元トップハンターのおっさん、落ちぶれ炭鉱夫から再起する 。ガチャで引いた魔剣をメスガキギャル配信者とMAX強化! 六大魔竜の宝玉が出るまで帰れません 作:炭酸水ひろみつ
――そして、二戦目。
《2nd PARTY》
《御堂筋玄馬》
《ティガ》
《牛尾輝夜》
《日ノ元鬼丸》
《SPECIAL RULE》
《討伐制限時間――5:00》
先ほどまで繰り広げられていた地獄のような剥ぎ取りガッチャから一転、広大なカルデラには再び狩りの緊張感が戻っていた。
一戦目で大地竜グランドリューの討伐には成功したものの、肝心の大地竜の宝玉を引き当てたのは亮二である。
取得した素材は本人に固定され、他人への譲渡はできない。
つまり――。
「今度こそ宝玉引かねえとな……」
玄馬がグランエイジを肩へ担ぎながら呟く。
『なお前回』
『鱗×4』
『皮×5』
『螺旋翼×1』
『グランドリュー「また来たの?」』
「うるせえ! 十回もありゃ普通一個くらい出ると思うだろ!」
「出なかったけどね♡」
「お前は黙ってろ!」
ティガの煽りを振り払い、玄馬は足元へ意識を集中させた。
今回の特殊ルールは、五分以内の討伐。
一戦目では自然睡眠まで利用して仕留めた相手を、その半分にも満たない時間で倒さなければならない。
だが、こちらにも一戦目にはなかった大きなアドバンテージがある。
すでに一度、この敵を狩っている。
「一回やり合ってる。動きは分かってる」
足裏から伝わる微かな振動を感じながら、玄馬は三人へ指示を飛ばす。
「ティガ、最初から音響爆弾で引きずり出せ」
「OK!」
「カグヤは障壁破壊後、潜らせないように拘束。オニマルは――」
「斬る」
「……おう。それでいい」
銀髪の青年は太刀の柄へ片手を添えたまま、いつもと変わらない眠たげな顔をしている。
『作戦会議3秒』
『オニマルだけ雑w』
『斬る』
『でも一番分かりやすい』
『ほなタイマー出すで』
ユンユンが少し高い岩場へ駆け上がり、四人とカルデラを広く収められる位置へカメラを構えた。
《TIME LIMIT――05:00》
《04:59》
カウントダウンが始まる。
同時に、地面が震えた。
「来るぞ!」
土の盛り上がりが、猛烈な勢いで玄馬たちへ迫ってくる。
一戦目では、どこから飛び出してくるのか分からず警戒するしかなかった。
だが、今回は違う。
地中を進む速度も。
地表へ出る直前の振動も。
すでに知っている。
玄馬が一点を指差した。
「――そこだ!」
「はいよー♡」
ティガはすでに調合を終えていた。
《調合効果――1000%》
《調合失敗率――0%》
完成した球体を、グランドリューが通過した穴へ放り込む。
「音響爆弾!!」
ドンッ!!
地中で炸裂した爆音が、足元から腹へ突き上げてくる。
次の瞬間。
ドゴォォォォン!!
大量の土砂を撒き散らし、大地竜グランドリューが地上へ飛び出した。
『出たあああ!!』
『モグラ叩き開始』
『二戦目は初手からこれか』
『一戦目の経験がそのまま攻略法になってる』
『飛び出すとこ押さえたで!』
ユンユンのカメラが地面から一気に上を向き、土煙を突き破る巨体を画面いっぱいに捉える。
「GO!!」
玄馬が駆けた。
グランエイジを横薙ぎに叩きつけるのと同時に、ティガが
「頭もらったぁ!」
噴射。
急降下。
爆発的な加速を乗せた金属杖が、グランドリューの頭部を打ち据える。
そして、その反対側から――。
「抜刀・逆袈裟」
銀光が閃いた。
「速っ……!」
玄馬が思わず声を漏らしたときには、鬼丸はすでにグランドリューの側面へ抜けている。
一撃。
二撃。
三撃。
玄馬の大剣とは正反対だった。
一撃へすべてを乗せるのではなく、相手の動きに合わせて最短距離を縫うように刃を通し、そのまま次の斬撃へ繋げていく。
そのくせ、一発一発が決して軽くない。
『オニマル速ええ』
『太刀見えないんだけど』
『現ブルファンのアタッカーやべえ』
グランドリューが吠え、ドリル状の翼を横薙ぎに振り回す。
「ゲンマ君、右へ二歩!」
「おう!」
輝夜の声に従い、玄馬が即座に動く。
その鼻先を巨大な翼が通過した。
「ティガちゃん、そのまま上! 五秒後に正面が空く!」
「了解!」
輝夜自身も絶えず銃撃を続けながら、その視線は常に戦場全体を捉えていた。
誰が攻撃しているか。
誰が次に動けるか。
敵の意識がどこへ向いているか。
玄馬たち三人が最大限に攻撃できる位置を作りながら、その隙間へ自分の弾丸まで正確に差し込んでくる。
(……そうだったな)
昔は、これを当たり前だと思っていた。
自分が好きなだけ大剣を振り回せたのは、その裏で輝夜が戦場を見て、攻撃へ集中できる状況を作っていたからだ。
それが今なら、よく見える。
「今よ!」
「おらぁ!!」
「そぉれっ!!」
「はい」
三方向から攻撃が重なった。
《BARRIER BREAK》
《大地障壁――破壊》
《03:38》
「よし、このまま――」
グランドリューが左右の翼を地面へ突き立てる。
一戦目と同じ動き。
逃走。
地中へ潜るつもりだ。
「逃さないわよ」
輝夜が弾倉を交換した。
《AMMO――PARALYSIS》
銃声。
一発目が脚。
二発目が胴。
三発目が首筋。
さらに四発、五発と正確な射撃が叩き込まれ、青白い電流がグランドリューの巨体を駆け巡った。
《PARALYSIS》
回転を始めていたドリル翼が、ぴたりと停止する。
「ナイスだ、カグヤ!!」
「拘束は長くないわ。一気に決めて!」
「十分だ!」
玄馬が踏み込む。
グランエイジを叩き込み、ティガもエリアルロッドの噴射を全開にして巨体へ突っ込んだ。
そして――。
「オニマル!」
「うん」
鬼丸が前へ出る。
それだけだった。
気合を入れるでもない。
叫ぶでもない。
ただ静かに腰を落とし、鞘に収めた太刀の柄へ右手を添える。
玄馬の目が細くなった。
空気が変わった。
(――来る)
一歩。
鬼丸の姿が霞む。
「一閃」
キンッ――と、遅れて音が鳴った。
抜き放たれた太刀がグランドリューの胴を横一文字に走り、銀色の軌跡が残光となって宙へ刻まれる。
《DAMAGE――3,284》
だが、止まらない。
踏み込んだ右足を軸に身体を反転させ、振り抜いた太刀をそのまま頭上へ。
「唐竹割り」
真上から一直線。
振り下ろされた刃が、先ほど一閃で刻んだ傷と交差する。
《DAMAGE――4,716》
二撃で――八千。
それだけでも十分すぎる火力。
だが、鬼丸はまだ太刀を納めない。
「からの――」
ほんのわずかに腰を落とした。
「無双連斬」
銀光が、弾けた。
一つ。
二つ。
三つ。
玄馬の目をもってしても追い切れない斬撃が、麻痺して動けないグランドリューの巨体へ次々と走る。
そして最後の一刀が、最初の一閃とまったく同じ軌跡をなぞった。
《DAMAGE――3,812》
《DAMAGE――3,188》
《TOTAL COMBO DAMAGE――15,000》
ズンッ!!
すべての斬撃が終わってから、ようやくグランドリューの巨体が沈んだ。
「…………は?」
玄馬の口から、間の抜けた声が漏れる。
《QUEST CLEAR》
《大地竜グランドリュー――討伐完了》
《CLEAR TIME――02:51》
「…………」
ティガがエリアルロッドを構えたまま固まる。
玄馬もグランエイジを肩へ担いだまま、倒れたグランドリューと鬼丸を交互に見た。
輝夜だけが、これくらいは当然だとでも言いたげに銃を下ろしている。
ユンユンのカメラが、まずタイムを映した。
《02:51》
次に、倒れたグランドリュー。
そして最後に――何事もなかったように太刀を鞘へ納める鬼丸。
「……もう終わり?」
ティガが呟いた。
「俺も今、同じこと思った」
『はっやwww』
『5分縛りとは』
『2分以上余ってるぞ』
『TOTAL15000!?』
『さっきゲンマ14000じゃなかった?』
『上回ってるw』
『これが現ブルファンのアタッカー』
『カグヤの拘束からオニマルの火力エグい』
玄馬は倒れたグランドリューを見下ろした。
自分の霊峰斬が叩き出した一万四千は、睡眠状態への初撃――会心率マイナス百パーセントを無視した確定CRITICALによるものだ。
対して鬼丸は、輝夜が作った麻痺の隙へ三つの技を繋ぎ――合計一万五千。
「……マジかよ」
思わず笑いが漏れた。
自分が抜けたあと、ブルーファンタズムのアタッカーになった男。
どんな奴なのかと思っていた。
蓋を開けてみれば、とんでもない。
「お前、強えな」
「ん?」
鬼丸が振り返る。
「今の。俺の霊峰斬より出てる」
「ああ」
鬼丸は自分が叩き出した数字を確認するように表示へ目を向けた。
「でも三つの技の合計でしょ?」
「……そこ気にする?」
ティガが突っ込む。
「ゲンマさんのは一発だし」
鬼丸はそれだけ言うと、何でもないことのように太刀を鞘へ納めた。
玄馬は一瞬、言葉を失う。
それから――吹き出した。
「ははっ。そういう考え方かよ」
面白い。
一万五千対一万四千で、自分の勝ち。
そんな見方すらしていない。
玄馬とは武器も違えば、戦い方も違う。
火力の出し方まで違う。
なら、単純な数字だけを並べたところで意味はない。
それでも。
強い。
それだけは間違いなかった。
「……今のブルーファンタズム、強えな」
玄馬が素直に口にすると、輝夜が小さく笑った。
「でしょう?」
ティガが地中から引きずり出す。
玄馬たちが障壁を割る。
輝夜が最適な瞬間に拘束する。
そして、鬼丸が仕留める。
派手な奇策など何もない。
それぞれが自分にできることを理解し、必要な瞬間に必要な仕事をしただけ。
なのに、恐ろしく速い。
「オニマル」
「なに?」
「さっきまで、お前のことよく分かんなかったけど」
「うん」
「少なくとも、アタッカーとしてブルファンにいる理由は分かった」
「そう?」
「そうだよ」
「ふーん」
鬼丸はそれだけ言うと、もう興味を失ったようにスマートフォンを取り出した。
『ゲーム始めたw』
『余韻ゼロ』
『オニマル自由すぎる』
『ゲンマちょっと気に入ってて草』
「さて」
ティガが気を取り直すように手を叩いた。
そして――にんまりと笑う。
「ゲンマ♡」
「……なんだよ」
「もう一回、十連できるね♡」
「…………」
玄馬が倒れたグランドリューを見る。
今度こそ。
ここで宝玉を引かなければ、グランエイジは強化できない。
『二周目のガチャやな』
ユンユンのカメラが、倒れたグランドリューから玄馬の顔へゆっくりズームする。
『本番』
『今度こそ宝玉引けよ』
『また鱗と皮10個だったら笑う』
『討伐よりこっちの方が不安』
「二十回も引いて宝玉ゼロなんてあるわけねえだろ!」
「その台詞♡、フラグにならないといいねぇ♡」
「縁起でもねえこと言うな!!」
五分以内の討伐は、あっさり成功。
だが玄馬にとっての本当の勝負は――まだ終わっていなかった。