元トップハンターのおっさん、落ちぶれ炭鉱夫から再起する 。ガチャで引いた魔剣をメスガキギャル配信者とMAX強化! 六大魔竜の宝玉が出るまで帰れません   作:炭酸水ひろみつ

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宝玉1『炎熱』 煉獄竜レッドドラゴン
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 上野ダンジョン――火山エリア。

 

 ゲートを抜けた途端、玄馬の全身を包み込んだのは、肌をじりじりと焼くような熱気だった。

 

 空は煤を溶かし込んだような暗い赤に染まり、遠くに連なる火山からは絶え間なく黒煙が立ち昇っている。乾ききった大地には幾筋もの亀裂が走り、その奥では粘つくような橙色の光が脈打っていた。ときおり吹き抜ける風さえ熱を孕み、硫黄の臭いと細かな火山灰を巻き上げて頬を撫でていく。

 

 六大魔竜、その一角が棲むフィールド。

 

 玄馬は背負った大剣――グランエイジの柄へ手を添えながら、隣を歩く相棒へちらりと目を向けた。

 

 金髪のツインテールを揺らしながら歩くティガは、やけに上機嫌だった。普段から配信中はテンションの高い女だが、今日はそれとは少し違う。口元が緩んでいるというか、今にも鼻歌でも歌い出しそうというか。

 

「機嫌いいな」

 

「まあね。この子のお披露目だもの」

 

 ティガが肩に担いだものを、これ見よがしに持ち上げる。

 

 杖――と呼ぶには、あまりに物々しい。

 

 金属製の長い柄、その先端にはいくつもの噴射口を備えた機構が取り付けられ、中心には赤く輝く球体が埋め込まれている。

 

 空中法機(エリアルロッド)。

 

 ティガのために造られた、新しい武器だった。

 

 ◇

 

 数日前。

 

 黒金家の工房には、金属を打つ甲高い音が響き続けていた。

 

 炉の前に立つ鉄斎が、真っ赤に熱された金属へ槌を振り下ろす。そのたびに火花が弾け、薄暗い工房を一瞬だけ眩しく照らし出す。

 

 その傍らでは、ティガも保護眼鏡をかけ、先端部へ組み込む噴射機構の調整を続けていた。鉄斎が本体を鍛え、設計したティガが細かな機構を組み上げる。作業台には、その要となる二つの素材が並んでいた。

 

 一つは、爆轟竜から剥ぎ取った宝玉。

 

 もう一つは、黒みがかった銀色の鉱石だった。

 

「まさか、こいつを使う日が来るとはな」

 

 鉄斎が槌を止めずに言った。

 

「反重鉱石。お前が配信始めたばっかりの頃に掘り当てたやつだったか」

 

「そ。あたしが初めて引いた激レア素材」

 

 ティガにとっては思い入れのある品だった。

 

 反重鉱石――その名の通り、周囲にかかる重力を弱める性質を持つ特殊鉱石である。ただし、それ単体で得られる浮力は弱く、人間一人を空へ持ち上げるほどの力はない。希少性だけは馬鹿みたいに高いくせに使い道が限られ、長いあいだ工房の棚で眠っていた代物だ。

 

 そこへ転がり込んできたのが、爆轟竜の宝玉だった。

 

「反重鉱石で身体を軽くして、爆轟竜の宝玉で爆発的な推進力を得る」

 

「理屈だけなら簡単だな」

 

「でしょ?」

 

「簡単なのは理屈だけだっつってんだ」

 

 鉄斎は吐き捨てるように言うと、再び槌を振り下ろした。

 

 火入れ、成形、焼成。

 

 何度も熱し、叩き、冷まし、また火へ戻す。鉄斎が本体を鍛える横でティガが噴射機構を調整し、二つの異質な素材を一つの武器へ組み上げていく。

 

 やがて最後の部品が嵌め込まれると、先端に収められた宝玉が低い駆動音とともに赤く輝いた。

 

「――できたぞ」

 

 ティガの目が輝く。

 

 完成した空中法機(エリアルロッド)を手に取り、起動させる。

 

 低い駆動音とともに反重鉱石が作用し、ずしりと腕にかかっていた重さが一気に軽くなった。

 

 反重鉱石によって装備者ごと重力の影響を軽減し、爆轟竜の宝玉が生み出す爆発を噴射口から放つことで推進力へ変える。

 

 もちろん、自由自在に空を飛び続けられるわけではない。あくまで空中で何度も地面を蹴るように爆風を噴かせ、上下左右へ加速する――いわば、多段式の空中ジャンプを可能にする法機だった。

 

「いいじゃん」

 

 ティガは満足そうに笑った。

 

「これなら玄馬の頭上から『ざぁこ♡』って言える」

 

「最初に出てくる感想がそれか」

 

 鉄斎は深々とため息をついた。

 

 ◇

 

 そして現在。

 

 ティガは念願の新武器を携え、六大魔竜の一角と向かい合っていた。

 

 煉獄竜レッドドラゴン。

 

 赤熱した岩石をそのまま鱗へ変えたような巨体が、溶岩の流れる谷間に鎮座している。二本の太い後脚で大地を踏みしめ、巨大な尾をゆっくりと揺らすたび、周囲の火山灰が波紋のように広がった。

 

 玄馬たちを見下ろす双眸が、赤く光る。

 

「まずは予定どおり、通るか試してみよっか」

 

 ティガは腰のポーチから素材を取り出すと、慣れた手つきで調合を始めた。二種類の薬剤を混ぜ、出来上がった玉を掌で転がす。

 

 麻酔玉。

 

 戦闘を避けて眠らせられるなら、それに越したことはない。

 

「いっけぇ!」

 

 ティガが大きく振りかぶった。

 

 放物線を描いた麻酔玉が、レッドドラゴンへ迫る。

 

 直撃する――そう思った瞬間だった。

 

 ボウッ!!

 

 レッドドラゴンの全身から炎が噴き上がり、巨大な火柱となって渦を巻く。麻酔玉は炎へ触れた瞬間に弾け、中身を届かせることすらできずに燃え尽きた。

 

「うっわ……」

 

 ティガが頬を引きつらせる。

 

 傍らに浮かぶ配信ウィンドウには、すぐさま大量のコメントが流れ始めた。

 

『ですよねー』

 

『知ってた』

 

『初手睡眠失敗』

 

『でもこれどうやって殴るんだ?』

 

『炎消さないと近づけなくね?』

 

『六大魔竜きたああああ』

 

 落胆と、それ以上の期待。

 

 視聴者が待っているのは、ここからだった。

 

 玄馬はグランエイジを肩から下ろし、地面へ切っ先を擦らせながら前へ出る。

 

「つまり、まずはあの炎をどうにかしろってことだな」

 

「みたいだね」

 

 ティガも口角を上げた。

 

 初手の睡眠は潰された。ならば、次の手を試せばいい。

 

「じゃ、基本プランに切り替えよっか。あたしが上、玄馬が下」

 

「手数で削って、まずはあの炎を剥がすぞ」

 

「りょーかい」

 

 ティガがエリアルロッドを両手で握り、先端を地面へ向ける。

 

 次の瞬間。

 

 ドンッ!!

 

 爆音とともに噴射口から爆風が地面へ叩きつけられ、その反動でティガの身体が一気に宙へ舞い上がった。

 

 反重鉱石によって身体と装備にかかる重力を軽減し、そこへ爆轟竜の宝玉が生み出す爆発を重ねる。一度目で跳び、二度目で加速、三度目で軌道を変え、ティガは地面など存在しないかのようにレッドドラゴンの頭上へ回り込んだ。

 

 同時に玄馬が走る。

 

 地上と空中。

 

 二方向からの同時攻撃。

 

 地を駆ける玄馬のグランエイジと、空を翔けるティガのエリアルロッドが、煉獄竜を包む炎の障壁へ上下から同時に迫る。

 

 六大魔竜、初戦。

 

 狩りの始まりだ。

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