元トップハンターのおっさん、落ちぶれ炭鉱夫から再起する 。ガチャで引いた魔剣をメスガキギャル配信者とMAX強化! 六大魔竜の宝玉が出るまで帰れません 作:炭酸水ひろみつ
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つくばエクスプレスに揺られ、都心からおよそ一時間。
玄馬とティガは、茨城県つくば市へやって来ていた。
研究学園都市として知られるこの街には、筑波大学をはじめ、宇宙開発や自然科学に関わる施設が集まっている。そんな近代的な街並みの一角に、巨大なダンジョンゲートと、それを管理するギルド施設が建っていた。
「はい、というわけで到着しましたー! つくばダンジョン!」
ギルド前。
ティガがカメラへ向かって両手を広げる。
昨日の美術大学ではポニーテールに黒縁眼鏡、作業用のツナギ姿だったが、今日はいつもの派手な金髪ツインテールに、黒いチューブトップとショートパンツ。その上からルーズな上着を羽織った配信者ティガの姿に戻っていた。
「今回はちゃんと電車で来られたねー♡」
「ちゃんとってなんだよ」
「ゲンマ、遠征費のことばっか気にしてたじゃん」
「大事だろ! これから全国回るんだぞ!」
『庶民派ハンター』
『交通費に怯える元トップ』
『北海道引いた時の反応楽しみ』
「やめろ。今は見たくない」
『現実逃避しとるで』
「ユンユンまで煽るな!」
ひとしきり騒いだあと、二人はギルドで受付を済ませた。
受注するのは、もちろん六大魔竜討伐クエスト。
ターゲット――輝星竜アルカルクス。
ゲートを潜った瞬間、近代的な街並みは消え、玄馬たちの視界いっぱいに緑豊かな山丘フィールドが広がった。
緩やかに起伏する草原。その先には深い森があり、さらに遠方には二つの峰を持つ巨大な山が青空へ突き出している。現実の筑波山をどこか思わせる景色ではあるが、山腹には巨大モンスターが通ったと思しき獣道が走り、平原には人間の背丈ほどもある足跡が点々と残されていた。
穏やかな風景だった。
少なくとも――空から、白い光が降ってくるまでは。
『上や!!』
ユンユンの声と同時に、カメラが一気に空を向く。
「来た!」
ティガが叫ぶ。
雲一つない青空を、白い何かが横切った。
速い。
玄馬がそう認識した瞬間には、すでに姿が消えている。
「どこ行った!?」
「ゲンマ、右!」
振り向く。
遥か彼方、山の稜線近くで小さな白い点が大きく旋回していた。
やがて、その翼が閉じる。
直後――白い閃光と化した。
『来るぞ!!』
『アルカルクス!』
『コイツの突進、マッハブレイクとか呼ばれてるらしい』
『通常技が既に奥義かよ』
輝星竜アルカルクス。
レッドドラゴンのような荒々しい巨体とは対照的に、その姿は細く、鋭く、異様なほど洗練されていた。白銀の外皮にはほとんど凹凸がなく、頭部から尾まで流れる線には無駄がない。翼も鳥や竜というより、高速飛行する航空機を思わせる直線的な形状をしている。
その全身を包んでいるのが――白光。
玄馬が討伐対象を視界へ捉えた瞬間、その情報が展開された。
《輝星竜アルカルクス》
《属性――白光》
《弱点――暗黒》
「……弱点、炎熱じゃ突けねえな」
「言ったじゃん。せっかく手に入れたからって、都合よく弱点突けるわけじゃないって♡」
「分かってるけど、実際に表示されると腹立つな!」
その間にもアルカルクスは一直線に距離を詰めてくる。
翼の後方から、白い光が噴き出した。
「――速っ!?」
景色が弾けた。
さっきまで山際にいたはずのアルカルクスが、一瞬で眼前まで迫る。
「ティガ、俺の後ろへ!!」
「っ!」
玄馬はグランエイジを抜き放つと、地面へ深々と突き立てた。
刀身へ意識を集中する。
赤い紋様が強く輝き、周囲の空気が一気に熱を帯びた。
「
轟ッ!!
グランエイジを中心として炎熱が噴き上がり、玄馬たちの前に巨大な炎の壁を形成する。
白光と炎熱。
二つの属性エネルギーが正面から激突した。
耳をつんざく轟音とともに炎が左右へ吹き飛び、白い光が視界を埋め尽くす。
「ぐっ……!」
玄馬はグランエイジの柄を握りしめて踏ん張った。靴底が地面を抉り、身体ごと数メートル後方へ押し込まれる。
だが――アルカルクスの軌道も、わずかに逸れた。
白銀の巨体が二人のすぐ横を猛烈な勢いで通過し、その余波だけで草原が一直線に薙ぎ倒される。
「…………マジかよ」
玄馬が振り返った頃には、アルカルクスはすでに遥か先まで飛び去っていた。
「炎熱ぶつけて、やっと軌道を逸らせる程度か」
「攻撃に使えばRESIST。でも属性相殺はちゃんと機能してる」
玄馬の後ろから顔を出したティガも、さすがに頬が引きつっている。
「今の直撃してたらヤバかったよ」
「十分ヤバかったけどな!」
『炎熱仕事した』
『攻撃じゃRESISTでも防御には使えるのか』
『属性相殺ってこういうことね』
『グランエイジなかったら轢き逃げされてたぞ』
アルカルクスが再び上空へ舞い上がる。
ティガも背負った
「……これ、迂闊に飛ばない方がいいね」
「だな」
「空であんなのに狙われたら、あたし完全に的じゃん……」
珍しくティガが本気で怯えている。
「ざぁこ♡って言ってみろよ」
「今は無理!」
「正直だな!」
玄馬は軽口を叩きながらも、アルカルクスから目を離さない。
速い。
だが、ただ闇雲に速いわけではなかった。
加速する前に一度大きく距離を取り、旋回する。そして翼を畳み、進行方向を定めてから一気に突っ込んでくる。
なら――。
「ティガ」
「なに?」
「閃光爆音玉って調合できるか?」
「…………!」
ティガの赤紫色の瞳が見開かれ、すぐに玄馬の意図を理解した。
「なるほど。あの速度で飛んでる最中に視覚と聴覚を同時に潰せば――」
「平衡感覚も狂う」
「了解!」
ティガは腰のポーチを開くと素材を取り出し、手早く調合容器へ投入する。
《調合効果――1000%》
《調合失敗率――0%》
「調合完了!!」
ティガが掲げたのは、黄色と黒の縞模様が入った球体。
その間にもアルカルクスは大きく旋回し、再び二人を正面へ捉える。
「来るぞ!」
「オッケー!」
白光が爆発する。
アルカルクスが加速した。
ティガは迫り来る白い閃光をギリギリまで引きつけ――。
「いっけえええ!! 閃光爆音玉ぁぁぁ!!」
投げた。
アルカルクスの眼前で球体が炸裂する。
バァンッ!!
凄まじい閃光。
一瞬遅れて、腹の底まで揺さぶる爆音。
高速飛行中に視覚と聴覚を同時に奪われたアルカルクスの巨体が、大きく傾いた。
「ギャアアアアッ!!」
翼が空を掻く。
制御を失った白銀の巨体は草原へ激突し、そのまま土煙を盛大に巻き上げながら地面を滑っていった。
『落ちた!!』
『うっま』
『調合効果1000%やべえ』
『閃光爆音玉エグすぎ』
『これ飛行モンスター特効だろ』
「畳み掛けるぞ!」
「オッケー!!」
玄馬が駆ける。
ティガも
二人が同時に倒れたアルカルクスへ肉薄する。
グランエイジとエリアルロッドが、その全身を覆う白光障壁へ交互に叩き込まれた。
一撃。
二撃。
三撃。
白い障壁に亀裂が走る。
「もう一発!」
「おらぁぁぁ!!」
玄馬がグランエイジを振り下ろした。
甲高い破砕音。
白光障壁が、ガラスのように砕け散る。
《BREAK!!》
『障壁破壊!!』
『勝った!』
「よし!」
ティガが腰から麻酔玉を引き抜いた。
あとは眠らせるだけ。
睡眠状態への初撃なら、グランエイジの会心率マイナス百パーセントを無視して確定CRITICALになる。
レッドドラゴン戦でも使った、二人の必勝パターン。
「麻酔玉――いっけえええ!!」
ティガが踏み込み、投げる。
だが。
「あっ」
麻酔玉はアルカルクスの頭上を遥かに越え――。
ぽーん。
ぽーん。
ぽーん。
草原の彼方へ消えていった。
「…………」
「…………」
『え?』
『どこ投げてんのwww』
『大暴投』
『ティガ!?』
『カメラ追いつかんかったわ』
「…………」
ティガの顔から、すっと血の気が引いた。
その間にもアルカルクスは身を起こし、砕けたはずの白光が再びその身体へ集まり始める。白い粒子は見る間に全身を覆い、数秒と経たないうちに、二人が苦労して破壊した障壁を元通りにしてしまった。
《WARNING――BARRIER RECOVERY》
「…………」
ティガが拳を握る。
いつもの「ざぁこ♡」も、軽口も出てこない。
「……ごめん」
俯いたまま、小さく呟いた。
「完全に、私のミスだ」