「彩葉、パンケーキだって!」
「朝起きたらまずは?」
「おはよう彩葉!」
かぐやとは違う声なのに、かぐやと同じように聞こえるヤチヨの朝の挨拶に彩葉は苦笑しつつ、推しのライバーの寝起き姿を見て次の瞬間にはニヤけ面を浮かべた。
「ま〜た彩葉がかぐやにはしない顔してる〜」
「でも彩葉はヤッチョに向けない表情をかぐやには向けてるよ?」
「じゃあいいか」
「ほら、ご飯食べ行くよ二人共」
四人の平日の朝は大体こんな感じ。
四人で朝食をとり、歯を磨いて髪をとかし、身だしなみを整えて服を着替える。
そして出掛けるまでに軽く化粧も済ませる。
「芦花、今日はどうするの? 実家にお土産持って行くんでしょ?」
「うん。久しぶりにお父さんとお母さんと一緒にご飯食べに行こうかと思ってるんだけど」
「分かった。じゃあ今日は夕飯は別だね」
彩葉はパンツスタイルのビジネスフォーマル、ヤチヨはスカートスタイルのビジネスフォーマル。
かぐやは半袖短パン袖なしジャケットという様相で玄関に向かいながら芦花と話していた。
「じゃあ、行ってくるね」
「おじさんとおばさんによろしくね」
「じゃあ芦花! 行ってきます!」
ヤチヨ、彩葉、かぐやの順で言って、三人は部屋を出て、タワマンを後にした。
しかしまあビシッとビジネススタイルに決めた彩葉とヤチヨの目立つこと目立つこと、何せ二人とも顔が良い上にスタイルも抜群。
しかもその横に垂れ目で可愛らしい金髪ギャルも連れ立っているとなると、往来では注目の的にしかならない。
「車の免許取ろうかなあ」
「都会の大渋滞の仲間入りをするつもりかにゃ?」
「でもでも! 彩葉が免許取ったら一緒にいろんなところ行けるよ!」
「確かに」
「マジでありかも、ちょっと考えとくかなあ」
職場まではバス電車。
最寄りの駅からバスに乗り換えると、そこで大体所員と合流する事になる。
「あ、所長おはようございます」
「おはよ〜」
「かぐやさん達の調子はいかがですか?」
「かぐや絶好調!」
「ヤチヨも元気ですよ〜」
同乗した女性社員と言葉を交わし、いつしかバスは彩葉たちの職場である『酒寄新技術研究所』の近くに止まる。
そこでバスを降りた彩葉たちは歩いて研究棟へ向かっていった。
「かぐや、ヤチヨ。今日は前言ってた専門誌のインタビューあるから時間になったら第一会議室に集合ね」
「「は〜い」」
研究棟の更衣室で上着を脱ぎ、白衣を羽織りながら彩葉が言うとかぐや達も白衣を羽織りながら返事をしてヤチヨは敬礼、かぐやはVサインを顔の横でつくる。
このあとはミーティングルームで朝礼後、スケジュールの確認を経て、研究所の所員たちはそれぞれの持ち場へ向かっていった。
「彩葉、今日は何するの?」
「プログラミングならかぐやにお任せあれえ〜」
「今日は二人の義体の違いからくる反応速度の差を見たいんだよねえ。同じ存在なのになんでYC型とKG型で適合率に5%以上も差が出るのか。生体部分は全部問題なく稼働してるしなあ」
仕事モードになった彩葉が、所長室でヤチヨの手を握ったり、かぐやの頬を撫でたりしながら首を捻る。
その真剣な表情に、かぐや達は初めて彩葉と出会って間もなくの頃「決まってることが変わるわけじゃないし、受け入れて覚悟するしか……ない」と、言っていた時の彩葉の表情を思い出していた。
そんな事を言っていた彩葉が、今や運命に抗った上で、かぐや達の願いを叶える為に常識を覆し、世界の科学史を何年も進めている。
それが嬉しくて、かぐや達はお互いの顔を見合わせて笑顔を浮かべたのだった。