銀河最強童貞のサイボーグ俺、ち〇こだけは守護りたい   作:たけすぃ

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SF書きたーい


モーニングルーティーン1

 麻酔から覚醒した瞬間。

 俺は言った。

 

「俺のチ〇コは無事か?」

 

 俺の覚醒処理を終えたロボットアームが、定位置に戻る動作を一瞬停止させる。

 

「目覚めてすぐ口にするには、宇宙規模で最低なセリフだと思いますよ」

 

 俺が眠っていた自動手術台――の下の方から平坦な女性音声が聞こえてくる。

 俺は掛け声を上げながら上半身を起こした。

 

 カルシウムよりも軽く強度のある特殊合金製の骨が程よくしなり、人工の生体部品が暖機運転を終えて血流を稼働させる。

 張り替えたばかりの肌に血が通ってチリチリする。

 

「ほとんど生身の体は残ってないのにどうしてオッサンくさい〝どっこいしょ〟なんて掛け声が出るんですか?」

 

 俺は視線を下に向ける。

 かろうじて人の上半身に見えなくもない物に、複数のタイヤで構成された下半身。

 

 お掃除ロボットがディスプレイに〝悩み顔〟のアイコンを表示させている。

 

「筋肉の記憶(マッスルメモリー)ってやつだよ相棒」

 

「その筋肉が無いでしょ、って話なんですが?」

 

 相変わらず細かい奴だな。

 随分前に、どこかの惑星のガレージマーケットで買ったお掃除ロボットだが、搭載されているAIが疑似人格(クラス2)モデルとは思えない細かさだ。

 

「知らなかったのか? 魂は筋肉でできてるんだぞ」

 

 手術台から降りて服を着替える。

 

「それじゃあタンパク質を豊富に摂《と》ってください。もしかしたらご主人様の魂が常識というものを学んでくれるかもしれません」

 

 普段着にしている灰色のツナギの上からフライトジャケット着る。

 ファスナーは閉めない、それが俺の流儀だ。

 

「心配かけて悪かったと反省してるから、そんなに責めないでくれよ」

 

 俺は手術室のドアを開け、お掃除ロボットにお先にどうぞとドアを支える。レディファーストってやつだ、まあ自動ドアだが。

 

「別に私は心配なんてしてませんでしたよ。ご主人様が帰ってこなくても哀れなお掃除ロボットは宇宙船内をピカピカにする仕事がありますし!」

 

 先導する相棒の後ろをついて歩く。

 

「それにいつも言っていますが、私を女性扱いするのはどうかと思いますよ? 単に搭載されている音声が女性なだけで疑似人格にも性別は設定されていませんし」

 

 そう言われても正直困る。

 音声が女性というだけで、なんとなくだがそこに性別を感じてしまうのが人類だ。

 

 AIからすれば迷惑なことなのかもしれないが、これもきっと魂というたんぱく質に刻まれた本能みたいなものなんだろう。

 

「あーそれでだな……」

 

 俺は住居兼、事務所兼、移動手段である宇宙船の通路を歩きながら、どう言ったものかと考える。

 何せ人類は機械が女性音声で喋るだけで(以下略)。

 

 まあ、さっき確認したし今更か。

 

「俺のち〇こは本当に無事か?」

 

 相棒が上半身だけを回転させて俺を見てくる。搭載されているセンサーは360度をカバーしているので、する必要のない動作だ。

 つまりそれだけ真剣な話という事だろう。俺は気を引き締める。

 

 ディスプレイに映る相棒の顔アイコンが半眼になった。

 

「ええ、ええ無事ですよ。ご主人様の玉も竿も無事です」

 

 相棒のディスプレイに一瞬だけサムズダウンが表示されたような気がしたが、通常モードの視覚では速すぎて分からなかった。

 

「腹部の四割を喪失、脊椎ユニットの壊滅的な破損、脚部パーツは過負荷により熱損、右腕に関しては骨格剥き出しでインフィールドモーターのみで動いている状態。むしろこの状態で、よくもまあ脳以外で〝唯一残った〟生身の生殖器が無傷でしたね」

 

 自分が受けた損害を改めて並べられると、背筋に冷たいものが走る。

 必死になってち〇こ守って良かった。

 

「いったい何があったんです? 緊急回収ポッドの使用に、損傷個所の修理に使ったスペアパーツ、私が知っている情報では完全に赤字ですよ?」

 

「クライアントの要望で、敵のドローン基地を破壊しに行ったんだよ、単独で」

 

「それは傭兵に頼むような仕事ではないのでは?」

 

 いやホントにそう思う。自前の特殊部隊使えよって話だ。

 

「まあ成功させたけどな」

 

「頼んだ方も成功するとは思ってなかった説を推したいですね」

 

 俺は命令を受けた時の事を思い出す。

 まあ、確かに冗談って顔だったような気がする。

 

 なにせ偶《たま》さか基地に視察に来ていた味方の少将だかのお偉いさんとの雑談での話だったのだ。

 俺が傭兵だってのも知らなかったようなので、本当に偶然の雑談だった。

 

 その中で俺がさっさと仕事を終えて帰りたいと愚痴を漏らしたら、だったら自軍を苦しめている敵のドローン基地を破壊すれば良いと言われ、俺はその場でそれを正式な命令にしてくれと頼んだのだ。

 少将としては、冗談のつもりだったのだろう。

 

 顔も態度も面白い馬鹿がいるな、みたいな顔だった。

 その場で変な顔をしていたのは、俺の直属の上官だけだった。そいつだけが俺が本気だと知っていたのだろう。

 

 こうして契約上、正式にこれをやれば家に帰る事ができるお墨付きを得た俺は、敵軍の反乱軍だか正当政府軍だかのドローン基地に単独潜入して破壊したのだ。

 ボロボロになりながら。

 

「なんでまたご主人様はそんな大変な命令を受けたんですか?」

 

 相棒がディスプレイにハテナマークを表示させる。

 俺は何を当たり前の事を訊くんだと、呆れそうになるのを我慢して答える。

 

「そりゃお前、基地にまったく女性がいなかったんだぞ? 運命の人との出会いも期待できないような場所なんてさっさと離れたいだろ」

 

 お掃除ロボットらしく通路を掃除しながら前を進む相棒から、ゴミがいっぱいになった時に流れる安っぽい電子メロディーが鳴る。

 珍しい、普段はタンクがゴミでいっぱいになる前に捨てているのに。

 

「そんなんだから、最強の傭兵だとか銀河で評判になるくらいなのに、ご主人様は童貞なんですよ」

 

「仕事は真面目にやっただろうが!」

 

「真面目にやった理由の方が問題だって言ってるんですが?」

 

 仕事ができる男はモテるって教えてくれたのお前じゃないか。

 理由が駄目とはどういう事だ。

 

 納得いかなさに首を大きく傾げたくなる。

 肌を張り替えたばかりなので、大きな動作は控えるが。

 

「子供の頃から戦い続けた結果、真っ当な人間の心まで失《な》くしてしまったんですね。オイタワシヤ、ゴシュジンサマ」

 

「失くしてねぇよ。しっかり魂のタンパク質に刻まれてるわ」

 

 人が気にしてる事をこの野郎。

 童貞の何が悪い、歴史上の偉人の中でも生涯童貞は沢山いたんだぞ?

 

 あ、駄目だ。たぶん偉人と同じくらい童貞拗らせて駄目な方向で歴史に名を残した奴も多そう。やっぱり童貞は良くない、早く捨てたい。

 その為にもやはりち〇こを守護らねば。

 

 生身のち〇こで童貞を捨てなければ意味が無い。

 俺が決意を新たにしたところで、宇宙船の操縦室《ブリッジ》のドアに辿り着く。

 

 張り替えた皮膚の慣らしの為に、ゆっくり歩いたせいで結構時間がかかった。

 船舶AIがブリッジ入室の為の再認証を求めてくる。

 

 手術で体を結構な部分を新品に変えたせいで認証が切れたのだろう。

 俺の脳に届く船舶AIからのピンが、大手術を終えたばかりのせいか心なしか優しい気がする。相棒といい、俺の周りのAIは良い奴らばっかりだ。

 

 俺は認証ついでに帰還の挨拶をする。

 

「ただいま船舶AI。独立傭兵バシマ・アルスタッド。無事に帰還した」

 

 船舶AIが、自分の名前を発音する俺の脳をスキャン。

 ブリッジの扉が開く。

 

 さて、次の仕事を探すか。

 素敵な女性との出会いが期待できそうな。

 




更新は不定期ですが、よろしくお願いします
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