ドパガキ聖女は祈らない 作:創作中毒のおっさん
またもや教皇様からの呼び出しだ。
なんかまた大きい仕事をやらされそうで嫌になる。
それに、また知らない聖職者に会うなんてドッキリかまされないといいが。
教皇様の執務室に入る。
金持ってるくせに質素な感じなのは、好感が持てない。
なぜなら、私も贅沢できる金があれば使ってしまいそうな人間性だからだ。つまり、私の人間性がクソでは……? まあいいや。
「失礼します」
「待っていましたよ。聖女アリス・フゼ様」
教皇様はわざわざ椅子から立ち上がって礼をした。
どうでもいいけど、身長高いな……! バスケ選手みたいだ、転生して地球に来たらスポーツ無双できそう。
「お久しぶりですね。召喚されて以来でしょうか?」
「そうだと思います。なんかすいません」
「どうして謝るのですか……粗茶ですが、どうぞ」
教皇様が紅茶を入れてくれた。
粗茶ですが……とか絶対そんなわけない。
こういうところには金を使っているはず。
因みに謝ったのは懇親会に行かなかった件が脳裏にちらついたから。
マグノリアさんには言い訳したけど、教皇様に伝わっているかは知らないし。
「いただきます……あつっ!」
香りがすごい。
猫舌のせいか、飲んだらめちゃくちゃ熱かった。
もちろん美味しいことに変わりはないが。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。火傷はしてません」
嘘だ。
本当は火傷したようなピリピリとした感覚がある。これはやらかした。
ただ人からもらった紅茶で火傷するとか、あまりにもカッコ悪い。
最近はクールマンとして女の子助けたしな!
そんな私を気にしないようにしてくれているのか、教皇様は。
「先日は土地の浄化、ご苦労様でした。報告書によると瘴気を集めて魔物にすることで祈りの時間を短縮する……革新的な発想で任務を遂行したようで」
「そ、そうですね……」
これは怒られるパターン? そうっぽいな。
国家ぐるみであの女神さまを信仰しているような国だし、伝統的なやり方があるんですよ! とか言われそうだ。
こういう優しそうなおじいちゃんって、怒ると怖かったりするもんなあ……。
だが以外にも、彼は嬉しそうに口角を上げた。
「素晴らしいと思います。これからも革新的な発想でぜひとも、今までの祈りとは違ったやり方を追求していってもらいたいのです」
こ、これは褒められてる!
教皇とかいう偉い人に、私がサボりたいがゆえに発明したやり方で褒められた。
ただ一方で聞いておかなきゃいけないこともあり。
「生み出した魔物……かなり強くて騎士さんたちにかなり迷惑かけたみたいなんですけど、それは大丈夫でしたかね?」
そうシュテルネちゃん以外は普通に倒されている。
死人が出たわけではないが、本来はそんな危険な任務ではなかったはずだ。
一応責任感じて、彼らの怪我は祈りで直した。
正直土地の浄化よりキツかった……別の方法もないし。
ただ私のせいで怪我をさせてしまったので、珍しく罪悪感があるのだ。ほんと珍しくね。
「それに関しては大丈夫だと思いますよ。私の聞いた話では、アリス様の好評が騎士団たちの間で広まっているとのことらしいので。それに――」
え?
あの瘴気で作った魔物を倒すって、実質土地の浄化仕事をぶん投げてるのと同じだよ。私が祈りたくないからやっただけだよ?
確かに妙に騎士たちの私を見る目が輝いていたけど……あれはそういうことなのか。仕事熱心過ぎて怖いわ! 効率的にサボろうよ!
ていうか、教皇様何かまだ言いたそうだな。
「あ、ごめんなさい。脳内でツッこんでいたら」
「……聖女様がこそが要なので。それ以外の者に負担や危険を分散させられるのなら、それに越したことはありません」
この発言の是非は置いておいて。
めちゃくちゃ政治家っぽい、国のトップに立つ人みたいなオーラを感じる。
「なるほど……」
教皇様の言うことには共感できる。
共感できるというか、私の仕事が少なくなってくれるなら大いにありがたい。
だけども、私のせいで誰かが傷つくのは嫌だ。
この人はそういうのも織り込んで言ってそう。
ただわざわざ、反論なんてして場の空気を乱したくないので頷くだけしておこう。処世術!
「私としてはもっとアリスさんに活躍して欲しいと考えています」
「はい……」
嫌な予感がする。
もう帰ってもいいかな?
「そこでアリスさんには、また大きな仕事をこなしていただきたいのです」
ほらあ! やっぱりそういう話しじゃん!
土地の浄化失敗して帰ってくれば良かった……とまでは言えないか。
「ど、どんな仕事ですか?」
「その前に――」
扉をノックする音。
教皇様が開けに行くと、そこにいたのは……。
「遅れてすいません! 困ってそうなおばあさんがいたので……」
「大丈夫です。これから本題を話すところでしたので」
入って来たのは中学生上がりたてくらいの少女……いや、美少女。
どこかで見たこと…………あ、あのスラム街にいた聖女の子だ。
「彼女――聖女メテオール・ジャストと共に瘴気に襲われた街の住民たちを救っていただきたいのです」
「……普段からやってる病人たちを祈りで救うことと何か違いがあるんですか?」
「あまり違いはないですよ。ただ、街の住民のほとんどが瘴気病で苦しんでいるので――単純に祈りの回数が桁違いになるだけです」
長時間の祈りの次は、絶え間ない連続した治癒の祈りかよ!
やりたくねえええええええ~~~~~~~!
内心で絶叫していたら、教皇様が私のことを紹介しようと手で指し示した。
「聖女メテオール、この人は――」
「あ! この前お会いしましたよね?」
え、もしかしてもう正体がバレた?
まっさかそんなわけ――。
「初めまして――」
「クールマンさんですよね!」
メテオールちゃんは目をキラキラさせて私のことを見つめている。
なんでこんな憧れの人に出会ったみたいな反応なの!?
ただ暴漢から助けただけ……まさかチョロインか?
「クールマン?」
教皇様が首を傾げていた。
偽名としてはダサすぎるし何かのあだ名かなんかだと思われているのかも。
私にネーミングセンスはない。
「な、なんでもないです。そうだよね、メテオールちゃん」
私は必死に目で合図した。
会話を合わせて欲しい。
教皇様にお忍びで出かけたことがバレるのはまだしも、イキって暴漢相手に無双したことが公になるのは恥ずかしい。こういうのは陰でやるからいいのだ。多分。
そしたらメテオールちゃんの瞳の輝きがより強くなったように感じた。
首を縦に何度も振ってくれて、正義のヒーローになったような錯覚まで覚える。
「そうです! わたしとクールマンさんの間には何もないです」
「そ、そう?」
教皇様は一瞬引いた後に、まあいっかみたいな感じで咳払いした。
よし! うまくごまかせたぞ。
「それでは、お願いしたい任務の詳細を話したいと思います」
「よ、よろしくおねがいします……」
「お願いします!」
やる気のなさそうな私の声と、元気もりもりのメテオールちゃん。
若いっていいなあ……。いや、ただ単に私のやる気がないだけか。
「まずは――」
瘴気の風に襲われたのは聖都から見て西方にある交易都市サバサ。
かなり遠いらしく馬車だと一か月はかかるらしい。退屈で死ぬが?
「今回の移動については緊急を要するものなので、他の聖女に協力してもらい祈りで転移していただこうと思います」
うおおおおおおおおお! 一か月の移動時間回避!
これは嬉し――いや、本当に嬉しいか?
だってさあ! それってつまり、協力してくれた聖女にお礼しなくちゃいけないじゃん。如何に性根が腐ってるといえども、あとあと文句言われるのは嫌なんすよ。
その交易都市とやらでお土産買って行こう。
なんか良いものあるだろ(鼻ほじ)。
「ところでアリスさん、瘴気病についてはご存じですか?」
「知りません」
名前からしてヤバいことだけは分かる。
土地をダメにして、聖女の祈りの力でしか通じないようなものが人の体を蝕むと考がえたら――恐ろしいことだけは分かる。
「症状については行けば分かるので伏せますが、瘴気病に罹った者は一から二週間程度で暴走して亡くなります。なので、時間がないのです」
「……すいません、暴走って言うのは?」
マジでヤバい感じだ。
しかし、病気の説明で聞きなれない言葉が混じっていた。ゾンビ化して人を襲いだしたりするのか?
「瘴気で獣が魔物化するのと同じです。徐々に人が魔物に変化していくのです」
「……お、教えていただきありがとうございます」
珍しく内心ですら冗談が言えない。
瘴気ってそんなにヤバいのか……。
「一人でも多くの人々を救うためには、多くの聖女の力が必要です。しかしながらスケジュールに余裕があったのはお二人だけだったので……どうかよろしくお願いいたします」
他の聖女たちも皆やることがあるのだろう。
その中で出来ることをやるしかない。
「それでは、明日朝出発していただきたいと思います」
「わかりました」
「が、頑張ります!」
一難去ってまた一難。
農村の時とは違って、言い訳して帰るなんて考えすら許さないだろう。
それでも、教皇様は「今までとは違ったやり方を期待している」と言っていたし、また何か考えよう。
忙しくなりそうでゲロ吐きそうvs人命がかかりすぎている。
もうこの時点でお腹が痛くなってくるよ。
「クールマンさん、頑張りましょうね!」
「その呼び方止めて……アリスでいいから」
メテオールちゃんの方が先輩とはいえ、私は年上だ。
だからなのか知らないか、強い憧れの視線を感じるが私は――。
いかに祈りをサボるかしか考えてません!
勿論、街の人たちも皆救うけどさ!