普通に仕事が忙しかったのと、織田信定の方の毎日更新があるので時間が取れませんで・・・・
これからも、こんなふうな不定期更新が続きます。
ご迷惑かもしれませんがご了承の程を・・・・・って、堅苦し過ぎますかね?
では、本編をお楽しみください!
◇転移28日目
前日、ウジウジと未だに居座っていた趙鉄が追い出された。
こちらから、まだまだ金をせびるつもりだったようだ。
しかし、それも緑青館の男衆に追い出され、この日、俺の鍛治工房が手に入ることとなったのだ。
(まぁ、名義は緑青館なんだけどな・・・)
「しかし・・・・、本当に無惨だな・・・」
この工房の扱いの悪さときたら・・・。
趙鉄の奴が望んで継承した訳じゃないというのが、工房の見た目からだけでも伝わってくる。
典型的な、バカ殿といった様相だ。
「あの男。この工房の本当の価値に最後まで気付かなかったんだな・・・・」
ここの世界のような場所だと、こういった固定資産を持つということが、どれだけの高い意味を持つのか、最後の最後まで奴は知らなかったのだろう。
ただただ享受するだけだった工房の価値を、あの男はいつになれば理解できるようになるだろうか・・・・
「死ぬまで分からないのなら、それはそれで幸せか・・・・」
なんにせよ、あの男と俺との間にある繋がりもこれで途絶えた。
この工房は、緑青館が握るとはいえ、俺のモノ、俺の資産だ。
俺の思うがまま、改良させてもらおう。
「早速・・・壊すか!」
俺は、趙鉄工房の古い土盛りの炉を壊し始めた・・・・・・のだが、どうにも一人では終わりそうにない。
結局、ある程度やりかけのまま、『解体中』の看板だけを立てて、その日は帰った。
翌日、緑青館の男衆を引き連れて、解体を手伝ってもらうのだった。
「斎恋よぉ・・・。俺たちはこんなことする為に緑青館に勤めてる訳じゃねぇぞ?」
手伝ってくれた右叫は、終わってからそのように言ってきた。
実際、解体は昼から夕刻までかかり、男衆たちをほぼ一日拘束することになったのだ・・・・
流石に申し訳なかった。
「・・・すまん、右叫」
「はぁ・・・。これも、緑青館の為にはなるんだろ?いいよ別に。けどよぉ、こんなことが続くようなら、毎回受けてやる訳にはいかねぇぞ?」
「むぅ・・・そうだな。まだ、いくつかの手伝ってもらいたい作業があるんだが・・・」
「はぁ・・・ちっ。・・・そういや、お前ぇ金はあるんだろ?それで人を雇えばいいじゃねぇか。」
「いや、あるにはあるが・・・。俺は、ここらの人間に伝手なんてないぞ?どうやって雇うってんだよ。」
「いや、そこは俺が手伝ってやるよ。一日拘束されるんでもなけりゃ、そのくらいの手間はわけないぜ。ただ、その分手間賃は寄越せよ?」
右叫がそう言ってくれたが、そのくらいなら十分すぎる。
緑青館の右叫の仲介は、それだけの信用があるとも思えたしな。
・・・・右叫が、ここいらでどの程度の影響力を持っているのかどうかも、俺は知らないのだが・・・。
「助かる。」
そうして、人手を五人ほど雇い入れることとなった。
それと、右叫には材料の買い出しも頼んだ。
「はぁ・・・ホントに、これっきりだからな?あと、ちゃんと成果の出るもん作れよ?」
「す、すまん・・・・」
本当に申し訳ないのだが、右叫。
お前にはこれからも、まだまだ頼むことになると思う。
そうして俺は右叫と共に、陶器工房での陶器ゴミの買い付け・・・・耐火粘土の購入も、だ。
陶器ゴミを買ったのは、その中にサヤ(匣鉢)と呼ばれる陶器を焼く際の"耐火容器"の欠片が含まれる為だ。
これをそのまま買うようでは不審に思われるかもしれないし、変に注目される危険性もあったので"陶器ゴミの購入"という名目に踏み切ったのだ。
雇い入れた五人の男連中には、ツルツルした陶器のかけらじゃなく手触りのもっと悪いもののみを残せと伝え、分類させた。
あとはそれを粉砕させ・・・・
それを買ってきてもらった耐火粘土と混ぜ合わさせ・・・・
それを使って炉を形成させ・・・・・
結構、付きっきりだった為に、7日間はずっと弟子たちの教育や新しい商品作りからは離れていたんだがな。
その間、弟子たちには簡単な"匂い木"や"茶托《コースター》"、"箸"などを作ってもらって、道具に慣れる訓練の代わりとした。
これらだったなら、彼女らにも見覚えがあるだろうし、今の道具でも加工しやすいだろうからな。
そうして、7日後の今日。
──────炉が完成した。
形だけだが。
あと、"坩堝"も。
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◇転移35日目
ここからは、弟子たちと共に作業を進めることになる。
「「・・・ふいご?」」
「風を送る送風機って奴だな。」
炉内へと風を送り込み続ける為の"ふいご"作りだ。
正直、ここからの作業は地味だ。
地味過ぎるのでかなり省かせてもらうが、手回し式の"遠心送風機"、簡単にいうなら手回しの扇風機みたいな奴を作った。
カタツムリみたいな木箱に、5枚の羽根がついた風車をいれ、箱の外側には複数の滑車を配置し、手回しハンドルが一回回るごとに7回転はするような増速機構も取り入れた送風機が完成した。
この他にも、ガラス用の特殊工具製作・・・・吹き竿などや溶けたガラスを形成する洋箸《ジャッキ》、成形用の木ごてや定盤などなど、専用の道具を一から一つ一つ作っていった。
その間、右叫らには、ガラス用の原料を調達してもらい、それが届くや否や、俺たちの仕事に白土(珪砂)や発色剤となる鉱物の水洗い、ガラスの透明度を落とす鉄などの不純物を天然磁石で取り除いていく作業など・・・・・
多くの作業に取り組んでいった。
なお、この間に収入はない。
むしろ出費ばかりだ。
ここまでだけでも、既に銀15.7枚の出費・・・・痛い。
日本円に直すなら、""¥117,750""だろうか?
流石に、ガラス工房作りは、相当に金がかかる。
最初は、鍛治工房をそのまま作って、新しい旋盤を作る予定だったのに・・・・どうしてこうなった???
本当によく分からん。
婆さんと話をする内に、緑青館の経営がまだまだ青色吐息だという話になって、「それならいいのがある」なんて、安請け合いしたのが事の始まりか・・・・・・
本当に、なんでこうなったのやら。
幸い、緑青館の遣手婆こと、婆さんも待ってはくれているが、急ぎでやらないと痺れを切らす可能性もありうる。
さらに、徐冷炉の構築、とある金型(モールド)と治具も製作し、あとは大量の燃料も調達してもらった。
こういったことを全て並行して行い続け、その間にやっと乾燥が終わったのだ。
──────炉と坩堝の
ガラス工房製作から29日目。
「もう、ここに来てから57日・・・・」
羅門の家前の地面に、一つ一つ刻みが加わり、今日が転移から57日目の朝だと分かる。
工房製作から、現代日本基準で、既に一ヶ月が過ぎた訳だが、ここだと太陰暦が主体なので微妙に日取りが異なっている。
それはさておき、やっと空焚きや火入れに入れる訳だ。
長かった・・・・本当に長かった。
あれからさらに、燃料費が嵩み銀3.5枚の追加出費だ。
現在の手持ち額は"銀83.7枚"
「やるぞ?」
「はい!」「・・・・うん」
二人は、それぞれに合った返事をして、俺の火入れを見つめている。
最初は、藁や小枝を燃やす程度から始めていき、自然な隙間風のみでゆっくりと温度を上げてゆくのだ。
「・・・・・はぁ」
つい、ため息が出る。
この娘らの前でそれはダメだと分かっちゃいても、娘っ子二人の前で火を見ているのは少しばかり緊張するのだ。
別にこの娘らに好悪の感情など一つ足りとも抱いちゃいないが、それとこれとは別である。
「一度、俺は寝る。鈴緯、燕翠。お前らは、さっき言った時間に、言った通りにここの枝を足せ。それ以上はする必要がない。それ以上のことをして、炉が吹き飛んでも知らんからな。あと、火色をしっかりと見ておけ。これから一生見続けるかもしれん色だ。」
「は、はい・・。」「うん、分かった。」
素人相手にここの火番を任せるのは、流石に心配なのだが、それでもいずれは任せねばならない。
この二人は、1時間ほど前に起きたばかりだし、まだまだ俺よりも起きていられるだろう。
それに、俺も短時間で起きるつもりだしな。
そうやって、少しずつこいつらが慣れてきてもらえればいいんだがな・・・。
──────そこから三日間。火入れの時間は続いた。
「ふぁぁゎ・・・・ねむ・・・」
久しぶりの火番作業だ。
なかなかに眠い。
だが、それでもある程度は体が覚えているらしい。
何かしらの変化はあったのかもしれないが、それでも俺の体に違いはないようだ。
鈴緯と燕翠も睡眠に入った。
あの火入れ作業、空焚きが終わった後は、炉の入り口を閉じての自然冷却だ。
この作業が終われば、本格的にガラス製作が可能になる。
「なんとか、ここまで来たな・・・・。」
既に、ガラス工房製作から、33日目の朝がやってきていた。
(転移61日目)