2015年7月22日(水)午前
夏休み前の大掃除も終わり、今日は終業式だ。
1学期の終業式は毎年学園菜園で作ったスイカを食べるそうで、俺達はスイカを冷やすために分校脇の河原に来ていた。
「だいぶ冷えてきたな」
「早速食べようよー」
「ダメだ、スイカ食べる前に通知表配るぞ」
夏海の顔色があまり良くない、評価についてはだいたい想像がつくが、少し気の毒だな…
「はい、れんげ、通知表だ」
宮内れんげ 制作者 鳴上悠
国語5 算数5 社会5 理科5 図工5 体育5 美術5 音楽5
流石れんげ、オール5だ!
「れんちゃんすごいなぁ、私は算数があまりできなかった…」
「私は社会が…もっとお兄ちゃんに教えてもらえばよかったかな」
「なっつんはどうだったん?」
「ウチはまだ怖くて見れてない…成績悪いとまた母ちゃんにどやされる…」
越谷夏海 制作者 宮内一穂
国語7 英語6 数学6 社会7 理科6 美術6 体育6 技術6
「何これ!?7と6がいっぱい!ウチついに限界突破した!?」
「おめでとうございますん!なっつん天才なのん!」
「そうかなあ!?とうとう夏海ちゃんの天下がきちゃったかなぁ?」
「あ、すまん…中学からは5段階評価から10段階評価に変わるからな」
「…はい……」
夏海は放心状態だ…俺が多少教えたのもあるか、4や5を回避することはできたようだが…
「………中の下か…これ、母ちゃんに怒られるかな…」
その後、みんなでスイカを食べたが、夏海はずっと人生についてブツブツ語っていたのだった…
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午後 宮内家 居間
俺と菜々子は宮内家に遊びに来ていた。みんなもあとから来るようだ。
「ねぇねぇとゆうにぃも明日から休みなのん?」
「だといいんだけどな、仕事もいろいろあるからずっと休みではないな…」
「私もだねぇ…そういえばれんちょん、今日姉ちゃん帰ってくるよ」
「?ねぇねぇいるのん…」
「ウチじゃなくて、東京に行ってるひかげ姉ちゃんね」
宮内家の次女、ひかげ 俺が引っ越した少し後に東京の高校に行くために上京していったため、まだ面識はないな…
「たでぇーまー、外ちょーあちぃー…」
どうやら帰ってきたようだ…初対面なのもあるだろうか、ひかげは俺をじっと見つめている。髪色は一穂さんと同じで半目なとこはれんげと似ているな…
「姉ちゃんが、男連れ込んでる!?」
「帰ってきて一言目それ?違うし、挨拶しときな」
「あぁ、すいません。私はひかげ、今年から東京の高校に通ってます」
「よろしくひかげ。俺は今年の春から分校の教師になった鳴上悠だ。あと一穂さんは同僚です」
「へぇ、あなたが最近うわさの悠兄か……ところで君もお初だね、名前は?」
「私、堂島菜々子!小学5年生で、春に転校してきました!」
「菜々子は俺のいとこなんだ」
「へぇ…身内に授業してるってなんか姉ちゃんみたいだな…」
早速帰ってきたひかげにれんげがかけよる。
「ひか姉!都会の女だったん?」
どこで知ったんだ、その言葉…
「聞きたい?やっぱ都会はビルばっかだねー、こんくらい首曲げて見上げないと見てらんねー!」
ひかげは自慢げに東京について話している、妹に都会のことをたくさん話したいようだ…
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その後ひかげは自慢話を続けていたが、蛍が引っ越してくるときに利用した飛行機に完全敗北したのだった…
「………新幹線はさ…椅子にこう、肘掛けがあってさ…」
ひかげのさっきまでの勢いは完全になくなってしまった、あと飛行機にも肘掛けはある…
「ひかげお姉ちゃん!私都会のことあまり知らないからもっと教えてほしい!」
「うぅ…菜々子…君は天使だ!お姉さんが東京についてもっと教えてあげよう!」
流石菜々子、天使なのも当たり前だ…
「私が通ってる学校には魔王の娘の悪魔がいて…」
こうして夏休みは幕を上げたのだった…
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夏休みが始まり数日、俺はれんげと散歩をしていた…
「ねーこじゃらしー ねーこじゃらしー うちもじゃれつくねこじゃらしー」
れんげの歌は何度か聞いたことがあるが、やはり独特な歌だ…
「ゆうにぃ、知らない子いるん」
橋の上にれんげと同じ年くらいの女の子がいる。当然分校でれんげと同い年や年下の生徒はいない、夏休みで遊びにきたのだろうか…
「えへっ」
こっちに気づいたようだ、女の子は笑顔で近づいてきた。
「うち、れんげっていうのん」
「俺は鳴上悠だ」
「私はほのかっていうの、夏休みになったからおばあちゃんちに泊まりにきたの。それでね、お父さんからカメラ借りたから写真撮ってたんだ」
「おお、きゃめらー!」
れんげはほのかとカメラに興味津々なようだ。
「写真撮るならうち案内するのん」
「いいの?」
「ゆうにぃにも教えるん、着いてくるのん」
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「あれなのん!」
れんげは水車に指を指す。
「水車だ!私初めて見る!」
「俺もこの辺には来たことがないから初めて見るな」
「ふっふっふ…うちいろんなとこ知ってるん…」
「れんげちゃんも悠お兄さんも一緒に写真撮ろ!」
「うちカメラマンなのん!」
俺達は水車の写真を撮り、時間を過ごした。
れんげも初めて同い年と遊ぶのかとても楽しそうで、すっかりほのかと意気投合している…
「あ、お昼までには帰ってこいって言われてるからそろそろ帰らなくちゃ…」
「わかったのん、明日も遊ぶん!もっといいとこ教えるん!」
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2015年7月25日(土)夕方
俺とれんげはほのかと一日中遊び続けた。ひまわり畑や分校横の河原に行ったり、具に餌を与えたり雨宿りしたり。小学生のれんげたちにとっては充実した一日だったのだろう。
「明日はちっさい滝があるとこに行くのん!」
「楽しみ!バイバイ!」
「ゆうにぃも明日は早くくるん!」
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2015年7月26日(日)朝
俺達は石川家の前に来ていたのだったが…呼び鈴を押しても元気な声は聞こえてこない…出てきたのは石川のおばあちゃんだ。
「たしかれんげちゃんと悠お兄さんだったかしら?」
「ほのかちんと遊びに来たのん」
「ほのかはね、ほのかのお父さんが急にお仕事入っちゃってね、昨日慌てて帰っちゃったのよ。せっかく来てくれたのにごめんね、ほのかと遊んでくれてありがとね」
おばあちゃんは静かに戸を閉めてしまった。約束をしたのに、れんげにとっては受け入れがたい現実だろう。俺にも仲間や友との別れは何よりも辛くて悲しいことだと思っていた時期があった。
「れんげ…」
「………ゆうにぃ…もう帰るん…おんぶしてほしいん…」
俺はれんげのわがままに従うことにした。
「…………うぅ………ぐすっ……」
俺のシャツの背中はぐっしょり濡れている。涙だ、れんげが泣くなんて初めてのことだ…自分のシャツ越しの背中の熱に俺は心が少し痛くなる。今日はれんげを家に送り、そのまま帰ることにした…
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2015年8月2日午前 自宅
ほのかが帰ってから1週間、あれから何度かれんげに会ったが、いつも通りに見えて少し悲しそうな顔をしていた。今日もまだ落ち込んでいるのだろうか…なんとかしてあげたい…
「悠、お前宛だ」
おじさんから封筒を渡される…これは!
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宮内家
「……ふすー……ふすー…」
家に上がったが、れんげは自分の前髪を口で吹いている…器用だな…
「れんげ、ほのかが帰ってから1週間経つが、まだいじけているのか?」
「いじけてないのーん」
「急にだがれんげ、夏休みだが俺と授業をしよう」
「かきこーしゅーってやつなのん?それはなっつんにするべきかと思いますが」
「よく知ってるなれんげ、確かに夏期講習は夏海にやるべきだろうが、この授業は勉強をするわけじゃない。俺の話を聞いて、れんげなりの答えを見つければいいんだ」
「そんなことするだけでいいのん?宿題より簡単なのん」
「やる気みたいだな、早速始めるか」
俺はれんげに特別な授業をすることにした。
「何の話をするん?」
「俺の昔の話をしよう。前にも話したことがあるが、俺は4年前にテレビの中に入り、1年通して戦い続けた。その1年は楽しいこともあったけど、辛いことや悲しいこともたくさんあった。でも俺は諦めずに何度も立ち上がって、最後には悪い神様を倒すことができた。何故だと思う?」
「………ペルソナ?」
「確かに、ペルソナの力があればシャドウも神様も倒すことができる。でもペルソナよりも重要なものがあるんだ」
「………わからないん…」
「“絆”さ」
「きずな?」
「そう、絆だ。簡単に言うと心と心が繋がることでできる力。これがあったから今の俺があると言っても過言じゃないし、遠く離れていても近くにいるように感じるんだ」
「それってうちと駄菓子屋やなっつんたちの間にもあるん?」
「あぁ、絆は家族や友達、仲間…いろんな人たちの間にできるんだ。」
「じゃあうちと具にも絆はあるん?」
あれはただ餌を食べに来ているようにしか見えないが、俺にもキツネの友達はいるし、タヌキとの友情もあるだろう…
「もちろんだ」
「うちとほのかちんにも!?」
「当然だ。れんげが絆で繋がっていると思うことができる限りはな…」
「…でも絆は目に見えないん…どうやったらわかるん?」
「れんげの言う通りだ、繋がっている絆は目に見えるものじゃない。でも確かめることや感じることはできる。一緒に遊んだり、おしゃべりしたり…そして形のある物からも絆を感じることもできるんだ」
「そうなん?でももう会えないかもしれないん…」
「これ、何だと思う?」
俺はおじさんから受け取った封筒とれんげの家に届いていた封筒を取り出した。中身はほのかが書いた手紙と一緒に撮った写真が入っていた。
「ほのかちんからの手紙!?なんて書いてあるん?早く見せるん!」
あそんでくれてありがとう
いっしょにあそべてたのしかったです
きゅうにかえってごめんね
らい年もぜったいくるからまたあそんでね!
ほのかより
「ほのかちん…うち嬉しいん!絆感じるん!」
「あぁ、俺達とほのかとの絆の証だ。れんげも信じるか?ほのかとの絆を」
「うち信じるん!ほのかちんとの!みんなやゆうにぃとの絆を信じるん!」
れんげは元気になったようだ。俺とれんげとの確かな絆が生まれた気がする…
「ゆうにぃ!一緒に返事書くん!ほのかちんは写真送ってくれたからうちは絵を書いて送るん!あとかっこいい封筒に入れるん!」
まだまだ夏休みはまだ始まったばかりだ…
今回はここまで
今回の獲得アルカナ
XI 剛毅 対応者 宮内れんげ
獲得状況
XI 剛毅