銀河最強童貞のサイボーグ俺、ち〇こだけは守護りたい 作:たけすぃ
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「失敗しました」
報告は簡潔に事実だけを並べろ。
デク38は教官に教え込まれた通り、狙撃場所に選んだビルの屋上でクライアントに事実だけを伝えた。
通信機の向こうでは、クライアントであるベルキラウ真政府の人間が大声で喚いている。
自分の声帯を失ってから、適当な量産品の声を使いだしてからは良くある反応だった。
数百年前の、日本に実在した男性声優の声を元に作られた声で、喋り方も聞こえ方も人間が喋っているのと
オリジナルの音声にしか表現されない何かでもあるというのか?
一瞬脳裏を掠めた疑問にデク38は心中で苦笑を浮かべる、あまりにも馬鹿馬鹿しすぎる。
「現地警察がこちらに向かっているので撤退する」
飽きもせずに、高い料金を払っているのだからと文句を喚いているクライアントに事実だけを告げて通信を切る。
心によぎるのは小さな苛立ちだった。
こうなるからバシマ・アルスタッドが惑星に到着する前に確実に殺せと、こちらは提言したのだ。
それを無視して迎撃用の戦闘艦を半分に減らしたのはあちらの不手際だ。
独立傭兵バシマの公開されている実績は、悪い冗談のようなものばかりで、今さら誰かに説明されなくても銀河最強の傭兵だと分かろうものなのに。
大方、冗談のような実績を見て〝吹かしてる〟とでも思ったのだろう。
デク38は四脚状態だった足を二脚に戻しながら、ゆっくりと立ち上がる。
その様子はまるで巨大な昆虫が人の形になろうと藻掻くようでもあり、航空灯の明かりが作る影は人の姿をとって尚、異形と言ってよいものだった。
その影は、至る所に〝穴のある人影〟だ。
腕に足、そして胴体、至る所に航空灯の光が漏れる隙間がある。
デク38は全身の殆どを機械に置き換えたサイボーグだった。
そして、多くのサイボーグが人間らしい見た目を選ぶのと違い。それを無駄と斬って捨てた。理解できなかったのだ。
人間以上の体を、人らしく見えるように制限する意味が理解できなかった。
なのでデク38は自分の影が好きだった。
鏡でわざわざ確認する趣味はないが、地面に出来た影がふと目に入るたびに自分の選択の正しさを認識できた。
デク38は自分の影から目を離し、撤退の準備に入る。
といってもする事は多くない。
狙撃に使ったレールガンも、ジェネレーターも置いていくからだ。
ここからの追跡では
それにおそらく狙撃に関しては、チャンスはもう無いだろう。
有史以来、繰り返されてきた鉾と盾の競争は、現在は大気中だと若干盾が有利だ。
人間が携帯可能な質量弾を使用する武器ではシールドを貫通する事は難しく、十分なバッテリーがあれば個人用のシールドを張り続けるのは難しい事ではないからだ。
相手は独立傭兵バシマ、間抜けさを期待できる相手ではない。
そうであるならばデク38は手段に拘泥しない。
別のアプローチ、より適した武器を使うだけの話だ。
クライアントには武器の調達で手間をかけさせる事になるが、あの銀河最強の傭兵を惑星の大地に立たせたのは彼らの責任だ。
それぐらいは働いて貰わなければならない。
デク38は遠くから近づいてくるサイレンの音を合図に今後の方針を決め撤退を開始する。
クライアントが用意した撤退ルートはデク38から見ても合理的で、たとえ追いつかれたとしても、現地警察組織程度であれば真正面からでも撃退できる。
その余裕が、ビルの外壁へりに足をかけたデク38の視線を一瞬だけ動かした。
屋上に鎮座したままのレールガン。
長い銃身から伸びる幾本のケーブルは、太陽に焼かれのたうち絡まる巨大な黒いミミズのようで気味悪く、その先に接続されている物は更に不気味だった。
レールガンの外部電源として、デク38が無差別に拉致してきたアンドロイド達だ。
彼らの四肢は乱雑に
胸部に刺さったケーブルは、まるで命を吸い取る巨大な寄生虫のようで、事実アンドロイド達は強引にジェネレーターから電力を奪われた過負荷で痙攣し半壊状態だ。
そして本来なら悲鳴を上げるはずの喉はみな一様に握りつぶされていた。
およそ
相手の声すら奪うそれは、嗜虐とは違う。
ただ〝物〟として壊しただけという、淡々とした乾いた憎悪があった。
なぜ自分達がこのような
その日初めて自分に残った唯一の生身の体、頭部に付属する顔面を歪ませた。
それは少女の笑みだった。
隙間だらけの体に少女の顔を持つ暗殺者は、ビルの屋上から飛び降り姿を消した。