『ぱっぱらー! 大勝利!!』
オレのスマホがけたたましい音と共に、画面の中でじゃらじゃらとコインのお風呂を作るっす。
コインのお風呂に浸かるのは金髪碧眼のバニーガール、ミハエちゃん。
「うぉおお……!! っしゃ! っす!」
【やったな達也! これでランキングに載るぞ!】
いやいや、ルッさんの指示がなければ危なかったっす……!
【電子ゲームとは楽しいな。『流れ』で周囲を確認していた以前の私の体ではできなかった遊びだ】
オレは今、公園で紡とソシャゲをしていたっす。
対戦型ゲーム、ワールドゴエモン。
四人チームでお城の中から宝を盗み出すゲームっす。
「やりましたね、師匠……」
「……なんかあったんすか?」
「え?」
かなり順調にポイントを稼いだのに、紡は浮かない顔っす。
普段ならもっとこう、ワニと格闘するバッファローみたいな顔でゲームプレイするのに。
「……師匠にはなんでもお見通しですね」
紡がわかりやすすぎるだけな気がするっす。
「実は、本家から招集があって……数日間、本家に帰らないといけないんです。そこで、御前試合をさせられるって」
紡からちらっと聞いたことがあるっすね。
なんでも紡のおばあちゃんが実力主義で、体が真っ二つにされるようなことでもないと降参できない試合をやらされるとか。しかも対戦相手は弟。
漂業が使えるからって無茶させすぎっす。
「毎回
いや、でもオレがそばに居ないと『タケハズチ』は……。
弟さんがどんだけ強いか知らないっすけど……。
だ、大丈夫なんすか?
「大丈夫です! 京都行くので欲しいおみやげ考えておいてくださいね!」
【……達也。バイトでお金は貯めていたよな】
そうっすね……。
行くっすよ……京都……!! 紡にバレないように……!
どれだけ力になれるかわからないっすけど……! 漂業者ってめっちゃ狭いコミュニティだから、オレが漂業使ってるのバレたら多分まずいことになるけど……!!
—————
路地裏で、硬いものがぶつかる音が響く。
「京都ってパッと見華やかだが、お前らみたいなゴミもいるんだな」
「んだとテメェこら!」
相対しているのは17歳ごろの三人の男たちと、一人の少年だった。
少年はまだ12歳ほどだが、男たちに怯みもしない。どころか、男たちの一人を殴り飛ばし、ゴミ箱に激突させていた。
「テメエ、よくも俺の服にホコリをつけてくれたなぁ……!」
そう言って立ち上がってくる男を、面倒そうに一瞥する。
(こんなことしてる場合じゃねぇんだよな……。
少年、
こことは別の世界で漂業を使用する際に使われる、詠唱補助器具だ。
「『オムク槍・ミ』」
高野の肩から上の方に、『流れ』で作られた槍が出現する。
透明なそれは穂が歪に捻れており、刺さった時に相手に最大限の苦痛を齎すようにデザインされている。
「これなら漂業の秘匿とかも守れるだろ」
「テメエ、何言って」
鞭を振るう。男たちに向かって、無音で槍が放たれた。
槍が一番高野と距離が近かった男の顔面に着弾する瞬間、横から飛び出てきた手のひらが槍を受け止める。
「……トック鞭なんて一般人相手に使うもんじゃないっすよ」
横から飛び出してきた男は、手が貫かれてるにも関わらず冷や汗一つかかない。
「な、血……?!」
「なんだなんだ、なんだかわからんが……やべえ!!」
男たちがただならぬ雰囲気に怯え、去っていくのを見ながら、高野は飛び出してきた男を観察する。
(……見覚えはねぇ。ただ、こいつトック鞭って言ったよな? つまり
「喧嘩で漂業使うって何考えてるんすか。死人を出すつもりっすか。漂業の秘匿はどうしたっすか?」
「あー悪かったよ、急いでる時にヤンキーに絡まれてさぁ。仕方なく、な? ……一応確認しておくが、お前、ケートワーか?」
「? ラゴラっすけど」
(よし、符牒も通じてる……。こいつは確実に転生者側だ)
飛び出してきた男が同族だとわかると、高野は男に頭を下げる。
「ほんとごめん! 今のはほんの出来心でさ、坂田には内緒にしていて欲しいんだけど……! っていうかお前も時間ねえだろ、早く坂田んところ行くぞ!」
「え、あ、オレは御前試合を見に行きたいんすけど」
「じゃあますます急がねぇとな。御前試合終わっちまうぞ」
坂田の発表は御前試合の後だ。
それまでには『明星要塞』に辿り着かねぇと。
—————
「生八ツ橋美味しいっすね」
【美味しいねぇ】
オレはとりあえず京都に来たはいいものの、特にできることもなく街をぶらついてたっす。
ルッさんが言うには、大きな『流れ』が地下に渦巻いてることから、御前試合は隠された地下でやってるんじゃないか? とのこと。
いよいよ紡に接近するのは難しくなっちゃったっす。
とりあえず地下の『流れ』の真上をぶらぶらして、少しでも紡の勝率を上げるっすよ。
そう思ってたら喧嘩に遭遇っす。
高校生くらいの奴らが小学生くらいの男の子を囲んでる……んだけど、少し様子が変っすね。
背中のバッグから鞭を取り出した瞬間、ルッさんが声を上げたっす。
【あれは……トック鞭? 私の世界で漂業を使う時に、詠唱をサポートするものだが……? なぜこの世界にある? この世界の人間が自力で発明したのか?】
ちょ、つまりあの少年はただの喧嘩で漂業を使おうとしてるっすか?!
死人が出るっすよ!
オレは少年と不良たちの間に割り込んで、槍を手で受け止めるっす。
ちょっと透明なだけで殺意バリバリだったっす。軌道を読むのは簡単っすね。
【ぎゃあああああああ!! 見てるだけでも痛い見てるだけでも痛い!!】
「……トック鞭なんて一般人相手に使うもんじゃないっすよ」
この武器が本当にトック鞭っていうのか知らんけど。
便宜上っすね。
不良たちは逃げ出して、オレと少年は二人っきりになるっす。
「喧嘩で漂業使うって何考えてるんすか。死人を出すつもりっすか。漂業の秘匿はどうしたっすか?」
「あー悪かったよ、急いでる時にヤンキーに絡まれてさぁ。仕方なく、な? ……一応確認しておくが、お前、ケートワーか?」
なんだろうケートワーって。
フォロワーとかのワーっすかね。
それならオレは当然……。
「? ワゴワーっすけど」
【ワールドゴエモン好きだねぇ……】
オレの言葉を聞いた少年は、納得したような顔をして頭を下げたっす。
「ほんとごめん! 今のはほんの出来心でさ、坂田には内緒にしていて欲しいんだけど……! っていうかお前も時間ねえだろ、早く坂田んところ行くぞ!」
「え、あ、オレは御前試合を見に行きたいんすけど」
「じゃあますます急がねぇとな。御前試合終わっちまうぞ」
???
謎の噛み合いが発生している……。
でもこの少年も漂業使ってた訳だし、オレの言ってる御前試合と少年の言ってる御前試合はおんなじ可能性が高そうっすね。
【……ん? なんか……この子の魂、変な感じだ】
ルッさんが何やら言ってますが、とりあえず今はこの子についていきましょう。
いざって時のために隠形の術を使用する準備はしておくっすよ。背負ってるリュックサックにイナゴぱんっぱんに詰めてるっす。