TSマルフォイの純血主義を矯正したら高飛車ツンデレ幼馴染(傲慢持ち)になった件 作:マルフォイは貧乳だろボケがふざけんな
大熱狂のうちにクィディッチの初戦が幕を閉じた直後のことだった。
俺は、あと一歩のところで敗れてしまったドラ子の様子が気がかりで、観客スタンドの階段を足早に駆け下りスリザリンの控え室へと向かう通路を急いでいた。
すると、競技場の出口へと向かう石造りの通路の途中で、向こうから黒いローブの裾に焦げ跡を作ったまま歩いてくるセブルス・スネイプ教授とばったり鉢合わせになった。
スネイプ教授は俺の姿に気づいても足を止めることなく、ただ俺の横をすれ違いざまに、前を向いたまま低く抑えた声で一言だけ呟いた。
「……口だけではないようだな、フォーリー」
それだけ言い残して、黒いコウモリのように颯爽と去っていくスネイプ教授。
どうやら、試合中に俺が反対呪文を重ねてハリーの箒を守る手助けをしたことは、あの鋭い教授にはしっかりバレていたようだった。先日の研究室で俺が啖呵を切った『ドラ子を幸せにする』という言葉に嘘がなかったと認めてくれたのだろう。
……やれやれ。本当に、どこまでも分かりづらい感謝の伝え方だな、アレは。
俺は去っていく寮監の背中に小さく苦笑いを漏らしつつ、再びドラ子のもとへと足を早めた。
そうして控え室の前で無事にドラ子と合流した俺だったが――てっきり初めての敗北に肩を落として落ち込んでいるかと思いきや、ユニフォームを着替えたドラ子はすでに次戦へのリベンジに燃えたぎる不敵な笑みを見せていた。
そのたくましい姿に俺がホッと胸をなで下ろしていると、ドラ子は腕を組んで俺の前に歩み寄り、誇り高く顎を上げた。
「……ふん、今日はずいぶんと不甲斐ない姿を見せたわね。でも、次は絶対に負けないわ。完膚なきまでにポッターを叩きのめして、私が勝ってみせるわよ」
「ああ、今日の飛び方も最高だったぞ。次も楽しみにして――」
「――だからね、レオン」
俺の言葉を遮るように、ドラ子が一歩ズイッと踏み込んできた。
見れば、先ほどまでの爽やかな闘志はどこへやら、その美しいシルバーグレーの瞳が、ドロドロに煮えたぎった暗い光を湛えて俺をロックオンしている。
「どうしてあなたがグリフィンドールの応援席のど真ん中で、よりによってあのグレンジャーとウィーズリーの両隣に挟まれて座っていたのか……この私に、納得できる理由を説明しなさい? レオン」
空の上からでもそこはちゃんとバレてるんかい。
俺は背中に冷や汗を流しながら、この修羅場を切り抜けるための言い訳を必死に捻り出そうとした。
だが、ここ最近のやり取りで痛感している通り、うちのドラ子は案外どころか相当に勘が鋭い。ここで下手な嘘やその場しのぎの誤魔化しを言ってしまってはすぐに見抜かれるだろうし、何より、せっかく築き上げてきた彼女からの信用を損ないたくはない。
そう腹を決めた俺は、ふぅ、と一つ深く息を吐き出して、ドラ子の目を真っ直ぐに見つめ返した。
「……確かな確証は無かったんだけどな。今回のクィディッチの試合で、ハリー・ポッターが何者かに狙われるんじゃないかって予想を立てた。彼は魔法界で一番の有名人だけど、あんな風に大勢の人の前に無防備で晒されるのは、入学式の組分けを除けば今回が初めてだ」
俺は原作知識という部分だけを綺麗に省き、それ以外の事実と自分の本心を、飾らない言葉で素直に打ち明けた。
「俺は、誰よりもドラ子に勝ってほしかった。だが、相手が妨害工作による不慮の事故で脱落して決着がつくなんていうのは、一番ドラ子が納得いかないことだと思ったんだ。……グリフィンドール席に行ったのは、スリザリンの最前列がすでに埋まっていたからだよ。俺の杖なし魔法で反対呪文を機能させるには、できる限りフィールドの近くに寄る必要があったからな。ごめん、ドラ子。本当ならスリザリンの席で、声を張り上げて君を応援するべきだったと思う」
俺が申し訳なさそうに頭を下げると、ドラ子は目を丸くして数秒間黙り込んだあと、「……はぁ」と長く息を吐き出した。
そして、両手を伸ばして俺の両頬を、ムギュッ! と挟み込むようにして掴んだ。
「ふ、ふが……?」
「……まあいいわ。変に誤魔化さずに素直に言ったから、今日のところは許してあげるわよ。実際、ポッターと何の邪魔もなく最後まで対決できたのはレオンのお陰だしね。――でも、あなたは私の……ごほん、じゃなくて、スリザリンの人間なのよ。それだけは絶対に忘れないでちょうだい」
俺の頬をむぎゅむぎゅと掴んだまま、至近距離からじっと俺の瞳を見つめてくるドラ子。
俺はその真剣な眼差しを受け止め、力強く頷いた。
「あぁ、勿論だ」
そのまま数十センチの至近距離で、お互いの呼吸が触れ合うほど近くで見つめ合っていると――。
なぜだか急に、ドラ子の陶器のように白い頬が、みるみるうちに耳の付け根まで真っ赤に染まっていった。
「――っ」
ドラ子は突然パニックになったように俺の胸をドンと突き飛ばすようにして距離を取り、自分の両手で真っ赤な顔を押さえて後ろを向いてしまった。
そして、何かをブツブツと呟いた。
「……あ、あぶない、試合に夢中で
「ん? どうしたドラ子、何か言ったか?」
急に一人で赤くなって距離を取った彼女に俺が不思議そうに首を傾げていると、ドラ子は大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせたらしく、ふぅ、と息を吐いてから、ニコニコとどこか余裕のある上機嫌な顔で小さく独り言をこぼした。
「……ふふ、そうよね。スネイプ先生の前であんな大それたことまで言い切ったレオンが、私以外の女にうつつを抜かすなんて、あり得ないわよね」
「え?」
「な、なんでもないわよ! さ、レオン、お腹が空いたから早く寮に戻るわよ!」
そう言って、いつもの調子で俺の手首をグイッと引っ張って歩き出すドラ子。
クィディッチの試合前はあんなに挙動不審に俺から距離を取っていたから、俺が無自覚に何かやらかしたのかと心配していたけれど――理由はよく分からないが、どうやら機嫌を直してくれたようだ、と俺はホッと胸をなで下ろしたのだった。
☆☆☆
クィディッチの初戦から二週間ほどが経ち、十一月も終わりに近づいたある日の放課後のことだ。
ドラ子が次のハッフルパフ戦に向けたクィディッチのチーム練習で留守にしていたため、俺が一人で中庭の回廊を歩いて図書室へ向かっていると、柱の陰からひょっこりと顔を出した三人組に呼び止められた。
ハリー、ロナ、そしてハーマイオニーの黄金トリオである。
「あ、レオン! 丁度良かった。僕たち、君を探してたんだ」
「俺を? どうしたんだい、そんな三人揃って深刻そうな顔をして」
今の十一月下旬の時期に起きる原作の出来事ってなんだっけか、と頭の中でカレンダーをめくりながら、俺はハリーたちに促されるまま、生徒の通りの少ない人気のない空き教室の前へと移動した。
周囲に誰もいないことを確認すると、ハリーは声を潜めて切り出した。
「あのね、レオン。この前のクィディッチの試合で僕の箒に呪いをかけていたのは、やっぱり僕たちが睨んだ通りスネイプだったんだ。ハーマイオニーがスネイプのローブに火をつけて邪魔をした途端、呪いが完全に消えたんだよ」
まあ、本当はその後ろにいたクィレルが突き飛ばされたからなんだけどな……と内心で補足しつつ、俺が相槌を打つと、ハリーはさらに試合後にハグリッドの小屋で会話した内容を共有してくれた。
「それでね、試合のあとハグリッドと話したんだ。あの三階の廊下にいた三頭犬は『フラッフィ』って名前で、ハグリッドが買ったものをダンブルドア先生に貸しているんだって。そして、あの犬が床の落とし戸の下で守っているものは、ダンブルドア先生と『ニコラス・フラメル』が関係してるって!」
ハリーが息を弾ませて語り終えると、隣にいたロナが豊かな胸の前で腕を組み、少し照れくさそうに笑って言った。
「レオンには三頭犬の時も、昨日の試合の時も色々お世話になってるし、このことはあんたにも伝えたほうが良いと思ってね。途中まで関わったのに、知らないままじゃ気になっちゃうじゃん?」
「……ちょっとロナ、カッコつけて言ってるけど、それ、またいざという時にレオンに助けてもらおうとしてるだけでしょ」
ハーマイオニーが呆れたようにジト目でツッコミを入れると、図星を突かれたロナは「うっ……」と言葉に詰まり、指先を絡ませながらボソボソと呟いた。
「だ、だってさぁ……レオンって学年で一番強いし、いざという時に頼りになるし、優しいし……」
「ぼ、僕も……正直に言うと、レオンがこれからも僕たちを助けてくれたら、すごく心強くて嬉しいけど……」
ロナだけでなくハリーまでが、まるで親鳥を見上げる雛鳥のようなキラキラした目で俺を見つめてくる。
「ええと……」と俺がどう返事をしたものか困っていると、ハーマイオニーがコホンと咳払いをして、少しだけ頬を赤らめながら早口でフォローを入れた。
「わ、私だって、レオンが協力してくれたら百人力だと思うわよ! でもね二人とも、彼はスリザリン寮なんだし、あんまりあからさまに私たちと一緒にいるところを見られたら、彼の方が寮の中で悪く言われちゃうわ」
俺の立場まで気遣ってくれるハーマイオニーの言葉に、俺はふっと肩の力を抜いて微笑み、軽い調子で答えた。
「ありがとう、グレンジャーさん。まあ、正直言って俺自身は、うちの寮の純血主義の貴族連中があんまり好きじゃないし、最初から馬が合わないと思ってるから、周りから何か言われるのも今更だから、そこは気にしなくていい。……ま、でも、あんまり君たちとばかり遊んでいると、うちのお姫様に怖い顔で文句を言われちゃうからね。協力はするけど、内容次第ってところかな」
俺がウインクを交えてそう言うと、ハリー、ロナ、ハーマイオニーの三人は顔を見合わせ、揃ってホッとしたように安堵の表情を浮かべた。
……なるほどな。どうやらこの三人は、俺という存在をかなり心強い味方だと思ってくれているらしい。
友人として信頼されるのは嬉しいことだが、同時に俺は少しだけ慎重に思考を巡らせた。
彼らにあんまり俺へ依存されすぎてしまうのは、ちょっと困る。
たとえば今ここで、俺が前世の知識を使って「ああ、ニコラス・フラメルっていうのは六百六十五歳の錬金術師で、犬が守っているのは賢者の石だよ」と正体を教えてしまうことは簡単だ。
だが、現時点でそれを言ってしまうと、ハリーがクリスマス休暇に透明マントを使って夜の本棚を探しに行かなくなり、結果としてあの『みぞの鏡』を発見するイベントが発生しなくなってしまう。
今のハリーは、魔法の才能こそあれど、精神面ではまだ十一歳の未熟な少年だ。顔も知らない亡き両親に対する薄っすらとした執着や、ダーズリー家で虐げられてきたことによる深い寂しさが心の底に残っている。
クリスマスに『みぞの鏡』と出会い、ダンブルドア校長から諭されるあの一連の出来事は、ハリーが過去への執着を乗り越えて前を向くための、いわば不可欠な情操教育イベントの一種なのだ。
さらには、最後の部屋で鏡から石を取り出すルールを知るための伏線でもある。
それに、俺が先回りして答えを誘導させまくると、裏ですべてを把握しているであろうダンブルドア校長の俺に対する警戒値を無駄に引き上げてしまうことにもなりかねない。
ある程度はスネイプ先生を経由して俺の情報が校長にも渡っているとは思うが、ここで預言者めいた怪しい行動を取りすぎるのは絶対にマズイだろう。
そう結論を出した俺は、少し首を傾げる仕草をして、三人にこう濁した。
「『ニコラス・フラメル』、か……。うーん、どこかで聞いたような気もするけど、俺も今すぐにはその人物が誰かは分からないな。図書室で本を読むついでに少し探してみるから、もし何か分かったら教えるよ」
「うん、ありがとうレオン! 僕たちも図書室で引き続き探してみるよ!」
ハリーたちが元気に頷くのを見届けて、「じゃあ、またな」と俺が踵を返してそのまま去ろうとした――その時だった。
ギュッ、と後ろから俺のローブの袖が力強く引っ張られた。
振り返ると、ハーマイオニーが俺の腕をガッと掴み、ハリーとロナに聞こえないよう背伸びをして俺の耳元に口を近づけ、熱のこもった声で囁いてきた。
「――ねえ、レオン。呪文学の授業で浮遊術も習い終わったことだし……あの約束、そろそろ魔法を教えてくれてもいいでしょう?」
至近距離でキラキラと輝く茶色い瞳。
俺は目を瞬かせ、「ああ、そういえば図書室でそんな師弟契約みたいな約束をしてたな……」と思い出した。
「うーん、分かった。ドラ子の予定もあるから、場所とやり方をちょっと考えておくよ。近いうちに声をかける」
「ほんと!? 約束よ、楽しみに待ってるわね!」
満足そうに手を離し、パァッと明るい笑顔を見せるハーマイオニー。
彼女たちと別れて廊下を歩き出しながら、俺は自分の杖を軽く握りしめた。
よし……確かに、そろそろ本格的にやるか。来るべき死闘に備えた原作キャラ強化計画をな。
個人的にハリーポッターの二次創作で一番書くのがムズいと思うのはアズカバンの囚人。
下手ににわかのまま書くと時系列で詰みかねない。