ドパガキ聖女は祈らない 作:創作中毒のおっさん
そんなメテオールちゃんに、これからやることを紹介した。
とにかく回復ポーションをエリクサーに変えるため、祈ること。
「壊れたものを治すようなイメージでね」
「分かりました!」
少しは時間に余裕があるかなと思えば、もうポーションが運ばれてきた。
ギルマスが申し訳なさそうに私を見ていた。
「聖女様、とりあえず街のポーション屋から集められるだけ回復ポーションを集めてきたんで、使ってくだせえ」
「ありがとうございます」
ポーションが入った木箱が十箱ほどかな。
全部フルで入っているかは怪しいが、それでも百個くらいのエリクサーは作れる。
「じゃあ、メテオールちゃん、これをエリクサーに変えていく感じだから。長い戦いにはなると思うけど、頑張ろうね」
「はい!」
キラキラ同僚の前で、やりたくない~! とか駄々こねられない。
とにかく、ここからは頑張らなくては。
早く終わらせて、ダラダラする。スマホ見る!
そう覚悟を決めていると、もう既に一瓶エリクサーを作り終えたメテオールちゃんが、私の肩を叩いた。
「……アリスさん、一緒に祈りませんか?」
「一緒に? ど、どういう意味?」
「聖女の技術として、共祈願というものがあるんです。それを、やりませんか?」
きょうきがん……?
何か分からずに困惑していると、メテオールちゃんが教えてくれた。
「やり方は簡単です。同じものに対して、同じことを祈る。今回だったら――このエリクサーを元の状態に戻してくださいって」
「それをやるとどんな効果が……?」
「単純に時間効率が人数の倍だけ早くなります」
倍ってことは今回は二倍?
また、仕事が早くなるってコト!? うっひょ~。
「やるやる、やろう!」
「じゃあ、せーので祈りますよ。せーの」
このエリクサーを元の状態に戻してください
不思議と心と心が重なるような感覚があった。
ドパガキ故に集中できない私でも、メテオールちゃんの心に引っ張られていつもより集中できるような気がする。
そのまま数分祈っていると……。
箱に積まれた大量の回復ポーションが眩い光を放っていた。
「も、もしかしてあの量をこれだけの祈りで……?」
「そうです! これが共祈願です」
す、すげー! 聖女が複数人いれば、こんなこともできるんだ?
聖女が増えれば増えるほどいいじゃん。
教皇様、もっとガンガン異世界召喚して聖女増やそうぜ!
「あと、アリスさん――ドパガキってなんですか?」
「へ? 私、そんなこと言ってた?」
「……言ってはないんですけど、共祈願している最中は、相手の心中が見えたりするので、気になりまして」
あ、だから、私でも普段より集中できたのか!?
道理で心が静かだった。内心で暴れたくもならなかったし。
でもあんまりドパガキを教えたくないな。
絶対に軽蔑される……メテオールちゃんまともだし。
「ドパガキは気にしないで、異世界の言葉だから……」
「アリスさんが元いた世界の言葉!? とっても気になります!」
あ~止めてくれ!
その、キラキラのお目目がネットスラングにまみれるところを見たくない。
「こ、今度ね? 時間があったら……」
「はい! 楽しみに待ってます!」
「覚えてたら、だから。忘れちゃったらごめんね……」
これで忘れたことにしておこう。
そんな雑談はさておいて。
領主さんが来ているのは分かっていたので、そちらに視線を向ける。
「領主さん、できたエリクサーの分配はお任せしていいですか?」
「勿論です。聖女様がお作り次第、住民への配分を開始したいと思います」
「よろしくお願いします」
これで、もうとにかく送られてきた回復ポーションをエリクサーに変えるだけ。
「はあ……」
従来のやり方よりも全然早いのは分かってるよ?
けどさあ……それでもかったるいんだって!!
◆ ◆ ◆
エリクサーを量産し続けるため、冗談抜きで二日ほど祈り続けてた。
ちゃんと寝たり、食事もとったりはしていた。
勿論、途中で抜けてスマホを弄ったりも。メテオールちゃんにバレないようにはしてたけど。
しんどさで言えば、受験勉強しているような感じだ。
寝ても覚めてもそれに向かい続ける。正直受験勉強よりもキツイが。
「メテオールちゃん! こ、これで最後だね!」
「で、ですね。祈りましょう!」
最後の十ケース。
これをエリクサーに復元すれば、聖女としての祈りの仕事は終わりだ。
このエリクサーを元の状態に戻してください!
しばらく祈っていると、光が部屋全体を包み込んだ。
意識が飛ぶ感覚……これは。
◆ ◆ ◆
ソファーに踏ん反りかえっている人がいる。
まあ、女神さまだ。
今回は威厳を出すために、あえてそういう座り方をしているに違いない。
「そういんじゃないんですけど! ただ単に疲れたから座ってるだけですよ!」
女神さまはいつも短気だ。
私が心の中でちょっとからかうと、すぐに怒る。
「短気じゃないです! 貴女が不敬なんです」
「別に私が女神さまに敬意を払う必要性がないというか? 私、この異世界の住民じゃないので、女神さまを信仰してないというか。そもそも無宗教ですよ」
あ、でもじいちゃんばあちゃんの墓は寺だよ。
クリスマスも楽しみだよ。
初詣も行くよ。
その程度の普通の日本人だよ?
「別に今更、本気では怒ってません」
「ならよかった!」
「そんなに喜ばないでくださいよ……。話は変わりますが、今回の瘴気病への対応、とても素晴らしかったと思います」
女神さまが素直に私のことを褒めている。
普段は私に呆れていそうな、この神様が。
「割と嬉しいですね。褒められて」
「割となんですね……まあ、いいですけど。私も教皇の坊やと同じく、貴女に期待するとします。これからも頑張ってくださいね」
「ええ……あんまり頑張りたくないんですけど」
「アリスさんの場合はそれでいいと思います。サボりたいからこそ、いい案が出てくると言うことなのでしょう。敬虔なだけでは上手くいかないのかもしれません」
私は頑張りたくないって言ってんの!
この人、思考盗聴ができるくせに、もうちょっと気をつかえないのか?
「まあ、いずれは仕事もなくなるかもしれませんし、頑張って」
「いずれっていつだよおおおおおおお!」
そう叫びながら、私の意識は地上に戻るのだった。