『カストロに転生した俺は、死の結末を知っている』   作:火烏

12 / 12
第12話 形を変える

俺は、これまでの検証結果を振り返っていた。

 

ダブルには、明確な強みがある。

 

俺とは別の場所に具現化できること。

 

全身を再現し、俺自身とは異なる動きをさせられること。

 

そして、必要に応じて具現化し、不要になれば消せること。

 

どれも、戦闘では有用な性質だ。

 

分身を別方向から攻めさせる。相手の意識を分散させる。俺自身が接近する間に、もう一人の俺に攻撃させる。

 

使い方次第で、戦術の幅は大きく広がる。

 

それを捨てるのは惜しい。

 

だが、ヒソカを相手にすることを考えると、単純に攻撃の手数を増やせばいいわけではなかった。

 

こちらが攻撃を仕掛けても、相手には対応するだけの速度と経験がある。

 

分身との連携を磨けば、攻撃の精度は上がるだろう。

 

それでも、連携そのものに意識を割いている間に、俺自身の判断が遅れる可能性は残る。

 

ならば、操作に習熟するまで鍛え続ければいいのか。

 

それも一つの答えだ。

 

だが、習熟に必要な時間を、ほかの鍛錬に使った場合はどうなる。

 

身体能力を高めることも、虎咬拳の精度を上げることも、相手の動きを見極める訓練も必要だ。

 

限られた時間の中で、すべてを十分な水準まで引き上げられるとは思えなかった。

 

「……何を残すべきなんだ」

 

呟いてから、俺は考え方を変えた。

 

今のダブルを使い続けるか、捨てるか。

 

その二択だけで考える必要はない。

 

能力を構成している要素を分け、それぞれが本当に必要なのかを考えればいい。

 

まず、全身を具現化すること。

 

全身を再現できるからこそ、分身に俺と同じ技を使わせられる。攻撃だけでなく、防御や移動にも対応できる。

 

しかし、ヒソカと戦うために、必ずしももう一人の俺が必要なのだろうか。

 

必要なのは、分身そのものではなく、分身によって得られる戦術的な利点なのかもしれない。

 

攻撃の手数を増やすこと。

 

相手の意識を別の方向へ向けること。

 

本体だけでは作れない攻撃の機会を生み出すこと。

 

それらを別の方法で実現できるのなら、全身を再現する機能に固執する理由は薄れる。

 

もちろん、別の方法があるとは限らない。

 

ダブルを捨てた結果、今まで持っていた強みを失うだけになる可能性もある。

 

だからこそ、何を代わりに得られるのかを考えなければならない。

 

次に、動作の自由度。

 

今のダブルは、基本的に俺が可能な動作を再現できる。

 

その自由さがあるからこそ、状況に応じて使い方を変えられる。

 

一方で、選択肢が多いことは、必ずしも戦闘で有利に働くとは限らない。

 

判断する時間が必要になるからだ。

 

もし、できることをあらかじめ限定したらどうなるだろう。

 

選択肢が減れば、状況に応じた柔軟な対応は難しくなる。

 

その代わり、特定の動作に特化させられる可能性はないだろうか。

 

ただ制限するだけでは意味がない。

 

失う自由と、得られる性能が結びついていなければ、単に使いにくい能力になるだけだ。

 

俺は腕を組み、考え込んだ。

 

制約と誓約。

 

念能力には、自らに制限を課すことで、その能力を強化する仕組みがある。

 

しかし、制限を設ければ、望んだとおりの強化が得られるという単純な話ではない。

 

何を捨てるのか。

 

何を得たいのか。

 

そして、その制限が自分にとってどれほど重大なものなのか。

 

俺自身が納得できない条件を並べても、意味はないだろう。

 

そもそも、俺にとってダブルを捨てることは、簡単な選択ではなかった。

 

長い鍛錬の末に完成させた能力だ。

 

ヒソカに勝つための手段であり、まだ生き残れるかもしれないという希望でもある。

 

それに、分身がいるということは、俺自身が危険を冒さずに済む場面があるということでもあった。

 

本体が踏み込む代わりに、分身を前に出す。

 

本体が受けるかもしれない反撃を、分身に引き受けさせる。

 

そうした使い方ができなくなるのなら、俺にとっては大きな損失だ。

 

それでも、手放すことに意味があるのなら。

 

俺は、そこで思考を止めた。

 

ダブルを捨てれば強くなれる。

 

そんな都合のいい結論を、先に決めてしまうわけにはいかない。

 

恐怖から逃れたいだけなのかもしれない。

 

分身に頼らず、自分自身でヒソカと向き合うことが怖いから、別の能力に希望を求めているだけなのかもしれない。

 

その可能性を否定することはできなかった。

 

だからこそ、感情とは別に、必要なものを見極める必要がある。

 

ヒソカと戦うために、俺に足りないものは何なのか。

 

攻撃の手数なのか。

 

反応の速さなのか。

 

身体を思いどおりに動かす精度なのか。

 

相手の動きを読み、次の一手を選ぶための処理能力なのか。

 

それらをすべて一つの能力で補おうとすれば、今のダブルと同じように、多くの機能を抱え込むことになる。

 

ならば、最初から全部を求めない方がいい。

 

必要なものを選び、それ以外を手放す。

 

その選択によって何を失い、何を得られるのか。

 

まずは、そこから考えるべきだった。

 

俺は鍛錬場を後にした。

 

ダブルを捨てると決めたわけではない。

 

今の能力を使い続けると決めたわけでもない。

 

ただ、強くなるために必要なのは、今あるものを磨き続けることだけではないのだと、少しずつ分かり始めていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

流星街の異邦人 ― その魂は二度目の人生を歩む(作者:アイエオ)(原作:HUNTER×HUNTER)

現代日本で暮らしていた主人公は、不意の事故によって命を落とす。▼死後、意識だけになった彼の前に、正体不明の存在が現れます。その存在は、彼の魂が上位世界から下位世界へ移ること、そして転生先で生き延びるための五つの特典を与えることを告げます。▼主人公は質問を重ねますが、存在はすべてに答えるわけではありません。▼「なぜ自分なのか」「どうしてこの世界なのか」「特典を…


総合評価:396/評価:7.58/連載:80話/更新日時:2026年10月23日(金) 00:41 小説情報

俺だけレベルアップな件 × 名探偵コナン 【 水篠旬は、米花町へと迷い込む 】(作者:冷凍シャケ)(原作:名探偵コナン)

影の君主となり、絶大な力を手にした水篠旬。▼ある日、システムから与えられた謎の鍵によって、旬は自分の知る世界とは異なる世界――ゲートもハンターもモンスターも存在しない、日本の米花町へと飛ばされてしまう。▼元の世界へ帰る方法を探す旬に、システムが提示した新たなクエスト。▼それはモンスターを倒すものではなく、次々と発生する“事件の真相解明に貢献する”という、これ…


総合評価:301/評価:8/連載:22話/更新日時:2026年09月29日(火) 08:10 小説情報

かめはめ×ハンター(作者:波動待ち)(原作:HUNTER×HUNTER)

子供の頃、俺には夢があった。▼ かめはめ波を撃つことだ。▼ 当然、出なかった。▼ 何度構えても、何度叫んでも、掌から出るのは気合だけ。やがて俺は大人になり、かめはめ波なんて撃てないという、つまらない現実を受け入れた。▼ そして二十七歳で死んだ。▼ 気がつけば、俺は見知らぬ世界の赤ん坊に転生していた。▼ 巨大な獣、見たことのない国、妙に身体能力の高い人間たち。…


総合評価:7147/評価:7.53/連載:14話/更新日時:2026年09月25日(金) 17:32 小説情報

はじめの一歩転生・・・こいつかよ!?(作者:櫻13)(原作:はじめの一歩)

まさかの梅沢転生。良いキャラしてるのになぁ・・・と思ったので


総合評価:1677/評価:7.79/連載:23話/更新日時:2026年10月29日(木) 01:36 小説情報

遊戯王DMT―転生したら城之内だった件―(作者:Laginera)(原作:遊戯王)

表紙: ▼【挿絵表示】▼(ChatGPTで作成しました)▼事故で死んで生き返ったオレがいたのは遊戯王の世界だった。▼だがよりによってオレが転生したのは一般人なのに毎度カードゲームで死にかける「城之内克也」だった!▼このままだとバトルシティでラーに魂ごと焼かれてしまう!▼そもそもカードゲームがそこまで好きでもないのにデュエルモンスターの世界に転生するというのが…


総合評価:1278/評価:7/連載:67話/更新日時:2026年10月24日(土) 11:29 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>