TSマルフォイの純血主義を矯正したら高飛車ツンデレ幼馴染(傲慢持ち)になった件 作:マルフォイは貧乳だろボケがふざけんな
ホグワーツでの生活が始まって数日が過ぎた、木曜日の朝のことだった。
「……ふぁあ。地下牢の寝室ってのは、静かでよく眠れるのはいいけど、朝日が入らないから時間の感覚が狂うな」
俺は、眠い目を擦りながら男子寮の階段を下り、スリザリンの談話室へと足を踏み入れた。
緑色のランプが揺れる談話室の中央では、すでに身支度を整えた一年生たちが暖炉の周りに集まって、朝から賑やかに盛り上がっている。
その輪の中心にいるのは、もちろん我らがスリザリンのお姫様――ドラセナ・マルフォイだ。
綺麗に整えられたプラチナブロンドの髪を揺らしながら、ドラ子は掲示板に張り出されたばかりの通達を指さして、よく通るソプラノボイスで息巻いていた。
「――いいこと? 今日の午後にある初めての『飛行訓練』は、グリフィンドールとの合同授業なんですって。つまり、あのハリー・ポッターも一緒ということよ! ポッターがどれだけ有名人か知らないけれど、空の上での実力は別問題だわ。この私が、ポッターなんかよりずっと綺麗に、誰よりも上手く飛んでみせるわよ!」
「おおーっ! さすがドラセナ様です!」
「グリフィンドールの連中に、マルフォイ家の華麗な飛行術を見せつけてやりましょう!」
クラッブやゴイル、それにパンジー・パーキンソンといった取り巻きたちが、ここぞとばかりに拍手喝采を送っている。
実際、マルフォイ家とはいえここまでドラ子が過度に持ち上げられているのは、「変身術」や「魔法薬学」の授業で優秀さを証明したのもあると思う。
……まあ、だからヨイショが酷くなってるんだが。
そんな光景を階段の下から眺めながら、俺は思わず口元を緩めてほっこりしてしまった。
原作のマルフォイなら、この場面で「俺なんかマグルのヘリコプターから間一髪で逃げ延びたことがあるんだぜ」といった、聞いているこっちが恥ずかしくなるような見栄やホラ話を吹聴していたはずだ。
だが、九歳の頃から二年間、俺が「過度な誇張や根拠のない自慢話は本物の淑女のすることじゃない」と刷り込み続けた結果、今のドラ子は変な嘘をつくことなく、純粋に「ハリー・ポッターよりも上手く飛んでやる!」と健全な対抗心を燃やすだけに留まっている。まるで運動会の前に張り切る小学生みたいで、なんとも微笑ましい限りだ。
「――あっ!」
その時、取り巻きたちに囲まれていたドラ子が、階段のところに立っている俺の姿に気がついた。
次の瞬間、それまで女王様然として澄ましていた彼女の顔がパッと明るく輝き、取り巻きたちをかき分けてトコトコと小走りで俺のそばへと駆け寄ってきたのである。
「遅いわよ、レオン! いつまで寝ているの! あなたを待っている間に今日の予定が発表されてしまったわよ!」
「はは、悪かったって。おはよう、ドラ子」
プンプンと怒る素振りを見せつつも、俺が起きてきたのが嬉しくてたまらないといった様子で、キラキラしたシルバーグレーの瞳で見上げてくるドラ子。
もし彼女に尻尾が生えていたら、今ごろブンブンとちぎれんばかりに左右へ振られていることだろう。なんだかその懐きっぷりが、主人の起床を待っていた大型犬のようで、俺はまたしても内心でほっこりしてしまった。
――と、そこへ。
俺とドラ子のあまりに気安いやり取りを見ていた取り巻きの中から、黒髪の少女――パンジー・パーキンソンが、少し棘のある表情でスッと歩み寄ってきた。
「……ねぇ、ドラセナ様。入学してからずっと気になっていたのですけれど、そのフォーリーとドラセナ様は、いったいどういうご関係なのですか?」
パンジーが値踏みするような鋭い視線を俺に向けてくる。
「二年前のブラック家のサロンで、この男がドラセナ様の隣に図々しく座ったのは私も見ていましたけれど……。まさか、あれからもずっと交流がおありだったのですか?」
周囲にいたクラッブやゴイル、セオドール・ノットたちも「そういえばそうだ」「なんで中立派のフォーリーが、いつもドラセナ様の特等席にいるんだ?」と言いたげな目でこちらに注目し始めた。
……まあ、そりゃ敵視されるよな。彼らからすれば、マルフォイ家の跡取りであるドラ子は絶対的な女王様なんだから。
俺は苦笑いを噛み殺しながら、変に波風を立てないよう、あっさりと肩をすくめて答えた。
「どういう関係って、ただの幼馴染だよ」
「――っ、むぅ」
俺がそう答えた瞬間、隣にいたドラ子がピクリと眉を動かし、なぜか不満げにぷくっと頬を膨らませた。
ん? 『ただの』ってつけたのが気に入らなかったのか? 言葉が足りなかったかな。
俺は少し考えてから、すぐに言葉を付け足してドラ子の方を見た。
「ああ、もちろんそれだけじゃなくて、大切な『友』でもあるよな」
「…………」
よし、これならこの間言ってた『真の友』ってやつだし、文句ないだろ! と思ったのだが――ドラ子はまだどこか納得いかないといった様子で、シルバーグレーの瞳を揺らしながら微妙に不満そうな顔をしている。
えぇ……? 幼馴染で、友達。これ以上他に何かあるか……? 親友? それとも悪友?。
俺が頭の上にクエスチョンマークを浮かべて悩んでいると、ドラ子は「もう、いいわ!」とでも言いたげに小さく息を吐き、パンジーたちに向かってビシッと胸を張って向き直った。
「――いいこと、パンジー。レオンは私と同じ『聖二十八一族』に名を連ねる、れっきとした純血貴族の跡取りよ。フォーリー家の当主と私の父様も、日頃から親しくお付き合いをしているわ。……それに、あなたたちも二年前の夜会で、レオンの持つ並外れた魔力のことはその目で見たでしょう?」
「そ、それは……ええ、杖なしで紙を鳥に変えたのは覚えておりますけれど……」
「変身術や魔法薬学の授業でも、私と肩を並べてみせたのはレオンだけよ。……つまりね、それだけの家格と実力があるからこそ、レオンには一番近くで『私に
ビシィッ! と大見得を切って言い放つドラ子。
その圧倒的な「マルフォイ論法」を前に、パンジーやクラッブたちは「な、なるほど……!」「ただの友達ではなく、ドラセナ様が実力を認めた第一の従者というわけですね!」「さすがドラセナ様、すげぇや!」と、あっさり納得して感嘆の声を上げた。
……あれ? 俺、いま思いっきり下っ端(従者)扱いされなかったか?
俺は一瞬、「やっぱ心の底では便利な下っ端くらいにしか見られてないのかな……」とほんの少しだけショックを受けかけた。
だが、チラリと横目でドラ子の顔を見た瞬間、その考えはすぐに吹き飛んだ。
取り巻きたちから「さすがドラセナ様!」と称賛されている当のドラ子自身が、ちっとも嬉しそうではなく、むしろ自分の言った言葉に「うっ……」と詰まったような、なんとも言えない複雑で微妙な表情を浮かべていたからである。
あー、なるほどね。この純血主義ガチ勢のスリザリン寮生たちを黙らせるには、ああやって俺を『一番優秀な配下』ってことにするのが一番手っ取り早いって判断したわけか。
彼女の性格と今の表情を見れば、それが俺をパンジーたちの追及から庇うための「嘘」だということは火を見るより明らかだった。
ここで俺が「誰が下っ端だよ!」なんて否定したら、せっかくドラ子が作ってくれたマウントと彼女の面子を潰しかねない。だから俺は、あえて何も言い返さず、ニコニコと余裕の笑みを浮かべてその場をやり過ごした。
そして、談話室を出て大広間へ朝食に向かおうと、暗い地下の廊下を歩き出した時のことだ。
前を歩いていたパンジーたちから少し遅れて歩いていた俺のローブの袖が、後ろから、くいっ、くいっ、と控えめな力で引っ張られた。
「ん? どうした、ドラ子」
立ち止まって振り返ると、そこにはさっきまでの威勢はどこへやら、耳をペタンと伏せた子犬のようにしょんぼりとした表情のドラ子が立っていた。
彼女は自分の指先をもじもじと絡ませながら、上目遣いに俺の顔色を窺い、消え入りそうな声で言い訳を始めた。
「……ち、違うのよ、レオン」
「どうした」
「さっきの、談話室でのことよ……! あ、あの場でパンジーたちみたいな純血貴族を納得させるには、あなたの家格を証明して、私の上下関係に組み込むしかなくて……。その、決して、本当にレオンのことを下に見てるわけじゃないのよ……? 嫌な気持ちにさせたなら、その……ご、ごめんなさい……」
最後は真っ赤になって俯きながら、マルフォイ家の人間が絶対に口にしなさそうな謝罪の言葉まで絞り出すドラ子。
九歳の頃の彼女だったら、「なにが友達よ、あんたなんか私の下僕に決まってるじゃない!」と本気でふんぞり返っていたところだろう。
それが今では、俺に嫌われるのを恐れてこんなに一生懸命フォローしてくるのだから、ずいぶんと優しく、そして可愛くなったものだ。
「――ふっ、ははは!」
「っ、な、なに笑ってるのよ! 人が真剣に説明しているのに!」
俺は堪えきれずに吹き出すと、涙目で睨み上げてくるドラ子のプラチナブロンドの頭の上にそっと手を乗せ、ポンポンと優しく撫でてやった。
「分かってるよ、ドラ子。さっきの顔を見れば、俺を庇うために言ってくれたことくらいすぐに分かったさ。――むしろ、逆に悪いな。俺はまだまだ貴族同士の面倒くさい腹の探り合いってやつについていけなくて、危うくドラ子の邪魔をするとこだった」
俺は手を離さず、シルクのような髪の感触を楽しみながら、いたずらっぽく笑ってウインクしてみせた。
「そういうことなら、これからも周囲への言い訳に遠慮なく俺を使ってくれよな。俺はいつでも一番近くで傅くぜ、お姫様?」
「――っ!? お、お姫様って……! な、なによそれ、人の気も知らないでからかうんじゃないわよ、バカッ!」
ボンッ! と音を立ててドラ子の顔が熟れたトマトみたいに真っ赤に染まり、彼女は懐から引き抜いた杖の先で、俺の脇腹をぐりぐりと突っついてきた。
「いててて! だから脇腹に杖をねじ込むのはやめろって!」
「う、うるさいわね! あなたが変なことを言って笑うからでしょ! もう知らない、さっさと朝食に行くわよ!」
ぷりぷりと怒りながらも、どこか弾むような足取りで前を歩いていくドラ子の背中を追いかけながら、俺は痛む脇腹をさすって小さく息を吐いた。
……まあ、冗談抜きで、このスリザリン寮でドラ子の隣にいるっていうポジションは、俺にとっても最高に都合がいいんだよな。
俺は歩きながら、少しだけ冷静な思考を巡らせた。
これから七年間にわたって襲いかかる原作の悲劇や陰謀を掻い潜り、粉砕していく上で、スリザリン寮の内部にいることのメリットは計り知れない。
なぜなら、この寮には将来の死喰い人候補や、現在進行形で元・死喰い人を親に持つ子どもたちがわんさか集まっているからだ。
クラッブやゴイル、ノットといった連中が親から聞いてくる何気ない噂話や、家の動向を少し注意して聞いておくだけで、闇の陣営やルシウス・マルフォイ周辺の不穏な動きをいち早く察知することができる。
それに、今回の『賢者の石』の一件を含め、最初のうちは俺が前面に出てすべてのイベントを強奪しすぎない方がいいだろう。
ハリー、ロン(♀)、そしてハーマイオニーの黄金トリオには、原作通りに試練を乗り越えて絆を深め、主人公としての経験を積んでもらう必要がある。
俺が全部先回りして解決してしまったら、いざという時にハリーたちが成長しそこねてしまうからな。
もちろん、死者が出たり、取り返しのつかないイレギュラーが起きたりしたら困るから、裏からしっかり注視して安全装置を張っておく必要はあるけどさ。
そんな風に策略家めいた計算を頭の中で組み立てつつ――俺は、数歩先でチラチラとこちらを振り返り、「早く来なさいよ」と目で合図してくるプラチナブロンドの美少女を見た。
……とはいえ。こんな風に理由を並べてはいるけど、単純にこいつの不器用な可愛さに、俺自身がすっかり絆されちまってるのも事実なんだけどね。
策略や原作改変のためだけではなく、ただ純粋にこの誇り高き少女の隣にいたいと思う自分がいることを自覚して、俺は誰にも見えないように小さく苦笑した。
☆☆☆
大広間に到着すると、すでに四つの寮のテーブルは朝食を摂る生徒たちで賑わっていた。
俺とドラ子がスリザリンのテーブルに腰を下ろし、トーストとベーコンに手を伸ばしていると、突然、大広間の高い天井の窓から何百羽ものフクロウが一斉に舞い込んできた。
朝の郵便配達だ。
バサバサという羽音とともに、それぞれの生徒のもとへ手紙や小包が落とされていく。俺のもとには両親からの近況伺いの手紙が届き、ドラ子のもとには高級な焼き菓子の詰め合わせが届いた。
と、その時。
隣のグリフィンドール寮のテーブルから、ちょっとした騒ぎが聞こえてきた。
「あれを見ろよ、ロングボトムになにか届いたぞ!」
「わあ、ガラスの玉が真っ赤に光ってるわ!」
視線を向けると、丸顔の少年――ネビル・ロングボトムが、祖母から送られてきたらしい野球ボール大のガラス玉を手に持って、困ったように眉を下げていた。
中には白い煙が詰まっているはずなのだが、ネビルが握った途端、その煙が鮮やかな『赤色』へと変わって激しく渦巻いている。
原作通りなら、ここでマルフォイがグリフィンドールのテーブルまでしゃしゃり出ていって、ネビルの手からその玉をひったくり、ハリーと一触即発になるところだ。
だが、今のドラ子は、俺の隣で優雅に紅茶のカップを傾けたまま、ピクリとも腰を上げようとしなかった。
当然だ、他人の私物を横から勝手に奪い取るなどという品位のない真似を、今の彼女がするはずがない。
「……ふーん。あれは『思い出し玉』ね」
ドラ子はグリフィンドールのテーブルを遠巻きに眺めながら、退屈そうに小さく鼻を鳴らし、隣にいる俺にだけ聞こえるような小さな声でボソッと言った。
「何かを忘れていると赤く光る道具だけれど……そもそも『何を忘れているのか』自体を教えてくれないのだから、思い出す役には立たないじゃない。魔法道具としては、普通に欠陥品だと思うのだけれど」
あまりに的確で容赦のないツッコミに、俺は思わず吹き出しそうになるのを堪えて頷いた。
「はは、それについては完全に同意だな。『何かを忘れてるってことだけを思い出させる玉』なんて、ただ不安を煽るだけのストレス製造機だよ」
「でしょう? やっぱりレオンとは話が合うわ。ほら、ロングボトムが自分が何を忘れたのか分からなくてパニックになっているじゃない」
実際、向こうのテーブルではネビルが「いったい何を忘れたんだろう……」と頭を抱えて唸っており、その横でハリーとロナが「マントは着てるし、教科書もあるわよね?」と一緒に探し物を手伝ってやっているところだった。マクゴナガル教授が駆けつけてきて怒鳴るようなトラブルも起きず、きわめて平和な朝の風景である。
「さて、朝食が終わったら午後は飛行訓練だな。準備はいいか、ドラ子?」
「愚問ね。あなたと何百時間競争してきたと思っているの? 今日の主役はポッターじゃなくて、この私よ!」
ふふん、と自信満々に微笑むドラ子。
性別が変わってもクディッチが好きな彼女とは、せがまれて何度も飛行競争をしたものだ。
とはいえ……このままドラ子が原作のような事件を起こさないのであれば、多少テコ入れはしないといけないがな。
6割手直しのお話。
ありがたいことにランキング登ってて嬉しいです。
サブタイの議題は色々調べた結果、近親婚と偏った栄養バランスが原因なんじゃねーか、という結論に至ったため、次話からは別の議題に移ります(サブタイで遊ぶな)。
ちなみに読んでてわかると思いますがドラ子は主人公にガッツリ依存してます。