ドパガキ聖女は祈らない 作:創作中毒のおっさん
エリクサーの量産を終えてから、私は引きこもっていた。
領主さんから案内してもらった部屋でずっとダラダラしている。
正直言わなくても疲れた。
好きなタイミングで休憩できるとはいえ、二日間ほどエリクサーの量産に取り組んでいたのだ。ドパガキじゃなくてもキツイだろ多分。
コンコンコン、扉を叩く音だ。
扉には療養中と書いた張り紙を張ってもらったはずなのに。
待っているとアルメットが部屋の中に入って来た。
なんだコイツか……。
「アリス様、ご機嫌どうですか?」
「なんでご機嫌なの!? そこは体調じゃないの!?」
出会ったばかりの頃は崇拝するみたい目で私を見ていたのに、最早友達以下だよ。
でも、自分で対等な友人って言っちゃったしな……うん。
「いや、だって体調は大丈夫じゃないんですか? どうせ、いつものドパが足りな~いってやつでしょ? それくらい分かってますよ」
やっぱ馬鹿にしてるだろ。
いや、普段の私の態度が悪いと言われればそれまでだが。
「否定はしないけどさ……それで、もうお昼だっけ?」
「いえ、食いしん坊聖女様なのは知っていますが、メテオール様が来ていまして」
暴れん坊将軍みたいに言うなよ。
そのネーミングセンスで言うなら、私はせいぜいドパガキ聖女だろ。
そんな脳内でのツッコミはいいとして……。
「メテオールちゃんが?」
「そうです。心配されているそうで」
対外的には、今の私は療養中。
言うてメテオールちゃんもずっと祈っていたはずなのに。疲れてないのだろうか?
「逆にあの子は大丈夫なの?」
「見た感じでは元気でしたよ」
「マジか……」
本職の聖女ってすげ~。
それとも今回ばかりは真面目に若さゆえかもしれない。
「それでどうします? 今回は私用なので、全然追い返してもいいと思いますが」
アルメットは平然とそんなことを語る。
いつもなら私を動かそうとする側なのに……公私は分けてくれているのか?
確かに懇親会とかは行けって言わないもんな。
「いや、いいよ。体調はアルメットの言う通り大丈夫だし……ちょっと身支度頼む」
「身支度ってことは、どこかにお出かけなさるつもりで?」
「そう。メテオールちゃんと街を見て回ろうかなって」
自分たちは瘴気病を治すためにポーションを生産しまくったのだ。折角なら、住民たちがちゃんと回復したのかどうかは見て回りたい。あと、普通に散策もしたい。そう何度もこの街に来ることはないだろうしね。
「了解です。では失礼します」
「おねが~い」
私は面倒なので、服選びなりメイクはアルメットに一任している。
スマホ見てりゃ勝手にやってくれるしな! 本当に感謝!
◆ ◆ ◆
「いや~お待たせしちゃったね。メテオールちゃん、待った?」
「全然待ってないです! 寧ろ……その大丈夫なんですか? 私のためなら、無理はしなくていいので」
メテオールちゃんは本気で心配してくれている。
疲れたと言って、一緒に食事すら取らなかったのがマズいか……。
「もう元気満タンだから、行こう! 心配しないで、ほら!」
私はもじもじする少女の手を取ってかけだした。
身体強化しちゃっているから、かなりゆっくりめに。
「あ、わわわ。大丈夫なのは分かりましたから……! 手、手を!」
「いいじゃんいいじゃん、はぐれたら嫌だしさ!」
「わたしそんなに子どもじゃないです~!」
そんなこんなで私とメテオールちゃんは街の散策へと出かけた。
アルメットやシュテルネちゃんには、後ろで見守っていて欲しいと言っておいた。大人数でぞろぞろ歩くのもね。
「うわー!」
「おおっ!」
街に出ると、そこには大量の人でごった返していた。
流石の交易都市、行きかう馬車の量もとんでもないし歩いてる人も多い。
活気だけで言えば聖都よりも凄いかもしれない。
「メテオールちゃんはどこか行きたいところある?」
「え、えっと……貧困層の方が住んでいるところに」
「な、なぜ?」
折角の散策で行くようなところではない。
初めてこの子と出会ったときもそうだったが、何か理由があるのだろうか。
「街の表面だけじゃなくて、裏側まで……ちゃんとエリクサーが届いたのかを確認したくて」
「おっけー!」
「い、いいんですか? 自分から言っておいてアレですけど」
メテオールちゃんは申し訳なさそうに視線を下に向けていた。
「いいのいいの! 行きたいところ行くのが一番!」
「あ、ありがとうございます!」
そうそう。
人の生き方も好みも人それぞれだからね!
領主さんの館の人に貧困層が住んでいるエリアへ案内してもらった。
確かに荒れていて、ゴミも溢れている。
正直なところ苦手だが――ちゃんと元気そうな人が多かった。
「この街はちゃんと、弱者の人たちにも優しいんですね」
メテオールちゃんがなにか訳アリ顔でそう語っていた。
もしかして過去に何かあったりするのだろうか?
「聖都は違うの?」
「聖都の話ではないんですけど……自分は元々、ある都市のスラム生まれで」
「そうなんだ」
スラムってなんだっけ? なんか聞いたことあるんだけど……。
「わたしは聖女としての適性を見出されたから良かったのであって、でも、そうじゃない人は生きていくだけで精一杯で」
メテオールちゃんは悲しそうだった。
もしかしなくても、スラムって良くない場所か。
「だからメテオールちゃんは、スラム……みたいな場所に来たかったんだね」
「そうなんです……付き合わせてしまってすいません。ここでも、聖都でも」
小さいのに何だか重いものを背負っている。
そんなに真面目に生きなくてもいいのに。私の不真面目さを見てくれ。
「……私でよければなんだけど、また誘ってよ。予定が合えばだけど」
「え、でも……」
「信頼してよ! 私以上に正直な人いないよ? 嫌なら嫌って言うし」
メテオールちゃんは可愛いし素直で好きだ。
なんか一人だと無理しちゃいそうだから、寄り添ってあげたくなった。まぁ妹みたいな感覚だ。
「アリスさん……! ありがとうございます!」
メテオールちゃんが抱きついてきた。
そんなに感動する?
でも、悪い気なんてしなかった。
そりゃ美少女に近寄られて嬉しくないわけがないでしょ!