Infinite Stratos:Archetype border 作:ぱらさいと
試合の朝、一夏は箒と食堂へ入った。ミーシャは先に来ていて、列のどこに並べばよいか手を上げる。いつもの朝食なのに料理の名前を読むのに少し時間が掛かった。
トレーを置き、卵を一口食べる。飲み込んでからまだ半分以上のパンが残っているのを見た。急いで詰め込まなくても間に合うと、箒に言われたばかりだった。
「おはようございます」
セシリアが隣を通った。一夏は顔を上げ、今日よろしくと返す。向かい合って座る約束はしていなかったが、近くの席が空いていた。
「お食事はきちんと済ませていらしてくださいませね」
「昨日も言われたぞ」
「大切なことですから」
箒の口元が動いた。ミーシャはまだ並んでいる。一夏は時計を見ようとして、セシリアの手元にも同じ時刻が出ていることに気づいた。
「今朝はまだ大丈夫そうだな」
彼女は一夏の視線の先を確かめ、少しだけ眉を上げた。
「九十七ありますわ。満充電にしてきましたから夕方までは持ってほしいものです」
「昨日の話気になってさ。出る前の連絡とかもあるし」
「充電器も持ってきています。あなたが試合の前に困ることはありませんから」
そう言って端末をしまった。一夏は頷き、自分の皿へ顔を戻した。機体の確認より先に朝食を終えなくてはならない。
ミーシャがトレーを持ってきた。普段と同じ量のパンを並べ、手を合わせる。セシリアは二人の朝食を見て、自分の分を取りに立った。
一夏は彼女が持っていた小さな紙に気づいた。短い言葉が三行だけある。こちらが覗くより先にセシリアは紙を裏返して鞄へ入れる。
「それも試合の準備か?」
「昨日の練習で忘れたことを書きましたの。書いただけで直るなら、苦労はいたしませんけれど」
「セシリアでもそういうのあるんだな」
「もちろん。今日は相手が二人ですからそちらも考えています」
言い方は穏やかだった。一人を追っている間にもう一人が動く。実施要領で何度も読んだことを一夏も思い出した。
ミーシャが顔を上げる。作戦をここで話し始めることはせず、集合時刻だけ確かめた。一夏は紙の時刻へ印をつけ、箒へも見学の入口を聞く。
箒のトレーにはいつもの量のご飯があった。一夏がパンを持つ手を止めていると、箒は視線だけを向ける。
「緊張しているなら水を飲め。無理に詰め込むな」
「そんなに分かるか」
「さっきから同じ端を三回ちぎっている」
指先を見ると、本当に小さなパンくずが皿の隅へ溜まっていた。隣のミーシャが笑いそうになって、口元にカップを寄せた。一夏は水を一口飲み、ようやく大きくパンをかじる。
「いつも朝はこうじゃないんだけどな」
「分かっている。だから言った」
箒はそう返すと、自分の食事へ戻った。普段なら小言を重ねるところなのに、今朝は見えるところに腕時計を置くだけだ。出発まで残り時間がある。ミーシャはパンの袋の口を閉じ、試合終了後に用意する水の本数を指で数えていた。一夏はそれを見て、自分の準備にも試合の後までが含まれているのだと気づいた。
食べ終えて食堂を出ると、セシリアも同じ方へ来た。更衣室へ向かう分かれ道まで一緒に歩き、そこで次は開始線でと挨拶する。
一夏は二人分の足音が離れるのを聞いてから自分の支度へ戻った。まだ戦ってはいない。それでも相手の顔を見て朝の挨拶を済ませたことで先に終えられる心配が一つあった。
ピットでミーシャと合流すると、一夏は補助回線へ一度だけ声を出した。近くに立っている相手の口が動き、少し遅れて耳元へ同じ返事が届く。
「聞こえる。そっちは?」
「ああ。試合の音で消えなければ」
「消えたら、聞き直す。分かったふりして動くのは今日はやめよう」
一夏は頷いた。機体を展開してから確かめた9時側へミーシャが立つ。練習で何度も見た位置だった。
箒が見学席へ向かう前にこちらを一度だけ見た。一夏は顔を上げ、手を振る。何かを言ってもらうために待つことはしなかった。自分がここへ来たことはもう見えている。
呼び出しの声がした。一夏はミーシャと並び、開始線へ向かった。
第二アリーナの扉が開いた。向こう側に青い機体が浮いていた。
ブルー・ティアーズの背には四基の浮遊装備が収まっている。長いライフルも携えているが、銃口は下がったままだった。
「準備はよろしくて?」
一夏は補助回線を確かめた。9時側にいるミーシャの返事が耳元へ届く。見学席では箒が前を向いていた。鈴とフランチェスカも二組の生徒たちの間にいる。
「勝敗条件、停止指示への服従。確認したな」
千冬の声に三人が答えた。
セシリアは開始線の前から、9時側の《打鉄》と3時側の白式を見渡した。片方の動きだけを追えば、もう片方の攻撃へ追い込まれる。視線を戻すたびに二機の位置関係を確かめた。
ライフルは下げたまま。背の四基もまだ動かさない。最初の一分は反撃に使わず、相手の射撃と接近を必要最小限の動作で切り抜ける。それが、今朝ここへ来る前に決めたことだった。
セシリアは手首を一度だけ返した。《打鉄》の銃口と白式の進路を、同じ視野へ収める。
昨日書いた短いメモは、鞄にしまってある。ここで読み返すものではなかった。
開始の合図が出た。
「9時側、射撃」
「3時側から行く!」
二つの声が重なった。《打鉄》の銃口が上がり、白式が低く加速する。
セシリアは左へ大きく逃げなかった。ミーシャが肩へ当てた銃床と、その先に向いた銃身を見る。銃声より先に、銃口が止まる。
青い機体は半歩にも満たない幅で横へ移った。
弾が後ろを抜ける。一夏はそこを目指して進んでいた。白式の刃が届く前に、セシリアは高度だけを少し変える。
「……外れた」
ミーシャの声は短かった。
一夏は刃を戻し、追い直す。初めて着けたばかりの白式では急に向きを変えると腕が少し遅れた。セシリアはそこを見て、さらにわずかに身体を引いた。
追い掛けているのに、間が詰まらない。
セシリアは二人を交互に見てはいなかった。白式の進む先へ自分を置かず、《打鉄》の射線へ白式を重ねない。二つの条件が同時に満たせる場所を目で測っていた。
ミーシャが二発目を撃った。
狙いは一夏が切り込む先から青い機体を追い出すことだった。セシリアが大きく退けば、一夏が先回りできる。練習ではそうして相手を動かしてきた。
ところが、退いたのはほんの少しだった。
一夏が合わせて角度を変えると、今度はミーシャの射線へ近づく。撃ち足す前に銃を下げた。
「一夏、そこで止まって」
「分かった。俺は3時方向へ回る」
白式が一度減速する。セシリアも減速した。相手より先に勢いをつけて逃げる必要がない。推進装置の出力はごく短く上がり、すぐ戻った。
十秒が過ぎた。
見学席の鈴が腕を組み直した。セシリアの機体がほとんど場所を変えずに二機を捌くたび、鈴は画面とアリーナを見比べる。口元から笑みが消え、手すりへ乗せた指で短く拍子を取った。
「やっぱり手強いのね、あのお嬢様」
フランチェスカは隣で頷いた。セシリアが最初の一手を譲るたび、一夏とミーシャは自分で次の距離を決めなくてはならない。決めた途端、青い機体は最小限の距離だけ避ける。
「追い込んだつもりでいるうちは、まだ追い込めていないのかもしれないよ」
「それ、本人に言ったら得意になるわよ」
「試合が終わったら褒めてあげようじゃないか」
鈴は返事をせず、白式が次に足を置く場所を目で追った。
セシリアはまだ撃っていなかった。ビットも背に固定したままだった。
一夏にはそれがかえって気になった。銃口を向けられれば避ける方向を決められる。何も撃ってこない相手にどこまで近づけるのかが分からない。
「ミーシャ、もう一度9時側から」
「うん。君が通る線は空ける」
《打鉄》が盾を寄せ、片足を床へ置く。身体を安定させてから三発を間隔を変えて撃った。一夏は最後の弾が届く前にセシリアの上へ入ろうとする。
ミーシャの銃声は、最初だけ大きく耳へ届いた。補助回線の音量を落とすと、次の発砲は少し離れた位置から響く。一夏は音へ反応しかけた脚を止め、表示の中で白式と《打鉄》の距離を確かめる。射線が開いたことを聞いてから、前へ出る。
「次、どう来る」
セシリアへ向けた独り言に答えたのは、ミーシャだった。
「今のままなら上を空けないと思う」
「じゃあ下から?」
「君の判断で。僕は左側を押さえておく」
頼りにできる言葉ほど、自分の足を動かす責任が重くなる。一夏は刃を肩の高さへ戻した。雪片の長さは白式を着けてから何度も確かめている。それでも目の前で飛ぶ相手に届くところまで、まだかなりの距離があった。剣道場なら一歩で詰められる間合いも、ここでは互いの推進だけで何倍にも開く。
セシリアは眼前に二人がいることを忘れない。腕を引きつけ、視線を銃口の先と白式の脚との間で動かした。動く前に分かる相手ほど、止める場所を決めやすい。一夏は相手が自分の次の一歩を待っているのを見て、進む角度を半歩だけ変えた。
最初の弾に、セシリアは身を沈めた。二発目には沈んだ位置を保つ。三発目で左肩を引き、それまで空いていた上方へ白式が踏み込めなくする。
同じ方向へ三度避けたわけではなかった。最初の移動で二発目まで外し、最後にだけ別の操作を足したのである。
「……あの動き方」
見学席で箒が呟いた。
鈴が目を細める。
「予測線頼りじゃないわね。銃口を見てる」
「出来るのか。動作の理屈は分かるが」
箒は言ってから、すぐ答えが出る話ではないと気づいた。一夏の稽古でも、剣先だけを見れば足の動きを見失う。セシリアは銃口と白式の足を、どちらも見ているようだった。
二十秒を越えた。
一夏には二十秒がもっと長く感じられた。息を詰めて走った時間の後に休憩が来ると思ってしまう。実際の表示は、ただ次の一秒へ数字を送るだけだ。白式の手を開き、握り直す。力を入れすぎていた指が少し楽になる。
「大丈夫?」
「行ける。お前の弾、あと何発だ」
「足りるよ。位置だけ変える」
ミーシャが下へ降りる。《打鉄》の盾を向け直し、上方へ伸びていた照準器をセシリアへ戻した。前の射撃を続けても当たらない。二人で同じ高さにいると、セシリアは一度の上昇で抜けていく。だから次の一撃は、別の場所から送ることにした。
一夏は相手を追って顔を上げた。青い脚の先が、こちらの進行方向より少しだけ内へ向いている。その角度が気になり、剣を振るのを一瞬だけ堪える。自分が先に大きく動けば、相手はその分少ない動きで済む。昨日、箒に止められたときの手首の角度を思い出していた。
ミーシャは次の弾を急がなかった。青い機体が逃げる方向ではなく、そこへ行かなければならなくなる位置を考える。9時側の外縁へ回り、白式が3時側から入れる幅を残す。
「上へ追う。そこから下へ落とす」
「了解」
一夏が斜め上へ加速した。セシリアが同じ高さへ上がるなら、ミーシャが下から撃てる。下がるなら雪片が届く。
セシリアはその二択に入らなかった。
肩を少し回し、白式が上へ昇り切る前に、その横を下から抜ける。ほんの短い移動だった。一夏は剣の向きを変えるため、余分に大きな弧を描かされた。
その間にミーシャの銃は撃てない角度になっていた。狙った位置には一夏の背中が来ていたからだ。
「ごめん、今の俺だ」
「ううん。次は抜ける方を先に言って」
二人の返事が短くなる。
セシリアには私設回線の会話は聞こえない。声の内容を知る必要もなかった。白式が加速する直前の肩と脚、《打鉄》が銃床を引き寄せる瞬間。それが分かれば次に通る場所を見積もれる。
機体の右端に小さな数値が並んでいる。シールドエネルギーも推進用の消費量も、目を向ければ読める。だがセシリアは今、その表示を追わなかった。
どれだけ消費したかよりも、消費する必要のない操作を一つ減らすことを優先していた。
三十五秒。
一夏は近づいていた。何度も角度を変えるうちに相手が大きくは逃げないと分かった。そこで、刃を振れる位置へ入る前に腕を上げるのをやめた。
箒と繰り返した足の動かし方を思い出す。腕だけを先に出さず、身体を運んでから雪片を向ける。
青い機体の横へ、白式が一歩踏み込んだ。
セシリアの目が初めてはっきり動いた。
刃の先ではなく一夏の腰へ向いたのが分かった。セシリアは避ける方向を変えない。ただ、引いていた脚を残して上体の向きだけを変えた。
刃は装甲の外を通った。
届かなかったが、今までより近い。
「もう少しだ!」
一夏が言った。
「こっちも、まだ撃てる」
ミーシャが短く返す。《打鉄》の盾の縁に銃身を置き、狙い直す。次に一夏が出る場所を聞き、その少し前へ弾を送るつもりだった。
セシリアは《打鉄》の肘が固定されるのを見た。
セシリアは腕の角度から銃弾が通る幅を見切り、一夏が狙う自分の背後をわずかに外した。
発射音がした。青い装甲には触れない。
四十五秒。
見学席の表示には、経過時間と三機のエネルギー残量が並んでいた。
ブルー・ティアーズの値だけが、開始時のまま動いていない。
「一発も……?」
前列の女子が思わず声を出した。
フランチェスカは場内の青い機体を見た。左右へ飛び回るというより、行く先を選んだ二人の間から静かに抜けている。
「最小限の機体制御でやり過ごしているな」
鈴は頷いた。手数の多い側が、動いた分だけ前へ進めるわけではなかった。
隣の席の女子生徒が専門誌を開いて声を掛けた。
箒の呟きを聞いて反応したのだ。
「篠ノ之さん、ほらコレ。《ブルー・ティアーズ》の主砲って、『スターライトMk-Ⅲ』でしょう?」
「あのライフルか」
「あれも試作兵器なんだって。威力の詳細は不明だけど、エネルギー系の兵器は燃費に直結する。しかもビットだって四基ともビーム砲台で、マインド・インターフェース兵装だから、飛ばして狙わせるだけでも燃費が悪い」
女子生徒は青い機体を指した。四基はいまだに背に収まっている。
「攻撃するにしても始めて対戦する相手だから、動きの癖を分析して、それからってコトじゃないかな」
「ただ武器を温存している、ということではないのか」
「それもあると思う。でも、一分近くこの回避を続けながら、さらに消費を削るとしたら……機体制御のサポートを切っている?」
箒が女子生徒へ向き直った。
「機体の補助まで使わずに、二人を捌いているというのか」
「確証はないよ。観客席から設定までは見えないし。ただ、予測や姿勢制御まで省いてるなら、残したエネルギーを後半の兵装へ回せる。代わりに、相手の攻撃を自分で見切らないといけないけど」
箒はすぐには答えなかった。《打鉄》の銃口が動くより先に、青い機体の肩がほんの少しだけ傾く。あれを自分の判断だけでやっているのだとしたら、どれほど周囲が見えているのだろう。
残り十五秒で、一夏はミーシャを見ずに言った。
「3時側から低く入る。撃てるなら上へ」
「分かった。二発だけ」
白式が床すれすれを走る。《打鉄》は銃口を高く置いた。二発の間へ青い機体を押し込み、一夏が上がる場所を作る。
セシリアは低く入ってくる刃に下がらなかった。ミーシャの一発目が通り過ぎるのを待つほどの間だけ横へ滑り、二発目には身体を傾ける。そこへ一夏が伸び上がってきた。
雪片の先が青い肩へ迫る。
セシリアは初めて大きく身体を捻った。肩が刃の外へ出たところで回転を止める。もう一度追えば届きそうに見えたが、一夏には腰を戻す時間が要った。
ミーシャも次弾を撃てなかった。白式が今、銃口の延長にいた。
五十八秒。
一夏は刃を引いた。仕切り直すのではなく、もう一度足を送るために。セシリアの横へ残っている短い道が見えた。
セシリアはそこへ続く腰の向きを読んだ。
小さく後ろへ引く。その動きだけで白式の刃は空を切った。
六十秒。
青い装甲は、一度も攻撃を受けていなかった。セシリアはライフルを撃たず、背の四基にも触れていない。自分で選んだ最小限の移動だけで、一分間を逃げ切っていた。
セシリアは時間を確かめ、息を吐く。
「……ここからですわね」
ちょうどそのとき、一夏の視界へ別の表示が重なった。
処理完了。初期化と操縦者への最適化。確認を待つ項目がある。
「先生。白式に表示が出ています」
報告を聞いた千冬が停止を指示した。
セシリアはすぐに手を下げた。ミーシャも銃の安全装置を戻し、一夏は白式をその場で止める。
白い光が腕から脚へ伸びた。角ばっていた装甲の線が変わり、手足の動きへ沿う形に収まり直していく。
千冬が整備側の応答を確かめた。
「一次移行だ。現時点の残存エネルギーは引き継ぐ。試合記録も続行する」
セシリアは距離を保ったまま、その変化を見た。新しい機体の動きはまだ分からない。だが、動きを見て判断するという条件は最初から同じだった。
一夏は肘を曲げ、指を開いた。以前より腕を置きたい位置へすぐ置ける。視界には新しい装備の項目がある。
雪片弐型。さらに、零落白夜。
説明を開くと、発動中は自身のシールドエネルギーも消費するとあった。相手へ届くまで使い続ければ、当たる前に自分の方が持たなくなるかもしれない。
「どう、動けそう?」
ミーシャの声がした。
「さっきより動く。だけど新しいのは、ちゃんと読まないと」
「急がなくていいよ。まだ君が通る道も決まってない」
一夏は短い説明を読み終え、零落白夜の使用条件と残存値をミーシャへ送った。
「長くは使えないな」
「うん。近づくまでは使わないで」
セシリアも自分の表示を確かめた。最初の一分間、シールドエネルギーは満額のままだ。推進に使った量も、移動距離に見合うわずかなものだった。
何も撃たなかったのに、全身は少しだけ熱かった。自分で二人を見切り続けることには、機体の残量とは別の疲れがある。
ヘルメットの内側で、セシリアは一度だけ唇を湿らせた。視界には使用していない武装の表示が残っている。四基を動かすために取っておいた余力は予定どおりだ。だが、二人が短く交わす声を聞く間に、自分の肩や足まで少しずつ硬くなっていた。まだ防壁を一度も叩かれていないと知っても、息は試合前より速い。
セシリアは画面の手前に、一夏が近づこうとしている位置を置く。ミーシャが銃を構えたときの盾の角度も見直す。あの二人には、試合開始前のぎこちなさがもう残っていなかった。ここから先は、自分が守るつもりで残した武装を、実際の行動へ変えていかなければならない。
「……続けましょう」
回線が開いていることを確かめてから言った。返事は二つ重なった。待機していた四基の接続状態が、緑の列となって戻る。
その一分を終えた以上、次は攻撃する。
セシリアは背の四基へ意識を向け、ライフルの握りを確かめた。次は回避だけでは終わらない。
再開の準備音が鳴った。
白式の刃が持ち上がる。《打鉄》の銃口も、また青い機体を向いた。
セシリアはまだ動かしていない四基の位置を、一つずつ確かめた。
機体制御が非常に難しいブルー・ティアーズを苦も無く扱うセシリアさん。とても優秀なパイロットです。