銀河最強童貞のサイボーグ俺、ち〇こだけは守護りたい 作:たけすぃ
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人類世界において、裕福層向けのショップと、中間層向けのショップの見分け方は簡単だ。
店員が人間だったら裕福層向けショップだ。
逆に店員がAIだったら確実に中間層向け――という事ではないのだが、それに一つ条件を付けくわえるとほぼ確実にそうなる。
二十四時間営業だ。
俺はメートリーを連れて、地球発のファッションブランドのショップに入った。
時刻は朝の五時。
ホテルを出てから二時間、俺達はランダムに首都の道路を走り続けた。
襲撃直後に首都から大急ぎで離れる車があったら、それが誰かを大声で喧伝するのと同じだからだ。
しかも時刻は早朝、そもそも街の外に出る車自体が少ないので、相手からすれば随分と仕事が楽になった事だろう。
こういう仕事は相手の嫌がる事をしてナンボだ。
道理で俺の性格が悪いとか相棒に言われるわけだ。
「時間がないから高級ブランドってわけにはいかないが、後で経費として請求するから好きな服を買ってくれ」
それはそれとして、早朝から二十四時間営業の服屋に来たのには、ちゃんとした理由がある。
用意されていたメートリーの着替え等々は全てホテルに置いて来たからだ。
俺の
「ご主人様、まるで何とか思春期の娘の気を惹きたいお父さんみたいになってますよ?」
嘘つけ。娘の気を惹きたいお父さんは経費で落とすなんて言わねぇよ。
俺が通信で相棒とじゃれ合いしていると、俺を見上げる銀色の瞳と目が合った。
「好きな服とは何でしょうか?」
「ZEN問答か?」
「思春期女子はZEN問答しないと思いますよ?」
好きな服買って良いよと言って、好きな服とは何かと問い直される。
これがZEN問答でなければいったい何なのか?
「いや……そのままの意味だが?」
俺が実に当たり前の回答をメートリーに返すと、彼女が深刻そうな顔をして頷く。
なんだろう? ZENにおける煩悩とは、みたいな会話されるんだろうか?
最近の思春期女子凄いな。
俺が思春期の頃なんて、いかに人を効率よく殺すかと、クソ上官を事故死に見せかける方法しか考えてなかったぞ。
「分かりました。つまり貴方の好みの服という事ですね?」
「うわぁご主人様最低」
いま俺ぜってぇ悪くねぇよなぁ!?
冤罪にしても酷すぎる。
俺は殆どの文化圏で美少女とされるだろうメートリーの、実に平坦な表情を見て思う。
やっぱりこの少女はちょっとオカシイ。
感情の起伏が少ない程度は、まあ昨今では
大概の技能は人間にインストール出来るのだ、性格も自分の好きな物をインストールするのが普通だ。
しかしそれと人間が持つ人間らしさとは別だ。
感情抑制プログラムも、インストールする明るい性格も、その個人の趣味趣向を変える事はない。
それらは記憶に依存するからだ、人生と言い換えても良い。
記憶の外部保存が可能になって随分と経つが、他人の記憶を見た所でそいつの人生を経験した事にならないのと同じように、脳に直接ハードコードされた〝そいつらしさ〟は性格を取っ替え引っ替えしても変わらない。
馬鹿らしい話だが、何が好きか嫌いかは人が人であるコアなのだ。
「いや……俺が好きな服じゃなくて、君の好きな服を買ってくれって意味だ」
相棒に吹っ掛けられた冤罪から立ち直った俺は、メートリーに誤解なく伝わるように言葉を足す。
もしかしたら単に控えめな性格で、ちょっと言葉遣いがおかしかったが遠慮しただけかもしれない。
古のジャパニーズは熱々のご飯も、人から三度食べるように勧められないと手を付けなかったと聞く。
なんてこった! もしかしたら伝説のヤマトナデシコというやつでは!?
そうであるなら、無断で肌に触れようものなら切腹させられる!
気を付けなければ。
「私の好きな服……とは何ですか?」
相棒助けて!
やっぱ違うわ! 思春期少女だからとか、控えめな性格だからとかじゃない。
メートリーがたぶんちょっと変なのだ。
童貞だからってオカシイのは俺の方って考えてたけど、流石にこれは普通じゃない。
「変人に関しては私よりご主人様の方が詳しいでしょ」
「変人で思春期少女とか童貞からしたら宇宙人と一緒なんだよ!」
なんだ? 我々は地球人です、とかって自己紹介からすべきか?
「あー混乱する気持ちだけは分かるので、喉を叩きながら話そうとするのはやめてくださいご主人様」
俺は水平チョップの形で喉に押し当てていた右手を元に戻した。
喉に水平チョップをしようとしていた俺の奇態を見て、俺が困っている事に流石に気が付いたのか、メートリーが
「すいません」
声は平坦だが、そこにはハッキリとした謝罪の意思が見える。
感情が無いわけじゃないんだよなぁ。
メートリーが、人類に感情など不必要、感情があるから全ての不幸があるのだ、という過激な思想を持った過激派の人間じゃない事に安心する。
アイツらとのコミュニケーションはマジで困難極まる。
「私は研究所で生まれ育ったので、一般的な常識というものが欠如している可能性があります」
相棒が通信の向こうで「あー」と溜息みたいな声を上げる。
「不愉快でしたら申し訳ございません」
「不愉快ではないが……」
というか、好き嫌いは生まれ育ちに関係ないだろうが、という言葉が出かかる。
出かかるが、思春期女子にそんな事を言う度胸は無い。
「そ……それじゃあ! 今から探すか! 好きな服!」
俺は白白とした照明に照らされた無人の店内で、場違いな程の明るい声を出した。
「何ですかその取って付けたような明るさ」
うるせーな分かってるよ!
自分でもかなり無理したなと思った。
なんというかこう痛々しい、自分が。
おかしい。女性兵士とボディアーマーはどこのメーカーのやつが良いのかと話した時は普通に会話できたのに。
服なんてボディアーマーとかの親戚みたいなもんだろ。
メートリーが深刻な顔をして黙り、実に二十秒近く俺をキモイオッサンとか思ってるじゃないかとドキドキさせた後に顔を上げた。
まるで重大な告白をするような顔だった。
「分かりました。〝私の〟好きな服を探してみます」
「おう」
どんな罵倒でも受け入れる覚悟を決めていた俺は、メートリーにそう返事するだけで精一杯で、販売ブースに入っていく思春期少女の背中を黙って見送った。
「服を買うだけで……この先が心配です」
相棒の声は呆れを通り越して、真剣な「この童貞野郎を少女と一緒に行動させて良い物か?」という懸念すら滲んでいた。