「Your Dead!」
「は?」
白と黒の市松模様が延々と続く世界で、男は間抜けな声を漏らした。
男の正面には白い結晶で出来た玉座に座っている男がいる。
紫色の髪。顔の左半分は骨の仮面で埋まっている。
右側が赤、左側が紫という奇妙な色の服を着ている。
「当然だが私は神だ。お前の知りたい事なんでも教えよう(ウィキ調べ)」
何故か目の前の男は神を名乗り、律義にかっこまで言う。
そのことに男──名を佐藤雄介は首をひねる。
「あの、Your Deadってどういうことですか? 私は死んだってことですか?」
「イグザクトリー。そうだ、お前は死んだのだ。最期の記憶を見せてやろう」
そして佐藤の記憶がよみがえる。
ビル街を歩いていた途中。ふと空を見上げたらそこには落下してくる女性が居た。
そして佐藤は女性の下敷きになり、ぐちゃっと潰れ死んだのだ。
「うっ…………」
佐藤は吐きそうになるもどうにか堪えた。
「という訳で不幸にもなくなってしまったおんしに異世界転生のチャンスをやろう! 特典はこっちで決めるね♡」
「……いえ、あの。異世界転生とかは特に……普通に地獄か天国に落としてくれると……」
佐藤はアニメも漫画も人並み以上に嗜む。
だが、自分が転生するなど御免被る。フィックションはフィックションだからいいのだ。
「えー、君が居た世界には天国も地獄も無いよ?」
「……ない、のですか?」
「うん。単に魂をリセットして次の転生をさせるシステムしかない。天国も地獄もまやかしだぁね」
「……そう、ですか……では、そのように転生を……」
「つまんないからやーだ♡」
男がにっこりと笑顔で言った。
「という訳で君の転生特典は……これだぁ!」
男は虚空からくじを引っ張り出した。
くじには【物質操作】と書いてあった。
「お、あたりだぁ! やろうと思えば無から有を作る事も出来るしあらゆる物質を操作する事が出来る! つよつよだぁね!」
「……はぁ……異世界転生とやらが避けられないのならば、私はどうなるのです? その……転生特典? とやらを持って異世界? とやらに行くのですか?」
「うん。転生先のボディはこっちで用意するケド……転生先の時代は~最初期だぁ! さぁ、過去の世界で君は生き抜くことが出来るのか! シーユーアゲイン!」
佐藤の足元が消え、佐藤は異世界へ落とされた。
■
「……どこだここ」
女の綺麗な声がした。
そのことに佐藤は首をひねった。はて、今自分で発したような気がするが気のせいだろうか、と。
寝っ転がった状態だったので立ち上がる。
胸があった。
「は?」
でかい。
胸がでかすぎる。百センチは超えるおっぱいがそこにはあった。
雪のように綺麗な肌にそびえる巨峰。乳首も綺麗な色をしている。
「馬鹿な──!」
そう佐藤はまたぐらに手を入れる。
そこに男の象徴はなく、ハート型の陰毛とスジがあるだけだった。
「女体化?! 何故?! ホワイ?!」
後ろで火山が噴火した。
「ふぁっ?!」
そして佐藤は少し冷静になって周囲を見る。
そこは祝熱地帯だった。
マグマが至るところから噴出し、地面は割け、脈動している。
まるでマグマオーシャンのようであった。
「え、なにこれ」
ドッキリかと思って頬をつねるも普通に痛いし夢特有の感覚はない。これが現実だと訴えてくる。
更に熱い。火傷してないのが不思議なぐらいに熱い。
佐藤はどうにかせねば、と何か出来ないか考える。
こんな状況だと焼死してしまうと。
そして──己の内の力……転移特典である物質操作に辿り着いた。
「……こうか?」
佐藤は地面を操作し、持ち上げた。
まるで念動力のように動かしたが、これは物質を操作しての事だ。
「……なるほど」
始めて得た超能力にワクワク出来なかった。
いや、ここがただの平原などなら年甲斐もなくワクワク出来たのだろうが、こんな終末みたいな世界でワクワク出来るわけがなかった。
取りあえず生き残る術を探ろう、と佐藤は鍛錬を始めた。
■
百年が経った。
世界はまだマグマの海に覆われている。
そして、佐藤は名を変えた。
佐藤の容姿は美しい女の物になっている。
銀髪碧眼。髪は腰の少し上まで届く長髪。
腰は細くケツと胸はでっかく夢のある体系。
身長は高く二百四十センチという圧倒的巨体。
女の姿で佐藤雄介は名乗れないだろう、と名前を変えることにした。
佐藤は昔はゲームをやっていて、その時に決まってつけていた名がある。
その名はルフトと言い、ドイツ語で空気を意味する名だ。
そして佐藤はルフトと名乗り、力に対し訓練を続けていた。
「マシンガンミサイル」
ルフトが空に浮かびながら虚空からトマホークミサイルを数千単位で創造した。
ルフトのスキルである【物質操作】は物質を生み出し操る事さえ可能にした。
それによりトマホークが地面に向かって飛んで行き、大爆発を起こしていく。
「はーっはっはっは!」
もはやルフトはやけくそ気味だった。
百年。普通の人間なら老いて死ぬ時が流れた。
だがルフトは死ななかった。
神特性の身体は不老不死に近く病と老いには無縁で怪我をしても──それこそ欠損しても数秒あれば治る再生力を持っていた。
だが、肉体は完全無欠だとしても精神はそうではない。
故に前世の知識を元にあらゆる兵器を作って遊んでいた。
「……飽きた」
だが、それも何年も続ければ飽きた。
最近では物質を人形のように形作り操作したり、それらを数百単位でぶつけあって戦わせるなどをしていた。
「……飽きた」
しかし、それでも一人遊びの人形劇。つまらない。
はぁ、とため息を吐いてから空に上がる。
自力ではまだ飛べないので足元の岩を操作しての飛行だ。
そして空高く──成層圏近くまで飛び上がり、自宅に戻る。
そこは少し大きな浮島だ。浮遊島ともいえるだろう。
物質操作の力で永続的に浮かばせている場所でそこには大きな屋敷がある。
白い大理石でできた古代ローマを思わせる家だ。
家の中に入る。
そこの作りは現代的だ。
ある程度物理法則を無視して作ることも出来るがそれだと常にリソースを消費するのである程度は物理法則にのっとっておかないと維持が面倒なのである。
そして寝室に入り、ふかふかのベッドにダイブする。
「はぁ……」
本日何度目になるかわからないため息を吐いた。
──この退屈はどうしたら解消されるだろうか。
文明が無いので人との交流など出来ず、本も漫画もゲームも当然ない。
人形遊びも百年続ければ飽きる。
ならば他の事はないだろうか。
だが、己の能力は極まりつつある。後五十年程で完成するだろう。
そのあとはどうする──
「……何かないかな。転生特典以外に、何か力を──」
そう思いルフトは胡坐をかき瞑想のポーズを取った。
そして己の内に意識を向け──そこに宿る力に気づいた。
「……魔力か? 魔力だな! 魔力だこれ!」
うぉぉおぉと興奮しルフトは立ち上がって掌を突き出した。
「火! 比! 日! 費! 灯! 火! でろぉぉぉぉ!」
そして──手の平から小さい火が出た。
「よっしゃぁぁぁぁ!」
これであと数百年は退屈しないで済む──そう思いルフトはガッツポーズをした。
■
魔法を極めようとして四百年経った。
「ついに完成したぞ……!」
ルフトは自宅のパソコン前ではぁはぁと荒い息を吐いていた。
このパソコンは物質操作でうみだしたパソコンだ。
だが、外見と機能は作れても肝心のOSが作れなかった。
しかし今は違う。魔法との合わせ技でパソコンとして機能するように作れたのだ。
そしてついに完成した地球交信の魔法。それによりインターネットを繋げれるはずだ。
ルフトはパソコンを起動し、ブラウザアプリを立ち上げた。
「おおおおおお!」
感動のあまり声と涙が出た。
食事も排泄も不要の身体なので下はでない。
「インターネットさいこぉぉぉぉぉおぉ!」
ルフトは狂喜乱舞し踊り狂うのだった。