TSマルフォイの純血主義を矯正したら高飛車ツンデレ幼馴染(傲慢持ち)になった件   作:マルフォイは貧乳だろボケがふざけんな

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ハーマイオニーが巨乳だとして、それに嫉妬したTSドラ子が「穢れた血」じゃなくて「穢れた乳!」って言ってる姿を見たいんだ俺は

 

 ガタン、ゴトン――と、規則正しい車輪の音が足元から響いてくる。

 キングズ・クロス駅の九と四分の三番線を出発したホグワーツ特急は、ロンドンの灰色の街並みを抜け、緑豊かなイギリスの田園地帯へと差し掛かっていた。

 

 コンパートメントの窓際に肘をつきながら、俺――レオン・フォーリーは、向かいの席で優雅に紅茶のポットを傾けているドラセナ・マルフォイの姿を眺めていた。

 

 十一歳になったドラ子は、九歳の頃よりもさらに手足がすらりと伸び、プラチナブロンドの髪はシルクのように艶やかに輝いている。ただ座っているだけで名画のワンシーンになるのだから、マルフォイ家の遺伝子というのは恐ろしい。

 

 それにしても……ダイアゴン横丁での買い出しでは、結局ハリー・ポッターとは鉢合わせしなかったな。

 

 俺は内心で、一ヶ月前の出来事を振り返っていた。

 原作第一巻では、マルフォイはダイアゴン横丁の『マダム・マルキンの洋装店』でハリーと初めて出会い、そこで上から目線のトークをかましてハリーに微妙な印象を与えていたはずだ。

 

 だが、今年は俺がドラ子と一緒に買い出しへ行ったせいか、洋装店にハリーの姿はなかった。

 店先で妙に印象に残ったことといえば、お下がりらしきローブの丈を直してもらっていた、十一歳にしてはやけに胸のあたりが発育のいい、赤毛でそばかす顔の女の子をチラリと見かけたくらいだ。

 

 これも、俺というイレギュラーがドラ子の隣に居座り続けたことによるバタフライ・エフェクトなのだろう。

 その証拠に、原作なら今のドラ子の両脇をガッチリと固めているはずのクラッブとゴイルの姿は、このコンパートメントにはない。

 

「あんたたちは暑苦しいから別の部屋に行きなさい」

 

 とドラ子があっさり追い払い、今は俺と彼女の二人きりなのである。

 

「……なに?  さっきから人の顔をじっと見て。私の顔に何か付いているとでも言うのかしら」

「いや、うちのドラ子は今日も世界で一番可愛いなって感心してただけだよ」

「なっ……!  うちのって、誰があんたのものよ!  いい加減そのふざけた呼び方もやめなさいって言ってるでしょ!」

 

 プイッと顔を背けるドラ子だが、耳の先がほんのり赤い。

 脇腹への杖ネジネジ攻撃が飛んでこないだけまだマシか。

 

 と、その時だった。

 車両の廊下の方が少しばかり騒がしくなり、「あっちの部屋にいたぞ」「額の傷を見たか?」といったヒソヒソ声が聞こえてきた。

 

 その声を聞きつけたドラ子が、シルバーグレーの瞳をキラリと光らせて立ち上がった。

 

「……どうやら、噂の『生き残った男の子』がこの車両に乗っているみたいね。レオン、ちょっと顔を拝みに行くわよ」

「おっ、行くのか?  別に止めないけど、品位だぞ品位」

「分かってるわよ、しつこいわね。マルフォイ家の次期当主たる私が、はしたない真似をするわけないじゃない」

 

 ふふん、とまだ大して膨らんでいない胸を反らして、ドラ子がコンパートメントの扉を開ける。

 俺は信用できねぇ……と苦笑しながらその後ろに続いた。

 

 廊下を歩いて数部屋目。車内販売の魔女から買い込んだらしい大量のお菓子をシートいっぱいに広げているコンパートメントの前で、ドラ子がピタリと足を止めた。

 

 ガラス戸の向こうには、二人の生徒が座っていた。

 一人は、くしゃくしゃの黒髪に丸眼鏡をかけた、どこか頼りなげだが芯の強そうな緑の瞳をした少年。間違いなく、原作通りのハリー・ポッターだ。

 

 ふむふむ、美化されたダ◯エル・ラドグリフって感じ。

 

 そんな失礼な感想を抱きながら、俺の視線がハリーの向かいに座っている「もう一人」へと移動し――そこでピタリと凍りついた。

 

 燃えるような赤毛を肩の下まで伸ばし、鼻の頭にそばかすを散らした少女が、口の周りにチョコレートの欠片をつけながらカエルチョコレートのカードを眺めている。

 

 ダイアゴン横丁で見かけたあの子だ。中古の少し色褪せたセーターを着ているのだが、その胸元が――十一歳の新入生とは到底思えないほど、見事な曲線を描いてグイッとセーターを押し上げているのである。

 

 ……誰だあいつ?  ジニー・ウィーズリーは一つ年下だから来年入学のはずだし、グリフィンドールにこんなナイスバディな赤毛の同級生なんていたか……?

 

 俺が記憶のデータベースを必死に検索していると、ドラ子がスッと引き戸を開け、涼やかな声で部屋の中へと語りかけた。

 

「――噂は本当だったのね。ホグワーツ特急にあの『ハリー・ポッター』が乗っているって聞いたから、どんな人物か見に来たのよ」

 

 ハリーと赤毛の巨乳少女が、ビクッとしてこちらを振り向いた。

 

「私はドラセナ。ドラセナ・マルフォイよ」

 

 ドラ子は一歩前に出ると、ハリーの隣に座っている赤毛の少女の服装と、散らばったお菓子の包み紙をチラリと一瞥し、「ふん」と小さく鼻を鳴らした。

 

「……それにしても、ずいぶんと庶民的なお茶会を楽しんでいるようね。その色褪せたお下がりのローブに、そばかすだらけの赤毛……言われなくても分かるわ、あんた『ウィーズリー家』の娘でしょう?」

 

 その瞬間、赤毛の少女の顔がカッと赤くなり、逆に俺の頭の中では特大の雷が落ちた。

 

 ウィーズリー家の娘……!?

 このタイミングでハリーと一緒にいて、お下がりのローブを着てる同い年のウィーズリーって――お前もTSしてんのかよ、ロナルド・ウィーズリー!!!

 

 俺は内心で頭を抱えて絶叫した。

 なんでだよ!  なんでハリーは男のままなのに、親友のロンが巨乳美少女に性転換してんだよ!  世界線のバグり方が偏りすぎだろ!

 

 俺が脳内でツッコミの嵐を巻き起こしている間にも、ドラ子は自分のまだ薄い胸を精一杯張りながら、俺に矯正されて多少マイルドになったとはいえ、相変わらずの上から目線でロナルド(♀)を見下ろしていた。

 

「父様から聞いているわ。ウィーズリー家は純血でありながら、マグル贔屓で子どもばかり多くて、毎年新しい教科書を買うのにも苦労しているんですってね。――ねえポッター、せっかく魔法界に戻ってきたのだし、付き合う友人はもう少し見極めた方がいいじゃなくて?  もし良ければ、この私がホグワーツでの正しい振る舞い方を教えてあげてもよくってよ」

 

 あーっと! 「穢れた血」とか「貧乏人はゴミ」みたいな直球の暴言こそ吐かなかったものの、生来の負けず嫌いとマルフォイ家のプライドが滲み出て、結局マウントを取ってしまっている!

 

「なっ……! なによあんた、人の家のことを勝手に――!」

「まあまあ、そこまでにしておけって!」

 

 ロナルドが怒りで大きな胸を揺らしながら立ち上がろうとし、ハリーが険しい顔でドラ子を見返した瞬間――俺は後ろからドラ子のプラチナブロンドの頭頂部に、軽く「チョップ」を落とした。

 

 ぽすっ。

 

「――ひゃうっ!?」

 

 ドラ子が間の抜けた可愛い悲鳴を上げ、両手で頭を押さえてしゃがみ込みそうになる。

 

「ごめんね、二人とも。うちのドラ子はちょっと人見知りでさ、有名人と話すのに緊張して変な言い方になっちゃったんだ。悪気はないから、許してやってくれないか。俺はレオン・フォーリー。よろしくな、ハリー、それにウィーズリーさん」

 

 俺が爽やかな笑顔で頭を下げると、今にも呪文を抜こうとしていたロナルド(♀)とハリーは、毒気を抜かれたように目をパチクリとさせた。

 

「あ、ああ……よろしく、レオン。僕はハリー・ポッター」

「あ、あたしはロナ・ウィーズリーよ……。あんた、マルフォイ家の連中と一緒にいるのに、ずいぶん普通なのね」

「はは、よく言われるよ」

 

 ロナ・ウィーズリー。やっぱりロンじゃねえか!

 俺が内心で冷や汗を拭っていると、頭を押さえたドラ子が、涙目で顔を真っ赤にして俺を睨みつけてきた。

 

「ちょ、ちょっとレオン……!  レディの頭を叩くなんて、どういうつもりなのよ……!」

 

 今にも噛みついてきそうなドラ子の肩を軽く抱き寄せ、俺は彼女の白い耳元に口を近づけて、彼女にだけ聞こえる声でぼそりと呟いた。

 

「――品位」

「っ……!」

 

 その一言で、ドラ子の肩がビクッと跳ねた。

 俺の言いたいことを瞬時に理解した彼女は、ハッと正気に戻ったように目を泳がせ、耳の付け根まで真っ赤に染めながら小さく唇を噛んだ。

 

「……わ、分かっているわよ。少し言葉が過ぎたわね。……ポッター、それにウィーズリー、さっきの発言は取り消すわ。それじゃあ、ご機嫌よう!」

 

 ドラ子はバツが悪そうにプイッと踵を返し、逃げるような早足で廊下を去っていく。

「じゃあね、また学校で!」とハリーたちに手を振って、俺も慌ててドラ子の後を追った。

 

 ふう……なんとか最悪の決裂は回避したか。

 

 原作ならここでハリーに「誰がダメな奴かくらい、自分で分かるさ」と握手を拒絶され、決定的な敵対関係が成立するところだった。

 今の様子なら、ハリーたちも「なんだか高飛車だけど、ちょっと変な女の子だな」くらいの印象で済んだはずだ。

 

 ただ、一つだけ確実なことがある。

 ハリーのあの頑固そうな目と、ドラ子のプライドの高さを見る限り――やっぱりこの二人の根本的な相性は、あんまり良くなさそうだ。

 

 まあいいさ。原作みたいに敵対関係にさえならなければ、無理に仲良しグループになる必要はない。ドラ子が暴走しそうになったら、今みたいに俺が隣でストッパーになって支えてやればいいだけの話だからな。

 

☆☆☆

 

 やがて太陽が地平線に沈み、窓の外が深い群青色の闇に包まれた頃、ホグワーツ特急はついにホグズミード駅へと滑り込んだ。

 

 列車を降りると、スコットランドの夜気はひんやりと冷たく、澄み渡った夜空には無数の星が瞬いていた。

 そして、黒い湖の向こう側――切り立った崖の上にそびえ立つホグワーツ城のシルエットが目に飛び込んできた瞬間、俺は思わず息を呑んだ。

 

 何百もの窓から温かいオレンジ色の明かりが漏れ、いくつもの高い塔が星空を突き刺すようにそびえ立っている。前世で映画のスクリーン越しに何度も見た光景だったが、実際に自分の目で見上げる本物の魔法の城は、言葉を失うほど幻想的で、圧倒的な歴史の重みを放っていた。

 

「いっちねんせい! いっちねんせいはこっちだァ! 足元に気をつけろよォ!」

 

 暗いプラットホームに、ランタンを高く掲げた大男――ルビウス・ハグリッドの野太い声が響き渡る。普通の男の二倍はありそうな巨体と、モジャモジャの髭に覆われた顔を見て、新入生たちが一斉にどよめいた。

 

 隣を歩いていたドラ子が、その姿を見て冷ややかに眉をひそめる。

 

「……ふん。あれが父様の言っていた、森番の男ね。使用人のくせに、なんて野蛮で品位のかけらもない巨人なのかしら――」

 

 ぽすっ。

 

「――きゃうっ!?」

 

 本日二度目の俺の手刀が、ドラ子のプラチナブロンドの頭頂部に優しく命中した。

 

「いったぁい……!  ちょっとレオン、また叩いたわね!?  いくらあなたでも、二度もレディの頭を叩くなんて許さないわよ!」

「思っていても口に出さないのが、本物の淑女ってもんだぞ、ドラ子。ハグリッドはダンブルドア校長の信頼が厚いんだから、わざわざ聞こえるように悪口を言って敵を作ることはないだろ?」

「うっ……そ、それはそうかもしれないけれど!  だからって、いちいち暴力に訴えかけるのも紳士の振る舞いではないと思うけれど!?」

 

 涙目でプンプンと怒りながら、シルバーグレーの瞳で下から睨み上げてくるドラ子。

 俺は肩をすくめて軽く笑うと、自分が叩いたばかりの彼女の頭の上にそっと手を乗せ、シルクのように滑らかなプラチナブロンドの髪を優しく撫でてやった。

 

「大切な友人が周りに誤解されて損をするくらいなら、紳士なんて称号はいくらでも返上するのさ。――まあ、あとは単純に、君のこのサラサラな髪に触りたいだけかもしれないけどな」

「なっ……!?  ま、またそんなこと言って……!  人を子ども扱いして誤魔化さないでちょうだい!」

 

 ぷくーっと可愛らしく頬を膨らませながらも、俺の手を振り払おうとはしないドラ子。暗い夜道のおかげで、彼女の顔がどこまで赤くなっているのかは分からなかったが、その歩調が俺にぴったりと寄り添っているのを感じて、俺は小さく笑みをこぼした。

 

 その後、俺たちは四人乗りの小舟に分乗して、鏡のように静まり返った黒い湖を渡った。

 城の地下にある船着き場から石段を登り、巨大な樫の扉をくぐると、そこには松明の炎に照らされた広大なエントランスホールが広がっていた。

 

 正面の豪華な大理石の階段の上には、四角い眼鏡をかけ、黒髪をきっちりと後ろで束ねたエメラルドグリーンのローブの魔女――ミネルバ・マクゴナガル教授が待ち構えていた。

 

「一年生の皆さん、ホグワーツへようこそ」

 

 マクゴナガル教授の凛とした説明が終わり、「準備が整うまで、ここで静かに待っているように」と言い残して彼女が大広間へと消えると、残された新入生たちの間にざわめきが広がった。

 

 純血の家庭であっても、ホグワーツの『組分けの儀式』の具体的な方法だけは、新入生を驚かせるために秘密にされるのが暗黙のルールになっている。

 

 さすがのドラ子も、周囲の緊張した空気に当てられたのか、少しだけ不安そうに俺のローブの袖をちょんと引っ張ってきた。

 

「……ねえ、レオン。組分けって、いったいどうやって決めるのかしら。父様に聞いても『行けば分かる』としか教えてくれなかったのだけれど……まさか、みんなの前でいきなり実技試験でもさせられるのかしら?」

「はは、心配すんなって。そんな危ないことはしないだろ。まあ、順当にいって簡単な適正検査みたいなクラス分けじゃないかな」

 

 俺は余裕たっぷりに微笑んでドラ子を安心させた――が、その実、俺自身の心臓は内心でバクバクと早鐘を打っていた。

 

 やべえ……ドラ子には適当に濁したけど、俺、本当にスリザリンに入れるんだろうな!?

 

 冷や汗が背中を伝う。

 ドラ子がスリザリンに入るのは、もはや宇宙の法則レベルで確定している。だが、俺はどうだ?

 

 我がフォーリー家は、純血の『聖二十八一族』でありながら、代々穏健で実直な人間が多く、実はハッフルパフやレイブンクローの出身者がかなり多い家系なのだ。

 しかも、俺自身の中身は前世の日本人である。原作の悲劇を壊すためにドラ子を誘導したりはしているものの、生粋のスリザリン生みたいに「純血至上主義で権力欲の塊!」というわけでもないし、そこまで自分が悪辣で狡猾な人間だとも思えない。

 

 もしここで俺だけハッフルパフとかに放り込まれたら、ドラ子のストッパー役はどうなる!?  いや、百歩譲ってスリザリンが無理だったとしても、せめてハリーやロン(♀)の動向を間近で監視できるグリフィンドールにしてくれよ……!

 

 俺が内心で祈るような気持ちでため息を吐いた、その時だった。

 マクゴナガル教授が戻ってきて、俺たち新入生は二列に並び、いよいよ大広間へと足を踏み入れた。

 

 何千本ものロウソクが宙に浮かび、天井には本物の夜空そっくりの星空が魔法で映し出されている。四つの長いテーブルには上級生たちがずらりと並び、一番奥の教職員テーブルの中央には、銀色の長い髭をたくわえたアルバス・ダンブルドアが座っていた。

 

 そんなことを確認しているうちに、マクゴナガル教授が四本足の椅子の上に、継ぎ接ぎだらけの汚れたとんがり帽子――『組分け帽子』を置いた。

 

 帽子が裂け目を開いて歌い終えると、大広間に拍手が湧き起こる。

 

「――これだけなの!? ただ帽子を被るだけなんて、心配して損したわ!」と隣でドラ子がぷりぷり怒っている間に、マクゴナガル教授が羊皮紙の巻物を広げ、アルファベット順に名前を読み上げ始めた。

 

「ハナ・アボット!」――「ハッフルパフ!」

「スーザン・ボーンズ!」――「ハッフルパフ!」

「ハーマイオニー・グレンジャー!」――「グリフィンドール!」

 

 原作で聞き覚えのある名前が次々と呼ばれ、それぞれの寮のテーブルから歓声が上がる。

 そして、ついに俺の順番が回ってきた。

 

「レオン・フォーリー!」

 

 呼ばれた瞬間、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。

 隣に立つドラ子が、「先に行って待っていなさい」と言わんばかりに、シルバーグレーの瞳でしっかりと俺を見送ってくれる。

 

 俺は意を決して前に進み出ると、四本足の椅子に腰を下ろし、マクゴナガル教授から組分け帽子を被せられた。

 帽子のつばが目の前まで落ちてきて、視界が真っ暗になる。

 

 その直後、俺の頭の中に、小さくもよく通る声が直接響き渡った。

 

『ふむ……これはまた、ずいぶんと変わった頭の中をしておるな』

 

 組分け帽子の声だ。俺は思わず息を詰めた。

 

『十一歳とは思えぬほど整理された思考、そして一際強い好奇心と探究心……。先の見えない未来を解き明かそうとするその知性は、実にレイブンクローに向いているとも言えるな。フォーリー家の血筋なら、ハッフルパフで穏やかに力を伸ばすのも悪くない』

 

 おいおい、ちょっと待ってくれよ帽子さん!  レイブンクローもハッフルパフも魅力的だけど、俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ!

 

 俺が内心で強く反論すると、帽子がクスクスと忍び笑いを漏らしたような気がした。

 

『ほう……そうだな。よく見れば、君の本質はただの学者ではない。その抗えない好奇心と膨大な知識を「狡猾」に使いこなし、自分の目的のためであれば、既存の枠組みすら平然と書き換えて手段を選ばない危うさがある。――さて、少年よ。君はこのホグワーツで、いったい何を成し遂げたい?』

 

 帽子の問いかけに、俺の脳裏には、たった今自分を信じて見送ってくれたプラチナブロンドの少女の顔が浮かんだ。

 世界を救うのも、原作の悲劇を壊すのも本当だ。けれど、俺が今ここで絶対に譲れない一番の理由は、これしかない。

 

 決まってるだろ。――俺の大切な『友の名誉』と笑顔を、最後まで守り抜くためだ。

 

『……見事な野心だ。ならば、君の行くべき場所は一つしかあるまい!』

 

 次の瞬間、組分け帽子は大広間全体に響き渡るような大声で、高らかに叫んだ。

 

「――スリザリン!!」

 

 わあああっ!  と、大広間の右端にある緑と銀のスリザリン寮のテーブルから、割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こった。

 

 よっしゃあああ!  サンキュー帽子さん!!

 

 俺は内心でガッツポーズを決めながら帽子を外し、ホッと胸を なで下ろした。

 前を見ると、まだ列に残っているドラ子が、自分のことのようにパッと明るい笑顔を咲かせ、すぐに「当然よね」と言わんばかりに澄ました顔に戻るのが見えた。

 

 俺がスリザリンのテーブルの空いている席に腰を下ろすと、さらに数人の名前が呼ばれた後、ついに彼女の名前が読み上げられた。

 

「ドラセナ・マルフォイ!」

 

 大広間の視線が一斉に集まる中、ドラ子は背筋をピンと伸ばし、まるで女王の戴冠式にでも臨むかのような自信満々の足取りで椅子へと歩み寄った。

 そして、彼女が優雅に椅子に腰掛け、マクゴナガル教授が上から組分け帽子を下ろした、その時だった。

 

 帽子の先が、彼女のプラチナブロンドの髪に、触れるか触れないか――という、わずかコンマ一秒の瞬間。

 

「――スリザリン!!」

 

 帽子が迷いゼロで絶叫した。

 早すぎるだろ!  俺の時はあんなに長々と問答したくせに、さすがは生粋のサラブレッド、組分け帽子すら議論の余地なしと見たか。俺は思わずテーブルの上で苦笑いを漏らしてしまった。

 

 満足そうに頷いて帽子を返したドラ子は、拍手喝采のスリザリン・テーブルへと颯爽と歩いてくると、迷うことなく俺のすぐ隣の席へと滑り込んできた。

 

「ふふ、待たせたわね、レオン!  まあ、私たちがスリザリンに選ばれるなんて、最初から分かりきっていたことだけれど!」

「まったくだ。ドラ子なんて、帽子が髪に触れる前に決まってたもんな」

「当然よ、マルフォイ家の誇りだもの!」

 

 俺とドラ子が顔を見合わせて笑い合う。ハリーがこの後グリフィンドールに選ばれようが、ロナ(ロン)が同じ寮に行こうが、とりあえず俺とドラ子が同じスリザリン寮という最高のスタートラインに立てただけで、今夜は百点満点だ。

 

 やがて組分けの儀式が進む中、無事に同じ寮になれたことでテンションが上がったままのドラ子が、テーブルの下でそっと俺の袖を引き、少しだけ頬を染めて上目遣いにこちらを見てきた。

 

「……ねえ、レオン。さっき組分け帽子が歌っていた歌詞、覚えているかしら?」

「ん? ああ、スリザリンのパートだろ?」

「ええ。『スリザリンでは真の友を得る』って歌っていたわよね」

 

 ドラ子はいたずらっぽくシルバーグレーの瞳を細め、俺を照れさせようとする魂胆が丸見えの――けれど、その奥に隠しきれない本音の嬉しさを滲ませた声で、小さく囁いた。

 

「……なら、ホグワーツに入る前からすでに『真の友』が見つかっている人間は、いったいどうすればいいのかしらね?」

 

 わざとらしく小首を傾げてみせる美少女お嬢様。

 九歳のあの夜、孤独な女王様だった彼女が、二年越しに俺へと返してくれた最高のデレ台詞だ。

 

 俺は少しも動じることなく、平然とした顔で微笑み返し、彼女の耳元に言い放った。

 

「どうもしなくていいさ。――そんな回りくどい言い方をしても、ただ可愛いだけだぞ、ドラ子」

「なっ――!?  あ、あんたねぇ!  人がせっかく少し真面目に言ってあげたのに、なんでそうやってすぐ茶化すのよ、バカッ!」

 

 顔を真っ赤にして俺を睨みつけ、テーブルの下で俺の足をコツンと蹴飛ばしてくるドラ子。

 そんな彼女の横顔を眺めながら、俺はこれから始まる波乱万丈のホグワーツライフに向けて、密かに胸を躍らせるのだった。

 

 




TSロンが巨乳か貧乳かは派閥が分かれるところではありますが、本作では巨乳とさせていただく。
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