銀河最強童貞のサイボーグ俺、ち〇こだけは守護りたい 作:たけすぃ
いやっほーい!
*
人類が光速の壁を出し抜いてから五百年ぐらい経っているらしい。
通称3Mドライブ航法は、基礎理論、実証実験、開発を担った科学者の名前の頭文字が全てMだった為に付いた通称だ。
質量がある物質――、より正確には質量を与えられている物質は、光速に到達する事は実質的に不可能である、という諦めから出来た航法、なんだそうだ。
少なくとも、いま俺がベットに転がりながら物理タブレットで見ている、ドキュメンタリー番組ではそう言っている。
旧時代の資料映像を交えて、3Mドライブとは? と説明が続くが――。
平たく言うと、質量があるせいで光速以上の速度を出せないのなら、宇宙船を質量が存在しない宇宙に放り込んで移動させれば良いじゃない、ってのが3Mドライブ航法らしい。
質量の存在しない宇宙、そこでちょっと特殊なエンジンを吹かしてやれば、あっというまに光速の上限を突破できる。
ヒッグス機構? ゲージ粒子? 対称性の破れ? おいおい、この番組は楽しく馬鹿に何か知っているような気にさせる為の、知的バラエティじゃないのか?
急激に番組の内容が専門用語だらけになって、俺は諦めて手に持った物理端末をスリープモードにした。
自宅兼、事務所兼、移動手段である俺の宇宙船〈
昔のSFでは、光速を超えた移動には時間のズレがお約束だったが、現実はこれだ。
「情緒がねぇよな」
俺は本棚に飾ってある
「なにをいきなり情緒とか言ってるんですか? ご主人様にそんなものを感じる能力があるわけないでしょ」
ちょうど俺の部屋を掃除していた相棒が初手から強烈な皮肉を吐いてくる。
よくよく考えなくても相当酷い事を言っている。
「情緒を感じるだけの感性があるなら、とっくの昔に童貞捨ててますよ」
あまりに酷い物言いに反論しようとしたら、口を開く前にトドメを刺された。
「それで? 本当のところは?」
相棒がちりとり(人類は恐ろしい事にちりとり以上に効率的な道具を発明できていない)を腰部のマウントに戻しながら訊いてくる。
「移動時間が暇」
相棒が溜息を吐く、当然だがお掃除ロボットには肺も気道も、口すらないのでわざわざ用意した音声だ。
「暇ならママさんのお手伝いでもしたらどうですか?」
ママさんとは宇宙船〈ベイトフィーダ―〉の船舶AIの事だ。
「ママにはこの前の仕事の経理を任せてる。俺が手伝って役に立つと思うか?」
無理ですねー、相棒が胴体に格納されていたアームを伸ばして本棚にエアを噴きかけながら相槌を打つ。
「ママさんは寡黙なかたですからね。ご主人様と一緒に仕事したら逆にストレスが溜まるかもしれませんね」
手伝ったらどうかと提案したのはお前のほうだろうが。
しかし我が相棒は本当によく喋るな。
ママは
本当は逆なんじゃないか? 俺は密かに疑っている。
「ところで」
ベッドに座った俺を相棒が見上げてくる。
掃除は終わったのか、どうやら暇してる俺の相手をしてくれるらしい。
出来た相棒だ。
「次はどこの戦場に雇われたんですか?」
船のネットワークにアクセスすればミリセック以下の単位で分かるのに、わざわざ会話で訊いてくれるお掃除ロボット。
お前が人間の女性だったら確実に惚れてたよ。
「この前の仕事は特別ボーナスが出て大幅な黒字になったからな」
必死でち〇こ守護ったかいがあったぜ。
「ご主人様が馬鹿な事を考えているのが表情で分かるんですが? サイボーグなんですから表情のコントロールぐらいしてください。それで?」
失礼な奴だな。オリジナルの顔を完全再現したこの世で一点物の顔だぞ? スペアはいっぱいあるけども。
「もともと金には余裕があったし、そこに予想外の大金が手に入ったんで、依頼料が安くて断ろうと思ってた仕事を受けることにした」
相棒のディスプレイに〝?〟が表示される。
「それは……いったいどんな依頼なんです?」
そう言いながらディスプレイに〝なんだか嫌な予感がします〟という文字がスクロール表示される。こいつマジでクラス2のAIか? 芸が細かすぎるだろ。
「聞いて驚け。なんとV.I.Pの護衛任務だ。しかも若い女性の!」
「うわぁ」
それは驚きか? それとも呆れか? どっちだ相棒。
「ご主人様を個人警護に使うのですか……。それは些《いささ》かオーバースペックか、もしくは相当に厄介かのどちらかですね」
正解は驚きと呆れ、両方だったらしい。
「正規ルートからの依頼なんですよね?」
「いくら俺でも正規ルート以外からの仕事は受けようと思わねぇよ?」
ドンパチするのが仕事の傭兵は、意外な程に信用商売だ。
自分の信用を守る為にも下手な依頼は受けられない。
何万年も戦争をやめられない人類なので、人殺しのルールは細やかだ。
「護衛対象が若い女性って事はだな! 必ずその周りにも何人かは女性がいるはず! という事は出会いのチャンスはある!」
万年オーダーで戦争やめられない人類の愚かさはとにかくとして。
俺にとって大事なのはこれだ、これなのだ。
「そんなに上手くいきますかねぇ? ご主人様の期待ってだいたいが裏切られてませんか? この前も休暇全部使って助けた女性に恋人がいて泣いてましたよね?」
「泣いてねぇし、そんな昔の事なんて忘れた」
相棒が見落としたゴミでも見つけたのかエアを吹く。まさかそれ溜息のつもりか?
「そこまで必死なんだったら顔を流行りの顔にすれば良いと思うんですが」
まあ私はご主人様の顔けっこう好きですが。
暗に顔変えろ不細工と言った後にちゃんとフォローしてくれるあたり、相棒はマジで人間だったらモテてたんじゃないかと思う。
それはそれとして。
「やだよ。朝起きて自分の顔が無いのって割と堪えるんだぞ?」
俺の返事に相棒が手鏡を差し出してくる。どういう意味だそれは?
というかその手鏡どこから出した? 今、胴体からアームと一緒に出てきたよな?
お掃除ロボットに手鏡って必要なの?
俺は、手鏡にうつった地球標準《アースノーム》で言うところの、アジア人種の特徴が色濃く出た自分の顔を見ながら首を傾げてしまう。
黒髪黒目、生体部品である肌が生白いのは俺がほぼ全身が機械のサイボーグだからではなく、宇宙生活者だからだ。
そして、実年齢から離れた二十歳前後の顔立ちなのは、俺がこの時期に顔面を吹っ飛ばされたからだ。
「……で?」
考えてみたものの、やっぱり意味が分からなくて訊いてみる。
「ご主人様が自分の顔を見て唐突に正気を取り戻さないかと期待してみました」
「朝起きてからずっと正気だよ?」
まさかいつかその皮肉を言う為だけに、お掃除ロボットなのに手鏡を持ち歩いていたんじゃないだろうな?
俺は真剣に疑った。
チ〇コとち〇こは、これからも使い分けていきたいと考えています。
いやなんかニュアンスが違うじゃないですか?
ち〇こ
と
チ〇コ