お金が冒険で一番大事なもの~【お金】で何でも解決できる力を持っているのに、仲間のせいで今日も貧乏です~ 作:ダブルピース
屋敷に戻った後、僕たちはシュガさんのおもてなしを受けた。
大きなお風呂で今日の疲れを取り、用意してもらったパジャマに着替える。
入浴の後は夕ご飯。
シュガさんは「大したものを出せなくて申し訳ありませんが……」と言っていたが、テーブルに並べられていたのは牛ステーキ。
借金を抱え、毎日ふかし芋を食べている僕たちにとっては超豪華だった。
「うおおおおおお! なんだこれぇぇぇ! うめえぞぉぉぉ!」
オオガミは猛烈に感激していた。牛肉を口に含んだまましゃべるので、食べカスが飛んでいる。
エナは「はむっ、はむっ」と、数日間餌にありつけなかった獣のように前屈みになって頬張っていた。
「……」
僕はというと、ステーキの味がよく分からなかった。
美味しいとは思うのだが、リシアちゃんの安否や、どうやって探すかという心配事で頭がいっぱいで、せっかくの料理を楽しめない。
空腹が満たされたところで、僕たちはメイドさんに、今日泊まる部屋へ案内してもらった。
「こちらがエナ様のお部屋です」
「うひゃぁぁぁぁ! なんなのこの部屋!」
用意された部屋を見て、僕たちは思わず興奮した。
茶色を基調にした高級感のある部屋で、天井にはシャンデリアまである。
なんだか馬小屋のことを「住処」と呼んでいたのが、急に恥ずかしくなってきた。
三人で過ごせそうな広さなのに、まさかのこれで一人部屋。僕とオオガミは隣の部屋に移動した。
「ふぅぅぅぅ! このベッドすげぇ跳ねるぞ!」
泊まる部屋を案内されたオオガミは、部屋に着くなり、真っ先にベッドへ向かい、上に立ってぴょんぴょんと跳ね始めた。
よく他人のベッドでそんなことができるよな……メイドさんも苦笑いしているし。
頼むから、屋敷の物は壊さないでくれよ。
心配事が一つ増えてしまった。
「サク様のお部屋はこちらになります」
「ありがとうございます」
部屋に案内された僕は、お礼を言ってベッドに横になった。
どうせ起きていてもやることがない。それなら、明日に響かないよう早めに寝てしまおう。
「……すぅ……すぅ……」
○○○○
「もう……全然眠れないじゃない」
暗闇に包まれた部屋で目を覚ましたエナは、ぼそっと独り言をこぼした。
眠れない。横になっているベッドは寝心地がいいはずなのに、なかなか寝付けなかった。
「はぁ……やっぱりダメね」
エナには、サクとオオガミに言っていない秘密があった。
それは、誰かと一緒じゃないと眠れないということ。
冒険者になる前は魔法学園の友達の部屋で寝て、今は馬小屋でサクとオオガミと一緒に寝て、なんとか夜をやり過ごしていたけど。
「……これはかなりまずいわね」
寝不足はお肌の天敵って言うのに、誰かいないとぐっすり寝れない。
それじゃ誰かと一緒に寝る?
いや、できない。
そんなことをしたら秘密がバレて、あいつらに「お子ちゃま」とバカにされる。それだけは避けねば。面目が潰れてしまう。
「そうよ。私は天才魔法使いよ。一人で寝るぐらい余裕だわ」
エナは自分に言い聞かせて、瞼を閉じた。
そういえば本で読んだけど、頭の中で羊を数えると眠れるらしい。
さっそく実践。
羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、羊がよん――
ガタガタガタガタガタッ!
「うるさいわねっ! もうっ!」
強風で激しく鳴る窓が、睡眠の邪魔をする。
もう一度挑戦しても、ガタガタという耳障りな音でまた目が覚めてしまった。
ムカついて窓を割ってやろうかと思ったが、物に当たっても何も解決しないのでやめておく。
「はぁ………しょうがない。誰かの部屋で寝るしかないわね」
一人で寝るのを諦めたエナは、誰かと一緒に寝ることにした。
さて、誰の部屋にしようか。
「バカオオガミは論外」
寝相が悪いし、秘密を一番バレたくないのはあいつだから。
となると、サクの部屋しかない。
「まぁ、サクならアリね。寝相もいいほうだし」
こっそり部屋に忍び込んで、サクが起きる前に自分の部屋へ戻ればいい。
もしバレても、脅して黙らせればいい。
そうと決まれば、さっそく――
「……!」
体を起こそうとした、その瞬間。
ぎぃーと扉が開く音がして、誰かの足音が聞こえる。
誰かが部屋に入ってきた?
一体誰なの?
エナは寝たふりをしながら、侵入者の正体を探る。
まさかオオガミ?
それとも、この屋敷の使用人?
「……ふふふっ。すっかり寝てる」
女の笑い声が聞こえた。
ベッドがぎしりと沈む。誰かが、寝ている私の顔を覗き込んでいる気配がする。
「それじゃさっそく」
「……!」
「ふむふむ……これはこれは。小ぶりだけど触ってみるとちゃんと柔らかみがある。柔らかいだけじゃない、この弾力。一度触っただけで虜になってしまうね」
何なの?こいつ!!!
エナの胸を揉みながら、女は小声で解説する。
「それに触られたときの表情も素晴らしいね。もっとイジめたくなっちゃう」
は、はぁ!?
「これはいけませんな~私を誘惑する悪いおっぱいはこの手で」
「何してるよぉぉぉぉぉぉぉ!バカぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
○○○○
「何してるよぉぉぉぉぉぉぉ!バカぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
真夜中で、突如荒げている声が聞こえたので、僕は飛び起きた。
「あんた誰なのよ!?ちょ、ちょっと!?」
この声はエナ!
仲間が危険だと思った僕はまだある睡魔を消して、急いでエナの部屋に走った。
「エナ、大丈夫!?」
勢いよく扉を開け、明かりをつけると部屋全体が照らされる。
そこにはエナと……誰!?
知らない人がいた。茶髪を編み込みしている女の人が。
茶髪の女の人は、仰向けで寝ているエナの上に乗っている。
一瞬、エナが寝込みを襲われていると警戒したが、茶髪の女性が持っていたのは武器とかじゃなく、エナが着用しているパジャマだった。
エナを脱がそうと服を捲ろうとしている。
……別の意味で、エナは寝込みを襲われていた。
どうやら命を狙われているわけじゃないみたいだ。
安心した僕に再び睡魔が襲ってくる。
「ごめん……あとはお二人でごゆっくりどうぞ」
「何勘違いしてるのよ!助けなさいよ!」