Demon's Remnant ― 悪魔の残滓   作:虚空小白

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本作には、一部暴力表現や流血描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。


序章:死を許されなかった者
プロローグ


 水滴の垂れる音が聞こえる。

 

 少年が目を開けると、手足を縛られ、岩壁の窪みに閉じ込められていた。

 入口には丸太を粗く組んだ格子が嵌まっている。

 

 その向こうに、褐色肌の中年男が立っていた。

 

 頭には二本の角が生えた獣の頭蓋骨を載せ、黒い毛皮の外套を羽織り、腰には粗く編んだ蓑を巻いていた。

 

 頭蓋骨の隙間からこぼれ落ちる白髪が、揺れもせずに肩へ垂れている。

 赤紫色の瞳が、少年を静かに見下ろしていた。

 

 男は無表情のまま告げた。

 

「僕の声が聞こえていたら頷いてくれますか」

 

 少年は首を縦に振った。

 

「少年、キミは死を許されなかった」

 

 少年は顔を顰めた。

 

「不死になった、と言えば理解できますか」

 

 少年は、その名を口にした。

 

「……悪魔化現象」

 

 男は顎にそっと手を当てた。

 

「今は悪魔化現象と呼ばれているのですか」

 

 少年に質問を投げかけた。

 

「体調はどうですか? 喉が渇いているのなら水を用意しますが」

 

 少年は男を睨みつけた。

 

「喉が渇いているし、頭がくらくらして気持ち悪い。この手足の拘束も外してほしい」

 

 男は静かに頷いた。

 

「わかりました。水を用意するので、少し待っていてください」

 

 その場を立ち去った。

 少年は岩肌の地面に頭を当てた。

 

 男は革の水入れを持って戻ってきた。

 閂板(かんぬきいた)を外して出入口を開け、中に入る。

 

「ゆっくりと飲んでください」

 

 少年に水を飲ませた。

 少年の口から飲み口を離し、手足の拘束をナイフで切る。

 

 少年は起き上がれないほど衰弱していた。

 

「不死といっても体調は崩します。キミは人と何も変わっていません。食事を用意しましょう」

 

 少年はぐったりしたまま男に尋ねた。

 

「あいつも生きているのか」

 

 男はわずかに目を伏せた。

 

「同行していた少女については、キミの体力が回復してから話します。ここから出してあげることはできませんが、可能な限り、キミの要望に応えます」

 

 出入口を開けたまま出ていった。

 だが、少年に起き上がるだけの体力は残っていない。

 

 男は料理が入った木の器を持って戻ってきた。

 

「キミの口には合わないかもしれませんが、我慢してください。危険なものは入っていないので安心してください」

 

 漂う異臭に少年は顔を顰めたが、強引に食べさせられた。

 

「今のキミに必要なものは休息です。排泄物は、奥に置いた入れ物で済ませてくれると助かります」

 

 男は出入口を閉め、閂板を嵌めて立ち去った。

 少年の意識は混濁し、そのまま眠りにつく。

 

 なぜ、こんな目に遭っているのだろうか……——




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