技術屋のひとりごと   作:斎藤 恋

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あえて、ありきたりな転生者・転移者の"七つ道具"リバーシを投入。
この手の道具は
とっとと使い潰したい。


・・・・しかし、転移者転生者モノで、リバーシを自作した奴ってあんまり聞いたことないな・・・
ꉂ(˃▿˂๑)


技術屋のひとりごと『第03話:リバーシ』

◇滞在二日目

 

 

羅門さんの家に泊まって、初めての朝が来た。

どうにも、慣れない床で寝たからか体の節々が痛い・・・・

 

布団も薄いし、寝ずらいことこの上ないのだ。

 

 

 

「しかし、このままだとダメだな。なんとか、生活の糧を見出さないと・・・。」

 

 

今のまま、なんの対価も無しに家に置いてもらうだけの日々などあっちゃならない。

せめて、家賃くらいは払えるように、金を稼げるようにならないと、と考えていた。

 

しかし、今の俺にあるものなど、精々がこの腕くらいだ。

 

 

 

「何か作ってから売るか・・・?」

 

 

そう考えても見たが、どんなものを作れば売れるのやらさっぱり分からない。

 

 

「しかしなぁ・・・、作るとしても何を作ればいいのやら・・・。」

 

花街の近くだから、性玩具でも売ろうか?と考えたが、薬師の家で性玩具を作ったとして、そのあとは?と考えてしまう。

 

単純に性的なおもちゃというだけならいいのだが、どうしても薬師の家にいるせいか衛生面についての心配が勝つのだ。

 

 

「だが、衛生面なんて気にしてたら何も作れないぞ・・・?」

 

 

こんな時代の、こんな場所で、そこまで細かいことを気にかけていては何も作るなんてできっこないのだ。

 

 

「やはり、道具がいるか・・・・。」

 

 

工具類があれば、作れるものも増える。

旋盤があれば、大抵の木工品は作れるようになるし、発電機まで作れれば、もっと色々なものが・・・・

 

 

「いや、発電機はまだまだ無理か・・・。」

 

発電機まで作ろうとするなら、もっと作らなければいけないものがある。

ただの、ここいらで手に入るような工具類だけで作れる類のモノではないのだ。

 

 

「いや、発電機云々よりも先に、これを何とかしないとな」

 

 

そう呟くと、俺は腕に付けられた祖父の形見を見つめていた。

 

 

「これがある限り、俺は自由に外を出歩けん。ましてや、羅門殿があそこまで言うほどだ。この世界でこの腕時計は作れんのだろう・・・。となると、手放す他ないか・・・・」

 

 

 

祖父の形見として、大事にしてきた品ではある。

だが、祖父との思い出は記憶にあるし、そもそも腕時計そのものは惰性で使って来たに過ぎない。

大事といえば、確かに大事な品だが・・・

 

 

「命に替えるほどじゃぁない。・・・・爺さん、悪いが手放させてもらうよ。」

 

 

十代の頃から、ずっと慣れ親しんできた時計だ。

思い入れも深い。

しかし、ここでこれから生きていくとなれば、これはどう考えても邪魔になる。

 

 

「ふぅ・・・。しかし、そうなると誰に譲るか、だな問題は。そう簡単に譲り先がある訳でもないか・・・。羅門殿に相談だな・・・。」

 

 

そうして、夕刻になると羅門と猫猫が、帰宅した。

俺は、早々に羅門殿に話し掛け、今後のことについての相談を始めたのだが・・・・

 

 

「手放すと・・・?それを。君にとって、二つとない品だと思うのだがねぇ」

 

「それはその通りだ。しかし、命に替えるほどじゃない。ここで生きていくとなれば、どう考えても邪魔になるんだろう?」

 

「それは・・・、そうだろうがねぇ・・・。」

 

「羅門殿のお話からだけでも、ここがそれなりに危険だということくらいは理解できるよ。今の俺が無防備に過ぎて危険だと言うこともな。それなりに戦えるつもりじゃいるが、それもここでどれほどに通用するのかは分からんしな。」

 

 

長年、配信者として一人で生きてきた手前、絡まれることも多かったのだ。

山地での作業なども多かったし、人並み以上に鍛えてはいる。だが、それもこれもこの時代というフィルターを通すと、それがどこまで通用するのかは分からない。まだまだ未知なのだ。

 

 

(不確定要素は、少ないに越したことはない。)

 

 

「では、誰かにその品を譲ると言うんだね?」

 

「あぁ。できれば、これを買い取ってくれた上で、俺のことを詮索せず、さらには、俺にその対価をしっかり支払ってくれるような人物・・・・って言っててかなり無理がある気がしてきたな・・・・。」

 

 

相手のことを問わず、

金があり、

しかもそれを、俺に支払おうと言う気概のある人物・・・。

 

 

いやいや、どこの聖人君子・・・・というより、悪党の方か?

支払った上で、そのすぐ後で襲撃でもされそうな内容になってるな。

 

 

「ふむ・・・・。いくら払ってくれるかは分からないが、一人思いつく者がいるねぇ・・・。紹介してあげようか?」

 

「頼む。あなたには、迷惑をかけることとなるが・・・」

 

「気にしないでいいよぉ。こんないいものも作ってもらったしねぇ。」

 

「だがそれは・・・。」

 

「分かってるよ。長くは使えない。そう言うんだろう?」

 

「あぁ。長時間の装着もそうだが、今のままでは長距離も歩けないだろう。・・・・いつか、もっといいものを用意してやるから、あまり無理はしないでくれ・・・。」

 

「ふふふ・・・・分かったよぉ」

 

 

羅門は、そう返答すると、そのまま室内での調薬作業へと移ってしまった。

猫猫を横に置きつつ、ひとつひとつ説明してあげているらしい。

 

 

(これで少しは助かるか・・・)

 

先の目処が立ち、安心した俺は、羅門達の代わりに夕食の用意を始めた。

 

・

・

・

・

 

 

──────翌朝。

 

 

「で?その変わりもんが、何のようなんだい?」

 

 

目の前にいたのは、若い頃は美人だったのだろうと思える老婆だった。

今では見る影もないが、それでも目鼻立ちの配置は整っているのがよく分かる。

 

 

「実は、この子に大工道具なんかを恵んで欲しくてねぇ。」

 

「はん?大工道具だぁ?何言ってんだい!タダでやれるもんなんて、ウチには何もないよ!」

 

「だが、ほら。ここまでこれを使って歩いて来たんだがね、かなり楽なんだよ。」

 

「何が!・・・?なんだい、それは。」

 

「歩行補助具です。羅門さんは、膝を悪くされているようでしたので、私が昨日作らせていただきました。まだ、問題も多いので、早くもっといいものを作って差し上げたいんですが・・・・」

 

「・・・・ふ〜ん。・・・・・ダメだね。」

 

「そこを何とかならないかねぇ?」

 

「ダメだよ!こんな爺の為に、道具なんて必要ないよ!もっと金になるもん作りな!それに、爺は家でじっとしてりゃいいんだよ!」

 

「・・・・そっちの方が歳上だろうに。」

 

 

羅門が、小さくボソッと呟いた言葉を、緑青館の遣手婆は聞き逃さなかったようだ。

 

「いいや、何もぉ」

 

「ふんっ、気に食わない爺いだよ。ったく・・・。で、作るのか、作らないのか?」

 

 

遣手婆の勢いに押され、「つ、作ります・・・」と、言ってしまった。

別に、これからの目標も、羅門に恩を返すくらいしかなかったし、これからの生活のことも気に掛かっていたから悪い訳じゃないんだが・・・・。

 

「・・・・前にいた営繕のジジイが使ってた道具があっただろう!ソレを持ってきな!」

 

 

どうやら、この婆さんは、俺に道具をくれるらしい。

しかし、この世界、本当にいつ頃なんだ・・・?

 

前の世界の時間軸に当て嵌めようとしても、なかなかうまくいかない。

 

 

何せ、羅門の家には竹簡や木簡が置かれていた。

しかし、この緑青館の机の上では、普通に紙の綴じ本が使われているのだ。

 

 

(紙がこんなにも・・・・。印刷技術は既に存在しているのか?しかし、木簡や竹簡は、ここまで紙が使われているのなら既に消えているはず。いや、待て。羅門の家の状況を考えろ。あの竹簡や木簡は自作したものだったのではないか?だとすれば説明がつくが・・・・。しかし、そうなると、羅門はどうやって薬師としての知識を・・・・・)

 

 

疑問が疑問を呼ぶ。

俺の中にある歴史知識が、この世界の年代特定を行えずにいたのだ。

まぁ、まだ二日目だ。そう思いつつ、俺は道具が届くのをただただ待ち呆けていた。

 

 

 

「これでよかったですか?」

 

妓楼の男衆の一人が、遣手婆に持って来た道具を見せている。

覗き見たところ、管理はしっかりしていたようだ。

 

埃や汚れ、ガタ付きは見た感じではなさそうに思える。

 

 

 

 

「ほれ、これだよ。」

 

「あ、あぁ。ありがとう。」

 

「感謝なんていらないよ!アンタは、何か金になるもんを作って持ってくりゃいいのさ!」

 

 

ふんっ、とばかりに言葉に似合わず可愛い側面を見せてくれていた。

 

(これじゃ、若い頃は相当にモテただろうな)

 

ツンデレ、と言う訳でもないが、言葉の上ではドケチな婆といった風情なのに、細かな条件を何一つ持ち出さないのだ。

本当にドケチな人間なら、ここで必ず条件を突きつけるものだ。

 

 

(いや、それだけ羅門が信用されているってことか・・?それにしたって、いつまでにいくら持ってこい、くらいは言われるものだと思ってたがな・・・)

 

 

 

「感謝する。近いうちに、この妓楼で売れそうな玩具でも持ってこよう。」

 

「へぇ・・・。何か考えがあるって訳かい。いいだろ。売値の六割はこっちでもらうよ?ウチの看板代とその道具代さ。」

 

「流石に取り過ぎじゃないかねぇ・・・。」

 

「いや、俺はそれで構わない。」

 

羅門が、俺を思ってか、意見してくれようとした。

 

 

「へぇ・・・殊勝だね。」

 

緑青館の遣手婆も、俺のその態度に感心したような様子を見せる。

 

しかし、俺としては別にソレで構わない。むしろ都合がいいのだから。

 

(6割ね。別に構わんさ。ただ、その代償も知っているんだろうな?時代の違いは、知識と技術の違い。ソレが分かってて言っているんだろうなあ?遣手婆さんよ。)

 

 

「ただし、原材料は工面してもらうぞ。それに、俺はいつでもこの取引を止められる。それを忘れないことだ。」

 

「ふんっ、道具をくれてやったってのに、ずいぶんな態度じゃないかい。」

 

「その分の働きは示す。そう言っている。そちらにこの道具分以上の価値を、金を与えられるのなら、別に構わないだろう?」

 

「はははっ!やれるもんなら、やってごらんよ!そこまで言い切ったのなら、しっかりやんな!ただし、できなかったなら・・・・」

 

「そちらの奴婢にでも何でもなってやる。ただ、評価はしっかりしてもらうからな。アナタの言葉一つで勝手に奴婢にされるようなことは、ごめん被りたいしな。」

 

「いいだろう。・・・・爺さん、随分と粋のいいのを捕まえたねぇ。」

 

「ふふ・・・ここまでとは思わなかったけどねぇ・・・。」

 

 

 

 

道具は手に入れた。

材料も、木材でいいだろう。

 

どんな木材があるか分からないが、できないことはあるまい。

 

 

 

 

「最初は、リバーシから行くか・・・」

 

 

俺は、将来への計画を一つ一つ、脳内で組み上げつつあった。

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