お金が冒険で一番大事なもの~【お金】で何でも解決できる力を持っているのに、仲間のせいで今日も貧乏です~ 作:ダブルピース
「う~、寂しいよ! エナちゃん、お別れのハグしよ?」
「しないわよ! さっさと私の前から消えなさい」
「相変わらず冷たいな~。それじゃ、私は行ってくるよ。カナちゃんも後から来ると思うから、みんなは先にリシアちゃんのところに向かってて」
「ばいばい~」と手を振るキロを見送った後、僕たちはリシアちゃんのいる洞穴へ向かった。
本当はキロにも来てほしかったけど、他にやることがあるなら仕方がない。
マルトトーゼさんの話によると、ランシャから洞穴までは距離があるらしい。普段は馬車で移動するそうだが、昨夜の吹雪で馬車が使えず、歩いて行くしかないようだ。
「あぁ……寒い」
延々と続く雪道を歩きながら、僕はぼそっと呟いた。
借りた毛皮のコートを着ていても、体は冷える。気のせいかもしれないが、洞穴に近づくほど寒くなっている気がする。
天気は雪、雪、ずっと雪。
ふとオオガミを見ると、舌を出して空を見上げていた。
「何してるの?」
そう聞くと、「新鮮な雪を食ってるんだ」と、わけの分からない答えが返ってきた。
「まったく……本当にバカなんだから」
やれやれと首を横に振っているエナを見て、僕はふと思った。
なんでエナは平気なんだ?
エナは、寒い土地に向いているとは思えない軽装だった。
上には借りたコートを羽織っているが、その下はいつもの薄手のワイシャツと丈の短いスカートのままだ。
それなのに、エナは寒がる様子もなく平然としている。
じぃーっとエナを見ていると、オオガミに声をかけられた。
「おい。どうした? サク。 エナのやつをじろじろ見て。まさかこいつに惚れちまったんか?」
「違うよ」
「そうだよな。こいつには女としての魅力がないんだから」
「……二人とも殺すわよ」
僕とオオガミに、鋭い殺気が飛んできた。
誰の殺気かはすぐに分かったので、「すいません」と謝る。
しかし、謝ったのは僕だけだった。オオガミは「本当のことだろ?」と言ってしまい……殴られた。そのままダウン。置いていかれる。
まぁ、僕がエナをそういう目で見ていたと思われるのは嫌なので、エナに質問する。
「エナ、その格好、寒くないの?」
エナは一度自分の服装を見下ろしたあと、自慢げに胸を張る。
「ふっふーん。私は火の魔法で体を温めているから、寒くないのよ」
なにそれ便利。
羨ましそうにしている僕を見て、エナはニヤリと笑った。
「やってあげてもいいけど?」
「その魔法、僕にもかけられるの?」
「そんなの、私にとっては朝飯前よ」
「じゃあ、お願い」
「任せなさ~い」
嬉しそうに呪文を唱えるエナ。
本当に体を温めてもらえるのか? 便利だなぁ、魔法。
「英雄リリーアの第1の魔法……エるっんガー」
唱え終わっても、何も起こらない。「あれ? 不発かな」と思った、その瞬間。
「あぁぁぁぁぁ!! 熱い熱い熱い!!」
後ろから叫び声が聞こえた。
さっきまで倒れていたオオガミが、こっちへ向かって走ってくる。よく見ると、背中から炎が上がっていた。
「エナ、噛んだ?」
「いや、成功よ」
「どう見ても失敗だろ? なんでオオガミが燃えているんだよ?」
「うるさいわね。仕方ないじゃない。魔法は難しいの!! そんな簡単にホイホイできるものじゃないのよ!!」
「さっき朝飯前って言ってたじゃん。ちなみに、どのくらいで成功するの?」
「三回に一回ってところかしら。どうする?」
「いや……大丈夫です」
僕は丁重にお断りした……失敗したら、誰かが燃えるんでしょ? 嫌だよ。
エナは髪をさらっとかき上げて決め顔で言っているけど、全然格好よくないからね。
僕がそう思っていると、雪にダイブして消火していたオオガミが「何すんじゃ、こら」と睨んだ。けれど、エナは何食わぬ顔で「天罰よ」と言い放つ。
「あの~、少しよろしいですか?」
マルトトーゼさんが、恐る恐る尋ねてくる。僕は「何ですか?」と答えた。
「エナ様は、本当に魔法使いなのですよね?」
「はい、そうですけど」
「普段から、魔法を失敗なさるのですか?」
「えぇ、まぁ……。でも、成功すれば強力ですよ。エナの魔法は。ハハハハッ」
僕は引きつった笑いを浮かべながら、なんとかフォローした。