2015年6月2日(火)朝
教室
今日は遠足の日だ、とは言っても昨日突然一穂さんが遠足をすると言ってきたのでたまったものではない。一応給食はないためみんなで食べれるよう、弁当はつくってきたが…
「ななちゃん、そのリュックどうしたの?」
「蛍ちゃん、今日は遠足だよ?」
「え!?私なにも聞いてないですけど…」
「俺も昨日一穂さんから言われたからな、昨日まで知らなかった」
「かず姉そーゆーとこあるからなぁ、姉ちゃんと兄ちゃんとれんちょんは先に行ったみたいだし、ウチらも行こっ」
「俺が車で送ろう」
おじさんから借りた車で遠足先まで向かうことにした。
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宮内家 田んぼ
ここが昨日一穂さんが言ってた場所だが、これは完全に田んぼだ…
「というわけで、楽しい楽しい遠足!田植え祭を始めまーす!」
それは遠足ではない、ただの田植えだ!俺を含め、れんげ以外は唖然としている…
「こちらの田んぼのお手伝いをしてもらいまーす。こちらといってもウチのとこの田んぼですが。あ、違う違う!別にバイト雇う金ないとか、ウチが家の手伝いするのが面倒だからみんなに労働させるわけじゃなくてねぇ」
全部言ったよこの人。
「お米の大切さを知ってもらう課外授業だと思ってねぇ、あれ?みんな怒ってる?ごめんねぇ、昨日ちゃんと伝えたかったけど忘れちゃっててね。でもれんちょんは遠足って聞いてキャッキャッ笑いながら楽しみにしてたもんねぇ」
「ほんと、笑わせてくれる…」
れんげは完全にキレている…当たり前だ、楽しみにしてた遠足がこれな上に主催者の一穂さんが醜態を晒しているからな…
「楽しい田植え、はーじまーるよー」
「この時期はいつも田植えさせられるんだった。仕方ない、さっさと終わらせてお弁当食べて帰ろう」
「私お弁当なんて持ってきてないですよ」
「おにぎりでいいなら朝作ってきたの分けてあげるよ」
「先輩の作ったおにぎり…頑張ろ!」
「俺も弁当は多めに用意してきたからあとでみんなで食べよう」
「お兄ちゃんのお弁当!?やった!」
そうしてみんなで田植えを始めることにした…
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数分後
夏海と卓は座り込んでいる、あまりやる気はないようだ…少し話でもしてみるか。
「夏海、調子はどうだ?」
「遊園地行きたかった動物園行きたかった水族館行きたかった!せめて地元の1両編成手動式ドアの電車乗りたかった!」
夏海はジタバタしている…無理もない、遠足は本来そういったとこに行くものだ。
「ジタバタしたら少し落ち着いた…とはいえ田植えする気は起こらんなぁ…てかいたんだ、兄ちゃん」
「……………」コクッ
「やる気は出してくれ」
なにを思いついたか、夏海は卓に編笠を被せ、竹の棒を袖にくぐらせた。どうやら卓をカカシにしたようだ。こうなった卓は何をしても動かない。俺は卓をそっとしておくことにした…
「カカシのできあがりー!………もっと面白くなるはずだったのに…」
「そこにやる気を出しても仕方ないだろ…」
「夏海!悠兄!ぬかるみにハマって動けない…」
「何ハマっちゃってんの!?アハハハ!ハマる瞬間ワンコール!」
「笑ってないで助けろ!」
「しょうがないなぁ、ウチらがついてないとすぐこうなるんだから…あれ?ウチもハマっちゃった!?」
越谷姉妹は2人揃ってハマってしまったようだ…仕方ない、助けに行くか…
「ほたるん!ななちん!助けてぇ!」
「先輩のおにぎり!」
「お兄ちゃんのお弁当!」
「ダメだよ夏海、二人ともさっきからあの調子で集中しきってるよ…」
「悠兄!悠兄助けて!」
「少し待ってろ」
俺はハマらなさそうな場所から2人のところに近づいた。
「お兄ちゃんの…あっ!動けない!助けてお兄ちゃん!」
菜々子が助けを呼んでいる!
「うおおお!菜々子おおおおおおおお!!!!」
「「悠兄!?どこ行くの!?」」
その後、菜々子を助けることは成功したが、自力で抜け出そうとした夏海と小鞠は結局田んぼに落ちてしまい、泥まみれになってしまった…
「もう田植えなんてしねぇ…てか元凶のかず姉どこなの?」
「いやぁ、やっぱ機械のほうがいいわぁ。人の手よりも断然いいね。あ、もう帰っていいよ」
どうやら一穂さんは田植え機を使っていたようだ。人の手でやる必要はなかったのでは?まったく、この人は… その後みんなでおにぎりと弁当を食べて解散することになったが、結局キレたれんげがメギド説教を一穂さんにかましたのは言うまでもない…
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2015年6月13日(土)夕方
堂島家 居間
今日は小鞠が家に泊まりに来るそうだ、夕飯も菜々子と一緒に作るそうだが、あまり良い予感がしない…一人で作ってるわけではないから心配する必要はないはずだ…そして何故か陽介も来ている。
「なんでお前もいるんだ?陽介」
「たまには悠の家でごちそうになろうかなって思ってさ、菜々子ちゃんと小鞠ちゃんが作るんだろ?」
「言っておくが、菜々子は朝食の用意ならできるが、料理となったら話は別だ、最悪皿の方がマシかもしれない…」
「皿の方がマシってなんだよ…てか小鞠ちゃんもいるんだし、『物体X』ができるわけ無いだろ?それに一度越谷家で夕飯食ったことあるけど、小鞠ちゃんたちの母ちゃんのメシ、スゲー美味かったから、期待してもいいと俺は思うぜ!」
陽介は知るはずがない、菜々子がかつて作った『ムドオンチョコ』を…八十稲羽での1年で何度か危険なものを食べてきても一口で気絶してしまったあのチョコを!だが、この間の遠足で食べたおにぎりは小鞠が握ったもので美味かった。安心してもいいだろう…
「お兄ちゃんおまたせ!」
「カレーできたよー、あれ?陽兄も来てんじゃん」
「おじゃましてまーす。カレーかぁ…なあ悠…」
「聞かなくてもわかる…たが、見た目も匂いも普通のカレーだ、問題ないだろう…」
カレーと聞くと、かつて林間学校で食べた伝説の悪夢、物体Xこと『ムドオンカレー』を思い出し、身の毛がよだつ…
「私ね、いつも頑張ってるお兄ちゃんたちのために愛情をいっぱいいれたの!」
可愛い菜々子から愛情と言われると心が温まるな…
「おっ、入れちゃってる?なんかグッとくるな!」
「「じゃあ、いただきます!」」
陽介と一緒にカレーを口に入れる………うまい!カレーがらみのことではロクな目に会ったことしかないが、やっと報われた気がする…これも小鞠と一緒に作ったおかげだろうか…とにかくありがとう!小鞠!
「ウメー!コレウマいぜ!菜々子ちゃんと小鞠ちゃん!」
「ああ、美味いぞ。菜々子、小鞠!」
「やったね小鞠ちゃん!」
「うん!菜々子!」
小鞠と菜々子は料理を褒められたのが嬉しいのか、喜びあっている。
「流石越谷家の長女だな!」ガリッ
「菜々子も成長したな…」ガリッ
え゛……………??…………ガリッ……?俺達は二口目で違和感に気づいた、口の中を確かめたが、口のなかにはシジミの貝殻が入っていた…それどころか何故か一口目では普通に美味しいカレーだったはずが、懐かしい後味と風味がする…これはムドオンカレーだ!
陽介も気づいたようだ、顔色が一気に変わり今にも倒れそうだ。俺達の体制を整えなければ…
「………菜々子、おじさんも後で帰ってくるから先にお皿に米とカレーをよそってあげてくれ……うぐっ…」
「?わかった、行こ小鞠ちゃん!」
菜々子は小鞠を連れてキッチンの方へ行った…巻き込んでしまってごめんなさい、おじさん…
「ぐっ…大丈夫か、陽介?」
「あんじゃこりぁぁぁぁあ!!!二人とも一体どんな作り方して…ゲホッ!ウヘッ!…ジャリジャリしてて、ドロドロして…それにブヨブヨんとこもあって!しかもシジミが貝殻ごと!」
「何を入れたら一口目は美味しいカレーになるんだ…しかも見た目もムドオンカレーになっている…一口目だけ美味しいカレーになる何かしらの幻覚作用でも起きているのか…?」
「聞いたことねーよ!んな幻覚!でも、それを信じるしかねぇよな…俺も一口目はウマいカレーだったしな…」
「とりあえず食べやすいようにシジミを剥いておこう…」
「食いきるつもりかよ!こんなの二口でヤベーのに、食いきったら後味でどうなるかわかんねーぞ!」
「たしかに…食べきったらイゴってしまうだろう…だが菜々子と小鞠のためだ!せっかく作ってくれたんだ、悲しませないために食べきるぞ!」
「『イゴる』ってなんだよ!生命の危機に俺を巻き込むな!」
「『イゴる』というなは…真っ青な部屋の中に…」
「そんな説明はいい!そろそろ戻ってくるハズだ、シジミは剥いておくからな!」
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菜々子たちが戻ってきた…
「なぁ、菜々子ちゃんたちは味見とかしたのか?」
「流石に味見くらいはするよ、美味しかったよ?」
「うん、私も小鞠ちゃんも一口だけしたけど、美味しかったよ!」
良かった、味見はしていたようだ…待てよ、一口しか味見してないのもそれはそれで良くないのでは…?
「小鞠、このカレーの具材は何を入れたんだ?」
「えっと、それはねー」
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一時間前
小「菜々子、家から色々持ってきたけど何作るの?」
菜「カレーにしようかな…」
小「カレーかぁ、私作ったことないんだよね」
菜「大丈夫!お兄ちゃんの友達が昔すごいカレー作ったことあるみたいだから、それの真似する!」
菜「まずはニンジンとタマネギとジャガイモだよね」
小「野菜はもっとあったほうがいいかな、ピーマンと、しいたけと大根と山菜と、あとオクラもってきた!オクラって切ると星みたいな形になるよね!夏も近いし!野菜とかは私が切っておくよ」
菜「辛くするためにはこしょう!スパイスないとカレーじゃないからね。あと唐辛子もある!」
小「辛いといえば、家からキムチ持ってきた!コレも入れちゃお!」
菜「あとは小麦粉だね、入れないとトロミつかないし…お兄ちゃんもいるし強い方がいいよね!片栗粉と強力粉を入れよう!」
小「隠し味?ってやつも必要だよね、コク出すためにチョコレートとかコーヒーとかヨーグルトとか…」
菜「チョコレートならホワイトチョコがあるよ、コーヒーは…お父さんとお兄ちゃんがいつも飲んでるインスタントで…ヨーグルトはブルーベリー入りのやつがある!」
小「魚介いれるといい出汁が出ると思うの」
菜「魚介かぁ…かつお節と煮干しとコンブなら出汁でるよ!家庭科で習った!あとお父さんのイカの塩辛!」
小「シーフードカレーにしよ!家から白子とシジミ持ってきたんだ、シジミは砂抜き?しないといけないらしいけど、よくわからないからそのまま入れちゃえ」
菜「お兄ちゃん、仕事で疲れてると思うし、元気出るようにお父さんが飲んでる栄養ドリンク全部入れちゃおう!」
小「これはすごいカレーができるね!」
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「って感じで…」
これは想像以上に危険すぎる!むしろこれで一口目が美味しいカレーなのは奇跡だ!
(なぁ悠、ヤバすぎないか、コレ?今まで食べてきた物体X以上かもしれないな…)ボソボソ
(あぁ、恐らくジャリジャリな部分は挽いていない胡椒と砂抜きされてないシジミ、ドロドロなのは切られたオクラと山菜、ブヨブヨなのは片栗粉と強力粉が混ざりきらなくて塊になったもので…幻覚作用を生んでいるのは様々な栄養ドリンクを混ぜて作られた「ハイポーション」で、あと貝殻つきのシジミは…)ボソボソ
(なに冷静に解析してんだよ!ツッコむところそこじゃねーだろ!)ボソボソ
とにかくだ、何としてでも食べきらねば…
「ねえ、小鞠ちゃん…」
菜々子は小鞠に耳打ちをしている。
「えぇ!?ほんとに言わなきゃだめ?」
「ほら言うよ、せーの」
「「お兄ちゃん、全部食べてくれたら嬉しいな?」」
よし食べよう、今すぐ食べよう、考えてる暇などない!
「陽介、俺はやるぞ!」
「こうなりゃヤケだ!行くぞ相棒!」
「「ペルソナ!」」
俺達は後味がこないうちにムドオンカレー改良版を一気にかきこんだ…この時が人生で一番時間の流れをゆっくり感じた気がする…
「やったな、俺達…」
「だな、相棒…俺、もうダメみたいだ…青い部屋が見える…これがお前の言うイゴるってやつなんだな…」
俺ももう限界だ…あの後味がやってくる…視界が狭く暗くなっていく…
無慈悲な風味だけが デタラメに口にあふれてる
NEVER MORE 切なく流れでたカレー
なんかエンディングみたいなものが聞こえてくる…
「お兄ちゃんと陽介お兄ちゃん寝ちゃったね…」
「私たちも食べよっか、菜々子」
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夜
「ただいま、帰ってきたぞ…なんでお前達揃って居間で寝てんだ?…ん?」
お父さんへ 作 菜々子・小鞠
「菜々子達、カレー作ったのか、どれどれ…ん…美味いな…」
その後、おじさんを含めた俺達5人は次の日の朝まで目を覚ますことはなかった…
菜々子の創作料理の腕は改善されず、こまちゃんはおにぎり握れるけど原作よりも料理下手になってしまいました、いずれ改善されるかも…?
補足 ムドオンカレーとは「ペルソナ4」において里中千枝と天城雪子が林間学校で作った物体X…もとい飲み込むことすらできないほどマズすぎるカレーである。
本来ニンジンやタマネギなどの野菜に市販のカレールーを入れれば普通に美味しいものになるが、何をトチ狂ったのか、普通の材料と挽いていない胡椒、トロミをつけるための片栗粉と強力粉(雪子いわく 強い方がいいよ、男の子いるし)、キムチ、唐辛子、隠し味にチョコレート、コーヒー牛乳、ヨーグルト、出汁を出すための魚介(なまこ)などと愛情を入れたゲテモノである。
キャラ解説
鳴上悠 21歳
あらゆる人間ステータスがカンストしており、短大卒で教員免許を取得した天才。
たまに天然ボケをすることもあるが、仲間想いの頼れるリーダーである。
また、いとこの菜々子に関しては重度のシスコンであり、菜々子のことになると周りが見えなくなる。
ある事件で付いたキャッチコピーは『鋼のシスコン番長』
花村陽介 21歳
悠の相棒で自称特別捜査隊の参謀だった。
仕事の時以外はヘッドホンを首に掛けている。
見た目は爽やかなイケメンだが、KY発言とツッコミが多すぎるため、口を開くとガッカリ王子になる。
高校のときからジュネスのバイトをしており、卒業を期に就職、半年前に旭丘から40キロ先の店舗の店長になり転勤、バイトのクマと一緒に旭丘に引っ越してきた。
ある事件で付いたキャッチコピーは『キャプテン・ルサンチマン』