めちゃくちゃ短いけど、切りがいいからあげました。
依頼を説明され、断ることもできず1日経った。
バイトとして潜入するので、あたり前だが面接というものがある。
履歴書などは会社が用意してくれるが、面接は自分でいかなければならない。
その面接という試練を乗り越えてやっと、依頼に当たることができるのだが、生まれてこの方殺し屋以外の仕事をした事がなく、そもそもがコミュ障な俺は.....
[うわぁぁぁ!行きたくなぁぁい!]
ペットボトルや服で散らかった部屋の中、毛布を頭まで被り暴れていた。暴れた事で散らかっていた部屋がさらに散らかり、埃が舞う
。
面接は明日という事で、まだ時間に余裕があるのだが........この有様。
不採用で依頼失敗.....なんて言う最悪な状況が浮かぶ。
後の自分が見れば絶望するほど散らかった部屋の中で、時間だけが過ぎていった。
潜入するカフェは家から徒歩30分という距離にある。
少し遠いので、今は電車に乗っている。
10時ということでそれほど混雑していないが、座席が満員になるほどは人が乗っている。今日は座ることが出来たので少しラッキーな日だ。しかも角の座席。
座れた事の嬉しさより、帰りたいという気持ちが勝ってるんだけどね。
(もう疲れた.....帰りたい.....)
憂鬱になりため息と共に心の中で呟く。
電車に揺られながら周りの乗客たちを見た。
大体が女性だがちらほらと男性もいる。男性が少ないのはおそらく、男性の大体が専用車両に乗るからだろう。
スマホを触っていたり、イヤホンをしていたり、本を読んでいたり外を眺めていたり。そのなか7割ほどはスマホを触っていて、スマホとイヤホン両方を使っている人もいる。
(相変わらず視線を感じるなぁ。)
ちらちらと感じる視線から逃げるようにポケットからスマホを取り出した。
昨日から緊張によるソワソワが止まらず、何度目かもわからない依頼の詳細を再確認する。
今回のターゲット、鈴木。30代後半の女性で男性店員へのセクハラ、女性店員への過度なモラハラを行っているらしい。
被害者から恨まれ、依頼を出されるに至ったというのが背景だ。前回とそこはほとんど同じだね。前回と違うのは潜入という点。
セクハラ、モラハラの証拠を掴んでから始末しないといけないらしく、証拠を掴むために少なくとも1日は働かなければならない。
こういうのはマジで俺に向いてないと思うから、他の人にやってもらいたい。ほんとに。
確認しているうちに最寄り駅に着いたようだ。車内放送の後に扉が開き駅構内放送と喧騒が聞こえてくる。
(....やりたくないけど......やるしか.....ないよね......)
仕方ないと割り切り、気持ちを切り替える。
乗客が降りて行くのを見て俺も座席を立ち上がり、前にいる乗客たちと同じように歩く。
以前、仕事で一度来たことがあるので迷うことなく外に出ることが出来た。
通行人の邪魔にならないような場所の日陰にはいる。
足音や話し声などの喧騒を聞きながらカフェのある場所を確認するためスマホでマップアプリを開く。
カフェの場所がわかったので、アプリを見ながら向かうことにした。
スマホでついでに時刻を見ると、面接の時間まで15分ほどしかないことに気づく。
面接というのは開始の10分ほど前から待機していないとダメなので、残された時間は実質5分。やばいかも。
[やっばい、急がないと!...]
焦るあまりに周りを気にせず口に出してしまう。
歩きでは間に合わないと考え、走って向かうことにした。
風を感じながら、通行人を避けて繁華街を走る。
話し声や足音が聞こえる中、走ることすこし。
繁華街の路地から人が飛び出てきて、ぶつかってしまう。あまりスピードを出していなかったこともあり、ぶつかるだけで済んだ。
ぶつかった人物へ謝罪をするため顔を上げると俺より頭一つ分身長が高く、濁ったような目をした女性がいた。
[す、すいませんでした.....]
女性にしては身長が高く、少し驚いてしまったが、すぐに謝罪する。
[...........]
こちらを見たまま何も言わない女性。
[............]
[,...........]
繁華街の喧騒の中だというのに、しんと静まり返ったような感覚に陥る。
[ほんとすいませんでした.....急いでるんで、失礼しますっ。]
[..........]
気まずい空気に耐えかねた俺が再び謝罪をし、逃げるようにその場を去った。
佐藤が逃げるように走り去った少し後。
[ふふ.....こんなに近くにいたなんて......]
身長が高く、濁ったような目の女性がねっとりとした不気味とも言えるような笑みを浮かべ、走る佐藤をじっと見ながら周りに聞こえないほどの声量で呟いた。
[待っててね?佐藤くん......]
女性がどろどろと濁りながらも少し輝いて見えるような目で、先程出てきたばかりの路地を引き返し路地の奥へと進みながら呟いた。
[私があなたをーーー]
呟きが喧騒へと消えて行き、やがて姿も見えなくなった。