元トップハンターのおっさん、落ちぶれ炭鉱夫から再起する 。ガチャで引いた魔剣をメスガキギャル配信者とMAX強化! 六大魔竜の宝玉が出るまで帰れません 作:炭酸水ひろみつ
「さあ皆さん、お待たせしましたぁ♡」
大地竜グランドリューの巨体を背後に、ティガが満面の笑みを浮かべ、カメラへ向かって両腕を広げた。
六大魔竜との死闘を終えた直後だというのに、その顔に浮かんでいるのは疲労ではなく期待である。
玄馬には分かる。
こいつにとっては――ここからが本番なのだ。
「討伐なんかより大事な――剥ぎ取りガッチャのお時間でーす♡」
『本編きた』
『ゲンマ処刑タイム』
『今日はブルファンもいるぞ』
『リョウジも煽られるの?』
「もちろん♡」
今回の討伐参加者は四人。
一人につき五本ずつ支給された剥ぎ取りナイフは、合計二十本。
それを前に、ティガがにんまりと笑う。
「せっかくのコラボなので、今回はあたしとテツヤの分も二人にプレゼント♡ ゲンマとリョウジに十本ずつ、交互に引いてもらいまーす♡」
「誰が泣くか」
「よろしくお願いします!」
「なんでお前は嬉しそうなんだよ」
玄馬の隣で、亮二は妙に姿勢がいい。
ユンユンも何かを察したらしく、二人が並んだ姿を正面から収める位置へ移動した。
『ほな、公開処刑始めるで』
「誰が処刑されるか見せてやるよ!」
「よろしくお願いします!」
「だからなんでお前はそんなに嬉しそうなんだよ!」
まずは玄馬。
ナイフを突き立てる。
《RARE 1――大地竜の鱗》
「あは♡ 初手レア1♡ 幸先悪ぅーい♡」
「まだ一回だ!」
続いて亮二。
《RARE 1――大地竜の鱗》
「リョウジもレア1♡ ブルーファンタズムのリーダーなのに、ゲンマとおんなじぃ♡」
「…………いい」
「ん?」
「いや。続けてくれ」
『?』
『今なんか言った?』
『気のせいか?』
二巡目。
玄馬。
《RARE 1――大地竜の皮》
「またレア1♡ ざぁこ♡」
「二回目だっつーの!」
亮二。
《RARE 1――大地竜の皮》
「こっちもレア1♡ 仲良く引きよわおじさん二人組ぃ♡」
「もっと」
「……はい?」
「もう少し強くても大丈夫だ」
「何が!?」
玄馬が勢いよく横を見る。
亮二は真顔だった。
『wwww』
『リョウジ?』
『雲行きが怪しい』
『テツヤさん止めて』
「俺に振るな」
鉄哉が即座にカメラへ答えた。
「こいつはもう手遅れだ」
『手遅れwww』
『仲間公認』
「失礼だな」
「お前は黙ってろ」
三巡目。
《玄馬――RARE 1 大地竜の鱗》
「三連レア1♡ 引きよわ♡ おじさん♡」
「うるせえ!」
続いて亮二。
《亮二――RARE 2 大地竜の螺旋翼》
「お、リョウジはレア2。……まあ、でもレア2だしぃ♡ ブルファンのリーダーなのに、その程度なんだぁ♡」
「……いいな」
「何が!?」
『ダメだこいつ』
『戦闘中あんなにカッコよかったのに』
『RUSH TOTAL DAMAGE 10482返して』
『同一人物です』
四巡目。
《玄馬――RARE 1 大地竜の皮》
「四連レア1ぃ♡ 才能あるよゲンマ♡ ハズレを引く才能♡」
「そんな才能いらねえ!」
そして亮二。
《亮二――RARE 2 大地竜の螺旋翼》
「リョウジも二連レア2♡ ざぁ――」
そこでティガが止まった。
「……いや、ゲンマより全然マシだな」
「諦めるな!」
「なんでリョウジが言うの!?」
『wwww』
『煽られる側が要求してる』
『キモい』
『リョウジ楽しそう』
『ティガ困惑してんじゃん』
五巡目。
《玄馬――RARE 1 大地竜の鱗》
「五回引いてぜーんぶレア1♡ ざぁこ♡ ざぁこ♡ 引きよわゲンマぁ♡」
「ぐっ……!」
『ゲンマの顔寄っとくで』
「寄るなユンユン!」
対して――。
《亮二――RARE 2 大地竜の螺旋翼》
「…………」
ティガが困った。
「三連レア2……普通にゲンマより引きいいんだけど」
「ティガたん」
「なに?」
「俺も煽ってくれ」
「無茶言わないで!?」
『キモいwww』
『自分から要求すんな』
『ゲンマは嫌がってるのに』
『地獄みたいな対比』
「リョウジ」
玄馬が低い声を出す。
「お前、さっきまでカッコよかったんだから、ちょっと黙ってろ」
「それとこれとは別だろ」
「別じゃねえよ! 俺の中でさっきの戦闘まで汚染され始めてんだよ!」
『wwwww』
『戦闘シーン返して』
『ブルファンリーダーの威厳が』
『大地障壁より先に威厳がBREAK』
六巡目。
《玄馬――RARE 1 大地竜の皮》
「ほらゲンマ見て♡ リョウジはレア2三つも引いてるのに、ゲンマはまだレア1だけ♡ 恥ずかしくないのぉ?」
「まだ四回ある!」
続いて亮二。
《亮二――RARE 3 大地竜の尻尾》
「おお……」
ティガが普通に感心する。
「リョウジ、レア3」
「……煽りは?」
「ないよ!」
「そんな……」
『悲しそうで草』
『キモい』
『レア上がるほどテンション下がってる』
『普通逆だろ』
七巡目。
《玄馬――RARE 1 大地竜の鱗》
《亮二――RARE 4 大地竜の螺旋角》
八巡目。
《玄馬――RARE 1 大地竜の皮》
《亮二――RARE 4 大地竜の螺旋角》
「ちょっと待って」
ティガが真顔になった。
「リョウジ、普通にめちゃくちゃ引き強くない?」
「そんなことはどうでもいい」
「よくないよ!?」
「もっと煽ってくれ」
「煽るところがないんだって!!」
『キモいキモいキモい』
『宝玉より罵倒を求める男』
『物欲センサーが仕事してる』
『欲しいものだけ出ない』
『ティガが困ってるw』
九巡目。
《玄馬――RARE 1 大地竜の皮》
「九回引いてレア1が九個ぉ♡」
ティガがここぞとばかりに玄馬へ詰め寄った。
「ざぁこ♡ ざぁこ♡ 素材欄が鱗と皮で埋まっちゃうねぇ♡」
「まだ終わってねえ!!」
一方――。
《亮二――RARE 5 大地竜の逆鱗》
「うわ、逆鱗!」
「…………」
亮二の顔が曇った。
『なんで悲しそうなんだよ』
『逆鱗だぞ喜べ』
『引けば引くほど不幸になってる』
『キモい』
『リョウジの顔も寄っとくわ』
ユンユンが、逆鱗を手に絶望する亮二をしっかりアップで抜いた。
「なんで俺よりいいの引いてる奴が、俺よりつらそうなんだよ……」
玄馬にはもう何も分からない。
そして――最後の一巡。
「ここだ!」
玄馬が祈るように最後のナイフを握り、グランドリューへ突き立てる。
《RARE 2》
《大地竜の螺旋翼》
「…………」
『あっ』
『終わった』
『10回でR1×9、R2×1』
『逆にすごい』
「…………まだだ」
「終わったよ♡」
「まだ何かあるかもしれないだろ!」
「ないよ♡」
「うるせえ!」
続いて亮二。
「頼む……!」
玄馬とはまったく別の意味を込めて、最後のナイフを突き立てる。
《RARE 6》
《大地竜の宝玉》
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙。
ユンユンが二人の結果を交互に映す。
玄馬――螺旋翼。
亮二――宝玉。
もう一度。
螺旋翼。
宝玉。
『……えらい差ついたな』
「言うな!」
「なんでだ……」
「お前は喜べよ!」
ティガが、ゆっくりと大きく息を吸い込んだ。
そして――玄馬へ振り返る。
「ゲンマぁぁ♡」
「来るな!」
「同じ十回なのに、リョウジは逆鱗も宝玉も引いてるよぉ♡ それなのにゲンマは、レア1が九個とレア2が一個だけ♡」
「結果を読み上げるな!」
「トップハンターだったのにガチャは最底辺♡ リョウジに負けて恥ずかしくないのぉぉぉ!?」
「ぐっ……!」
「ざぁーーーこ♡ ざこゲンマぁ♡ 引きよわ♡」
「うるっせええええ!!」
玄馬が頭を抱える。
その隣で――。
「なんでだ……」
亮二も頭を抱えていた。
「なんで勝ってしまったんだぁぁぁぁ!!」
「はぁ!?」
「代われよゲンマ!!」
「宝玉引いた奴が何言ってんだよ!」
「俺もそれやってほしかった!! ティガたん! 俺にも! もっと煽ってくれ!!」
「だから煽るところないって!!」
『wwwwww』
『キモい』
『キモいキモいキモい』
『片方は罵倒されて苦しんでる』
『片方は罵倒されなくて苦しんでる』
『どうしてこうなった』
『今日一番の神回』
少し離れた場所では、輝夜が片手で顔を覆い、鉄哉は何も言わずカルデラの青空を見上げていた。
「……カグヤ」
「なに?」
「俺たち、本当にこいつをリーダーにしてていいのか?」
「戦闘中はまともなのよ」
「それ前も聞いたぞ」
『戦闘中限定www』
『戦闘IQと性癖を引き換えにした男』
『神は二物を与えなかった』
そんな中、ユンユンだけは仕事を続けていた。
玄馬の苦悶。
宝玉を握り締めながら絶望する亮二。
完全にドン引きしているティガ。
その三人を順番に画面へ収めると――。
すうっ、とカメラを引いた。
『……人間って難しいな』
『ユンユンwww』
『正論』
『今日一番まとも』
「いや、ほんとに」
ティガまで真顔で頷く。
「なんなの、このおじさんたち……」
「俺を一緒にすんな!!」
「ティガたん」
「なに?」
「今の『なんなの』、もう一回お願い」
「お前は黙れ!!」
玄馬の怒声がカルデラいっぱいに響き渡り、コメント欄はこの日一番の速度で流れていった。