元トップハンターのおっさん、落ちぶれ炭鉱夫から再起する 。ガチャで引いた魔剣をメスガキギャル配信者とMAX強化! 六大魔竜の宝玉が出るまで帰れません 作:炭酸水ひろみつ
「それじゃあ――二戦目の剥ぎ取りガッチャ、いっくよー♡」
大地竜グランドリューの亡骸を背後に、ティガが元気よく片手を突き上げた。
二戦目の討伐タイムは二分五十一秒。五分という制限時間を半分近く残して終わった高速討伐だったが、玄馬にとってはここからの方がよほど緊張する。
今回、討伐に参加した両チームへ支給された剥ぎ取りナイフは、それぞれ十本ずつ。
ブルーファンタズム側は、鬼丸と輝夜が五本ずつ。
対してTeam虎馬側は、本来なら玄馬とティガで五本ずつなのだが――。
「はい♡」
ティガが自分のナイフ五本をまとめて、玄馬へ押しつけた。
「……いいのか?」
「何言ってんの。宝玉必要なのゲンマでしょ?」
「まあ、そうだけどよ」
「私はまた狩ればいいし♡」
何でもないことのように言って、ティガは玄馬の背中をぱんっと叩いた。
「というわけで、ゲンマは十連ね♡」
『ティガ優しい』
『なお煽りは優しくない』
『ゲンマ20連目突入』
『今度こそ引けよ』
『ほな、最初はブルファンからやな』
ユンユンがカメラを鬼丸へ向ける。
「僕から?」
「お願い」
輝夜に促され、鬼丸が五本のナイフを受け取った。
「じゃあ、適当に」
「宝玉を適当に引くなよ?」
「引けるときは引けるでしょ」
「その発言、嫌いだわ」
一回目。
《RARE 4》
《大地竜の螺旋角》
「お」
二回目。
《RARE 5》
《大地竜の逆鱗》
「え?」
『初手から強い』
『レア4→5』
『嫌な予感』
そして三回目。
《RARE 6》
《大地竜の宝玉》
「…………」
玄馬が黙った。
「宝玉だ」
鬼丸は淡々としている。
「見りゃ分かるよ!」
四回目。
《RARE 6》
《大地竜の宝玉》
「…………は?」
『二個目www』
『ちょっと待て』
『確率どうなってんの』
『宝玉二個並べて撮っとくで』
ユンユンが足元へ転がった二つの宝玉へズームする。
「おい、待て」
「なに?」
「お前、あと一本残ってるよな?」
「あるね」
「やめろ」
「なんで?」
「嫌な予感しかしねえ」
「でも引かないともったいないし」
「それはそうなんだけど!」
鬼丸は特に期待する様子もなく、最後のナイフを突き立てた。
《RARE 6》
《大地竜の宝玉》
「おい」
玄馬の声が低くなる。
『三個wwwww』
『5回中3個宝玉』
『神引き』
『ティガ族だ』
『引ける側の人間』
「オニマル」
「ん?」
「五回しか引いてないよな?」
「うん」
「なんで宝玉三個ある?」
「出たから」
「説明になってねえ!」
するとティガが目を輝かせながら鬼丸へ近づき、その肩をぱんぱんと叩いた。
「オニマル、分かってるぅ♡」
「何が?」
「引ける人って、引けるんだよね♡」
「分かる」
「分かり合うな!!」
『豪運同盟結成』
『ゲンマだけ世界が違う』
『引き弱には理解不能』
「ざぁこ♡」
「まだ俺引いてねえだろ!」
♢
「じゃあ、次は私ね」
輝夜は五本のナイフを手にすると、鬼丸とは対照的に、一つずつ結果を確かめながら剥ぎ取っていった。
《RARE 1――大地竜の鱗》
《RARE 3――大地竜の尻尾》
《RARE 2――大地竜の螺旋翼》
《RARE 3――大地竜の尻尾》
《RARE 4――大地竜の螺旋角》
「まあまあね」
輝夜は結果を眺め、満足そうに頷く。
「尻尾二本なら悪くないわ」
「こういうのでいいんだよ」
玄馬が心の底から呟いた。
「普通に引いて、普通に終わる。これが健全な剥ぎ取りだ」
「負け惜しみぃ♡」
「違う!」
『さっき宝玉3個見た後だとな』
『感覚壊されてる』
『カグヤが一番普通』
『ほな――』
ユンユンのカメラが、ゆっくりと玄馬へ向く。
『本日のメインイベントやな』
「言い方!」
玄馬の手には十本。
自分に支給された五本と、ティガから託された五本。
「ゲンマぁ♡」
「……なんだよ」
「オニマルは五回で宝玉三個だったよ♡」
「知ってる!」
「ゲンマは十回も引けるんだよ♡」
「だから?」
「三個くらい余裕だよねぇ♡」
「ハードル上げんな!!」
一回目。
《RARE 1――大地竜の鱗》
「あは♡」
二回目。
《RARE 1――大地竜の鱗》
「ざぁこ♡」
三回目。
《RARE 1――大地竜の皮》
「引きよわ♡」
「まだ三回だ!」
四回目。
《RARE 1――大地竜の鱗》
五回目。
《RARE 3――大地竜の尻尾》
「お!」
「やったねゲンマ♡ レア3だって♡」
「その褒め方ムカつくな!」
六回目。
《RARE 1――大地竜の皮》
七回目。
《RARE 1――大地竜の鱗》
八回目。
《RARE 1――大地竜の皮》
「鱗四枚♡ 皮三枚♡」
ティガが楽しそうに指折り数える。
「大地竜のお洋服でも作るぅ?♡」
「作らねえよ!」
『また鱗と皮』
『安定感がすごい』
『オニマル宝玉3個』
『比較するなw』
九回目。
《RARE 2――大地竜の螺旋翼》
「…………」
残るナイフは――一本。
《LAST 1》
『ここで引け』
『ここまで19連敗』
『次でグランドリュー通算20回目』
『さすがに来るだろ』
玄馬は最後のナイフを握り直した。
「ここまで来たら頼むぞ……」
さすがのティガも煽るのを止め、玄馬の手元をじっと見つめる。
そして、小さく息を吐くと――。
「しょうがないなぁ」
一歩、前へ。
「最後くらい、私が運を注入して――」
コツン。
「…………え?」
ティガの動きが止まった。
その手が玄馬のナイフへ届く寸前、横から伸びてきた鬼丸の手刀が、刃の腹を軽く叩いていた。
「これでいけるでしょ」
「……お前のおまじない?」
「僕、三個引いたし」
「確かに縁起はいいな」
「ちょっと」
ティガの眉が、ぴくりと動いた。
「じゃあ行くぞ」
「ちょっと待って、ゲンマ」
「頼む――!」
「待ってってば!」
すでに玄馬の耳には届いていない。
最後の一本を――突き立てる。
光が弾けた。
《RARE 6》
《大地竜の宝玉》
「――よっしゃあああ!!」
『出たああああ!!』
『20回目!!』
『オニマル神』
『おまじない効いたw』
『宝玉きたあああ!!』
『寄るで!』
ユンユンが即座に宝玉へズームする。
大地をそのまま凝縮したような鈍い黄金色を宿した球体が、画面いっぱいに映し出された。
「やったぞ、オニマル!」
「でしょ」
玄馬が拳を握り、喜んで鬼丸へ振り返った――その瞬間。
「むぅ……」
「うおっ!?」
横から衝撃。
ティガが玄馬の身体へ抱きついてきた。
背後から両腕を腹へ回し、そのままぐいっと自分の方へ引き寄せる。
「ティガ!?」
「私が注入する予定だったんですけどー?」
「いや、結果出たんだから誰でもいいだろ!」
「よくない!」
「何が!?」
ティガは答えない。
玄馬を抱え込んだまま頬を膨らませ、鬼丸をじっと見ている。
どうしてそこで不機嫌になるのか、玄馬にはさっぱり分からない。
『!?』
『嫉妬www』
『急にラブコメ』
『ゲンマ確保されてて草』
『ティガちゃんそれ自覚ある?』
『オニマル何もしてねえw』
ユンユンのカメラが、玄馬へ抱きついたティガから鬼丸へゆっくりパンする。
鬼丸は一秒ほど二人を眺め――。
「別にいらないけど」
「俺を景品みたいに言うな!」
「宝玉も三個あるし」
「宝玉と同列に並べんな!」
『wwwww』
『ゲンマ<宝玉』
『オニマル興味ゼロ』
『なのに嫉妬される男』
少し離れたところでは、輝夜が口元へ手を添えて笑っている。
対してティガは、まだ玄馬から離れようとしない。
「……もう取れたんだから離せって」
「やだ♡」
「なんでだよ!」
「なんとなく♡」
「一番困る答えだな!」
『無自覚だこれ』
『なんとなく(嫉妬)』
『もう答え出てるだろ』
『ええ画撮れたわ』
「ユンユン、そこ配信すんな!!」
『手遅れ』
『全部流れてます』
『切り抜き確定』
『神回』
ようやくティガが離れたかと思えば、本人は自分がなぜあんな行動を取ったのか考える様子もなく、手に入れた宝玉を覗き込んで満足そうに笑っている。
玄馬には、ますます分からない。
「……なんだったんだ、今の」
「さあ?」
輝夜が妙に楽しそうに答えた。
「本人が分かってないなら、私から言うことじゃないわね」
「?」
「気にしなくていいわ」
そう言われると、余計に気になる。
だが問い返すより早く、ティガがぱんっと手を叩いた。
「よーし♡ 目的達成!」
そして数秒前まで玄馬へしがみついていたことなど忘れたように、拳を高々と突き上げる。
「打ち上げ行こー!!」
「お前、切り替え早すぎない?」
「馬刺し♡ 熊本ラーメン♡ 辛子れんこん♡」
「聞いちゃいねえ」
『ワイも肉食いたいわ』
「ユンユンも行く?」
『ダンジョンから出られへんわ!』
「ごめん♡」
『忘れんなw』
『ユンユンかわいそう』
『最後までカオス』
こうして二戦に及んだ熊本での狩りは、目的だった大地竜の宝玉を手に入れて終了した。
玄馬の手には宝玉。
鬼丸の手には、なぜか三個の宝玉。
そしてティガには――本人にもまだよく分かっていない何かが、少しだけ残ったらしい。
その正体を、ティガ自身が思い知ることになるのは――すぐ後のことだった。
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