お金が冒険で一番大事なもの~【お金】で何でも解決できる力を持っているのに、仲間のせいで今日も貧乏です~   作:ダブルピース

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第14話

 ……不思議な感覚だ。

 初めて来たはずなのに、まるでここが生まれ故郷であるかのように、ランシャの情報が頭の中に流れ込んでくる。

 ここから18メートル離れた先で、子供が三人、雪合戦をしている。飛んでくる雪玉から逃げている最中に一人の男の子が転んだ。

 33メートル先の家では、老婆が花瓶を落として割ってしまった。

 すぐ近くでは、オオガミが鼻をほじりながら僕のほうを見ている。

 そして……

 ここから遠く離れた場所にある洞穴。氷柱ができるほどの極寒の地で、すやすやと眠っている少女の姿があった。

 その子は、僕たちが必死に探していたシュガさんの娘、リシアちゃんだった。

 い、生きてる! 生きてるぞ! 

 ……でも。

 

「サク! サクってば!」

 

 さっきまで何も聞こえなかったのに、突然、周りの騒音が耳に飛び込んできた。

 エナの声だ。切迫した声で、僕の名前を叫んでいる。

 

 

「げふっ!」

 

 僕はビンタをされたらしく、頬にヒリヒリとした痛みが走った。

 その痛みで、千里眼(ナルージャ)が解けてしまう。目を開けると、エナ、オオガミ、キロ、マルトトーゼさんと、見知った顔が並んでいた。

 

「サク! あんた! 目は大丈夫!?」

「え?」

 

 エナに言われて、僕の頬に水滴のようなものが流れていることに気づいた。

 涙かと思って触ってみると、それは赤い血だった。

 うわ!なんだこれ!?

 

「私のこと、見えるかい?」

 

 キロが目の前で手を振っている。僕が「見えるよ」とうなずくと、ほっとした笑みを見せた。

 

「「どうやら失明はしてないみたいだね。よかったよ」

「よかったよ、じゃないわよ! 目から血が出るなんて聞いてないわ! 心配したじゃない!」

「ごめんね、エナちゃん……私も、こんなに負担の大きい魔法だとは思わなかったんだよ。サクも、ごめん。軽率だった」

「別にいいよ。そんなことより!」

「そんなことじゃないでしょ!? あんた自分のことなのよ! もし目が見えなくなったらどうするつもりだったのよ! 誰が私の傷を治すのよ!」

「ご、ごめん」

 

 エナは声を荒げて叱りつける。オオガミが「そんなに怒るなよ」となだめようとしたが、怒りは収まらず、エナは「バカっ」とそっぽを向いてしまった。

 

「何キレてんだ、エナのやつ? 牛乳飲んでねぇからか?」

「いや、僕のせいだよ」

 

 エナが怒っているのは、僕を本気で心配してくれている証拠だ。

 僕はもう一度エナに謝ってから、キロのほうを見た。

 

「リシアちゃん、見つけたよ。しかも、生きてる」

「本当かい!?」

「うん。ランシャから北にある洞穴。そこにいる」

 

 僕が朗報を伝えると、マルトトーゼさんは「……そこか」と小さく呟いた。

 

「うおおおおお! 生きてるのか!」

「うん!」

「サク、お手柄だよ!」

 

 オオガミとキロに褒められて、こそばゆい気持ちになる。

 

「だけどリシアちゃんの髪が変だったんだ。……なんだか、赤色だった」

「赤色?」

 

 写真に写っていたリシアちゃんは、ベージュ色の髪をしていたはずだ。

 

「マルトトーゼさん、リシアちゃんって髪を染めたんですか?」

「いえ、染めていません」

 

 それじゃ、なんで髪が赤かったんだろう?

 僕が考え込んでいると、キロは何か心当たりがあるのか、顔色を曇らせた。

 

「これは急いだほうがいいね。手遅れになる前に」

「え?」

 

 どういう意味だろう?

 けれどキロは答えず、伝達石を取り出して、イルム団のアジトにいる部下と話し始めた。

 

「もしもし、私。ちょっとお願いがあるんだけど、カナちゃんをこっちに来させるよう伝えて。急ぎでお願いね」

『はい。カナディアさんにお伝えします』

「ありがとう。私は今からそっちに行くから」

 

 通話を終えると、キロは心配そうに僕を見た。

 

「サク、今から動ける? 無理そうなら、シュガさんの家で休んでていいよ」

「大丈夫。僕も洞穴に行くよ」

「ごめんね……無理させちゃって。本当は休んでほしいけど、ゆっくりもしていられないから」

「キロは、イルム団のアジトに行くの?」

「うん。ちょっと調べたいことがあってね。そのかわり、部下を一人こっちに呼んだよ。私よりずっと強い、期待の新人をね」

 

 〇○○

 

「サクさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 マルトトーゼさんが報告のために一度屋敷へ戻ると、すぐにシュガさんが僕の名前を叫びながら飛び出してきた。僕の肩をつかみ、必死の形相で聞いてくる。

 

「ほ、本当にリシアは見つかったんですか!?」

「はい。リシアちゃんは、生きてますよ」

「はっ……あはははは! よかったぁぁぁぁ!」

 

 僕が安心させるように答えると、シュガさんはその場に泣き崩れた。

 顔が涙でぐちゃぐちゃになっているのを見て、本当に見つかってよかったと心の底から思う。

 けれど、まだ見つけただけで、助けたわけじゃない。依頼は終わっていない。

 だから僕は、もう一度シュガさんに約束した。

 

「必ずリシアちゃんを、ここに連れて帰ります」

「お願いします……お願いします……」

 

 泣きながら頭を下げるシュガさんの後ろから、マルトトーゼさんが歩み出た。

 

「サク様。私も、お嬢様を助けに洞穴へ参ります」

「え? マルトトーゼさんもですか? でも、洞穴には魔物がいるかもしれないし……」

「その心配はいりません。実は私、ご主人様に雇われる前は冒険者でしたので」

 

 そう言うと、マルトトーゼさんはダガーナイフを見せた。

 

「ご主人様、よろしいですよね?」

「あぁ……優秀な君だ。きっとサク様たちの役に立つだろう。頼んだよ」

「かしこまりました」

 

 こうして、僕、エナ、オオガミ、マルトトーゼさん、そして後から合流するカナディアさんで、リシアちゃんの救出に向かうことになった。

 人数は多いほうがいい。

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