お金が冒険で一番大事なもの~【お金】で何でも解決できる力を持っているのに、仲間のせいで今日も貧乏です~ 作:ダブルピース
誘拐された富豪の娘――リシアちゃんの捜索の依頼を受けた僕たちは朝早くから出かけた。
依頼者が待っている場所はランシャという町。
僕たちが住んでいる
遠いので僕たちは飛行船に乗って移動。1人片道4000ゴールドの運賃を払ってランシャに向かって出発した。
ちなみに運賃は僕たちに馬小屋に住まわせてくれている馬主のおじさんからもらった。
家賃も払ってないのにお金を貸してくれるなんて器の大きい人なんだ。
よし、報酬をもらったら家賃とお礼にランシャのお土産を渡そう。まぁ、僕たちが行方不明者にならなければの話だけど。
それにしてもランシャは何が有名なんだろう?
エナの話によると、特に観光する場所もなく、これと言った特徴のない普通の田舎町らしい。
でもランシャでは異常現象が起きている。
それは、2週間ほど前からランシャに雪が降っていることだ。
別に雪が降っていること自体はおかしくはない。
だけど、雪が降る前はランシャは39度の猛暑だった。
それにランシャは気温が低くなっても雪までは降ることはないみたいだ。
「………寒っ」
飛行船から降りて僕が口にした第一声はこれだ。
そしてランシャに着いたときでも僕は再び「寒っ!」と言った。
生えている木々、住人たちの家、地面、街全体雪で白く染まっている。
空からは雪。
地面を見ると村人たちの足跡がいっぱいあった。
つい最近まで猛暑だったのに、雪が降るっておかしな話だが、一体何が原因はなんだろうか?
……ってそんなことを考える余裕は僕にはないな。
「へっきゅしっ!!」
……あぁ……絶対風邪ひいた。
「だらしないわねサク。そんな貧弱な体しているから風邪ひくのよ。少しはバカオオガミを見習って筋トレしたら?」
「うるさいな……筋肉は関係ないだろ?」
「そもそもランシャに行くっていうのに、なんで薄着なの?雪が降っていたことは知っていたわけでしょ?」
「防寒着欲しかったけど……お金がないから買うのをやめたんだよ」
「ふーん」
「それにしても寒いな……僕寒いの苦手なんだよ」
「ふふーん! なら任せなさい! 「お願いしますエナ様」って頭を下げたら、私の魔法でサクの寒がりを直してあげる!」
誰がするかよ!
偉そうに笑うエナに僕はイラっとする。
雪玉を投げつけてやろうと思ったが、オオガミのほうが早かったみたいだ。
「うえーい!! 雪合戦だ!! ふぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
オオガミはどこに行ったんだ? と思っていたけど、どうやら雪玉を作って騒いでいた。そしてエナの顔面に当てる。
ナイスショット!! オオガミ。
小さく喜んでいる僕に対し、エナはご立腹。雪玉を作り「うりゃぁぁぁぁぁ」と剛速球を投げる。
球速は落ちることはなくオオガミの顔面にヒット。そのまま後ろに倒れた。
ありがとう、オオガミ。君のことは忘れないよ………僕が心の中でお別れの言葉を言っていると、
「痛ぇよ!!!!」
とオオガミは素早く起き上がった。
「………この私に雪をぶつけるなんていい度胸してるわね………後悔するわよ」
エナの冷たい眼差しを見て、僕は雪を当てなくて良かったと安堵した。
エナは雪玉を硬く作り、オオガミの顔に向かって投げつける。
そのまま命中と思いきや、
「無駄だっ!!」
オオガミは装備している盾を構える。盾に防がれ、エナが投げた雪玉はオオガミに当たらなかった………おいおい。モンスターと戦っているわけじゃないのに、無駄な体力を使うなよ。
「………へへへっ効かねぇぜ。お前のへなちょこボールじゃ、俺様の盾を破ることはできねぇぞ」
煽るな、煽るな。バカオオガミ。エナがすぐ乗るんだから。
エナはすぐに相手の挑発に乗る。負けず嫌いだし、プライドが高いから。
なので相手の挑発に怒り、罠に引っかかることが度々。そこが彼女の弱点の一つ。
売られた喧嘩は必ず買う………それがエナである。
「盾を使うなんて卑怯じゃない!! いいわ!! あんたのその自慢の盾、壊してあげる」
壊しちゃダメだよ。これからモンスターと戦うかもしれないんだから。
「上等だ。俺とお前、どっちが上か決めようぜ」
エナとオオガミは睨み合う。
エナが雪玉を作り、すぐさま投げると、オオガミは盾で自分の身を護る。そして反撃のため雪玉を一投。しかしエナに回避された。
投げて、避けて、投げての繰り返し。無数の雪玉が飛んでいる。
迷惑なことに街中で雪合戦をやっている。
僕は止めようとしたが無理だった。
あぁ、ダメだ。
こうなるとエナとオオガミの戦いはしばらく終わらない。
エナとオオガミの相性は悪い。同じパーティーに所属しているのに関わらず毎日一日一回以上は喧嘩。
ちなみにランシャに着く前に飛行船でもう三回も揉めている。
何なのこの二人?
「おーーい!! エナ、オオガミ。何やっているんだよ!? ランシャの人たち逃げてるから、街を襲撃しに来たと思われるから!」
僕の声は二人に聞こえていない。お互い夢中で雪玉を投げ合っている。
飛んでくる無数の雪玉せいで町は大パニック。
ランシャの住人は雪玉から当たらないよう悲鳴を上げながら逃げており、命中して倒れている人もいた。
もう他人のふりをしようかな………と考えた僕のところに、
「あの~ケネデルからやって来た冒険者の方ですか?」
おじさんが話しかけてきた。
僕は見た瞬間、金持ちだなぁと分かった。
高そうな黒いコートに空腹には困っていない小太りな体型、指には赤い宝石がはめられた指輪、そしてチョビ髭。逃げている村人と違って品がありそうな人物だ。
「え?……あぁ、はい」
僕が答えると、
「遠いところからわざわざ来てくださって、ありがとうございます。あなた方のような心優しい人を待っておりました」
頭を下げて丁寧に挨拶するおじさん。思わず僕も「あぁ、はい」と戸惑いながら頭を下げてしまった。
第一印象はすごく良い。すごく優しそうな人だと感じた。
正直富豪は悪いイメージしかない。
財力が他人よりあるだけで、偉そうに周りを見下している………そんなイメージがあったからだ。
「申し遅れました。私、シュガ・リーランドと申します。リシア………リシア・リーランドの父でござい___ぐはっ!」
シュガさんが喋っていると、雪玉が顔面に直撃。
威力が強かったからか? そのまま気絶。ゆっくりと倒れる小太りのおじさんを見て僕は唖然としていた。
「「………あっ」」
エナとオオガミは倒れたシュガさんに気づき、声も漏らす。
いや、「……あっ」じゃねえよ