銀河最強童貞のサイボーグ俺、ち〇こだけは守護りたい 作:たけすぃ
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今回の護衛対象について分かった事が一つある。
それは極めて無口だという事だ。
どれくらい無口かと言うと、あれから、つまり自分の名前を言ってから一切自分から口を開く事は無かった。
メートリー無口、俺覚えた。
あれから彼女が口にした言葉は、十九時になって俺が飯を食う? って訊いた時の「はい」と、いつもは何時に寝てるんだ? っていう質問に対しての答えだけだった。
ちなみにその答えも素っ気ない「二十二時です」というものだった。
世のお父さん達は思春期の娘とどうやって会話しているのだろうか?
「まさかここまで思春期の女性が気難しいものだとは……」
「何を馬鹿な事を言ってるんですかご主人様」
明かりを消したホテルの部屋で、ベッドで眠る護衛対象を視界の端に置きつつ警護任務に就いていると、相棒からツッコミが入った。
通信に乗せたつもりは無かったので、自分の脳が今は仮眠状態だと自覚する。
サイボーグでも脳が生身なので睡眠は必須だが、それだと色々と不便なので俺の場合は外部脳《アウターブレイン》に補助人格を構築している。
補助人格が強く働いている時は、意識していない呟きが通信に乗ってしまう事がある。
「どう考えても異常ですよ? いくら知らない男性と同室で泊まる事になったからといって、あそこまで無口なのは普通ではないですよ」
「そうなのか?」
物心がついた頃には戦場にいたのでマジで一般的な女性が分からない。
そもそも孤児だった俺を育ててくれたのもAIだったので、一般的な人間というのが分からないのだ。
「今更言う事ではないですが、ご主人様はもう少し人間としての訓練を積むべきですね」
「十代少女と話した事なんて、真面目に数十年ぶりなんだ。勘弁してくれよ」
大人の女性だったらもっと話した事があるんだけどな。
技術の進歩は戦争に関して言えば、完全に性差を無意味なものにした。
「まるで女性となら話した経験は十分ある、って言いたげですね」
「あるだろ。なんなら話すだけじゃなくて一緒に戦ったぞ?」
「それが駄目だって言ってるんですけど?」
お掃除ロボットにしこたま呆れられてしまう。
「もっと一般的な……まあ何にしろです、ご主人様」
相棒の声が真剣なものに変わる。
「とりあえずベットで眠る十代――と思われる女性をそばで眺め続けるのはやめてください。ご主人様の事なので仕事でやっているのは分かりますが、アウトです。犯罪です」
えぇ? そうなの?
俺は思わず警護の為に立っていたベットサイドで天井を見上げた。
真面目に仕事しているのに、犯罪扱いは酷いと思う。
「駄目なのか? じゃあ警護はどうするんだよ?」
しかしそれだと仕事にならないのも事実だ。
なにせ俺一人なのだ。あてにしていた女性の相棒はいない。
「良いですか? 普通、人間は他人に見られているとリラックスできないものなんです。監視カメラなりを使うなりで――」
相棒の言葉を最後まで聞かず、俺は目の前のベットを蹴り上げた。
もちろん、護衛の少女が使っていない窓際の方のベットを、だ。
ここで一つ豆知識。
人類の携行武器の射速の話だ。
大気圏内で使う携行火器で、人類はいまだに光速を超える物を持っていない。
ビーム兵器やレーザー兵器はあるが、どれも大気密度が薄い環境で使うものしかない。
人類が持つ最速の携行火器は、なんと未だに物理弾頭を飛ばすレールガンだ。
それも秒速7キロメートルという、極めて常識的な速度だ。
つまり、レールガンの電磁波を探知してから、相手が射線の通らない隣のビルから撃ってるアグレッシブな馬鹿でないのなら、0コンマ1秒以上の猶予がある。
それだけあれば、全身殆どサイボーグ(ち〇こと脳以外)なら、割とできる事がある。
レールガンから発生する電磁波をキャッチした俺は、相手の視界を邪魔する為にベットを蹴り上げながら、励起状態で待機させていたシールドを起動させる。
レールガンの弾体《アーマチュア》相手に、植民初期に建てられた量産建造物に使われている窓ガラスなんて紙も当然だし、ベットもしかりだ。
はい、そうです。体で受けます。
自分の腹で、レールガンの弾体を包む耐熱セラミックの外殻が砕け、中間層のカーボン系素材が燃え上がり、弾芯のタングステン合金の針《フレシェット》が折れ曲がるのを感じる。
電磁波を探知してから0.3秒、だいたい2キロメートル先からの狙撃だなと、検討を付けるがやれることはない。
50グラムの弾体が秒速7キロメートルで衝突する。その威力は生身なら消し飛ぶし、衝突というより局所的に世界を抉ると言った方が、より正確な表現に近い。
つまり人間より重たいサイボーグでも当たれば吹っ飛ばされる。
気合、というより機械の体が自動的に護衛対象の保護を選び、護衛対象のメートリーに俺が衝突しないように体を自動操作。
可哀想な俺はホテルのベットルームの壁に叩きつけられた。
「無事ですか!?」
壁から床に落ちる前に相棒の声が受信機《レシーバー》を叩く。
「安心しろ! ち〇こは無事だ!」
死ね! 相棒の熱い罵倒を聞きながら、ベットで眠っているメートリーをシーツごと引き摺り落とす。
ち〇こは大事だろ、ち〇こは。
「何でしょうか?」
ベットから突然床に引き摺り落とされて、十代少女はこんなにも冷静な声を出せるものなのだろうか?
「襲撃だ。狙撃された」
事実だけを端的に伝える。パニックになられても困るが、理解してくれるのかが心配になる。
「わかりました、襲撃ですね。プロトコルに従って行動します」
俺は相棒が異常だと言った理由が分かった気がした。