お金が冒険で一番大事なもの~【お金】で何でも解決できる力を持っているのに、仲間のせいで今日も貧乏です~ 作:ダブルピース
「どうも~私冒険者やってます。キロです!」
「何が……キロよ。エロの間違いじゃない?」
「さっきはごめんね~私、かわいい女の子を見るとセクハラをしたくなる性格なんだよ」
「どんな性格よ! バカじゃないの!」
シュガさんが駆け付けてくれたおかげでなんとか茶髪の女の人――キロさんの暴走を止めることができた。
寝込みを襲ったことを両手を合わせて謝っていたが、ものすごい軽い謝罪だったのでエナの怒りが収まらないままだった。
僕も何とか機嫌を直してもらおうと、「胸は揉むと大きくなるらしいよ」って一瞬エナに言おうとしたが、そんなこと火に油を注ぐみたいなもんだ。
だから僕は黙っていた。
「申し訳ございませんエナ様。キロ様を止めようとはしたのですが」
「いやいやシュガさんが謝ることじゃないですよ! 悪いのは全部私ですから」
「そうよっ! あんたはもう少し申し訳なさそうにしなさいよ! 土下座しなさい! 今すぐ土下座をして私に詫びなさい!」
「お仕置きをしてくれるの? ありがとう! 可愛い子にだったらご褒美だよ」
「気持ち悪っ!」
エナはドン引きをしていた。
距離を取ろうとしたが、興奮気味のキロさんにぐいぐいと詰め寄られる。
なんだろう……すごい綺麗な人だけどすごい残念な人だ。
キロさんの容姿は完璧だった。
左右に編み込みを作っている茶髪はよく手入れが行き届いていて、黄土色の肌は健康的で傷も肌荒れもない。もちろん顔も整っていて、ヒスイ色の目にずっと見つめられると心を奪われそうだ。
身長も僕より高くて、胸もエナよりある。
容姿端麗っていう言葉があるけど。たぶんこういう人のことを言うんだろうな。
「さぁ! エナちゃん私にお仕置きを!」
黙ってキロさんを見てても、話が進まらなさそうだったので、僕は質問をする。
「あの……冒険者っていうことは、まさかあなたもシュガさんの依頼を受けに来たんですか?」
「ふふふ……黒髪の少年よ。よく分かったね。そう! 私こそがリシアちゃんを悪者から助け、リシアちゃんと婚約する白馬の王子様なのだ!」
何言ってるんだこの人は?
エナも僕と同じことを思っていたみたいで、「何言ってるのこいつ?」とボソッと言っていた。
いきなり変なことを言っているキロさんに困っていた僕たちだったが、それ以上に困っていたのはシュガさんだった。
「キロ様。うちの娘は9歳ですので……いきなり婚約すると言われてもちょっと困ります」
「いえいえシュガさん……いやお父さん! 人を愛するのに性別や年齢は関係ありませんよ」
「アンタみたいなド変態。誰も結婚するわけないでしょ!」
「何~? エナちゃん嫉妬しちゃった? 安心して私が住んでいる所は多重婚が許可されてるからちゃんとエナちゃんをお嫁にもらうから。信じていないなら誓いのキスをしよっか?」
キロさんは「ん~」と目を閉じながらも唇を尖らせている。
「しないわよ! そんなにしたいなら、ゴブリンにでもしてなさい!」
「照れなくていいのに~」
「……こいつ殴っていいのかしら」
エナは拳をぶるぶるさせていた。
これ以上怒らせると本当に殴りそうだ。それだけは避けたいので話を変えた。
「あの僕たちもリシアちゃんを探しに来た冒険者です。僕はサクと言います。あと今は寝てますけどオオガミっていうやつがいます」
「むむむっ……それじゃサクもオオガミもリシアちゃんを狙っているライバルなんだね」
なんでそうなるんだよ。
「違います」
「あ、リシアちゃんじゃなくてエナちゃんか! やっぱりそうか! エナちゃん可愛いから、二人とも狙ってるよね~」
「違いますから」
僕が否定すると、エナが「なんか振られたみたいでムカつくわね」と呟いた。
「……本当? 嘘ついちゃダメだからね」
「嘘つきませんから」
「それじゃ! 今日から仲間だ。よろしくね、サク」
安心したキロさんは、仲間の証として僕に手を差し出した。僕はその手を握り、「はい、よろしくお願いします。キロさん」と握手する。
「キロでいいよ」
「それじゃ、キロで」
変な人だけど、どうやら悪い人じゃなさそうだ。
「ってことは、サクはオオガミとできてるんだね?」
「できてないから!」
……変な人ではあるけど。
「それじゃ、さっそくリシアちゃんを捜索したいところだけど……明日にしようかな。雪強かったし。私はそのまま寝るとするよ」
「キロ様すみません。明日来られると思っていたので、まだお部屋の用意ができてなくて……今片づけをしてますので、少々お待ちください」
「いや、部屋は用意しなくていいですよ。私が早く来たのが悪いですから。今日はエナちゃんと一緒に寝ます」
「ふざけないで! 私はサクと寝るわ。アンタは一人で寝なさい。そしてそのまま永眠してなさい!」
「そんなこと言わないでよ~、私たち初対面でしょ? だから少しでも交流を深めるために一緒に寝る必要があると思うんだよ。それに男の子と一緒に寝るって結構危ないんだよ。サクがエナちゃんの美貌に見とれていつ襲ってくるか分からないんだよ」
「安心しなさい、サクはいくじなしだから」
「……」
なんでだろう。少しショックを受けてしまった。
「エナ、確かにその通りかもしれないよ。男の僕と一緒に寝るよりキロと一緒に寝たほうがいいんじゃないかな?」
「私をあんな変態女と一緒に寝ろって言うの?」
強い眼差しを向けてくるエナ。「でも……」と意見を言おうとしたけど、無言の威圧が僕を黙らせた。
まぁ、エナが良いって言うなら僕は一緒に寝ていいけどね。いつも馬小屋でオオガミと一緒に寝ているから。
「分かったよ……それじゃ一緒に寝よ」
「なら決まりね」
僕が承諾をすると、今度は「むぅ~」とキロが頬を膨らませながら睨んできた。
「やっぱりライバルじゃないかぁぁぁぁ!」